タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

映画

ペギー・スーの結婚

ペギー・スーの結婚
★★★☆
製作:1986年 米国 上映時間:103分 監督:フランシス・フォード・コッポラ

 タイムトラベルファンのくせに、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と並ぶこの「タイムトラベルのレジェンド作品」を今頃になって観たのである。もちろんそれを知らなかったわけでもなくDVDも所持していたのだが、いつでも観れると油断しているうちに10年以上経っていたのだった。40年近く昔の映画だが、まったく色褪せずに楽しめたし、ラストも想像通りだったにも拘らず涙が溢れて止まらなかった。またなんと監督はあのコッポラで、主演はキャスリーン・ターナーとニコラス・ケイジという豪華なキャストなのだ。そしてキャスリーン・ターナーは、本作での演技が認められ第59回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされている。

 ストーリーは高校時代の同窓会ではじまり、夫との離婚を決意した中年女性ペギー・スーが会場で卒倒するのだが、そのまま高校時代にタイムスリップしてしまう。そこで彼女は昔同級生だった夫や友人たちや、父母や祖父母たちとめぐり逢い、過去の人生を見つめ直してゆく。また本作で夫役を演じたニコラス・ケイジは、2000年に製作された本作と似たような作品『天使のくれた時間』で主役を務めていたためか、なんとなく印象が重なってしまった気がする。
 
 それにしてもネットの評価は意外と低いので驚いた。たぶん話のほとんどが想像できてしまう範囲だったこと、ラストにどんでん返しが用意されていなかったこと、夢落ちの可能性もあったこと、主役の二人が高校生役にはかなり無理があったなどが影響したのだろうか。まさにその通りなのだが、どうしてもタイムトラベル系の作品には甘くてね、てへへへ……。
 

評:蔵研人

夏へのトンネル、さよならの出口

夏へのトンネル、さよならの出口

★★★☆
アニメ 監督:田口智久

 長ったらしいタイトルだが、『夏へのトンネル』の部分は、多分ロバート・A・ハインラインの小説『夏への扉』のオマージュなのであろう。と言うことは、ぼくの大好きなタイムトラベル系のストーリーと言うことになる。だから小躍りしながら本作を鑑賞してみた。

 ウラシマトンネルに入ると、なくしたものがなんでも手に入るという。ただしトンネルの中と外の世界では時間の進み方が大きく違っている。まさに竜宮城から帰った浦島太郎が、未来の世界に来てしまったのと同じことが起きるのである。だからトンネル内ではウロウロしていられない、急いで欲しいものを探し、全速力で戻らなければならないのだ。

 主役は掴みどころがなくぼやっとしているように見え、いつまでも過去の事故を心の傷として抱える高校生・塔野カオルと、不愛想だが芯の通った態度を貫きながらも、理想像を求める女子高生・花城あんずである。
 まず駅での二人の出会いに始まり、転校生ながらいじめっ子の同級生に強烈なパンチを見舞うあんずの行動に度肝を抜かれだろう。そしてカオルがみつけた謎のウラシマトンネルにもドキドキしてしまう。

 ただそれ以外にほとんどストーリーが無く、というよりストーリー間の繋がりが見つけられず、いつも二人だけの世界に閉じこもっているため、余り深みを感じられなかったのが残念である。だから終盤になってウルウルしたものの、激しい涙の嵐には遭遇しなかった。そのあたりの修正と、ラストのどんでん返しを用意できたなら、もっと素晴らしい作品に仕上がったと思うのだが……。

評:蔵研人

一秒先の彼女4

一秒先の彼女

製作:2020年 台湾 上映時間:119分 監督:チェン・ユーシュン

 人よりワンテンポ早い郵便局員のシャオチーと、逆にワンテンポ遅いグアタイのラブストーリーである。オープニングは、朝起きたら大切なバレンタインデーが消失してしまい、日焼けだけが残ったと、真っ黒な顔で交番に駆け込むシャオチーのドタバタシーンが印象的だ。はじめは何の意味かよく分からなかったのだが、実はそのバレンタインデーにイケメンの彼とデートの約束をしていたのである。ではなぜその日に限って突然、彼女の記憶が消えてしまったのだろうか。
 その謎解きは、終盤に明らかにされるのだが、そこに辿り着くまでには数多くの伏線が見事に紡がれていたし、そもそもストーリー自体もなかなか楽しかったね。その一つはシャオチーを演じたリー・ペイユーという女優のキャラのユニークさのお陰かもしれない。

 彼女は決して美人とは言えないが、愛嬌のある表情に抜群のスタイルが見事にマッチングして、本作のようなファンタジックラブコメのヒロインにはピッタシカンカンなのだ。だから彼女の行動を観ているだけで、楽しくて堪らなくなってしまったのである。さらにオマケと言っては失礼だが、「どこかで聞いたような声と顔だな」と思った郵便局の同僚役を演じていたのが、台湾の美人囲碁棋士の黒嘉嘉ことヘイ・ジャアジャアだったのは驚きだった。

 いずれにせよ本作最大の見どころは、「全ての謎を解き明かしながら美しい風景の中を走り続けるバス」が織りなしてゆくスペクタクルシーンであろう。さらにエンドロールで流れるうっとりする音楽を聴いていると、なぜかうっすらと涙が滲んでくるから不思議である。したがってこのエンドロールは飛ばさないで、かならずじっくりと味わって欲しいものである。

  
評:蔵研人

トゥモロー・ウォー

トゥモロー・ウォー

★★★☆
製作:2021年 米国 上映時間:138分 監督:クリス・マッケイ

 ある日突然、2051年からやってきた未来人たちが、人類は30年後に未知の生物と戦争になり、やがて敗北するという衝撃の事実を告げる。そして人類が生き残るためには、現代から兵士を未来に送り込み、戦いに参加するしかないのだと言う。
 それで全世界が一丸となり、次々と戦闘員を送り込むのだが、生還できるものは3割に満たなかった。だが地球と愛する子供たちを守るため、一般人たちも招集されることになる。
 元軍人で現在は高校教師をしている主人公のダンも、7日間の兵役を命じられ未来へと旅立つのだが、そこで司令官を務めていたのは、なんと自分の娘ミューリであった。さらに彼女は強力な未知の生物ホワイトスパイクのメスを倒せる毒物の研究もしていたのである。

 とにかく壮大なストーリーであり、ホワイトスパイクの造形もなかなか素晴らしい。ただ全世界が一丸となっているという割には、現代から送られてゆく戦士たちの人数が少ないし、ド素人過ぎてほとんど役に立たないところがショボイ。それはラストも同様で、全世界どころか米国軍自体も消極的で、個人レベルの探検隊しか組織できないと言うのも情けなさ過ぎる。なんとなく超大作とB級が混在したような微妙な作品ではあったが、ハラハラドキドキ感が半端ではなく、かなり楽しませてくれることも間違いないだろう。

 
評:蔵研人

タイム・ダイレイション-死のベッド-3

タイム・ダイレイション

製作:2016年 カナダ 上映時間:88分 監督:ジェフ・マー

 なんとなくタイムトラブル系を連想させる邦題だが、時間差のある電話ということを除けば、昔の呪いが込められた古いベッドの話と言うだけで、SF味はほとんどしないホラー作品であった。それなら原題の『BED OF THE DEAD』のままでよかったのに。
 なにやら騙された気分で少しムカムカする。また1996年に製作された韓国映画に『銀杏のベッド』という作品があったが、なんとなくそのパクリのような気がしたのは私だけであろうか。

 ストーリーは単純で、風俗宿で乱交パーティーを企んだ4人だったが、巨大な古めかしいベッドに横たわると、それぞれが次から次へと奇妙な幻覚を見て怪死してしまう。そして生き残った女性が携帯から警察に通報するのだが、電話を受けたのは彼女の時間とは2時間の時差があり、彼女は火災にあって既にベッドの上で死んでいるというのだ。というようなストーリーで、ほとんどがベッドの周辺で展開してゆく。

