![【Amazon.co.jp限定】『月の満ち欠け』通常版DVD ※特典 : ペーパーコースター 付き [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/81FKV5hH8vL._AC_SY445_.jpg)
★★★☆
本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。
著者:高野和明
東大二浪で首吊り自殺した裕ー、キャリァウーマンになり損ねて飛び降り自殺した美晴、会社経営に失敗し服毒自殺した市川、ヤクザ稼業の限界に絶望し、短銃自殺した八木。この四人が神様の命令で、地上に降り幽霊になって100人の自殺願望者を救うという荒唐無稽なお話である。しかも夕イムリミットは49日間、1日2人以上のペースで自殺をくいとめなくてはならない。
これが成功した暁には、成仏して天国ヘ行けるという。なんだか、浅田次郎の「椿山課長の七日間」と通じるものがある。
彼等は人には見えない聞こえない、透過してしまう存在であるが、なぜか物質に対しては存在感がある。だが彼等は物質を動かせない。つまり、例えば誰かがドアを開けない限り、彼等だけではドアを開けられない、入れないのである。
こんな状態で、どうすれば100人もの人間を救助出来るのか。ところが、彼等はこの八方塞がり状況を打破すべく「七つ道具」を所持していたのである。
このマンガのようなバカバカしいお話が面白いのは、裕一以外の三人が自殺したのが、裕一よりずっと以前だったということだ。市川が15年前、美晴が17年前、八木に至っては、なんと24年前なのである。
ということは、市川、美晴、八木にとっては、現代の日本はカルチャーショックで、まるでタイムマシンで未来に跳んできたのと同じなのだ。そのあたりの彼等の驚きようや、時代遅れな流行語が飛び交う様が楽しいよね。
それから自殺願望者の大半は「うつ病」である。だから著者はうつ病について、かなり詳細に調べている。おかげで自殺とうつ病についての認識がかなり高まってしまった。楽しみながらお勉強出来るという具合で、一粒で二度美味しいのだ。
ただ100人助けるまでに、何人もの同じような救助が続くので、途中少し辟易してしまうかも…。だが実は、最後100人目の自殺願望者の救助こそ、本作中最大の焦点なのである。この感動のクライマックスでは、きっと誰もが熱い涙を流さずにはいられないだろう。
評:蔵研人
著者:西澤保彦
前半はかなり読み辛い。舞台が米国で固有名詞が憶え難いこともあるが、「死後編」と「生前編」の時間設定が異なることが原因であろう。
次々とゾンビの館を訪れる女達。彼女達はゾンビ達に殺され、生前の記憶を消去され、ゾンビ達の仲間入りをする。しかしその割には、ゾンビ達は増えるどころか、だんだん減っているような感じなのだ。
また生前の世界では、美貌の人妻クリスティンを取り巻く人々が、次々と殺害されてゆく。犯人はまるで『13日の金曜日』のジェイソンのような不気味な男のようだ・・・。
なんだかよく判らないままに、「死後」と「生前」のストーリーがジグザグに進行してゆく。ミステリーとホラーをミックスしたような展開にドキドキするものの、やはり正直言って意味不明なのだ。
ところが終盤になると、生前の連続殺人の謎が、まるで難解なパズルを解き明かすように一挙に解明される。実に凝りに凝りまくっていて、お見事としか言いようが無いが、さらにその後にも「ドンデン返しの扉」が幾重にも張り巡らされているのだ。
圧倒的に見事な結末とは言え、前半の出来事の大半は霧のかなたである。それで結局もう一度ページを戻して再確認することになる。まるでメビウスの輪の内側を歩いているうちに、いつの間にか外側に出てしまったような気分である。ただラストの「あれ」は何を意味するのだろうか。
評:蔵研人
製作:2006年 日本 上映時間:118分 監督:河野圭太 主演:西田敏行
「いや~映画ってほんとにいいですね!」と思わず叫びたくなるほど超・面白い映画だった。ジャンルは珍しいファンタジックコメディといったところだろうか。
デパートに勤務する椿山課長は、仕事中に突然死してしまう。だが天国に行く前に、初七日まで地上に戻ることを許される。そしてそこで、今まで知らなかったことが、次々と解明されてゆくのである。
ところで彼が地上に戻ると、絶世の美女に変身していたのである。天国の使者曰く、全く正反対の姿に変身させたというのだ。この椿山課長にブクブクの西田敏行、変身後のスレンダーな美女に伊藤美咲とくれば納得、そして大笑い間違いなし。
原作はここのところ映画づいてきた「浅田次郎」なのだが、因みに私はまだこの小説を読んでいない。
さて、西田敏行と伊藤美咲という、美女と野獣のような組合せが、意外と良かったね。それに美女の伊藤美咲は、シリアスな役よりコミカルな役のほうが向いているようだ。
また蓮子役の志田未来もなかなか可愛いい。彼女も死ぬ前は、少年だったのだが、蘇ると少女になってしまうのだ。
施設で育った彼女(彼)は、実の父母に会いに行く。ここから先はネタバレになるので、詳しくは書かないでおこう。ただ例え姿形が変わっても、我子を見分ける母性愛に感動してしまった。
あと椿山課長の同僚で、元カノジョの知子を演じた余貴美子が良い。彼女は目尻が下ったほのぼのフェイスで、私の好きなタイプの女性である。だから真実を知ったら、余計に切なくなってしまった。
この作品のテーマは、生きているときは判らないことが沢山あるということだろうか・・・。人生には、知らないほうが良いこともある。だが椿山課長にとっては、真実を知って本当に良かったのではないかと思った。
館内は笑いが絶えなかったが、時々すすり泣く声も聞こえた。またラストシーンも清々しく、こうした作品にありがちな後味の悪さは全くなかったね。久し振りに本当に映画らしい邦画にめぐり逢った気がしたものである。ただもうひと捻りがあると、100点満点だったのだが・・・。
評:蔵研人