タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

映画

タイムシフト2

たいむしふと

製作:2020年 米国 上映時間:85分 監督:ジェイコブ・バーンズ

 B級作品であり、初めから評価が低いことは承知していた。もちろんその理由は、この作品が私の大好きなタイムトラベルものであるからだ。
 古びた納屋の奥には、ドラム缶を寄せ集めて作られた“タイムマシン”のような装置が鎮座している。最初の実験台は猫、次に亡くなった発明者の娘がその装置に身を委ねる。過去へと跳ぶと、そこには常に過去の自分が存在しており、強烈な痛みとともに体調が徐々に崩れていく。

 登場人物としては、父親、隣人、酒場の男、マッチングアプリの相手、会社の上司、図書館職員などが時折姿を見せる。しかし一部を除き、彼らは物語にほとんど関与せず、何のために登場しているのか判然としない。結局のところ、作品には明確な主張も物語の推進力もなく、ただ「タイムシフトすると身体に異変が起こる」という現象だけが繰り返されるにすぎなかった。


評:蔵研人

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2300年から来た男2

2300

製作:2022年 米国 上映時間:117分 監督:リシェラー・アラディン

 本作でメガホンを取ったリシェラー・アラディンは、これが唯一の監督作品であるという。経歴の詳細は不明だが、その仕上がりを見る限り、経験の乏しさを疑われても致し方ない出来と言わざるを得ない。

 物語は、2300年からある使命を帯びて2023年へとやって来た男アシュトンを中心に展開する。彼はネット上で「謎の預言者」として活動を始め、近未来に起こる出来事を次々と的中させていく。その結果、人々の関心を集め、やがてマスコミも巻き込んで騒動は広がっていく。

 導入部の流れ自体は決して悪くない。むしろ、発想としては興味をそそられるものがある。しかし、その後の警察の対応や物語の展開はどこか噛み合わず、観る者を作品世界へと引き込む力に欠けている。

 また、本作は低予算SFの典型とも言える作りで、未来の描写はほとんど省略され、会話によって説明が補われるばかりだ。その結果、肝心の「未来で何が起きたのか」「なぜ過去に来たのか」「どうすれば世界を救えるのか」といった核心が曖昧なまま残され、物語は終始輪郭を結ばない。

 脚本の奥行きは浅く、視覚的な見どころにも乏しい中で、約2時間という上映時間はかなり長く感じられる。興味深い設定を持ちながら、それを十分に活かしきれなかった点が惜しまれる一本である。

評:蔵研人

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一秒先の彼

一秒先の彼

★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:119分 監督:山下敦弘

 台湾映画『一秒先の彼女』を日本の風土に移し替えたリメイク作品である。物語の大きな流れはオリジナルを踏襲しているが、主人公が女性から男性へと置き換えられたことで、作品の温度感や視点が微妙に変化している点が興味深い。

 イケメン郵便局員のハジメは、第一印象こそ良いものの、何事も人より“ワンテンポ早い”性質のため、恋愛が長続きしない。そんな彼が、路上ミュージシャンの桜子の透明な歌声に心を奪われ、花火大会でのデートを約束する。しかし、バスに乗っていたはずのハジメは、気がつくと自宅で目覚めており、花火大会はすでに終わっている。彼の一日は、まるで誰かに切り取られたかのように忽然と消えていた。

 やがてハジメは、この“消えた一日”の謎を、郵便局に毎日のように現れる「ワンテンポ遅い」女性・レイカが握っていることに気づく。二人の“時間のズレ”が、物語の中心に静かに据えられていく。

 見どころの一つは、時間が静止した世界を描くシーンである。だが注意深く観察すると、近くの人物の衣服は風に揺れ、身体もわずかに動いているのに対し、遠景の人々は写真のように完全に静止している。この差異は、近景では俳優が静止を演じ、遠景では静止画を合成しているためだろう。もちろん、こうした技術的な粗さは物語の本質を損なうものではないが、時間停止という幻想的な瞬間にわずかな現実の綻びが覗く点は、観客によって好みが分かれるかもしれない。

 リメイクゆえに結末の驚きが薄れてしまうのは避けがたいが、その代わりに本作は、男女を入れ替えたことで生まれる新たな情緒を獲得している。岡田将生の繊細な佇まいと、清原果耶の静かな強さを湛えた演技は、作品全体に柔らかな光を与え、二人の“時間の距離”が縮まっていく過程に自然な説得力をもたらしている。

 オリジナルの鮮烈な仕掛けを知っている観客にとっては驚きが弱まる一方で、日本版は人物の心の揺らぎや孤独の質感を丁寧に描き出し、別種の余韻を残す作品へと仕上がっている。男女を入れ替えた判断は、単なる設定変更ではなく、物語の感触そのものを刷新する効果をもたらしたと言えるだろう。


評:蔵研人

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東京少女4

東京少女

製作:2008年 日本 上映時間:98分 監督:小中和哉

 てっきり本作の原作は漫画や小説かと思いきや、正確には林誠人の脚本をもとにした 映画オリジナル作品であった。混同しやすいのは、林誠人と笹原ひとみの共著によるノベライズが映画より若干先に出版されている点である。その後、シリーズとしてテレビドラマ化もされているが、現時点で公式の漫画やアニメ化は確認されていない。

 物語は、地震の折にうっかり階段から落としてしまった携帯電話が、ワームホールを経て100年前の世界へとタイムスリップするところから始まる。落としたのはSF作家を夢見る女子高生・未歩(夏帆)、そして明治時代で携帯を手にしたのは、夏目漱石の門人で小説家を志す青年・時次郎だった。

 常識からすれば通じるはずのない電波が、月の出ている時間だけ時を越えて通じるという奇蹟。その不可思議な交流のなかで、二人は徐々に親しくなり、やがて月の出の下で会話することが習慣となる。さらに昼間に日比谷の松本楼でカレーライスのデートを重ね、銀座の老舗で100年先に届く買い物をするなど、物語は独特の幻想感に包まれる。

『オーロラの彼方へ』や『リメンバー・ミー』のように「時を超える電波」を扱った作品は珍しくない。しかし、本作が放つ魅力は、時間を越えた同時デートや未来への贈り物、そして夏目漱石という実在人物の絡め方にある。

 また老舗の老女が登場するわずか数分のシーンで、自然に心の扉が開き、涙が溢れて止まらなかった。ほんの数分のシーンであったが、私にとっては本作最大の見どころだったのかもしれない。このシーンの具体的な説明は省きたいが、ぜひ自分の目で確かめてもらいたいものである。


評:蔵研人

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ファーストキス 1ST KISS

ファーストキス 1ST KISS

★★★☆
製作:2025年 日本 上映時間:124分 監督:塚原あゆ子

 あれほど深く愛し合って結婚したはずなのに、いつの間にか長い倦怠期に沈み込んでしまった夫婦。結婚15年目を迎えた二人は、ついに「離婚」を決意する。ところが離婚届を提出するその日に、夫・駈が見ず知らずの子どもを救おうとホームから飛び降り、命を落としてしまう。

 悲嘆の中、妻のカンナは首都高のトンネルを走行中に、駈と出会う直前——15年前へとタイムスリップしてしまう。若き日の駈と再会した彼女は、忘れかけていた想いが胸に甦り、やはり自分は駈を愛していたのだと気付く。そして、15年後に訪れるあの悲劇から彼を救うことを心に誓う。

 タイムトラベルもので「好きな人を救うため、何度もタイムループを繰り返す」という設定自体は決して新しいものではない。だが本作は、その装置を用いながら、「夫婦とは何か、愛は時間に耐えうるのか」という問いを静かに投げかける、『大人のためのラブストーリー』なのである。とりわけ子どものいない熟年夫婦にとっては、胸に迫るものがあるだろう。

 また、ヒロイン・硯カンナを演じた松たか子の成熟した演技には、今回も深く唸らされた。49歳を迎えた彼女が20代の姿を演じてもほとんど違和感がなく、その自然な若々しさには驚かされるばかりだ。こうした表現力も含め、彼女が第49回日本アカデミー賞優秀主演女優賞に輝いたのは当然のことだと感じた。


評:蔵研人

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ラブ・アンド・タイムトラベル

ラブアンド

★★★☆
製作:2016年 ニュージーランド 上映時間:92分 監督:ヘイデン・J・ウェアル

 珍しいニュージーランド製の映画である。タイトルに掲げられた「タイムトラベル」という言葉に惹かれ、軽い気持ちで鑑賞したのだが、いわゆるタイムマシンが登場するわけでも、時空を自在に行き来する描写があるわけでもない。そのため、観賞中はその意味が掴めず、どこか腑に落ちない感覚が続いた。

 しかし物語の後半になって、主人公自身が五日前の自分に向けてメッセージを残していたことが明かされる。その瞬間、これまで曖昧だった出来事の輪郭が静かに結び直されていく。

 本作の核心は、文字通りの「時間移動」ではなく、時間を隔てた因果の連なりにあるのだろう。「タイムトラベル」という言葉は、その構造を象徴するメタファーに過ぎず、物語の中心に据えられているのは、恋愛と人間関係の微妙な揺らぎである。

 中盤までは明確な方向性が見えないまま物語が進むが、その間にも、ニュージーランドの美しい風景には何度も心を奪われる。また、淡々としていながら突如として激しさを見せる主人公の振る舞いも印象的で、気づけば終盤へと導かれていた。

 一般的な評価は決して高くないようだが、静かに観る者の内側へ入り込んでくる、不思議な魅力を備えた作品である。派手さはないが、ふとした拍子に思い出される——そんな「掘り出し物」と呼ぶにふさわしい一本かもしれない。

評:蔵研人
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ペリフェラル ~接続された未来~

ペリフェラル

★★★☆
2022年 米国ドラマ

 原作は、ウィリアム・ギブスンによるSF小説『The Peripheral』。
 テクノロジーが社会のあり方を大きく変貌させた2028年、アパラチア山脈の麓に広がる静かな田舎町に暮らす女性フリンは、仮想現実のゲームに没頭する日々を送っていた。だがある日、彼女は何の理由も告げられぬまま、現実世界で突然刺客に狙われる。

 実は、彼女が単なるVRゲームだと思い込んでいた世界は、70年後の未来そのものだった。フリンはゲームを進める過程で、自覚のないまま重大な機密情報を脳に移植されており、それを巡って未来のリサーチ機関の命を受けた刺客たちが、現在の彼女の命を狙っていたのである。

 主人公フリンを演じるのは、子役時代に『キック・アス』で鮮烈な印象を残したクロエ・グレース・モレッツ。活発さと知性を併せ持つ本作のヒロイン像は彼女に驚くほどよく似合い、まるで彼女のために用意された役柄であるかのようだ。