 まあB級ホラーと言ってしまえばそれまでだが、それほど怖くもなくエロ度も薄いので、彼女と観てもいいかもしれない。そしてあのラストシーンだけは、まさにB級ホラーの王道だね。ところでベッドは燃えたはずじゃなかったの……。
 
 
評:蔵研人

タイムリーパー3

タイムリーパー

製作:2019年 カナダ 上映時間:92分 監督:トニー・ディーン・スミス

 ジェームスはなぜかときどき未来を垣間見ることができる。その能力を知り合いのギャングに見込まれて高価な宝石を売りさばくため預かるのだが、その宝石を巡ってギャングの手下たちと危険なチェイスがはじまるのだった。
 本作はタイムトラベルものなのだが、タイムマシン代わりに注射器を使って薬を体内に投入するという部分がユニークである。ただなぜそんなことができるのかの説明はほとんどなく、多分注射器は低予算のための苦肉の策なのであろう。

 またテーマ的には好きな分野だし、スピード感のあるストーリー展開や、過去と未来の複雑な絡みもなかなか面白いのだが、よくよく考えるとなんとなくバカバカしい話なのだ。つまり取って付けたような話で、全員が突っ込みどころ満載の納得できない行動ばかりしているし、終盤に奇抜などんでん返しがあるわけでもない。結局のところただただジェームスが、独りでドタバタ劇を演じていただけ、というオチもいかがなものであろうか。
 
評:蔵研人

パラレル多次元世界3

パラレル多次元世界

製作:2018年 カナダ 上映時間:104分 監督:イサーク・エスバン

 真夜中に犬の世話をするため部屋から出た女性が、マスクをした何者かに殺害される。そして犯人がマスクを外すと、なんとそいつは殺害された女性と同一人物だった。という奇妙なオープニングに心躍らされるのだが、タイトルを知っているので、すぐにパラレルワールドからやってきた自分自身なのだなと気が付いてしまう。
 つまり犯人が住む世界では既に夫が亡くなっているのだが、この世界ではまだ元気に暮らしている。それで犯人はまだ夫が生きているこの世界に引っ越してきたという訳である。もちろんそのために邪魔になる自分自身を消したのだ。
 ただ面白かったのはこのオープニングだけで、この後に続く話は4人の若者たちの話であり、パラレルワールドの入口以外はオープニングの女性とはなんの関連も持たない。

 さてひょんなことから、シェアハウスに住む若者4人が壁の中にある部屋をみつけて侵入すると、誰かが住んでいた痕跡が残っており、部屋の中には大きな鏡が立てかけてあった。そうこの部屋を使っていたのが、オープニングの犯人であり、そこにある鏡こそパラレルワールドへの入口だったのである。
 さらにこの鏡からは一つだけではなく、いくつものパラレルワールドに繋がっており、戻ってくるときだけは同じ場所に戻る仕組みになっていた。さらに別世界では時間が180倍に膨張しているため、別世界での15分間がこちらではたった5秒であることにも解明される。

 さらにパラレルワールドには自分と同一人物が住んでいて、世の中の仕組みも似ているのだが、モナ・リザの髪がショートカットだったり、進化した発明品が登場していたりと、微妙に異なっているのであった。彼等はそれを利用してアプリや新製品、絵画などをパクったりして金儲けに翻弄することになる。
 ただこんなことを続けていてもいいことばかり起こるはずがなく、4人の友情にもひび割れ現象が起こってくる。そんな中である日、大変な事件が起こってしまうのであった……。

 パラレルワールドそのものは、私好みの興味深いテーマではあるのだが、なんだかすっきりしない。本作がそこそこ面白かったのは認めるが、タイムトラベルやパラレルワールドを利用して金儲けをしたり、自分と入れ替わったりする話は新鮮味がないし、後半に大きなどんでん返しが仕込まれている訳でもなく、もう一捻りが欲しかったね。またしいて言えば本作の真のテーマは、「パラレルワールドを利用したひとの欲望と罪深さ」だったのだろうか……。
 
評:蔵研人

パラドクス

パラドクス

★★★☆
製作:2018年 メキシコ 上映時間:101分 監督:アイザック・エスバン

 日本では珍しいメキシコ製の映画である。タイムループと言えばそんな展開ではあるが、どうもSFではなさそうだし、ホラーというほど怖くはない。どこか奥行きを感じるのだが、よく理解できない難解さと狂気が漂っている不条理スリラーと言うべきだろうか。

 刑事マルコに自宅へ踏み込まれたカルロスとオリバーの兄弟は、隙をついて非常階段から逃亡を図る。だが兄カルロスがマルコに足を撃たれて身動きが取れなくなってしまう。すると謎の爆発音が聞こえ、全ての扉が開かなくなってしまう。さらには9階から1階に降りでもまた9階に逆戻りしてしまうのだった。
 
 すると画面が真っ暗になって、全く異なるシーンへと移動してしまう。そこには反抗期の少年ダニエルと妹カミーラ、そして母親サンドラとその恋人ロベルトが旅の支度をしているではないか。旅の途中ガソリンスタンドでロベルトが、アレルギー体質のカミーラーにジュースを飲ませてしまう。そのためカミーラーが喘息を引き起こしてしまう。さらに喘息止めの吸入器をロベルトが踏んづけてしまい、怒り狂ったサンドラが家に引き返せと叫ぶ。
 それで一家は慌てて家に引き返すのだが、途中で謎の爆発音がして、行けども行けどもまた元の道に戻ってしまうのだった。そうあの非常階段での出来事と全く同じ無限ループが起こってしまったのである。

 一体これはどういうことなのだろうか、また非常階段での出来事と、この家族のドライブとはどういう関連があるのだろうか。全く何も分からないまま、突然画面は35年後の世界へと切り替わってしまうのである。なんとそこは……。
 前述したとおり、とにかく難解で理解しがたい作品なのだ。ただ35年のループを繰り返して若者が中年になり、中年が老人になり、老人が死ぬとまた中年にその運命が乗り移る、というような永遠の摂理を描いていることだけは間違いない。また人の人生を「回し車を死ぬまで回し続けるだけのハムスター」と同一視したような、皮肉で塗り固められた作品であることも否めないだろう。
 
  
評:蔵研人

T-NET タイムネット

T-NET
★★★☆
製作:2020年 イタリア 上映時間:83分 監督:シロ・ソレンティーノ

 イタリア映画と言えば恋愛ものとかヒューマンドラマしか頭に浮かばないため、本作のようなタイムトラベルものが存在すること自体に驚いてしまった。またB級作品ではあるが、イタリアの田舎町の景色にも癒されるし、ゆったりした気分で観れるところが良かった。

 田舎のある一日が三回繰り返されるだけなりのだが、本人が三人登場するのだからタイムループという訳でもない。つまり少し時間をずらして数時間のタイムトラベルをするというお話なのだ。たったそれだけなのだが、そこそこよくできていて何となく2007年のスペイン映画『タイム クライムス』と似たような作品であった。
 ストーリー自体は単純なのだが、歪んでいるようなタイムパラドックスを説明するのは面倒くさい。ただ父と息子の親子愛を感じつつ、過去と現在を往来する面白さを楽しめる作品であることは保証する。だからあとは、自分の目で見て確認してもらうよりないだろう。


評:蔵研人

ANON アノン

ANON アノン

★★★☆
製作:2018年 米国・英国・ドイツ 上映時間:100分 監督:アンドリュー・ニコル

 タイトルのANONとは「匿名」を意味するようだ。近未来が舞台なのだが、人の記憶が記録・検閲されるようになった世界を描いている。個人情報やプライバシーが全て無視される恐ろしい時代の到来なのだが、そのお陰で犯罪のない世界を構築することができたのである。

