製作:2016年 日本 上映時間:125分 監督:水田伸生
歌あり、笑いあり、涙ありの楽しくて良質のファンタジー映画なのだが、韓国映画『怪しい彼女』のリメイク版というところが非常に残念である。もし本作がオリジナル作品なら、満点に近い出来栄えと言っても過言ではないだろう。
ストーリーのほうは、女手一つで一人娘を育てた70代の老婆(倍賞美津子)が、摩訶不思議な写真館で写真を撮ると、なんと20歳の若々しい娘(多部未華子)に変身してしまうのである。その後言動がおばちゃんの奇妙な娘になって昔の歌謡曲を歌うと、これがまた心のこもった良い歌声で、聞く者たちに大感動を与えてしまうのだった。
たべちゃんが歌うのは、1960年代から1970年代のヒットソング数曲なのだが、小さかった娘を抱えて苦労した昔の映像が映される中で歌う『悲しくてやりきれない』が一番心の中に染み込んできた。観ているほうも、なんだか自分の少年・少女時代がオーバーラップして、涙が止まらなくなってしまうのである。
この曲ってこんなに良い曲だったのか、と、改めてつくづく感心してしまうから不思議なのだ。そして観客のほとんどが、感動の波に飲み込まれてしまうのである。それに若いたべちゃんが、涙を流しながら熱唱している姿も実に神々しかった。
やや微妙な部分もないことはないが、たべちゃんの歌唱力はごりっぱだと言ってもよいだろう。本作はまさにたべちゃんの魅力を100%発揮した超娯楽作品と言える。また老女役の倍賞美津子の熱演も、決して見逃すことは出来ないはずである。
本作を観た時点ではオリジナルの韓国版を観ていなかったのだが、最近観る機会に恵まれたので、その評論を読みたい方はこちらをクリックして欲しい。日本版では懐かしい歌謡曲に感動したわけだが、韓国版では歌の部分に感情移入ができるのだろうか…。
評:蔵研人