 ストーリーそのものの魅力もさることながら、特筆すべきは「未来に存在するアバターを操作することで時間を越える」というタイムトラベルの発想である。従来の時間移動SFとは一線を画すこのアイデアには、思わず心を打たれた。

 シーズン1は1話約1時間、全8話という構成で、米国ドラマとしては比較的コンパクトにまとまっている。その後シーズン2の製作も発表されたが、全米脚本家組合および俳優組合のストライキの影響を理由に、Amazonスタジオは最終的に制作中止を決定した。

 難解ながらも、クロエの存在感、美麗な映像、そして数多く残された謎に強く惹かれていただけに、物語が途中で断ち切られてしまったことは痛恨の極みである。これほどの世界観を提示しながら、完結を許されなかったことに、やり場のない悔しさを覚えずにはいられない。


評:蔵研人

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星から来たあなた

星から来た

★★★☆
2022年 日本版ドラマ

『私の夫と結婚して』と同じく、韓国ドラマを原作としたリメイク作品である。韓国では最高視聴率33.2%を記録し、アジア全域で大ヒットしたことから、日本版のみならずフィリピン版、タイ版と各国で映像化が進んだ。

 物語は、400年前に地球へ降り立った宇宙人・東山満と、気まぐれで自信家のトップ女優・笹原椿との恋を描くSFラブストーリーである。ハレー彗星の接近により、満が地球を去らねばならない日が迫る中、二人の関係がどのような結末を迎えるのかが大きな見どころとなる。さらに、秘密を握ってしまった椿に、悪人・宇和島雅哉の魔手がたびたび迫るのだが、彼を追い詰め逮捕できるのかというサスペンス要素も物語に緊張感を添えている。

 そして何より印象的なのは、東山満が見せる卓越した知識と超能力の数々だ。とりわけ“時間を止める”という大胆な設定は、日本のラブストーリードラマではなかなか生まれにくい発想であり、荒唐無稽でありながらも不思議と物語に馴染んでいる。この能力がなければ成立しない物語構造こそ、韓国ドラマならではの力強さと言えるのかもしれない。

 ただし、東山満を演じた福士蒼汰の存在感は評価できるものの、笹原椿役の山本美月の演技は“わがまま”の一点に偏り、単調さが目立ったのは残念であった。また、満が江戸時代に出会った女性に似ているという理由だけで椿に命を懸ける展開には説得力が乏しく、感情移入の妨げとなった。
 韓国版を未視聴のため断定的な批判は避けたいが、ラブストーリーの核である“心が動く瞬間”に触れられず、涙を誘われることがなかったのは惜しい。

 日本版は全10話で完結しているが、原作である韓国版は全21話とスケールが大きく、キャストの演技も高く評価されているという。機会があれば、ぜひ本家の韓国版にも触れてみたいと思う。

評:蔵研人

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モスラ3 キングギドラ来襲

モスラ3 キングギドラ来襲

★★★☆
製作:1998年 日本 上映時間:99分 監督:米田興弘

 モスラ映画の嚆矢は1961年にまで遡る。
 東宝が『ゴジラ』『ラドン』に続く新たな怪獣スターとして満を持して世に送り出した本作は、構想三年、製作費二億円、撮影日数200日という、当時としては破格のスケールを誇る特撮大作であった。
 その後もモスラは数々の作品に登場し、先の二怪獣と並んで「東宝三大怪獣」と称される存在となる。従来の怪獣映画に比して、より濃厚なファンタジー性を帯びている点が、この怪獣の大きな特徴である。

 本作『モスラ3 キングギドラ来襲』は、平成ゴジラシリーズ(1984年〜1995年)の終幕から、ミレニアムシリーズ(1999年〜2004年)開始までの空白期間に製作された、いわば“つなぎ”の怪獣シリーズであり、同時に「平成モスラシリーズ」の最終章でもある。

 最大の見どころは、数々の変身を重ねてきたモスラが、宿敵キングギドラを打ち倒すため白亜紀にタイムスリップし、究極の戦闘形態〈鎧モスラ〉へと姿を変え、最後の戦いに挑む場面だろう。
 本来であれば全く歯が立たない相手に対し、モスラは自らの弱点である身体の柔軟さを克服すべく、全身を金属のような外骨格で覆う。〈鎧モスラ〉は、キングギドラの強力な引力光線すら弾き返すほどの強度を備え、翼の前縁は鋭利な刃と化し、あらゆる物質を切断・破壊する“翼カッター”として機能する。

 本作には自衛隊や防衛組織は一切登場しない。描かれるのは、ただ空中で激突するモスラとキングギドラ、その二者の戦いのみである。ゴジラ映画に見られるようなプロレス的な肉弾戦もなく、純然たる空中戦に特化した構成だ。
 そんな中、プロレスラーの大仁田厚が主人公の少年の父親役で出演しているのは、どこか微笑ましくも可笑しい。いまだかつてないほど大勢の子役エキストラが登場する点も含め、本作はよくできた「お子様ランチ」のような一作だと言えるだろう。


評:蔵研人

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私の夫と結婚して

私の夫と結婚して

★★★★☆
2024年 韓国ドラマ & 2025年 日本ドラマ

 原作は韓国のネット小説で、2024年に韓国でドラマ化され大ヒットを記録した。本作はその日本版リメイクであり、舞台や俳優、脚本は日本向けに刷新されているが、制作には韓国のスタジオドラゴンが関わっている。
 
 末期がんで入院しているヒロインが、力を振り絞って久し振りに自宅に帰ると、親友と夫の不倫現場を目撃してしまう。挙句に夫の暴行によって命を落とすのだが、その瞬間に10年前にタイムリープし生き返ることになる。そしてここから、彼女を裏切った親友と夫への復讐劇が始まるのである——。

 同じ物語を語っているはずなのに、韓国版と日本版の『私の夫と結婚して』は、まるで異なる季節の空気をまとっている。ひとつは真夏の陽炎のように激しく、もうひとつは冬の朝の静けさをたたえている。同じ原作を抱きながら、二つの国はそれぞれの呼吸で物語を紡ぎ直し、まったく異なる表情を生み出した。

 韓国版のヒロイン、カン・ジウォンを演じるパク・ミニョンは、美貌と強度を兼ね備えた存在感で、裏切りの痛みを真正面から引き受ける。変身後の彼女は怒りも悲しみもためらわず解き放ち、その直線的な感情表現が物語を一気に加速させる。
 また悪役たちは鮮烈で、感情も過剰なほどに露わだ。さらに復讐は痛快で、人物たちの輪郭は真昼の太陽の下の影のようにくっきりと浮かび上がる。韓国ドラマ特有の濃度が、この物語を激情の詩へと押し上げている。

 一方、日本版でヒロイン神戸美紗を演じる小芝風花は、感情を外へ噴き出さない。怒りは胸の奥で静かに形を変え、悲しみは言葉にならないまま沈殿する。復讐は叫びではなく、淡々と積み重ねられる行為であり、ヒロインの歩みは夜明け前の薄明の中を進むようだ。足音は静かだが、その沈黙がかえって深い余韻を残す。日本版は、まるで感情の「余白」を描く作品のようだ。

 そしてラストの描き方も対照的だ。韓国版は二人の結婚後の幸福をこれでもかと丁寧に描き、人生の再生を強く印象づける。一方、日本版はプロポーズの瞬間で幕を閉じ、恋愛ドラマの王道とも言える余韻を選んだ。

 韓国版は火花散る激情の詩、日本版は心の底に沈む静かな詩。同じ旋律を持ちながら、前者は力強く響き、後者は細く長く震える。物語とは、語られる国の空気を吸い込み、そのリズムで脈打ち始めるものなのだと、改めて実感させられた。
 どちらも一気に観ることを避けられない秀作であり、気づけば睡眠時間が削られてしまうだろう。いずれにせよ、二つのドラマの優劣は単なる好みの問題にすぎない。


評:蔵研人
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東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編

東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編

★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:運命 90分 決戦 96分 監督:英勉

 和久井健の人気コミック『東京リベンジャーズ』を北村匠海主演で実写映画化し、大ヒットを記録したのはいまだ記憶に新しい。その続編を望む声に応える形で、本作『血のハロウィン編』は第二部として製作され、『運命』『決戦』の二編構成で公開された。

 第一作鑑賞時には原作未読だったため気づかなかったのだが、原作やアニメに触れた後で本作を観返すと、マイキーやドラケンをはじめとする主要人物たちの再現度の高さに驚かされる。単なるメーキャップの力だけではなく、原作の空気を体現できる俳優を丹念に選び抜いた結果なのだろう。

 物語は、救えたはずの橘日向が、凶悪化した東京卍會によって再びタケミチの目前で命を落とすという、あまりにも残酷な運命から幕を開ける。さらに今回は、東京卍會創設メンバーであるマイキー、ドラケン、場地、三ツ谷、パーちん、一虎の六人のうち、場地と一虎が組織を離脱し、敵対勢力・芭流覇羅(バルハラ)へ身を投じるに至る経緯が中心に描かれていく。

 かつて固い絆で結ばれていた仲間たちが刃を向け合う————東京卍會崩壊へとつながる決戦の火蓋が、ついに切られるのだ。タケミチはそれぞれの想いの重さを受け止めながら、最悪の未来を回避し、ヒナタと仲間たちの運命を変えるべく戦いに身を投じていく。

 本作が前後編に分けて公開された理由について、制作側は「一本に収めるには物語の分量があまりにも膨大だった」と説明している。確かに原作の密度を考えれば理解できる判断ではあるが、近年では三時間前後の大作も珍しくない。導入部、エンドロール、回想シーンなどの重複部分を整理すれば、一本の作品としてまとめることも不可能ではなかったはずだ。

 ただ実際、前後編合計の興行収入は42億円を超えており、仮に一本にまとめていた場合、この数字に届いたかどうかは疑わしい。そう考えると、二部作とした判断には、物語上の必然だけでなく、興行的な戦略も大きく影響していたと見るのが現実的だろう。

 とはいえ、全31巻・全278話に及ぶ原作を、映画という限られた枠で完結させることは容易ではない。本作もまた、物語の最終章には到達していない。続編への期待は高まるばかりだが、現時点では正式な製作発表はない。ただし、興行成績やキャストのスケジュール次第では、その可能性が断たれたわけではないだろう。

 もっとも、物語の中心が高校生時代である以上、時間の経過とともにキャストの年齢との乖離が避けられなくなる。その意味でも、このシリーズが次の一手を打つ猶予は、決して長くはないのかもしれない。

評:蔵研人

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キャプテン・ノバ3

キャプテン・ノバ

製作:2021年 オランダ 上映時間:85分 監督:モーリス・トルーボルスト

 オランダ製のSF映画を観るのは、これが初めてだった。

 物語の舞台は2050年。
 急速な地球温暖化によって地表は荒廃し、大気は汚染され、人類は滅亡の瀬戸際に立たされている。このままでは地球そのものが崩壊し、生物はすべて死に絶えてしまうだろう。その未来を回避する唯一の手段は、タイムマシンによって過去へ遡り、温暖化を引き起こした原因を阻止することだった——。