 ところがある日記憶の読めない女が登場し、同時に不可思議な殺人事件が頻発するようになってしまう。主人公のサル刑事は匿名化したある女性が犯人ではないかと推察し、自らオトリ捜査を実行するのだが、事態は驚くべき方向へと向かうのだった。

 テーマはユニークだし、アナログ映像にデジタル映像をブレンドしたビジュアルも、いかにもSFに染まってなかなかお洒落な雰囲気を醸し出している。ただストーリー的には、単調で余り深みがなく説得力も感じられないのが残念だ。またオマケのようなエッチシーンも、男性観客にはありがたいものの、単なる時間稼ぎにしか感じられなかった。


評:蔵研人

ブラッド・パンチ タイムループの呪い

ブラッド

★★★☆
製作:2014年 米国 上映時間:104分 監督:マデレイン・パクソン

 私の大好きなタイムループ作品なのだが、「殺し合いの応酬が止めどなく続く」という荒唐無稽に狂気を加えたような作品である。さらにその日生き残った者はそれまでの記憶が残るが、殺された者は前日の記憶が残らないと言うユニークな設定なのだ。

 ミルトンは麻薬製造がばれて、薬物治療のリハビリ施設に入れられてしまうが、そこでスカイラーという女性に一目惚れしてしまう。さらに彼女にそそのかされ、施設を逃げ出し彼女の恋人・ラッセルと落ちあい、薬物精製をするためのアジトに連れ込まれてしまうのだった。ここで麻薬を生成して大金を得たら、ミルトンを殺してしまう計画のスカイラーとラッセルだったが、いつしか3人は三角関係にもつれてしまう。そして殺し合いが始まるのだが、不可思議な時間のループに巻き込まれていることに気付く。彼らは何度も殺し合いながら、ループの謎を探るのだが……。

 果たしてこのループから逃れる方法はあるのだろうか、そして結末はどうなるのだろうか。前半はやや退屈気味だったが、このアジトに辿り着いてからは俄然面白さが倍増、いや5倍くらい面白くなってくるのである。低予算映画であるが、SF的な展開に加えてホラーとコメディーと心理劇を巧みにブレンドした見応えのある作品だったと言っても嘘にはならないだろう。
 
評:蔵研人

二度目の夏、二度と会えない君3

二度目の夏、二度と会えない君

製作:2017年 日本 上映時間:106分 監督:中西健二
 
 原作は赤城大空の同名ライトノベルである。高校3年生の篠原智は、バンド仲間の森山燐に思いを寄せていた。だが不治の病で病室で苦しんでいる燐に自分の思いを伝えるのだが、なぜか激しく拒絶されてしまう。
 そして燐は亡くなってしまうのだが、智は「この世には伝えてはいけない事がある」という罪悪感で悩み続けていた。そんな雪の降る日、土手に転がり落ちた智にタイムリープが起こり、燐と初めて出会った半年前のあの夏の日に戻るのであった。

 タイムリープがらみのファンタジーかと期待してレンタルしたのだが、タイムリープと言ってもその一度だけ半年前の自分の心に戻るだけで、あとは普通の学園難病ラブストーリーという展開に染まっていたな。ただ燐の歌唱力は抜群で、なかなか聞かせてくれた。それもそのはず燐を演じたのはガールズバンド「たんこぶちん」の吉田円佳という女性歌手だった。彼女は映画初出演と言う触れ込みだが、演技のほうもなかなか捨てたものではなかったね。まあ若い人にはともかく、おじさんにはかなり退屈なストーリーであったことは否めない。

 
評:蔵研人

プロジェクト・アルマナック3

プロジェクト・アルマナック

製作:2015年 米国 上映時間:106分 監督:ディーン・イズラライト

 タイムマシンを手に入れた高校生たち5人が、過去を行ったり来たりして運命を変えるSFドラマである。
 成績優秀なデビッドは大学受験に成功するが、奨学金が手に入らず困っていた。しかし亡父の部屋にあった幼い頃のビデオ映像に、現在の自分の姿が映っているのを発見する。さらに地下作業場でタイムマシンの設計図を発見し、これから自分がタイムマシンを完成することを確信する。そして友人たちや妹とタイムマシンの組み立てと実験を続けるのだった。

 やがてタイムマシンが完成し、彼らは常に5人一緒にタイムトラベルすることを誓う。そして宝くじを当てたり、いじめっ子に復讐したり、好きな女性の気をひいたりと、やりたい放題ゴッコが始まるのだ。

 ところがある事情から、デビッドがルールを破って一人でタイムトラベルをする。理由ははっきりしないが、それが原因だったのか、世界中で暴動や飛行機事故などが乱発する状況に陥ってしまう。さてどうやってこの事態を収拾するのだろうか……。と考える間もなく、ただただ余りにも単純な解決方法に呆れてしまった。あれで元に戻るなら苦労はないし説得力もなかったね。またどんでん返しが用意されていないのも物足りない。

 さて過去を改変すると、未来が大きく変わってしまう可能性が生じてしまう。これこそタイムトラベルの鉄則なのだが、あれだけ「でたらめ暴走」を繰り返せば、なるほどと頷かざるを得ないだろう。それほど彼らは、タイムマシンで遊び惚け過ぎたのである。
 テーマ的にはなかなか面白かったのだが、なにせハンディカメラの映像で船酔い状態になってしまった。なぜそこまでハンディカメラにこだわるのか私には理解できない、それだけでもマイナス1点だね。

評:蔵研人

明日への地図を探して

明日への地図を探して

★★★☆
製作:2021年 米国 上映時間:99分 監督:イアン・サミュエルズ

 高校生のマークはいつの日か、毎日同じ日を繰り返すタイムループにはまっていた。だから今日どこで何が起こるかは全てお見通しなのだ。鳥のフンを頭に浴びてしまう人、道に迷っている人、スカートがまくれている人、プールでビーチボールをぶつけられてしまう人などなど。そして彼らを助けてあげることが毎日の日課になっていた。だがそんな毎日に退屈し始めた頃、自分以外にもタイムループにはまっている女性と巡り合うのだった。

 彼女の名前はマーガレット。彼女は身長が高く美人で、マークと同じ高校生なのだが、飛び級進学するほど優秀で、子どもの頃から「4次元を探している」という変わり者でもあった。いつ日か、ともにタイムルーパーであるマークとマーガレットは、毎日一緒に行動することになる。だがいつも18時になると、ジャレッドという男から電話がかかってきて、彼女はどこかに去ってしまうのだ。そして彼女は元の世界には戻りたくないようなのだ……。

 一体マーガレットは何者なのか、電話がかかってくるジャレッドとは、彼女の恋人なのだろうか。どうして二人はタイムループに巻き込まれてしまったのか、また果たして二人はタイムループから抜け出せるのだろうか。と謎の渦巻く展開に先が見えない。
 ヒントは、主人公はマークではなく実はマーガレットだったということ。そしてタイムループもマーガレットが引き起こした現象であった。ではマークは単なる添え物だったのだろうか、よく分からないのは、なぜマークがタイムループに巻き込まれたのかと言うことかもしれない。

評:蔵研人

コンティニュー4

コンテニュー
製作:2021年 米国 上映時間:100分 監督:ジョー・カーナハン

 同じ日が何度も繰り返されるという「タイムループ映画」なのだが、本作はかなり派手なアクションシーンに染まりきっている。まず毎朝、目覚めた瞬間から謎の殺し屋に刃物で襲われたかと思うと、なんと窓の外からヘリでマシンガンを叩き込まれる。それをクリアすると今度はカーチェイスとなり、爆弾で吹き飛ばされ、刀で首を落とされる。といったシーンが延々と続き、殺された瞬間に翌朝のシーンへと繋がって行くというエンドレス展開なのだ。
 よく考えるとこれは、ゲームの世界と全く同じ仕組みではないか……。そして何度も同じことを繰り返しているうちに、だんだん上達して次のレベルへ向かうことになる。そしてお姫様いや元妻を救出しない限り、世界破滅のバッドエンディングを迎えることになってしまうのだ。

