終わりに見た街

★★★☆

原作:山田太一 脚本:宮藤官九郎
出演:大泉洋、吉田羊、三田佳子、堤真一、奥智哉

 原作小説が発表されたのは1981年であり、本作はその現代的リメイクにあたる。時代の変化に伴い現代パートの設定は大幅に変更されていたが、それ自体は自然な対応といえるだろう。ただし、序盤の現代描写はやや冗長で、コミカルな演出も過剰気味に感じられた。これは脚本を手がけた宮藤官九郎の作風が色濃く反映された結果とも言える。

 なお、タイトルに「2024年版」と付したのは、1982年に細川俊之主演で初めてドラマ化され、2005年には中井貴一主演で再度リメイクされているからである。つまり本作は三度目の映像化である。

 1982年版・2005年版はどちらも原作者・山田太一が脚本を手がけており、特に1982年版は原作に極めて忠実で、「戦争反対」のメッセージを正面から伝える重厚なSFドラマとなっていた。2005年版も現代設定や登場人物の職業に若干の調整はあったものの、基本的には原作の骨格を踏襲している。

 一方、本作は現代パートに宮藤流のユーモアが前面に出ており、導入部はやや軽薄にも映った。しかし、家族がタイムスリップしてからは物語が原作の流れに戻り、緊張感のある展開へと移行していく。特に三田佳子が演じる認知症の母という新たな設定は、物語に深みと感情の複雑さを与えており、印象的であった。

 なぜ今、この作品が再び映像化されたのか。その背景には、世界各地で再び戦争が現実のものとなっている状況があるのかもしれない。序盤のコミカルな演出とは裏腹に、物語の終盤では戦争の恐怖と理不尽さが強烈に描かれ、最終的には原作同様、救いのない現実を突きつけるような結末へとたどり着く。
 なおあらすじについては、過去に原作小説の評論をまとめたものがあるので、次のURLをクリックして欲しい。

タイムトラベル 本と映画とマンガ : 終わりに見た街


評:蔵研人

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