 設定自体は、SF映画として決して目新しいものではない。だが、シャトル型タイムマシンを宇宙空間へ打ち上げ、ワームホールに突入することで時間を遡行するという理屈には、一定の説得力がある。また、25年前に到着した瞬間、主人公が肉体的に25歳若返るという描写も、SF的な論理としては納得できる範囲だ。

 しかし、製作費の制約は否応なく画面に現れる。簡素な造形のシャトルを見るにつけ、これでワームホールを通過できるのだろうか、と冷静に考えてしまう。また、世界の命運を握る存在が二人の子供であるという設定も、やや予定調和的で、子供向け作品の枠を出ない印象は否めない。

 それでも本作は、「地球の自然破壊が温暖化を招き、人類の未来を閉ざす」という厳しい現実を、次の世代に伝える映画としての役割を確かに果たしている。また領土や資源を巡る戦争もまた同根の問題であり、人間が目先の利益に囚われ続ける限り、真の平和が訪れることはないだろう。

 本作は、その不都合な真実を、静かに、しかし確かな声で語りかけてくる。

評:蔵研人
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タイム・スプリンター3

タイムスプリンター

製作:2024年 インド 上映時間:97分 監督:ラジャラム・ラジェンドラン

 椅子のような外観をしたタイムマシンによって“15分前”へと飛ばされてしまった主婦が、何度も同じ時間を繰り返す————そんな設定の物語である。舞台は廃工場のみ、登場人物も8名に限られた、いかにも超低予算のC級映画といった趣だ。

 しかし着想自体は興味深く、思わず2007年のスペイン映画『タイムクライムス』が脳裏をよぎる。ただし本作はストーリーの厚みに欠け、冒頭の宇宙服の意味を含めて全般的に説明不足が目立つ。

 またようやく盛り上がりの兆しを見せたかと思えば、終盤で失速してしまったのが非常に残念であった。内容からすれば97分の尺はやや冗長で、30分ほどの短編で十分だったのではないだろうか。

 とはいえ、主婦役を演じたあの“おばちゃん女優”の存在感だけは、しっかりと評価しておきたい。

評:蔵研人
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ザ・フラッシュ

ザ・フラッシュ

★★★☆
製作:2023年 米国 上映時間:144分 監督:アンディ・ムスキエティ

 亜光速の超スピードによって自らを“タイムマシン”と化し、過去へと飛んだフラッシュ。彼は亡き母を救い、無実の罪で逮捕された父を助けるため、禁断の「過去改変」に手を染めてしまう。

 その代償として時空は大きく歪み、世界は奇妙な姿へと変貌する。バットマンは老境に達し、ワンダーウーマンもアクアマンも存在せず、本来いるはずのスーパーマンの代わりにスーパーガールが空を翔ける。そして、かつてスーパーマンの宿敵であったゾッド将軍が現れ、地球は再び壊滅の危機へと追い込まれる。

 スーパーガールは可憐でありながら冷静沈着、その立ち姿はまさに凛とした強さを感じさせる。また、伝説的存在であるマイケル・キートンが約30年ぶりにバットマンとして帰還したことは、往年のファンにとっては胸が熱くなる瞬間だ。一方で、フラッシュがややコミカルに描かれすぎている点や、ラストのオチが軽妙に寄りすぎている点は、もう少し抑えてもよかったのでは、と感じさせる部分もある。

 いずれにせよ、タイムトラベルものはつくづく難しい。自由度の高さゆえに物語の可能性は無限に広がるが、一歩誤れば「荒唐無稽な話」として終わってしまう危うさを孕む。だからこそ、このジャンルは常に魅力とリスクが隣り合わせなのだ。


評:蔵研人

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2067

2067

★★☆
製作:2020年 オーストラリア 上映時間:114分 監督:セス・ラー二ー

 2067年、地球の酸素は急速に枯渇し、人類は人工酸素に依存して生き延びていた。だがその供給を独占する巨大企業クロニコープ社は、もはや人々の生命線そのものを支配していた。そこへ突然、407年後の未来から「イーサンを未来へ送れ」という謎のメッセージが届く。渋る青年イーサンは、周囲の説得によってタイムマシンに乗り込み、未知の未来へと跳ぶ。
 彼が目にしたのは、緑に覆われ廃墟と化した都市、そして自らの死骸だった——。それは希望の象徴なのか、それとも人類滅亡の証なのだろうか……。

 序盤の設定とビジュアルには確かな魅力がある。タイムマシンのデザインも印象的で、物語がどこへ向かうのかという期待を抱かせる。しかし、物語が未来に移ってからの展開は一気に停滞し、閉ざされた空間で同じ思考を繰り返すようなもどかしさが残る。人類の運命という壮大な主題に対し、演出も脚本も小さくまとまり、やがて観客の興味を手放してしまうのだ。

 後に調べたところ、物語の核心は、イーサンが父親譲りの知性を駆使してクロニコープ社の陰謀を暴き、人類再生の道を切り拓く過程にあるという。しかし、その構造や動機づけが映画の中で十分に描かれず、観る者にとっては断片的な象徴の羅列にしか映らない。

 環境危機と人間の倫理をテーマにした意欲作であることは間違いないだろう。だが、優れた発想が必ずしもドラマを生み出すとは限らない。本作は、ビジュアルの美しさと思想の深みが乖離したまま、未来への扉の前で立ちすくんでしまった作品とも言えるだろう。


評:蔵研人
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トランス・フューチャー3

トランス・フューチャー

製作:2020年 ブラジル 上映時間:99分 監督:ブルーノ・ビニ

 物理学者のダニエルは、ある夜、高層ビルの屋上で何者かに襲われ、瀕死の重傷を負う。目を覚ました彼の傍らには、愛する恋人の冷たい亡骸が横たわっていた。さらに、犯人と思しき男は「今度はもっと急げ」という謎めいた言葉を残し、闇へと身を投げるのだった。

 一体何が起きたのか、そしてこの不可解な言葉の意味は何なのか。ダニエルはもちろん、観客もまた謎の渦に巻き込まれていく。やがて彼は、自らの研究テーマであるタイムトラベル理論を完成させ、過去へと遡る決意を固める。愛する人を救うため、そして真実を掴むために。

 伏線の張り方は巧みで、物語としての構築力も見事である。しかし、全体に画面が薄暗く、映像的にはやや観づらい印象を受けた。また、タイムマシンの造形が簡素で、物語の壮大さに比してスケール感を欠いていたのが惜しい。さらに結末には、もう一段のひねりが欲しく、どこか尻切れトンボのような余韻を残す。

 それでも、本作が描く「過去と現在、愛と罪の交錯」は観る者の心を捉えて離さない。ダニエルの姉を演じた女優も印象的で、物語に一抹の温度を与えている。もしあと一歩の完成度があれば、名作と呼ぶにふさわしい作品となっていたかもしれない。


評:蔵研人
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オーバー・スピード 時空を超えた目撃者3

オーバー・スピード

製作:2020年 ロシア 上映時間:83分 監督:アンドレイ・ザギドゥーリン

 ロシア製のSF映画である。現在ではロシアとの貿易が制限されているだけに、この作品はウクライナ侵攻以前に輸入されたものだろうか——そんな時代背景を思わず意識してしまう。

 物語の中心にあるのは、特定の場所で心拍数が200を超えると時間を超越するという「時間周波理論」。理屈としては荒唐無稽だが、その突飛な発想がかえって新鮮で、不思議な説得力すら感じさせる。

 連続殺人事件の現場で常にランニングをしていたことから、容疑者として指名手配される主人公。自らの無実を証明するため、彼は心拍数を限界まで高め、時空を越えて真犯人を追う。しかし、過去と現在を行き来しても、なかなか真実には辿り着けない——。物語そのものはやや散漫だが、最後に待ち受ける意外な結末が印象的である。

 ただし、捜査担当の女性刑事が突如として主人公に抱きつき、そのまま性的関係を結んでしまう展開は、ご都合主義のそしりを免れない。とはいえ、彼女の魅力的な存在感が作品に華を添えているのも確かだ。観客へのサービス精神と受け取れば、苦笑しつつも許してしまうだろう。


評:蔵研人
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MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない4

MONDAYS このタイムループ

製作:2022年 日本 上映時間:82分 監督:竹林亮

  一週間のタイムループを延々と繰り返す広告代理店の社員たちの奮闘を描いた、異色のSFコメディである。舞台はほとんどが狭いオフィスの一室、登場人物もほぼ無名の俳優十名足らずという超低予算作品だ。

 タイムループという題材自体はもはや珍しくないが、限られた空間で登場人物全員が徐々にその異常事態を理解していくという構成が新鮮である。さらに、「上司にだけループの存在を気づかせなければ終わらない」という設定は、日本のサラリーマン社会に根付く上下関係や同調圧力を痛烈に風刺しており、笑いの中に鋭い社会批評を潜ませている。

 タイムループの原因は部長にあるものの、当の本人だけがその事実に気づかない。社員たちは一丸となって部長に現状を理解させなければ、永遠に同じ一週間を繰り返す羽目になるのだ。その過程で、彼らが組織の中で自我を越え、協働していく姿が描かれていく。

 出演者は無名の俳優が多いが、いずれも個性的で説得力のある演技を見せている。中でも、キャリア志向の女性社員・吉川朱海を演じた円井わんの存在感が際立っていた。彼女はこれまでも個性派俳優として様々な作品に出演しており、本作でも確かな印象を残している。

 本作はタイムループ映画としての完成度も高いが、それ以上に『カメラを止めるな!』のように、発想と構成の妙で勝負した低予算映画として光る一篇である。派手な映像やスター俳優に頼らず、脚本と演出の力で観客を引き込むその姿勢は、まさに日本インディーズ映画の醍醐味と言えるだろう。
 ただ、テレビドラマでも成立しそうな規模の物語であるため、「映画館で観る価値」をどう判断するかは観る者に委ねられている。しかし、それを含めてもなお、本作がもたらす小さな驚きと温かな余韻は、現代の映画シーンに確かな意義を刻んでいる。


評:蔵研人

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リバー 流れないでよ

リバー 流れないでよ

★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:86分 監督:山口淳太

 人気劇団「ヨーロッパ企画」が手がけたオリジナル長編映画の第2作。冬の京都・貴船を舞台に、わずか2分間のタイムループを繰り返す人々の混乱と可笑しみを描いた群像コメディである。

 タイムループものが大好きな私だが、今回はその「わずか2分」という極端な短さゆえ、同じ光景が幾度となく繰り返される前半では、やや焦燥を覚えた。しかし、主人公だけでなく登場人物全員がループを自覚しているという設定は新鮮で、物語に独特のテンポと知的な面白さをもたらしている。