 とにかく休む間もなく考える暇もないまま、次から次へと敵が現れてだんだん厳しくなり、ボスまでたどり着くのは至難の業。そしてボスよりも、サブボスである剣を振るう中国娘が一番の難敵であった。こいつには銃もいやマシンガンさえ通用しないのだ。それほど超スピードで剣を操るのである。何度挑んでも殺されるだけ、さてどうすればこいつを倒せるのか、ヒントはタイムループを利用するのだ。

 タイムループ映画は1983年に公開された『時をかける少女』にはじまり、『恋はデジャ・ヴ』、『リバース』、『タイムアクセル』、『ターン』、『バタフライ・エフェクト』、『デジャヴ』、『トライアングル』、『ミッション: 8ミニッツ』と続き、最近では『ハッピー・デス・デイ』、『パーム・スプリングス』などが製作されており、すでに一つのジャンルを形成するようになってしまった。
 私はこのジャンルが大好きでたまらないのだが、それは30年以上昔に『恋はデジャ・ヴ』を観て大感動したからである。いま観ればそれほど大袈裟に感動しないかもしれないが、やはりタイムループ映画の草分け的存在というのは影響力が強いのだ。またタイムループと言っても、その中身はタイムループを利用した恋愛もの、コメディー、ミステリー、アクション、ホラーなどに細分化されるため裾野も広く、今後もさらに多くの作品が製作されるであろう。
 
 
評:蔵研人

めぐる未来3

めぐる未来

 毎週木曜の深夜に放映している日テレのテレビドラマである。
 主人公の襷 未来は、感情に大きな起伏があると過去に戻る「リフレイン」を発症してしまう。それで少年の頃から人となるべく拘わらず、感情を抑えて生きていた。
 だが運命的に出逢って結婚した明るく無邪気な妻・めぐるが何者かに殺害されてしまう。それで彼は禁を破って、まだめぐるが生きている過去に戻って彼女を救出する。ところがその後も彼女は何度も襲われることになり、その都度彼は過去に戻ることになる。だがリフレインを起こすたびに、だんだん彼の体力が消耗してきて、命の危険が生じてしまうのだった。

 それにしても誰にも恨まれる理由がないめぐるが何故殺害されなくてはならないのか、犯人は一体何者なのだろうか……。そんな興味だけでどんどん引っ張られて、とうとう最終回の10話まで観る羽目になってしまったのだが、ストーリー的にはそれほど面白いわけではなく、主役の萩原利久のボサーッとした学芸会並みの演技にもホトホト疲れ果ててしまった。
 どうしてテレビドラマには、引っ張るだけで内容の薄っぺらなものが多いのだろうか。これは日本だけではなく世界的な傾向のような気がするのは僕だけであろうか。

 最後にこの手のドラマに付きものの疑問なのだが、主人公が気を失って過去に戻ること自体は良いとしても、それまで暮らしていた人生はその後どうなってしまうのだろうか。結局は過去に戻るたびに、パラレルワールドが発生しているのであろう。ただそれならば、なぜもともとそのパラレルワールドにいた自分と遭遇しないのだろうか。などと余計なことを考えてしまうのである。
 

評:蔵研人

一分間タイムマシン

1分間

★★★☆
製作:2014年 米国・英国 上映時間:6分 監督:Devon Avery

 なんとたった6分間の超ショート映画である。舞台はとある公園のベンチだけ。登場人物は男女二人だけ。
 女性を口説くために、1分前にタイムスリップできる携帯タイムマシンを使って、何度も女性にアプローチする男性。その努力が報われて次第に彼女の心を射止めて行くのだが、そこには悲惨な結果が残されていたのだ。 (これから先はネタバレとなるので要注意のこと)
 つまりタイムスリップする都度、男は死亡してしまい、男のコピーだけがパラレルワールドに跳ぶ、という繰り返しの結果が現在の状況だったのである。そのためにパラレルワールドには、男の死体と驚愕する女がいくつも残されていたという結末であった。

評:蔵研人

TENET テネット

テネット
★★★☆
製作:2020年 米国 上映時間:150分 監督:クリストファー・ノーラン

 突然ウクライナ・キーウのオペラハウスにおけるテロリストによる立て籠り事件が勃発するシーンから始まる。オペラハウスに集まっている大勢の観客たち、このエキストラ数だけでも驚かされるのにだが、いきなり舞台でドンパチが始まり観客全員がガスで眠らされてしまい、その後この巨大劇場は大爆破されてしまう……とにかく圧巻圧巻としか言いようがないオープニングなのだ。
 だがこれが何のために仕組まれたのか、一体首謀者は誰なのかもよく分からないまま、全く異なるシーンへ移動してしまう。今度は鉄道の操車場で椅子に縛られた男が拷問を受けている。ところが男は敵の目を欺き、自殺してしまうのだが……。なんと次のシーンでその男はベッドの上で目覚めているではないか。とにかく観客に次々に謎を振り撒きながら、どんどん次のシーンへとコマ送りされてゆく。

 そしてオープニングのオペラハウス襲撃の真相が、「プルトニウム241」を奪取したCIAスパイを暗殺するための偽装工作だったと解明されるのが上映50分後というサービスの悪さにも辟易してしまうだろう。
 そんなことはさておいて、超美麗な映像や景色に加えて、さらに激しいアクションシーンが続く。大型飛行機の暴走と爆発、消防自動車と大型トラックを絡め、逆走カーチェイスまで飛び出してくるのだ。だがこの映画を単純なアクション映画と思ってはいけない。

 じつはタイトルのTENETとは、第三次世界大戦を阻止する為の謎の存在であり、オペラハウスで奪ったプルトニウムの正体は未来人が作り出した時間逆行装置の「アルゴリズム」の1つなのだという理論物理学が散りばめられているのだ。また各所に大規模アクションシーンが織り込まれてはいるものの、登場人物の相関関係もよく分からないばかりか、ストーリー自体や本作を構成する世界観もいまひとつ理解できないまま、どんどん上映時間が消化されてゆくのである。

 そしてなんと上映120分後に、やっと事態がはっきりと見えてくるのだ。ただ「時間挟撃」という概念を含むラストの戦闘には多くの観客がかなり混乱することは間違いないだろう。難解な世界観と派手なアクションとの融合ということでは、あの『マトリックス』を彷彿させられる。またストーリーのコアとなるものが結末となる構成というしかけでは『メメント』に近い作品とも言えるかもしれない。
 だがはっきり言って本作はストーリー自体に全く面白みを感じないし、理解すべく解釈論が余りにも面倒くさいのだ。まあ一部のマニアックなファンには賞賛されるかもしれないが、たぶん観客の90%以上は置いてけぼりを喰らったと思われる「超難解映画」であった。


評:蔵研人

スイート6ストーリーズ『恋するダイアリー』 4

スイート6ストーリーズ『恋するダイアリー』

 スイート6ストーリーズとは、6つの短編韓国ドラマのことを指す。15分程度にまとめられた話が約10話ほどで完結するので、時間を無駄に消費しないで済むので実にありがたい。米国のTVドラマのように45分ものを30話ほどで1シーズンとし、シーズン5まで続くようなものは、わざとらしい引き延ばしストーリーが多くてイライラが募るばかり。そのうえスポンサーの都合などで、途中で尻切れトンボになったりするものもあり、「時間を返してくれー!」と叫びたくなるときがあるからだ。
 さて本作『恋するダイアリー』は、やはり15分・10話完結の、時空を超えて愛する人を救う青年の奮闘を描いたラブファンタジー作品である。また主演は、韓国人気アイドルグループSHINeeのミンホとなっている。
 