 一体、このループを生み出しているのは何なのか。そして、いつになったら彼らは時間の檻から解き放たれるのか。観る者もまた登場人物とともにその謎に翻弄され、時の流れを取り戻す瞬間を息を詰めて待ち続ける。終盤、ようやくその原因が明らかになる。心理的なトラウマや人間関係のひずみかと思われたそれが、実はまったく別の————物理学的な要因によって引き起こされていたと知ったとき、思わず膝を打つ。

 撮影は京都・貴船神社と貴船川のほとりに佇む老舗料理旅館「ふじや」の全面協力によって行われた。静寂に包まれた雪の貴船の風景が、時間の停止というテーマを見事に映し出しており、この場所なくしては成立しえない映画であったといえるだろう。

評:蔵研人
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侍タイムスリッパー4

侍タイムスリッパー

★★★★
製作:2024年 日本 上映時間:131分 監督:安田淳一

 本作はもともと自主製作映画として池袋シネマ・ロサの一館のみで静かに封切られた。ところが、口コミによって評判が広まり、やがてギャガが共同配給に加わることとなる。新宿ピカデリーやTOHOシネマズ日比谷をはじめ、全国百館以上での順次拡大公開へと発展し、異例の大ヒットを記録した。さらに第48回日本アカデミー賞では、ついに最優秀作品賞を受賞する快挙を成し遂げたのである。

 物語の舞台は幕末の京都。会津藩士・高坂新左衛門は、家老から長州藩士討伐の密命を受ける。標的の男と刃を交えた瞬間、落雷に見舞われ、彼は気を失ってしまう……。目を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所であった。新左衛門は自らが時を越えてしまったことに気づかぬまま、撮影の現場に紛れ込んでしまう。

 やがて彼は、江戸幕府がすでに滅び、時代が大きく変わったことを知り、愕然とする。一度は死を覚悟するが、心優しい僧侶夫婦に助けられ、やがて“時代劇の斬られ役”として新たな生を歩む決意を固めるのだった。

 自主製作ゆえに有名俳優の出演はないものの、主演の山口馬木也をはじめ、各俳優がそれぞれに味わい深い演技を見せている。特に僧侶夫婦の存在は『男はつらいよ』の“おいちゃん夫婦”を思わせ、観る者の頬を自然に緩ませる温かさがあった。

 侍の現代へのタイムスリップを描いた作品は『満月』や『ちょんまげぷりん』など過去にも存在するが、本作はそれらとは一線を画している。コメディの体裁をとりながらも主人公は終始真摯であり、終盤には真剣を手にした本格的な殺陣が展開される。その中で浮かび上がるのは、時代を超えて受け継がれる武士道精神の凛とした輝きである。

 衰退が囁かれる時代劇というジャンルにおいて、本作はまるで新風のような力強さと説得力を放っている。次回作では、もう少し潤沢な資金を得て、ぜひ“本物の時代劇”を堂々と撮り上げてほしい————そう願わずにはいられない。

評:蔵研人

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カラダ探し

カラダ

★★☆

製作:2022年 日本 上映時間:102分 監督:羽住英一郎

 逢魔ヶ刻に語り継がれる学園怪談、「カラダ探し」。ただの都市伝説と笑い飛ばしていたはずが、ある日、6人の高校生がクラスメイト・三神遥の幽霊に「私のカラダを探して」と懇願される。その声に応じたのは、明日香、高広、留美子、翔太、理恵、健司の6人だった。

 その夜から、彼らは異様な儀式の渦中に巻き込まれてゆく。舞台は、夜の闇に沈む校舎。そこに現れるのは、血に塗れた恐怖の化身「赤い人」。バラバラにされた遥の体の一部を見つけるたびに、彼らは追われ、襲われ、殺され、そしてまた朝に戻る。死の連鎖と時間のループ。それはまるで、生きながら悪夢を何度も見せられているような感覚だ。

 なぜこの6人が選ばれたのか──。いじめや無視といった陰影を抱えた彼らの内面には、それぞれ秘密や罪、後悔といった澱のような感情が沈んでいる。物語が進むにつれ、それらの過去が静かに浮かび上がり、怪異との接点をかすかに照らしていく。

「赤い人」の存在は不気味で、圧倒的な暴力とともにスプラッター的惨劇を繰り広げるが、その恐怖の持続力にはやや疑問が残る。同じ夜を繰り返す構造が、次第に新鮮さを失い、物語全体に単調さが漂ってくるのも否めない。

 とはいえ、最後まで観る価値はあるかもしれない。エンドロール後には、思わず息を呑むようなどんでん返しが用意されている。決して早まって席を立つべきではない。


評:蔵研人

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あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。3

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

製作:2023年 日本 上映時間:127分 監督:成田洋一

 少々長めのタイトルではあるが、そこに込められた「あの花」とは、ヒロイン・百合の名に重なる白百合である。純白の花が風に揺れる丘――まるで天上の風景をそのまま地上に降ろしたかのような、穏やかで壮麗な光景が広がっていた。どこか夢と現実の狭間に浮かぶその丘は、静岡県袋井市久能にある「可睡ゆりの園」が舞台となっており、その広さはじつに三万坪。映像ではVFXによる幻想的な加工も施され、現実を超えた美を描き出している。

 戦中の建物や防空壕、町並みなどはオープンセットによって再現されたものもあるが、撮影には現存する風景も巧みに活用されており、ロケーションは、静岡、千葉、群馬、茨城、栃木と随所に及んでいる。異なる時代を一つの空間の中に溶け込ませるその演出には、細やかな工夫が光る。
 こうした丁寧なロケーションの選定と現地での協力体制は、「ロケーションジャパン大賞 撮影サポート部門賞」という形で高く評価された。

 物語は、母と口論し家出をした女子高校生・加納百合が、雨の夜に旧防空壕へと逃げ込み、そこで時を越える奇跡に巻き込まれることから始まる。目を覚ました彼女がいたのは、なんと終戦間近の1945年だった。
 偶然通りかかった若き特攻隊員・佐久間彰に助けられた百合は、時代も立場も違う中で、次第に彼に心を寄せていく。死を覚悟している彰は、自らの想いを抑えるように、百合を「妹」と思い込もうとするのだが……。

 戦火の時代に咲いた一瞬の恋――それは切なさを湛えながらも、純粋でまっすぐな情愛として胸に迫る。とりわけ終盤の展開には、言葉よりも涙が真実を語る瞬間がいくつもある。ただ俳優たちの衣装が新品のように光沢を放ち、まるでポリエステル素材のように見えたのは、当時の空気感とわずかに齟齬を来していたように思える。また空襲直後のシーンで、燃えていたはずの店がいつの間にか無傷で復活していたのも違和感を覚えた。さらに鶴屋で知り合った少女が、実は自分の祖母だったというような落ちがあっても物語にさらなる深みを与えたかもしれない。

 本作の原作は、汐見夏衛の同名小説。すでに続編『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』も刊行されており、2026年にはその映画化も予定されている。現代に戻った百合と、彰の“生まれ変わり”である転校生・宮原涼との再会――時空を超えた魂の巡り合わせが、また新たな物語を紡ぎ出すことだろう。その続きが、今から待ち遠しい。

評:蔵研人

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『終わりに見た街』(2024年版ドラマ)


終わりに見た街

★★★☆

原作:山田太一 脚本:宮藤官九郎
出演:大泉洋、吉田羊、三田佳子、堤真一、奥智哉

 原作小説が発表されたのは1981年であり、本作はその現代的リメイクにあたる。時代の変化に伴い現代パートの設定は大幅に変更されていたが、それ自体は自然な対応といえるだろう。ただし、序盤の現代描写はやや冗長で、コミカルな演出も過剰気味に感じられた。これは脚本を手がけた宮藤官九郎の作風が色濃く反映された結果とも言える。

 なお、タイトルに「2024年版」と付したのは、1982年に細川俊之主演で初めてドラマ化され、2005年には中井貴一主演で再度リメイクされているからである。つまり本作は三度目の映像化である。

 1982年版・2005年版はどちらも原作者・山田太一が脚本を手がけており、特に1982年版は原作に極めて忠実で、「戦争反対」のメッセージを正面から伝える重厚なSFドラマとなっていた。2005年版も現代設定や登場人物の職業に若干の調整はあったものの、基本的には原作の骨格を踏襲している。

 一方、本作は現代パートに宮藤流のユーモアが前面に出ており、導入部はやや軽薄にも映った。しかし、家族がタイムスリップしてからは物語が原作の流れに戻り、緊張感のある展開へと移行していく。特に三田佳子が演じる認知症の母という新たな設定は、物語に深みと感情の複雑さを与えており、印象的であった。

 なぜ今、この作品が再び映像化されたのか。その背景には、世界各地で再び戦争が現実のものとなっている状況があるのかもしれない。序盤のコミカルな演出とは裏腹に、物語の終盤では戦争の恐怖と理不尽さが強烈に描かれ、最終的には原作同様、救いのない現実を突きつけるような結末へとたどり着く。
 なおあらすじについては、過去に原作小説の評論をまとめたものがあるので、次のURLをクリックして欲しい。

タイムトラベル 本と映画とマンガ : 終わりに見た街


評:蔵研人

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信長協奏曲

信長協奏曲 (映画)

★★★☆

製作:2016年(日本)/上映時間:126分/監督:松山博昭

 原作は石井あゆみによる同名マンガ。第57回小学館漫画賞(少年向け部門)を受賞し、「全国書店員が選んだおすすめコミック2012」でも第7位にランクイン。2016年9月時点で累計発行部数は450万部を超えるなど、まさに一大ヒット作となった。アニメ、実写ドラマ、そしてこの映画版と、三つのメディアで同時展開された点も異例だ。

 本作はその実写ドラマ版の続編にあたり、キャストも続投されているため、ドラマ未視聴の観客には若干ハードルが高い部分があるかもしれない。しかし、そこは“織田信長”という誰もが知る歴史上の人物の物語。背景が多少分からずとも、大筋は自然と飲み込めてしまうだろう。

 物語は、現代の高校生・サブローが突如戦国時代にタイムスリップし、瓜二つの織田信長と出会うところから始まる。気弱な本物の信長は、自分の代わりに“信長”として生きてくれと頼み、姿を消してしまう。
 歴史の知識もなく、戦を嫌うサブローは、「平和な世を作りたい」という思いだけで、この時代で信長として生きることを決意する。しかし彼は、本能寺の変で信長が死ぬ運命にあることさえ知らないのだった……。

 この設定だけでも十分ユニークだが、本作の面白さは「歴史をなぞるのか、それとも変えるのか?」という問いに終始するところにある。歴史の枠を超えた展開、パラレルワールド的な視点、そして主人公たちの心情の揺らぎが、物語に奥行きを与えている。

 なかでも、小栗旬演じるサブローと、柴咲コウ演じる帰蝶との戦国風ラブストーリーは、戦国という時代背景の中にささやかな人間ドラマを刻んでおり、終盤のどんでん返しと相まって、観終わった後には不意に胸が熱くなる。単なる歴史フィクションではなく、「信長とは何か」「生きるとはどういうことか」を問いかける一作だった。

評:蔵研人

バック・トゥ・ザ・フューチャー PART34

バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3

製作:1990年(アメリカ)|上映時間:119分|監督:ロバート・ゼメキス

 タイムトラベル映画の金字塔ともいえる超有名シリーズ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』三部作の完結編である。もちろんシリーズの中で一番完成度が高かったのは第一作だと思うが、どの作品も魅力にあふれており、三作すべてを絶賛したい。
 ただ特にこの第3作は、西部劇仕立てという大きな趣向の変化があり、前2作とはまた違った視点で楽しめるところが新鮮だった。そして、美人教師クララとドクとのラブストーリーにも心を奪われた。今作の主役はマーティーではなく、ドクと言っても過言ではないだろう。

 また、マーティーが「クリント・イーストウッド」と名乗った瞬間から、脳内ではあの『夕陽のガンマン』のメロディーが流れ出し、思わず「あの決闘シーン」が蘇ってきた。すると実際に映画の中でそのシーンがパロディーとして再現されるではないか。この粋な“サービス”には、思わずニヤリとしてしまった。こうした細かな遊び心も、このシリーズの魅力のひとつだろう。

 それにしても、クララを演じたメアリー・スティーンバージェンは本当に素敵な女優だ。当時は37歳ほどだったと思うが、2025年現在では72歳。それでも近年の写真を見る限り、歳を重ねても凄く品があって魅力的だ。これではドクが西部時代に残りたくなるのも無理はないよね。

「めでたしめでたし」がこんなに嬉しかった映画も、実に久しぶりだった。シリーズの有終の美を見事に飾ってくれた一作といえよう。

評:蔵研人

ペギー・スーの結婚

ペギー・スーの結婚
★★★☆
製作:1986年 米国 上映時間:103分 監督:フランシス・フォード・コッポラ

 タイムトラベルファンのくせに、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と並ぶこの「タイムトラベルのレジェンド作品」を今頃になって観たのである。もちろんそれを知らなかったわけでもなくDVDも所持していたのだが、いつでも観れると油断しているうちに10年以上経っていたのだった。40年近く昔の映画だが、まったく色褪せずに楽しめたし、ラストも想像通りだったにも拘らず涙が溢れて止まらなかった。またなんと監督はあのコッポラで、主演はキャスリーン・ターナーとニコラス・ケイジという豪華なキャストなのだ。そしてキャスリーン・ターナーは、本作での演技が認められ第59回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされている。

 ストーリーは高校時代の同窓会ではじまり、夫との離婚を決意した中年女性ペギー・スーが会場で卒倒するのだが、そのまま高校時代にタイムスリップしてしまう。そこで彼女は昔同級生だった夫や友人たちや、父母や祖父母たちとめぐり逢い、過去の人生を見つめ直してゆく。また本作で夫役を演じたニコラス・ケイジは、2000年に製作された本作と似たような作品『天使のくれた時間』で主役を務めていたためか、なんとなく印象が重なってしまった気がする。
 
 それにしてもネットの評価は意外と低いので驚いた。たぶん話のほとんどが想像できてしまう範囲だったこと、ラストにどんでん返しが用意されていなかったこと、夢落ちの可能性もあったこと、主役の二人が高校生役にはかなり無理があったなどが影響したのだろうか。まさにその通りなのだが、どうしてもタイムトラベル系の作品には甘くてね、てへへへ……。
 

評:蔵研人

夏へのトンネル、さよならの出口

夏へのトンネル、さよならの出口

★★★☆
アニメ 監督:田口智久

 長ったらしいタイトルだが、『夏へのトンネル』の部分は、多分ロバート・A・ハインラインの小説『夏への扉』のオマージュなのであろう。と言うことは、ぼくの大好きなタイムトラベル系のストーリーと言うことになる。だから小躍りしながら本作を鑑賞してみた。

 ウラシマトンネルに入ると、なくしたものがなんでも手に入るという。ただしトンネルの中と外の世界では時間の進み方が大きく違っている。まさに竜宮城から帰った浦島太郎が、未来の世界に来てしまったのと同じことが起きるのである。だからトンネル内ではウロウロしていられない、急いで欲しいものを探し、全速力で戻らなければならないのだ。

 主役は掴みどころがなくぼやっとしているように見え、いつまでも過去の事故を心の傷として抱える高校生・塔野カオルと、不愛想だが芯の通った態度を貫きながらも、理想像を求める女子高生・花城あんずである。
 まず駅での二人の出会いに始まり、転校生ながらいじめっ子の同級生に強烈なパンチを見舞うあんずの行動に度肝を抜かれだろう。そしてカオルがみつけた謎のウラシマトンネルにもドキドキしてしまう。

 ただそれ以外にほとんどストーリーが無く、というよりストーリー間の繋がりが見つけられず、いつも二人だけの世界に閉じこもっているため、余り深みを感じられなかったのが残念である。だから終盤になってウルウルしたものの、激しい涙の嵐には遭遇しなかった。そのあたりの修正と、ラストのどんでん返しを用意できたなら、もっと素晴らしい作品に仕上がったと思うのだが……。

評:蔵研人

一秒先の彼女4

一秒先の彼女

製作:2020年 台湾 上映時間:119分 監督:チェン・ユーシュン

 人よりワンテンポ早い郵便局員のシャオチーと、逆にワンテンポ遅いグアタイのラブストーリーである。オープニングは、朝起きたら大切なバレンタインデーが消失してしまい、日焼けだけが残ったと、真っ黒な顔で交番に駆け込むシャオチーのドタバタシーンが印象的だ。はじめは何の意味かよく分からなかったのだが、実はそのバレンタインデーにイケメンの彼とデートの約束をしていたのである。ではなぜその日に限って突然、彼女の記憶が消えてしまったのだろうか。
 その謎解きは、終盤に明らかにされるのだが、そこに辿り着くまでには数多くの伏線が見事に紡がれていたし、そもそもストーリー自体もなかなか楽しかったね。その一つはシャオチーを演じたリー・ペイユーという女優のキャラのユニークさのお陰かもしれない。

 彼女は決して美人とは言えないが、愛嬌のある表情に抜群のスタイルが見事にマッチングして、本作のようなファンタジックラブコメのヒロインにはピッタシカンカンなのだ。だから彼女の行動を観ているだけで、楽しくて堪らなくなってしまったのである。さらにオマケと言っては失礼だが、「どこかで聞いたような声と顔だな」と思った郵便局の同僚役を演じていたのが、台湾の美人囲碁棋士の黒嘉嘉ことヘイ・ジャアジャアだったのは驚きだった。

 いずれにせよ本作最大の見どころは、「全ての謎を解き明かしながら美しい風景の中を走り続けるバス」が織りなしてゆくスペクタクルシーンであろう。さらにエンドロールで流れるうっとりする音楽を聴いていると、なぜかうっすらと涙が滲んでくるから不思議である。したがってこのエンドロールは飛ばさないで、かならずじっくりと味わって欲しいものである。

  
評:蔵研人

トゥモロー・ウォー

トゥモロー・ウォー

★★★☆
製作:2021年 米国 上映時間:138分 監督:クリス・マッケイ

 ある日突然、2051年からやってきた未来人たちが、人類は30年後に未知の生物と戦争になり、やがて敗北するという衝撃の事実を告げる。そして人類が生き残るためには、現代から兵士を未来に送り込み、戦いに参加するしかないのだと言う。
 それで全世界が一丸となり、次々と戦闘員を送り込むのだが、生還できるものは3割に満たなかった。だが地球と愛する子供たちを守るため、一般人たちも招集されることになる。
 元軍人で現在は高校教師をしている主人公のダンも、7日間の兵役を命じられ未来へと旅立つのだが、そこで司令官を務めていたのは、なんと自分の娘ミューリであった。さらに彼女は強力な未知の生物ホワイトスパイクのメスを倒せる毒物の研究もしていたのである。

 とにかく壮大なストーリーであり、ホワイトスパイクの造形もなかなか素晴らしい。ただ全世界が一丸となっているという割には、現代から送られてゆく戦士たちの人数が少ないし、ド素人過ぎてほとんど役に立たないところがショボイ。それはラストも同様で、全世界どころか米国軍自体も消極的で、個人レベルの探検隊しか組織できないと言うのも情けなさ過ぎる。なんとなく超大作とB級が混在したような微妙な作品ではあったが、ハラハラドキドキ感が半端ではなく、かなり楽しませてくれることも間違いないだろう。

 
評:蔵研人

タイム・ダイレイション-死のベッド-3

タイム・ダイレイション

製作:2016年 カナダ 上映時間:88分 監督:ジェフ・マー

 なんとなくタイムトラブル系を連想させる邦題だが、時間差のある電話ということを除けば、昔の呪いが込められた古いベッドの話と言うだけで、SF味はほとんどしないホラー作品であった。それなら原題の『BED OF THE DEAD』のままでよかったのに。
 なにやら騙された気分で少しムカムカする。また1996年に製作された韓国映画に『銀杏のベッド』という作品があったが、なんとなくそのパクリのような気がしたのは私だけであろうか。

 ストーリーは単純で、風俗宿で乱交パーティーを企んだ4人だったが、巨大な古めかしいベッドに横たわると、それぞれが次から次へと奇妙な幻覚を見て怪死してしまう。そして生き残った女性が携帯から警察に通報するのだが、電話を受けたのは彼女の時間とは2時間の時差があり、彼女は火災にあって既にベッドの上で死んでいるというのだ。というようなストーリーで、ほとんどがベッドの周辺で展開してゆく。

 まあB級ホラーと言ってしまえばそれまでだが、それほど怖くもなくエロ度も薄いので、彼女と観てもいいかもしれない。そしてあのラストシーンだけは、まさにB級ホラーの王道だね。ところでベッドは燃えたはずじゃなかったの……。
 
 
評:蔵研人

タイムリーパー3

タイムリーパー

製作:2019年 カナダ 上映時間:92分 監督:トニー・ディーン・スミス

 ジェームスはなぜかときどき未来を垣間見ることができる。その能力を知り合いのギャングに見込まれて高価な宝石を売りさばくため預かるのだが、その宝石を巡ってギャングの手下たちと危険なチェイスがはじまるのだった。
 本作はタイムトラベルものなのだが、タイムマシン代わりに注射器を使って薬を体内に投入するという部分がユニークである。ただなぜそんなことができるのかの説明はほとんどなく、多分注射器は低予算のための苦肉の策なのであろう。