 整形外科医のギョンフィ(ミンホ)は、高校時代に同級生からいじめを受けていた弱々しい青年だった。ある日大勢の前でズボンを脱がされる辱めを受け、耐え切れず自殺をしようとしたところ、転校生のナビの言葉で自殺を思いとどまる。
 その後彼はナビへ好意を寄せるようになるのだが、ある日突然ナビが自殺してしまうのだ。それから10年が経過し医師になった今も、ギョンフィはなぜナビが死んだのか分からないまま悩み続けていた。

 ところがある日、酒に酔ったギョンフィが街でナビらしき人物を見かけ、彼女が入ったドアを開けると、なんとそこは10年前の世界であった。なんだかドラえもんのどこでもドアみたいだな……。もちろん10年前に戻ったと言っても、意識だけが10年前の自分の中に戻ったと言ったほうがよいのかもしれない。さて、果たしてそこで彼は、ナビの自殺の原因を探り、彼女を守ることができるのだろうか、お楽しみ!じゃじゃんじゃん。

 そんな分かり易い展開に好感度がアップしてしまう。さらに突出した美人ではないものの、ナビを演じたイ・ユビの暗い雰囲気とスタイルの良さが、それとなく本作を盛り上げていたように感じた。まあラストにもう一捻りが欲しかったが、なんとかギリギリまとめたような気がしないでもないね。自分の好きなテーマだったので、ちょっと甘いかな……。

評:蔵研人

LOOP/ループ -時に囚われた男-4

LOOP

製作:2016年 ハンガリー 上映時間:95分 監督:イシュティ・マダラース

 麻薬密売人のアダムが、ボスから預かった大量の麻薬を持ち逃げしようとするところから始まる。だが一緒に逃げようと思っていた恋人のアンナが妊娠してしまい、計画変更を余儀なくされる。ところがなぜか、アダムの企みに気付いたボスが部屋へやってきて、アダムを殺害してしまうのだ。そのうえ逃げていたアンナまでも、偶然ボスの車に撥ねられて死んでしまうのである。
 ここまでが大きな1ループで、何度も同じシーンを繰り返すことになる。もちろんこの連鎖を断ち切ろうとするアダムの行動変化によって、枝葉的な部分は少しずつ変化するものの、結果的には何度もアダムとアンナが死亡を繰り返すことになる。

 部分的には突っ込みどころがいくつもある作品であるが、そもそもタイム・ループそのものが荒唐無稽なことなので、ここでいちいち目くじらを立てることもないだろう。それよりも、どうすればこのループから抜け出せるのか、アダムとアンナは無事生還できるのか、といった興味が深々と湧いてくるのだ。
 そして終盤はそれらを見事に収束して、ほぼ満足な結末で締めくくっているではないか。ただなぜタイム・ループが起こったのかは、解明されないままなのだが、オープニングとラストに登場する地下鉄内のホームレスがそのカギを握っているような気がする。これもなかなか味のよいエンディングだ。
 それにしても欧州のタイム系映画は、似たような雰囲気の作品が多いよね。例えばスペインの『TIME CRIMES タイム クライムス』やドイツの『ザ・ドア 交差する世界』などにその傾向が見受けられ、いずれも私の好きな映画であることに変わりはない。

評:蔵研人

ラ・ブレア

ラブレア

★★★☆
 米国のTVドラマである。タイトルの由来は、ロサンゼルス中心部のラ・ブレア地区で、突然道路が陥没して巨大なシンクホールが開き、多くの人々や車、建物などが瞬く間に落下するところからはじまるからであろう。
 TVドラマなのだが、とにかくスケールが大きい。ロスの巨大陥没穴は、単なる穴ではなくその下には、紀元前1万年前の世界が存在していたのだ。つまりパニック作品ではなく、タイムトラベルSF作品だったのである。

 あれだけ深い穴に落ちても、どうして人間だけが無傷なのか、なぜ古代人が英語を普通に話せるのか、愛している愛していると言いながら、なぜ簡単に浮気をしてしまうのか、などなど突っ込みどころ満載なのだが、謎が謎を呼ぶような展開に引きずり込まれて、ついつい次の話を観てしまうのだ。そして気が付いたら、シリーズ2が終了してしまった。日本でのシリーズ3開始日が分からないまま、イライラが募ってしまうのだ。

評:蔵研人

ハウンター3

ハウンター
製作:2013年 カナダ 上映時間:97分 監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ

 主人公はリサという高校生の少女なのだが、この話は彼女の誕生日前日がずっとループしているところから始まる。だからタイムループ作品なのかと勘違いしてしまったのだが、実は彼女は既に少女殺人鬼エドガーによって殺されていたというホラー作品なのであった。
 ただ余りにも同じことの繰り返しが多く、外には出られず家の中のシーンばかりなので中だるみしてしまうのだ。それに両親や兄弟が入れ替わったりと、なんだか異次元を彷徨うような展開にも、正直言って戸惑いうんざりしてしまった。

 ヴィンチェンゾ・ナタリ監督と言えば、「CUBE」が有名だが、本作もその流れを汲んで、なかなか家の外に出られないというシチュエーションなのであろうか。ただ同じ日が何度も繰り返したり、父親の性格が変貌したり、家族が入れ替わったり、といった謎についての丁寧な解説がなかっため、観賞後もなんとなくすっきりしなかった。私の読みが浅かったのかもしれないが、万人向けではなく不親切な作品であったような気がしたのは私だけであろうか……。
 
 
評:蔵研人

君が落とした青空3

君が落とした

製作:2022年 日本 上映時間:93分 監督:Yuki Saito

 原作は2010年に公開された櫻いいよのケータイ小説で、その後スターツ出版文庫として新装版が出版されている。
 基本的には学園ラブストーリーなのだが、事故に遭った恋人を救うためタイムループの中で何度もチャレンジする女子高生を描いて行く、というラブファンタジー系のような作品であった。

 高校生の実結と修弥は映画の趣味が一致し、付き合い始めて2年目になる。そして毎月1日には、必ず一緒に映画を観るというデートを重ねていた。ところが映画館のロビーで突然修弥に電話があり、彼は理由も言わずに急用ができたからと、デートを中断して実結を残したまま去ってしまう。
 その後、傷心の実結が帰路の途中、修弥からメールを受信して指定された時計台がある場所へ向かう。だがそこでトラックに轢かれそうになった実結をかばった修弥が撥ねられてしまう。その時時計台の針は午後7時を指していた。

 するといつの間にか実結は、自宅のベッドの中にいて、午前7時の目覚まし時計が鳴っているではないか。あれは夢だったのか、と考えたのだが、その後のあらゆる展開が夢と同じなのである。そして次の日も……。結局のところ実結は、毎日同じ1日を繰り返しているようなのだ。なぜそうなったのかは分からないのだが、彼女はなんとか修弥が事故に遭遇しないように努力する。だが結局事態はいつも好転せず、彼はどうしても事故から逃れられない。

 最近になってこうしたタイムリープ系の映画が数多く製作されているが、なんといってもその元祖は米国映画の『恋はデジャヴ』である。本作も序盤はそのセオリー通りの繰り返しパターンが描かれていたのだが、結論的にはタイムトラベルではなく、夢落ちという掟破りの手法だったのは非常に残念だ。だからどんでん返しもなければ、タイムパラドックスも生じない。それに主人公を含めたキャスト陣もいま一つな感があり、余りのめり込めなかったな……。

評:蔵研人

ベル・エポックでもう一度3

ベルエポック
製作:2019年 フランス・ベルギー 上映時間:115分 監督:ニコラ・ブドス

 自分が望む過去を映画撮影セットで再現する、と言う『体験型サービス』に、はまった老人の人生模様を描いたロマンティック・コメディーである。と言っても、タイムトラベル作品ではなく、あくまでも映画セットと俳優たちで過去を再現するサービスである。発想的にはなかなかユニークなのだが、ジャック・フィニイの『ふりだしに戻る』という小説の過去に戻る手法を参考にしたのかもしれない。