 またテーマ的には好きな分野だし、スピード感のあるストーリー展開や、過去と未来の複雑な絡みもなかなか面白いのだが、よくよく考えるとなんとなくバカバカしい話なのだ。つまり取って付けたような話で、全員が突っ込みどころ満載の納得できない行動ばかりしているし、終盤に奇抜などんでん返しがあるわけでもない。結局のところただただジェームスが、独りでドタバタ劇を演じていただけ、というオチもいかがなものであろうか。
 
評:蔵研人

パラレル多次元世界3

パラレル多次元世界

製作:2018年 カナダ 上映時間:104分 監督:イサーク・エスバン

 真夜中に犬の世話をするため部屋から出た女性が、マスクをした何者かに殺害される。そして犯人がマスクを外すと、なんとそいつは殺害された女性と同一人物だった。という奇妙なオープニングに心躍らされるのだが、タイトルを知っているので、すぐにパラレルワールドからやってきた自分自身なのだなと気が付いてしまう。
 つまり犯人が住む世界では既に夫が亡くなっているのだが、この世界ではまだ元気に暮らしている。それで犯人はまだ夫が生きているこの世界に引っ越してきたという訳である。もちろんそのために邪魔になる自分自身を消したのだ。
 ただ面白かったのはこのオープニングだけで、この後に続く話は4人の若者たちの話であり、パラレルワールドの入口以外はオープニングの女性とはなんの関連も持たない。

 さてひょんなことから、シェアハウスに住む若者4人が壁の中にある部屋をみつけて侵入すると、誰かが住んでいた痕跡が残っており、部屋の中には大きな鏡が立てかけてあった。そうこの部屋を使っていたのが、オープニングの犯人であり、そこにある鏡こそパラレルワールドへの入口だったのである。
 さらにこの鏡からは一つだけではなく、いくつものパラレルワールドに繋がっており、戻ってくるときだけは同じ場所に戻る仕組みになっていた。さらに別世界では時間が180倍に膨張しているため、別世界での15分間がこちらではたった5秒であることにも解明される。

 さらにパラレルワールドには自分と同一人物が住んでいて、世の中の仕組みも似ているのだが、モナ・リザの髪がショートカットだったり、進化した発明品が登場していたりと、微妙に異なっているのであった。彼等はそれを利用してアプリや新製品、絵画などをパクったりして金儲けに翻弄することになる。
 ただこんなことを続けていてもいいことばかり起こるはずがなく、4人の友情にもひび割れ現象が起こってくる。そんな中である日、大変な事件が起こってしまうのであった……。

 パラレルワールドそのものは、私好みの興味深いテーマではあるのだが、なんだかすっきりしない。本作がそこそこ面白かったのは認めるが、タイムトラベルやパラレルワールドを利用して金儲けをしたり、自分と入れ替わったりする話は新鮮味がないし、後半に大きなどんでん返しが仕込まれている訳でもなく、もう一捻りが欲しかったね。またしいて言えば本作の真のテーマは、「パラレルワールドを利用したひとの欲望と罪深さ」だったのだろうか……。
 
評:蔵研人

パラドクス

パラドクス

★★★☆
製作:2018年 メキシコ 上映時間:101分 監督:アイザック・エスバン

 日本では珍しいメキシコ製の映画である。タイムループと言えばそんな展開ではあるが、どうもSFではなさそうだし、ホラーというほど怖くはない。どこか奥行きを感じるのだが、よく理解できない難解さと狂気が漂っている不条理スリラーと言うべきだろうか。

 刑事マルコに自宅へ踏み込まれたカルロスとオリバーの兄弟は、隙をついて非常階段から逃亡を図る。だが兄カルロスがマルコに足を撃たれて身動きが取れなくなってしまう。すると謎の爆発音が聞こえ、全ての扉が開かなくなってしまう。さらには9階から1階に降りでもまた9階に逆戻りしてしまうのだった。
 
 すると画面が真っ暗になって、全く異なるシーンへと移動してしまう。そこには反抗期の少年ダニエルと妹カミーラ、そして母親サンドラとその恋人ロベルトが旅の支度をしているではないか。旅の途中ガソリンスタンドでロベルトが、アレルギー体質のカミーラーにジュースを飲ませてしまう。そのためカミーラーが喘息を引き起こしてしまう。さらに喘息止めの吸入器をロベルトが踏んづけてしまい、怒り狂ったサンドラが家に引き返せと叫ぶ。
 それで一家は慌てて家に引き返すのだが、途中で謎の爆発音がして、行けども行けどもまた元の道に戻ってしまうのだった。そうあの非常階段での出来事と全く同じ無限ループが起こってしまったのである。

 一体これはどういうことなのだろうか、また非常階段での出来事と、この家族のドライブとはどういう関連があるのだろうか。全く何も分からないまま、突然画面は35年後の世界へと切り替わってしまうのである。なんとそこは……。
 前述したとおり、とにかく難解で理解しがたい作品なのだ。ただ35年のループを繰り返して若者が中年になり、中年が老人になり、老人が死ぬとまた中年にその運命が乗り移る、というような永遠の摂理を描いていることだけは間違いない。また人の人生を「回し車を死ぬまで回し続けるだけのハムスター」と同一視したような、皮肉で塗り固められた作品であることも否めないだろう。
 
  
評:蔵研人

T-NET タイムネット

T-NET
★★★☆
製作:2020年 イタリア 上映時間:83分 監督:シロ・ソレンティーノ

 イタリア映画と言えば恋愛ものとかヒューマンドラマしか頭に浮かばないため、本作のようなタイムトラベルものが存在すること自体に驚いてしまった。またB級作品ではあるが、イタリアの田舎町の景色にも癒されるし、ゆったりした気分で観れるところが良かった。

 田舎のある一日が三回繰り返されるだけなりのだが、本人が三人登場するのだからタイムループという訳でもない。つまり少し時間をずらして数時間のタイムトラベルをするというお話なのだ。たったそれだけなのだが、そこそこよくできていて何となく2007年のスペイン映画『タイム クライムス』と似たような作品であった。
 ストーリー自体は単純なのだが、歪んでいるようなタイムパラドックスを説明するのは面倒くさい。ただ父と息子の親子愛を感じつつ、過去と現在を往来する面白さを楽しめる作品であることは保証する。だからあとは、自分の目で見て確認してもらうよりないだろう。


評:蔵研人

ANON アノン

ANON アノン

★★★☆
製作:2018年 米国・英国・ドイツ 上映時間:100分 監督:アンドリュー・ニコル

 タイトルのANONとは「匿名」を意味するようだ。近未来が舞台なのだが、人の記憶が記録・検閲されるようになった世界を描いている。個人情報やプライバシーが全て無視される恐ろしい時代の到来なのだが、そのお陰で犯罪のない世界を構築することができたのである。

 ところがある日記憶の読めない女が登場し、同時に不可思議な殺人事件が頻発するようになってしまう。主人公のサル刑事は匿名化したある女性が犯人ではないかと推察し、自らオトリ捜査を実行するのだが、事態は驚くべき方向へと向かうのだった。

 テーマはユニークだし、アナログ映像にデジタル映像をブレンドしたビジュアルも、いかにもSFに染まってなかなかお洒落な雰囲気を醸し出している。ただストーリー的には、単調で余り深みがなく説得力も感じられないのが残念だ。またオマケのようなエッチシーンも、男性観客にはありがたいものの、単なる時間稼ぎにしか感じられなかった。


評:蔵研人

ブラッド・パンチ タイムループの呪い

ブラッド

★★★☆
製作:2014年 米国 上映時間:104分 監督:マデレイン・パクソン

 私の大好きなタイムループ作品なのだが、「殺し合いの応酬が止めどなく続く」という荒唐無稽に狂気を加えたような作品である。さらにその日生き残った者はそれまでの記憶が残るが、殺された者は前日の記憶が残らないと言うユニークな設定なのだ。

 ミルトンは麻薬製造がばれて、薬物治療のリハビリ施設に入れられてしまうが、そこでスカイラーという女性に一目惚れしてしまう。さらに彼女にそそのかされ、施設を逃げ出し彼女の恋人・ラッセルと落ちあい、薬物精製をするためのアジトに連れ込まれてしまうのだった。ここで麻薬を生成して大金を得たら、ミルトンを殺してしまう計画のスカイラーとラッセルだったが、いつしか3人は三角関係にもつれてしまう。そして殺し合いが始まるのだが、不可思議な時間のループに巻き込まれていることに気付く。彼らは何度も殺し合いながら、ループの謎を探るのだが……。

 果たしてこのループから逃れる方法はあるのだろうか、そして結末はどうなるのだろうか。前半はやや退屈気味だったが、このアジトに辿り着いてからは俄然面白さが倍増、いや5倍くらい面白くなってくるのである。低予算映画であるが、SF的な展開に加えてホラーとコメディーと心理劇を巧みにブレンドした見応えのある作品だったと言っても嘘にはならないだろう。
 
評:蔵研人

二度目の夏、二度と会えない君3

二度目の夏、二度と会えない君

製作:2017年 日本 上映時間:106分 監督:中西健二
 
 原作は赤城大空の同名ライトノベルである。高校3年生の篠原智は、バンド仲間の森山燐に思いを寄せていた。だが不治の病で病室で苦しんでいる燐に自分の思いを伝えるのだが、なぜか激しく拒絶されてしまう。
 そして燐は亡くなってしまうのだが、智は「この世には伝えてはいけない事がある」という罪悪感で悩み続けていた。そんな雪の降る日、土手に転がり落ちた智にタイムリープが起こり、燐と初めて出会った半年前のあの夏の日に戻るのであった。

 タイムリープがらみのファンタジーかと期待してレンタルしたのだが、タイムリープと言ってもその一度だけ半年前の自分の心に戻るだけで、あとは普通の学園難病ラブストーリーという展開に染まっていたな。ただ燐の歌唱力は抜群で、なかなか聞かせてくれた。それもそのはず燐を演じたのはガールズバンド「たんこぶちん」の吉田円佳という女性歌手だった。彼女は映画初出演と言う触れ込みだが、演技のほうもなかなか捨てたものではなかったね。まあ若い人にはともかく、おじさんにはかなり退屈なストーリーであったことは否めない。

 
評:蔵研人

プロジェクト・アルマナック3

プロジェクト・アルマナック

製作:2015年 米国 上映時間:106分 監督:ディーン・イズラライト

 タイムマシンを手に入れた高校生たち5人が、過去を行ったり来たりして運命を変えるSFドラマである。
 成績優秀なデビッドは大学受験に成功するが、奨学金が手に入らず困っていた。しかし亡父の部屋にあった幼い頃のビデオ映像に、現在の自分の姿が映っているのを発見する。さらに地下作業場でタイムマシンの設計図を発見し、これから自分がタイムマシンを完成することを確信する。そして友人たちや妹とタイムマシンの組み立てと実験を続けるのだった。