 進歩した現在を否定し、あくまでも過去に固執する元・売れっ子イラストレーターのヴィクトルは、今は職を失い妻にも見放されてしまう。そんな彼に孝行息子が、莫大な金がかかる『体験型エンターテイメントサービス』の招待券をプレゼントしてくれる。そしてヴィクトルが選んだ過去とは、愛する妻と巡り合った1974年のカフェであった……。

 序盤はなかなか興味深かい展開だったのだが、中盤以降は急にテンポが悪くなり、やや中だるみ感が漂い始めたのが残念であった。たぶん息子の友人でこの体験サービス会社を立ち上げたアントニーと、彼の恋人である女優の絡みが平行描写されたため、ストーリーの目的が分かり難くなってしまったからかもしれない。あくまでも本作では、ヴィクトルとその妻にだけに焦点を絞ったほうが、もっと感動を呼び込めたような気がするのだが……。


評:蔵研人

ぼくが処刑される未来

ぼくが処刑される
★★☆
製作:2012年 日本 上映時間:87分 監督:小中和哉

 自分の意見をはっきり言えず、ただ漠然と毎日を過ごしていた大学生の浅尾幸雄は、橋の上で酔っ払いが寝転んでいるのを見ていた時、突然まばゆい光に包まれてしまう。気が付くとそこは25年後の未来で、なんと警察の取調室で身柄を拘束されているではないか。
 彼は未来に罪を犯したという理由で未来にタイムワープさせられたのだが、未来の罪を償うため過去の彼が処刑されると言う奇妙な理屈なのだった。それを決めたのは、未来に開発された量子コンピューターで、その計算能力は神がかりで絶対に間違いがないと言うのである。

 テーマ的には興味深いし、福士蒼汰と吉沢亮が主演だと言うことで、本作を観る気になったのだが、余りにもチープ過ぎてがっかりしてしまった。低予算と言うこともあるが、脚本も悪いしタイムトラベルものの設定や展開などのルールも全く無視状態なのだ。そもそもドラマとしても失格なのに、これではタイムトラベルファンの心さえも掴めないよな。
 
評:蔵研人

君のためのタイムリープ 3

君のためのタイムリープ

製作:2017年 台湾 上映時間:104分 監督:シェ・チュンイー

 高校時代に『月球組』というバンドを結成していた5人組のボーカル・恩佩(エンペイ)は、その才能を認められて日本で活躍するのだが、落ちぶれてしまった挙句に若くして自殺してしまう。彼女の葬儀の後、5人組の一人だったジョンシャンは、路上で不思議な老婆から「一輪一晩」と言われて、三輪の玉蘭をもらう。そしてジョンシャンがその玉蘭の匂いをかぐと、なんと彼は高校時代にタイムリープしていたのである。
 高校時代なので当然だが、エンペイはまだ生きていて、必死でオーディションの練習をしていた。ジョンシャンはエンペイに死んで欲しくなくて、必死に彼女がデビューしない方法を考え邪魔をするのだが……。

 1997年の台湾が舞台なのだが、日本の風景も織り込まれており、安室奈美恵や小室哲哉や飯島愛に憧れている台湾の青年たちを観て、「そんな時代もあったなあ」と懐かしさがこみあげてきた。さらには『たまごっち』、『プリクラ』、『将太の寿司』などの日本カルチャーが満載なのだ。当時の台湾では、まだ日本が憧れの国だったのだろうか。
 決してつまらない映画ではないのだが、脚本が単純すぎるし、主人公とヒロインが余り魅力的ではなかったためか、中だるみ感を禁じえなかった。ただラスト前の15分間は、スクリーン全体に優しさが漂っていたよね。それにしてもその15分間のために、約100分間も我慢しなければならないのは辛過ぎるじゃないの……。

 
評:蔵研人

十二単衣を着た悪魔

12単衣

★★★☆
製作:2020年 米国 上映時間:112分 監督:黒木瞳

 エンドロールを見て監督がなんと女優の黒木瞳と言うことで驚いたのだが、彼女が監督した映画は本作が3作目で、最近まですでに4作を数えていたのである。もうすでにりっぱな映画監督ではないか。

 京大合格の弟に劣等感を抱くフリーターの伊藤雷が、ひょんなことから源氏物語の世界にタイムスリップする話である。さて彼がタイムスリップしたときに持参していたものは、スマホと源氏物語冊子と薬のサンプルだけだったのだが、なんとそれが全て役に立って平安時代に陰陽師として生きることになるのだった。
 そして彼は持参していた風邪薬で、ときの皇后だった弘徽殿女御を病から救うことになり、彼女に仕えて行くうちにだんだん平安時代にも慣れてくる。さらには妻をめとり、子まで設けることになり、元の世界には帰りたくなくなるのだった。
 
 源氏物語では悪女として知られた弘徽殿女御。さしずめ現代なら超やり手女社長といった雰囲気で、強靭な心と冷静な分析力で息子の一宮を帝にしようと野心に燃え続けるのだが、彼女こそ多分あの『プラダを着た悪魔』のメリル・ストリープと重ね合わされたのだろう。まさに本作は、そのオマージュとして創られた平安時代版『十二単衣を着た悪魔』なのであろう。
 
 原作はなんとまあ、あの内館牧子の『十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞』という長編小説だと知って二度びっくり。それにしても、ダメ男がタイムスリップしていろいろ経験を積むうちに成長してゆき、元の世界に戻ると、過去の世界にいた人とそっくりの人と巡り合う……というタイムトラベル系のお約束をしっかり守った王道作品だったよね。
 
 
評:蔵研人

リピート TVドラマ3

リピート

 乾くるみの長編小説をドラマ化したものだが、原作とはかなり異なっているので、原作既読者にも楽しめるはずだと思う。かくいう私も原作を読んでから本作を観たクチなのだ。さて原作と異なっていた部分とは次の通りである。

 最大の相違点は、原作の主人公が毛利圭介だったのに、ドラマでは篠崎鮎美に変わっていることだ。もしかすると大物俳優が少ない中で、貫地谷しほりが篠崎鮎美を演じたからかもしれないし、TVドラマということで女性受けを狙ったからかもしれない。いずれにせよそれによって、ストーリー展開自体にも大幅な修正が必要になってしまったのだろう。

 また原作では、リピートした10人のうち女性は篠崎鮎美だけなのに、ドラマでは9人のリピート中3人の女性が含まれているのだ。さらに鮎美は圭介と同年代だったのに、ドラマではかなり年上になってしまった。これらも全て貫地谷しほりが篠崎鮎美を演じた副作用に違いない。
 次にリピート場所がかなり異なっていた。原作では上空で、ヘリコプターを使って移動するのだが、撮影費用の増加やヘリの運転にかかわる諸事情から、徒歩で行ける洞窟に鞍替えされてしまったのだろう。

 それからリピート仲間が次々に死亡するのだが、その順番も異なっている。これは前述した主人公の変更に伴うドラマの構成上、やむを得なかったのかもしれないね。このほかにも細かい変更はいろいろあるのだが、何と言ってもエンディングが全く違っていた。
 これについてはネタバレになるので、ここに記すことは出来ないが、原作よりは多少救われるかもしれない。やはりTVドラマだね。

評:蔵研人

ドラゴン・キングダム4

ドラゴンキングダム
製作:2008年 米国 上映時間:105分 監督:ロブ・ミンコフ 主演:ジャッキー・チェン、ジェット・リー
 
 アメリカの少年が、現代のチャイナタウンで、孫悟空の如意棒と巡り合い、不良青年に追われるうちに、古代中国へとタイムスリップしてしまう。彼の役割は、ここで石化された孫悟空に、如意棒を渡すこと。
 孫悟空はもとより、不老不死の霊薬とか、天使とか仙人とか荒唐無稽な話と大げさなアクションシーンが続く。だがこの映画が全くチンケにならないのは、ジャッキー・チェンとジェット・リーの夢の競演があったからである。