 やがてタイムマシンが完成し、彼らは常に5人一緒にタイムトラベルすることを誓う。そして宝くじを当てたり、いじめっ子に復讐したり、好きな女性の気をひいたりと、やりたい放題ゴッコが始まるのだ。

 ところがある事情から、デビッドがルールを破って一人でタイムトラベルをする。理由ははっきりしないが、それが原因だったのか、世界中で暴動や飛行機事故などが乱発する状況に陥ってしまう。さてどうやってこの事態を収拾するのだろうか……。と考える間もなく、ただただ余りにも単純な解決方法に呆れてしまった。あれで元に戻るなら苦労はないし説得力もなかったね。またどんでん返しが用意されていないのも物足りない。

 さて過去を改変すると、未来が大きく変わってしまう可能性が生じてしまう。これこそタイムトラベルの鉄則なのだが、あれだけ「でたらめ暴走」を繰り返せば、なるほどと頷かざるを得ないだろう。それほど彼らは、タイムマシンで遊び惚け過ぎたのである。
 テーマ的にはなかなか面白かったのだが、なにせハンディカメラの映像で船酔い状態になってしまった。なぜそこまでハンディカメラにこだわるのか私には理解できない、それだけでもマイナス1点だね。

評:蔵研人

明日への地図を探して

明日への地図を探して

★★★☆
製作:2021年 米国 上映時間:99分 監督:イアン・サミュエルズ

 高校生のマークはいつの日か、毎日同じ日を繰り返すタイムループにはまっていた。だから今日どこで何が起こるかは全てお見通しなのだ。鳥のフンを頭に浴びてしまう人、道に迷っている人、スカートがまくれている人、プールでビーチボールをぶつけられてしまう人などなど。そして彼らを助けてあげることが毎日の日課になっていた。だがそんな毎日に退屈し始めた頃、自分以外にもタイムループにはまっている女性と巡り合うのだった。

 彼女の名前はマーガレット。彼女は身長が高く美人で、マークと同じ高校生なのだが、飛び級進学するほど優秀で、子どもの頃から「4次元を探している」という変わり者でもあった。いつ日か、ともにタイムルーパーであるマークとマーガレットは、毎日一緒に行動することになる。だがいつも18時になると、ジャレッドという男から電話がかかってきて、彼女はどこかに去ってしまうのだ。そして彼女は元の世界には戻りたくないようなのだ……。

 一体マーガレットは何者なのか、電話がかかってくるジャレッドとは、彼女の恋人なのだろうか。どうして二人はタイムループに巻き込まれてしまったのか、また果たして二人はタイムループから抜け出せるのだろうか。と謎の渦巻く展開に先が見えない。
 ヒントは、主人公はマークではなく実はマーガレットだったということ。そしてタイムループもマーガレットが引き起こした現象であった。ではマークは単なる添え物だったのだろうか、よく分からないのは、なぜマークがタイムループに巻き込まれたのかと言うことかもしれない。

評:蔵研人

コンティニュー4

コンテニュー
製作:2021年 米国 上映時間:100分 監督:ジョー・カーナハン

 同じ日が何度も繰り返されるという「タイムループ映画」なのだが、本作はかなり派手なアクションシーンに染まりきっている。まず毎朝、目覚めた瞬間から謎の殺し屋に刃物で襲われたかと思うと、なんと窓の外からヘリでマシンガンを叩き込まれる。それをクリアすると今度はカーチェイスとなり、爆弾で吹き飛ばされ、刀で首を落とされる。といったシーンが延々と続き、殺された瞬間に翌朝のシーンへと繋がって行くというエンドレス展開なのだ。
 よく考えるとこれは、ゲームの世界と全く同じ仕組みではないか……。そして何度も同じことを繰り返しているうちに、だんだん上達して次のレベルへ向かうことになる。そしてお姫様いや元妻を救出しない限り、世界破滅のバッドエンディングを迎えることになってしまうのだ。

 とにかく休む間もなく考える暇もないまま、次から次へと敵が現れてだんだん厳しくなり、ボスまでたどり着くのは至難の業。そしてボスよりも、サブボスである剣を振るう中国娘が一番の難敵であった。こいつには銃もいやマシンガンさえ通用しないのだ。それほど超スピードで剣を操るのである。何度挑んでも殺されるだけ、さてどうすればこいつを倒せるのか、ヒントはタイムループを利用するのだ。

 タイムループ映画は1983年に公開された『時をかける少女』にはじまり、『恋はデジャ・ヴ』、『リバース』、『タイムアクセル』、『ターン』、『バタフライ・エフェクト』、『デジャヴ』、『トライアングル』、『ミッション: 8ミニッツ』と続き、最近では『ハッピー・デス・デイ』、『パーム・スプリングス』などが製作されており、すでに一つのジャンルを形成するようになってしまった。
 私はこのジャンルが大好きでたまらないのだが、それは30年以上昔に『恋はデジャ・ヴ』を観て大感動したからである。いま観ればそれほど大袈裟に感動しないかもしれないが、やはりタイムループ映画の草分け的存在というのは影響力が強いのだ。またタイムループと言っても、その中身はタイムループを利用した恋愛もの、コメディー、ミステリー、アクション、ホラーなどに細分化されるため裾野も広く、今後もさらに多くの作品が製作されるであろう。
 
 
評:蔵研人

めぐる未来3

めぐる未来

 毎週木曜の深夜に放映している日テレのテレビドラマである。
 主人公の襷 未来は、感情に大きな起伏があると過去に戻る「リフレイン」を発症してしまう。それで少年の頃から人となるべく拘わらず、感情を抑えて生きていた。
 だが運命的に出逢って結婚した明るく無邪気な妻・めぐるが何者かに殺害されてしまう。それで彼は禁を破って、まだめぐるが生きている過去に戻って彼女を救出する。ところがその後も彼女は何度も襲われることになり、その都度彼は過去に戻ることになる。だがリフレインを起こすたびに、だんだん彼の体力が消耗してきて、命の危険が生じてしまうのだった。

 それにしても誰にも恨まれる理由がないめぐるが何故殺害されなくてはならないのか、犯人は一体何者なのだろうか……。そんな興味だけでどんどん引っ張られて、とうとう最終回の10話まで観る羽目になってしまったのだが、ストーリー的にはそれほど面白いわけではなく、主役の萩原利久のボサーッとした学芸会並みの演技にもホトホト疲れ果ててしまった。
 どうしてテレビドラマには、引っ張るだけで内容の薄っぺらなものが多いのだろうか。これは日本だけではなく世界的な傾向のような気がするのは僕だけであろうか。

 最後にこの手のドラマに付きものの疑問なのだが、主人公が気を失って過去に戻ること自体は良いとしても、それまで暮らしていた人生はその後どうなってしまうのだろうか。結局は過去に戻るたびに、パラレルワールドが発生しているのであろう。ただそれならば、なぜもともとそのパラレルワールドにいた自分と遭遇しないのだろうか。などと余計なことを考えてしまうのである。
 

評:蔵研人

一分間タイムマシン

1分間

★★★☆
製作:2014年 米国・英国 上映時間:6分 監督:Devon Avery

 なんとたった6分間の超ショート映画である。舞台はとある公園のベンチだけ。登場人物は男女二人だけ。
 女性を口説くために、1分前にタイムスリップできる携帯タイムマシンを使って、何度も女性にアプローチする男性。その努力が報われて次第に彼女の心を射止めて行くのだが、そこには悲惨な結果が残されていたのだ。 (これから先はネタバレとなるので要注意のこと)
 つまりタイムスリップする都度、男は死亡してしまい、男のコピーだけがパラレルワールドに跳ぶ、という繰り返しの結果が現在の状況だったのである。そのためにパラレルワールドには、男の死体と驚愕する女がいくつも残されていたという結末であった。

評:蔵研人

TENET テネット

テネット
★★★☆
製作:2020年 米国 上映時間:150分 監督:クリストファー・ノーラン

 突然ウクライナ・キーウのオペラハウスにおけるテロリストによる立て籠り事件が勃発するシーンから始まる。オペラハウスに集まっている大勢の観客たち、このエキストラ数だけでも驚かされるのにだが、いきなり舞台でドンパチが始まり観客全員がガスで眠らされてしまい、その後この巨大劇場は大爆破されてしまう……とにかく圧巻圧巻としか言いようがないオープニングなのだ。
 だがこれが何のために仕組まれたのか、一体首謀者は誰なのかもよく分からないまま、全く異なるシーンへ移動してしまう。今度は鉄道の操車場で椅子に縛られた男が拷問を受けている。ところが男は敵の目を欺き、自殺してしまうのだが……。なんと次のシーンでその男はベッドの上で目覚めているではないか。とにかく観客に次々に謎を振り撒きながら、どんどん次のシーンへとコマ送りされてゆく。

 そしてオープニングのオペラハウス襲撃の真相が、「プルトニウム241」を奪取したCIAスパイを暗殺するための偽装工作だったと解明されるのが上映50分後というサービスの悪さにも辟易してしまうだろう。
 そんなことはさておいて、超美麗な映像や景色に加えて、さらに激しいアクションシーンが続く。大型飛行機の暴走と爆発、消防自動車と大型トラックを絡め、逆走カーチェイスまで飛び出してくるのだ。だがこの映画を単純なアクション映画と思ってはいけない。

 じつはタイトルのTENETとは、第三次世界大戦を阻止する為の謎の存在であり、オペラハウスで奪ったプルトニウムの正体は未来人が作り出した時間逆行装置の「アルゴリズム」の1つなのだという理論物理学が散りばめられているのだ。また各所に大規模アクションシーンが織り込まれてはいるものの、登場人物の相関関係もよく分からないばかりか、ストーリー自体や本作を構成する世界観もいまひとつ理解できないまま、どんどん上映時間が消化されてゆくのである。

 そしてなんと上映120分後に、やっと事態がはっきりと見えてくるのだ。ただ「時間挟撃」という概念を含むラストの戦闘には多くの観客がかなり混乱することは間違いないだろう。難解な世界観と派手なアクションとの融合ということでは、あの『マトリックス』を彷彿させられる。またストーリーのコアとなるものが結末となる構成というしかけでは『メメント』に近い作品とも言えるかもしれない。
 だがはっきり言って本作はストーリー自体に全く面白みを感じないし、理解すべく解釈論が余りにも面倒くさいのだ。まあ一部のマニアックなファンには賞賛されるかもしれないが、たぶん観客の90%以上は置いてけぼりを喰らったと思われる「超難解映画」であった。