 ジャッキー・チェンはあの酔挙の使い手、一方のジェット・リーは、白い僧衣姿で『少林寺』を彷彿させられた。とにかくこの二人のアクションは素晴らしく、まさに神技といえよう。この二人がいなかったら、たぶん子供騙しのつまらない映画で終わっていたかもしれない。それほど二人のアクション技術はハイレべルで、本格的に完成されていることを再認識してしまった。

 ラストに少年が現代に戻ってからの展開は、読み筋通りというか、こうした映画のお約束事といったところである。タイムトラべルものに分類されてはいるが、古代中国に行ったのは、気絶したときの夢とも考えられる。いずれにせよ、タイムトラべルだけに期待すると失望するので、あくまでもジャッキー・チェンとジェット・リーのアクション映画なのだという認識で本作を観る必要がある。

評:蔵研人

デモリションマン3

デモリッショマン
製作:1993年 米国 上映時間:115分 監督:マルコ・ブランビヤ

 デモリションマンとは『破壊者』のことである。それほどこの作品の主人公である刑事は、任務とはいえ破壊的な行動力に満ち溢れていると言うことであろう。さてその主役・デモリションマンことジョン・スパルタン刑事は、若き日の筋肉ムキムキのシルヴェスター・スタローンが演じている。

 本作はアクション映画であるが、SF映画でもある。それは冷凍スリープによるタイムトラベルが絡むからである。
 極悪人フェニックス逮捕のため、行き過ぎた破壊的行動を続けて人質30人を全員死亡させてしまったスパルタン。彼はその責任を問われて、70年間の冷凍刑に処せられてしまう。
 ところで未来社会は、全てがコンピューターに管理され、市民は快適な生活を送っている。またコクトー市長の政策によって犯罪や暴力は姿を消していた。一見とても素晴らしい世界のようだが、実は人々は軟弱化してしまい、武器もなく凶悪犯罪にも対処できなくなっていたのである。
 そんな折に、過去にスパルタン刑事が逮捕した極悪人フェニックスが、解凍され蘇って脱獄し、やりたい放題の大暴れをしてしまう。だが軟弱化している警察が束になってかかっても子ども扱いされどうにもならない。それでやむなく警察は、まだ刑期を迎えていないスパルタンを解凍して、フェニックスを逮捕させようとするのだった……。

 破壊的で暗い背景と荒唐無稽なストーリー展開を観ていると、あの『バットマン』を彷彿させられてしまった。さらにスタローンの暴れっぷりから『ロッキー』やら『ランボー』がオーバーラップしてしまうのだ。
 それはともかくとして、過去と未来のギャップの描き方は、まずまずであったがもう一捻りが欲しかったね。例えばサンドラ・ブロック演ずる相棒の女性警官レニーナが、実は自分の娘だったとか……。まあどうしてもスタローンの映画は、ストーリー展開よりアクション・アクションに塗り固まってしまうんだよな。

評:蔵研人

ReLIFE リライフ

★★★☆
製作:2017年 日本 上映時間:119分 監督:古澤健

 またまた邦画の常とう手段であるマンガの実写映画化作品である。従ってかなりいい加減で荒唐無稽なストーリーなのだ。ただアニメ化されたくらいだから、そこそこ面白いということにしておこう。
 せっかく大学院を卒業したものの、新卒入社した会社を3カ月で自主退職してしまった海崎新太27歳。その後何度も再就職の面接を受けるのだが、前社を3カ月で退職したことが祟り、どこの会社でも不合格となってしまう。

 それでなんとかコンビニのバイトで生活の糧を凌いでいる海崎だったが、ある日「リライフ研究所」所員を名乗る謎の男が現れる。そして男は海崎に、薬で見た目だけ若返り、1年間高校生活を送るという実験をしないかと言う。
 余りにも胡散臭くて気が進まない海崎だったが、生活の保障が得られると聞いて、半ばヤケクソ気味に被験者になることを承諾。こうして27歳の男が、10歳年下の女子高校生との恋に頭を悩ませ、青春を謳歌する高校生活がスタートするのだった。

 それにしても、本作はタイムトラベルもののようで、実はそうではないみたいだ。つまり主人公が10年前にタイムスリップするのではなく、外見だけが10歳若くなり、そのまま現在の高校へ通うというだけではないか。従ってタイムトラベルものではなく、学園恋愛ものだと考えて観賞したほうが良いだろう。
 またこの実験が終わると、体験したことは全て主人公の記憶から消去されてしまう。さらに主人公と接触した人々の記憶の中からも、主人公の存在自体が喪失してしまうのである。
 どうもこの設定には無理があり過ぎる。主人公の記憶だけなら、薬や手術などで切り取ることが可能だが、クラスメイトや先生など、主人公と接した人すべての記憶を操作することは不可能ではないか。いくら原作がマンガだからと言っても、このあたりの矛盾はしっかりとフォローしておくべきだろう。

 またラストのどんでん返しは、ほぼ予想通りだったものの、清々しい気分になれるハッピーエンドで納得できるかもしれない。また主演の中川大志はじめ、クラスメイトの6人もそれぞれ個性的で、それなりに青春の匂いを漂わせていたので違和感もなかった。
 ということで、高校生はもちろん「青春時代をもう一度体験したい」と願っているおじさん、おばさんたちが観ても、そこそこ楽しめる映画に仕上がっていたことだけは間違いないと断言したい。


評:蔵研人

パーム・スプリングス

★★★☆
製作:2021年 米国 上映時間:90分 監督:マックス・バーバコウ

 タイトルの「パーム・スプリングス」とは、カリフォルニア州にある砂漠と山に囲まれたリゾート都市である。本作はそのパーム・スプリングスで行われる結婚式が舞台となっている。

 妹の結婚式だというのに、姉のサラだけは1人だけ浮かない面持ちであった。そこにお調子者で少し変わった男・ナイルズが登場。二人はいいムードになり、もう少しでSEXというときに突然弓を放つ男が現れる。それで謎の洞窟に逃げ込むと急に目覚め、毎日結婚式の朝に戻る「タイムループ」に閉じ込められてしまうのであった。一方のナイルズは、かなり以前からループにハマっており、今日までに数えきれないほど結婚式の日を繰り返していたのである。

 毎日同じ一日を繰り返すというタイム・ループもので、ファンタジーラブコメと言えば、1993年に公開された『恋はデジャ・ブ』を思い出す。ただ『恋はデジャ・ブ』のほうは、ループするのが主人公を演じたビル・マーレイ一人だったのに対し、本作ではなんと三人がループしているのだ。また少しおバカで下品な感があった。それにループを利用して、前回の失敗を回避するようなシーンが少なかったのが物足りない。

 それにしてもタイム・ループってどうして起こるのだろうか。それにループしている人は何度もやり直せるけど、ループしていない人たちの人生はどうなってしまうのだろうか。結局はいくつものパラレルワールドが存在することになるわけだが、なんだか理解不能だね。
 またループしている間は死なないし年を取らないし、金も恋人も自由自在のスーパーマンなのだから、現実に戻りたくないと考えたくなる。ただもしループが永遠に続くとしたら、やはり退屈になってしまうのだろうね。でももしそのループ周期が1日ではなく、『リプレイ』のように10年以上だとしたらどうかな……。

評:蔵研人

HELLO WORLD

★★★☆

製作:2019年 日本 上映時間:98分 監督:伊藤智彦

 『時をかける少女』や『サマーウォーズ』で助監督を務め、『ソードアート・オンライン』を手掛けた伊藤智彦監督によるSF系アニメである。前半は学園ロマンなのだが、後半になって「狐面」が登場すると、急遽ガチガチのSFに変貌してしまう。どちらかと言えば前半のほうが楽しく、後半は理解不能のハラハラドキドキ展開に終始すると言ってもよいだろう。