評:蔵研人

スイート6ストーリーズ『恋するダイアリー』 4

スイート6ストーリーズ『恋するダイアリー』

 スイート6ストーリーズとは、6つの短編韓国ドラマのことを指す。15分程度にまとめられた話が約10話ほどで完結するので、時間を無駄に消費しないで済むので実にありがたい。米国のTVドラマのように45分ものを30話ほどで1シーズンとし、シーズン5まで続くようなものは、わざとらしい引き延ばしストーリーが多くてイライラが募るばかり。そのうえスポンサーの都合などで、途中で尻切れトンボになったりするものもあり、「時間を返してくれー!」と叫びたくなるときがあるからだ。
 さて本作『恋するダイアリー』は、やはり15分・10話完結の、時空を超えて愛する人を救う青年の奮闘を描いたラブファンタジー作品である。また主演は、韓国人気アイドルグループSHINeeのミンホとなっている。
 
 整形外科医のギョンフィ(ミンホ)は、高校時代に同級生からいじめを受けていた弱々しい青年だった。ある日大勢の前でズボンを脱がされる辱めを受け、耐え切れず自殺をしようとしたところ、転校生のナビの言葉で自殺を思いとどまる。
 その後彼はナビへ好意を寄せるようになるのだが、ある日突然ナビが自殺してしまうのだ。それから10年が経過し医師になった今も、ギョンフィはなぜナビが死んだのか分からないまま悩み続けていた。

 ところがある日、酒に酔ったギョンフィが街でナビらしき人物を見かけ、彼女が入ったドアを開けると、なんとそこは10年前の世界であった。なんだかドラえもんのどこでもドアみたいだな……。もちろん10年前に戻ったと言っても、意識だけが10年前の自分の中に戻ったと言ったほうがよいのかもしれない。さて、果たしてそこで彼は、ナビの自殺の原因を探り、彼女を守ることができるのだろうか、お楽しみ!じゃじゃんじゃん。

 そんな分かり易い展開に好感度がアップしてしまう。さらに突出した美人ではないものの、ナビを演じたイ・ユビの暗い雰囲気とスタイルの良さが、それとなく本作を盛り上げていたように感じた。まあラストにもう一捻りが欲しかったが、なんとかギリギリまとめたような気がしないでもないね。自分の好きなテーマだったので、ちょっと甘いかな……。

評:蔵研人

LOOP/ループ -時に囚われた男-4

LOOP

製作:2016年 ハンガリー 上映時間:95分 監督:イシュティ・マダラース

 麻薬密売人のアダムが、ボスから預かった大量の麻薬を持ち逃げしようとするところから始まる。だが一緒に逃げようと思っていた恋人のアンナが妊娠してしまい、計画変更を余儀なくされる。ところがなぜか、アダムの企みに気付いたボスが部屋へやってきて、アダムを殺害してしまうのだ。そのうえ逃げていたアンナまでも、偶然ボスの車に撥ねられて死んでしまうのである。
 ここまでが大きな1ループで、何度も同じシーンを繰り返すことになる。もちろんこの連鎖を断ち切ろうとするアダムの行動変化によって、枝葉的な部分は少しずつ変化するものの、結果的には何度もアダムとアンナが死亡を繰り返すことになる。

 部分的には突っ込みどころがいくつもある作品であるが、そもそもタイム・ループそのものが荒唐無稽なことなので、ここでいちいち目くじらを立てることもないだろう。それよりも、どうすればこのループから抜け出せるのか、アダムとアンナは無事生還できるのか、といった興味が深々と湧いてくるのだ。
 そして終盤はそれらを見事に収束して、ほぼ満足な結末で締めくくっているではないか。ただなぜタイム・ループが起こったのかは、解明されないままなのだが、オープニングとラストに登場する地下鉄内のホームレスがそのカギを握っているような気がする。これもなかなか味のよいエンディングだ。
 それにしても欧州のタイム系映画は、似たような雰囲気の作品が多いよね。例えばスペインの『TIME CRIMES タイム クライムス』やドイツの『ザ・ドア 交差する世界』などにその傾向が見受けられ、いずれも私の好きな映画であることに変わりはない。

評:蔵研人

ラ・ブレア

ラブレア

★★★☆
 米国のTVドラマである。タイトルの由来は、ロサンゼルス中心部のラ・ブレア地区で、突然道路が陥没して巨大なシンクホールが開き、多くの人々や車、建物などが瞬く間に落下するところからはじまるからであろう。
 TVドラマなのだが、とにかくスケールが大きい。ロスの巨大陥没穴は、単なる穴ではなくその下には、紀元前1万年前の世界が存在していたのだ。つまりパニック作品ではなく、タイムトラベルSF作品だったのである。

 あれだけ深い穴に落ちても、どうして人間だけが無傷なのか、なぜ古代人が英語を普通に話せるのか、愛している愛していると言いながら、なぜ簡単に浮気をしてしまうのか、などなど突っ込みどころ満載なのだが、謎が謎を呼ぶような展開に引きずり込まれて、ついつい次の話を観てしまうのだ。そして気が付いたら、シリーズ2が終了してしまった。日本でのシリーズ3開始日が分からないまま、イライラが募ってしまうのだ。

評:蔵研人

ハウンター3

ハウンター
製作:2013年 カナダ 上映時間:97分 監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ

 主人公はリサという高校生の少女なのだが、この話は彼女の誕生日前日がずっとループしているところから始まる。だからタイムループ作品なのかと勘違いしてしまったのだが、実は彼女は既に少女殺人鬼エドガーによって殺されていたというホラー作品なのであった。
 ただ余りにも同じことの繰り返しが多く、外には出られず家の中のシーンばかりなので中だるみしてしまうのだ。それに両親や兄弟が入れ替わったりと、なんだか異次元を彷徨うような展開にも、正直言って戸惑いうんざりしてしまった。

 ヴィンチェンゾ・ナタリ監督と言えば、「CUBE」が有名だが、本作もその流れを汲んで、なかなか家の外に出られないというシチュエーションなのであろうか。ただ同じ日が何度も繰り返したり、父親の性格が変貌したり、家族が入れ替わったり、といった謎についての丁寧な解説がなかっため、観賞後もなんとなくすっきりしなかった。私の読みが浅かったのかもしれないが、万人向けではなく不親切な作品であったような気がしたのは私だけであろうか……。
 
 
評:蔵研人

君が落とした青空3

君が落とした

製作:2022年 日本 上映時間:93分 監督:Yuki Saito

 原作は2010年に公開された櫻いいよのケータイ小説で、その後スターツ出版文庫として新装版が出版されている。
 基本的には学園ラブストーリーなのだが、事故に遭った恋人を救うためタイムループの中で何度もチャレンジする女子高生を描いて行く、というラブファンタジー系のような作品であった。

 高校生の実結と修弥は映画の趣味が一致し、付き合い始めて2年目になる。そして毎月1日には、必ず一緒に映画を観るというデートを重ねていた。ところが映画館のロビーで突然修弥に電話があり、彼は理由も言わずに急用ができたからと、デートを中断して実結を残したまま去ってしまう。
 その後、傷心の実結が帰路の途中、修弥からメールを受信して指定された時計台がある場所へ向かう。だがそこでトラックに轢かれそうになった実結をかばった修弥が撥ねられてしまう。その時時計台の針は午後7時を指していた。

 するといつの間にか実結は、自宅のベッドの中にいて、午前7時の目覚まし時計が鳴っているではないか。あれは夢だったのか、と考えたのだが、その後のあらゆる展開が夢と同じなのである。そして次の日も……。結局のところ実結は、毎日同じ1日を繰り返しているようなのだ。なぜそうなったのかは分からないのだが、彼女はなんとか修弥が事故に遭遇しないように努力する。だが結局事態はいつも好転せず、彼はどうしても事故から逃れられない。

 最近になってこうしたタイムリープ系の映画が数多く製作されているが、なんといってもその元祖は米国映画の『恋はデジャヴ』である。本作も序盤はそのセオリー通りの繰り返しパターンが描かれていたのだが、結論的にはタイムトラベルではなく、夢落ちという掟破りの手法だったのは非常に残念だ。だからどんでん返しもなければ、タイムパラドックスも生じない。それに主人公を含めたキャスト陣もいま一つな感があり、余りのめり込めなかったな……。

評:蔵研人

ベル・エポックでもう一度3

ベルエポック
製作:2019年 フランス・ベルギー 上映時間:115分 監督:ニコラ・ブドス

 自分が望む過去を映画撮影セットで再現する、と言う『体験型サービス』に、はまった老人の人生模様を描いたロマンティック・コメディーである。と言っても、タイムトラベル作品ではなく、あくまでも映画セットと俳優たちで過去を再現するサービスである。発想的にはなかなかユニークなのだが、ジャック・フィニイの『ふりだしに戻る』という小説の過去に戻る手法を参考にしたのかもしれない。

 進歩した現在を否定し、あくまでも過去に固執する元・売れっ子イラストレーターのヴィクトルは、今は職を失い妻にも見放されてしまう。そんな彼に孝行息子が、莫大な金がかかる『体験型エンターテイメントサービス』の招待券をプレゼントしてくれる。そしてヴィクトルが選んだ過去とは、愛する妻と巡り合った1974年のカフェであった……。

 序盤はなかなか興味深かい展開だったのだが、中盤以降は急にテンポが悪くなり、やや中だるみ感が漂い始めたのが残念であった。たぶん息子の友人でこの体験サービス会社を立ち上げたアントニーと、彼の恋人である女優の絡みが平行描写されたため、ストーリーの目的が分かり難くなってしまったからかもしれない。あくまでも本作では、ヴィクトルとその妻にだけに焦点を絞ったほうが、もっと感動を呼び込めたような気がするのだが……。


評:蔵研人

ぼくが処刑される未来

ぼくが処刑される
★★☆
製作:2012年 日本 上映時間:87分 監督:小中和哉

 自分の意見をはっきり言えず、ただ漠然と毎日を過ごしていた大学生の浅尾幸雄は、橋の上で酔っ払いが寝転んでいるのを見ていた時、突然まばゆい光に包まれてしまう。気が付くとそこは25年後の未来で、なんと警察の取調室で身柄を拘束されているではないか。
 彼は未来に罪を犯したという理由で未来にタイムワープさせられたのだが、未来の罪を償うため過去の彼が処刑されると言う奇妙な理屈なのだった。それを決めたのは、未来に開発された量子コンピューターで、その計算能力は神がかりで絶対に間違いがないと言うのである。

 テーマ的には興味深いし、福士蒼汰と吉沢亮が主演だと言うことで、本作を観る気になったのだが、余りにもチープ過ぎてがっかりしてしまった。低予算と言うこともあるが、脚本も悪いしタイムトラベルものの設定や展開などのルールも全く無視状態なのだ。そもそもドラマとしても失格なのに、これではタイムトラベルファンの心さえも掴めないよな。
 
評:蔵研人
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