 2027年の京都。人見知りで引っ込み思案な男子高校生の堅書直実は、クラスメイトに馴染めず本だけが友達だった。だがクラスで、一行瑠璃という不愛想な少女と一緒に図書委員に選ばる。そして彼女と一緒に図書委員の仕事をしているうちに、だんだん彼女との距離が縮まってくるのだった。このあたりはまさに学園ロマンなのだ。

 そんな折にナオミという青年と出会う。ここらからだんだんSFの臭いが漂ってくる。さてそのナオミこそ、10年後の世界からやってきた未来の自分であった。彼は未来で瑠璃と結ばれるが、彼女を事故で失ってしまったのだという。直美はナオミと協力して、事故に遭った瑠璃の運命を変えようとするのだが……。このあと暫くすると、謎の狐面が登場し、学園ロマンは難解なSFものに衣替えしてしまうのだ。そして京都駅での大アクションシーンへと繋がってゆき、なんとSFパニックアニメへと昇華してゆくのである。

 本作は世界をデーターが集合した仮想空間とみなし、その不都合なデーターを書き換えよう試みるストーリーなのだが、斬新なようで斬新でもなく、分かり易いようで分かり難いのだ。ぶっちゃけあの『マトリックス』と『エヴァンゲリオン』と『インセプション』をごちゃまぜにした作品だと言えばどうだろうか。壮大なテーマを含んだストーリーとも言えるが、観客置いてけぼりの独りよがりの脚本とも言えそうである。

評:蔵研人

時間離脱者

★★★☆

製作:2016年 韓国 上映時間:107分 監督:クァク・ジェヨン

 メガホンをとったのは『ラブストーリー』、『猟奇的な彼女』、『僕の彼女はサイボーグ』などで知られるクァク・ジェヨン監督であり、同監督としては2年振りの最新作である。ジャンル分けの難しい作品だが、大まかに括れば「ファンタジックスリラー」と言ったところであろうか。
 1983年1月1日と32年後の2015年1月1日の同時刻、同じ場所で同じように犯人から致命傷を受け、同じ病院に運ばれ、奇跡的に命を取り留めた二人の男性の物語である。

 過去の男は高校教師のジファンであり、未来の男のほうは刑事のゴヌであった。そしてその日から、ジファンは32年後のゴヌになった夢を見るのだが、ゴヌのほうも32年前のジファンになった夢を見るのである。
 こうして32年の時を隔てて、二人の話がパラレルに進行してゆくのだが、なんとさらに不思議なことに二人の彼女が全く瓜二つで、共に殺されてしまう運命なのであった。過去は回避できないものの、未来は何とかこの不幸な運命を回避しようと二人は協力することになるのだが、果たして運命を変えることが出来るのであろうか。

 実に練り込まれた複雑な脚本であり、出演者もチョ・ジョンソク、イム・スジョン、イ・ジヌクら韓国を代表する演技派俳優が集結している。ただ犯人が意外過ぎて因果関係に乏しく共感が得られないことと、まるでジェイソンやターミネーターのように不死身でしつこいところがかなり興ざめであった。このあたりの詰めが今一つ雑だったことが非常に残念であり、もったいないと思ったのは私だけであろうか。


評:蔵研人

ザ・ドア 交差する世界

★★★☆

製作:2009年 ドイツ 上映時間:101分 監督:アノ・サオル

 近所に住む女と不倫をしているときに、娘を事故で亡くしてしまい、妻にも離縁され全てを失ってしまう画家のダビット。その後の5年間は、自暴自棄の生活を続け自殺を計るが失敗に終わる。
 ところが失意のどん底に落ち込んだ彼は、不思議なトンネルを発見しその先にあるドアを開けると、なんとそこは5年前の世界であった。そしてそこで彼は、5年前の彼が不倫相手の女の家に向かう後姿を観てしまうのである。

 だがすぐに娘の悲鳴を聞き、娘を救出するためプールのある庭に向かうのだった。プールでは娘が溺れかけていたが、今回は間一髪プールに飛び込んで、娘を救出することが出来たのである。
 ダビットは、助けた娘を寝かしつけてリビングで探し物をしていると、そこに過去の彼が戻って来るのだった。そしてストーリーは、ファンタジーからヒチコック風のスリラーへと急展開してゆくのである。

 はじめは摩訶不思議でファンタスティックな展開だったのだが、過去の自分との遭遇からは一挙にミステリアスな展開に終始することになる。私的にはどちらかと言えばファンタスティックなほうが好きなのだが、最近の傾向としてはスリリングな展開のほうが好まれるのだろうか。
 ラストはハッピーでもバッドエンドでもなく皮肉ぽい締め括りで終わっている。どちらかと言えば、タイムトラベル系というよりは、ミステリーゾーン系といったストーリー展開であった。まあこれはこれで面白かったのだが、期待していたものとはやや異なる感があったことも否めない。

作:蔵研人

東京リベンジャーズ

★★★☆
製作:2021年 日本 上映時間:120分 監督:英勉

 和久井健のコミック『東京卍リベンジャーズ』を原作にしたSFアクション映画である。フリーターでどん底生活を送っている花垣武道は、高校時代の恋人・橘日向と彼女の弟・直人が殺され、その死に巨悪組織・東京卍會が絡んでいることを知る。ところがその翌日、駅のホームで何者かに押され電車が迫る線路に落とされてしまうのだが……。目を覚ますと情けない不良だった10年前にタイムリープしていた。
 
 それで橘日向の死を回避するために、あらゆる手段を講じるのだがなかなか原因が掴めないまま、何度もタイムリープを繰り返すのだった。果たして花垣武道は、過去を改変して未来を救うことが出来るのだろうか……。というと何となくSF映画ぽいのだが、中身は超おバカなバリバリのアクション映画なのであった。
 原作は読んでいないが、さすがマンガだけあって吉沢亮扮する(佐野万次郎[マイキー])と山田裕貴扮する(龍宮寺堅[ドラケン])の超人的な強さには度肝を抜かれてしまったぜ。それで昔観た映画『湘南暴走族』の江口洋介と織田裕二を思い出してしまうのは、古いおじさんだけだよなぁ~。
 

評:蔵研人

リターナー4

製作:2002年 日本 上映時間:118分 監督:山崎貴

 地球の破滅を救うため、暗い末来からタイムスリップしてくる少女(鈴木あん)と仕事屋(金城武)が協力して悪を滅ぼし、地球を救うというマンガチックなストーリーである。映画の中味は、「マトリックス」「ET」「インディペンスデー」などのパクリだらけで、たった2人で世界を救うという、余りにも小さすぎるスケールにちょっと恥ずかしくなる。

 ただこの映画のCGだけは、よく出来ている。さすが特撮第一人者の山崎監督である。またパクリとはいえ、これまでの邦画でこれだけ大胆なSFアクション映画があったであろうか。せいぜい「ゴジラ」などの怪獣映画くらいであるが、この映画はそうした従来の日本的SF映画とは、本質的な構造が全く異なっている。

 そうした意味では、もう少しストーリーを練って金を使えば、世界のアクション映画に決してひけをとらない作品に仕上がるのでないだろうか。さらには、ラストのタイムパラドックス的などんでん返しも、なかなか味があって良かったね。今後の邦画系SF系アクションに期待したいものである。

評:蔵研人

アウトランダー4

著者:ダイアナ・ガバルトン
訳者:加藤洋子


 米国TVドラマ シーズン5まで全67話が放映済だがまだ続く予定

 とにかく原作は大長編小説である。なにせ『アウトランダー』というタイトルはシリーズ名ということであり、『時の旅人クレアI~Ⅲ』『ジェイミーの墓標I~Ⅲ』『時の彼方の再会I~Ⅲ』『妖精の丘にふたたびI~Ⅲ』『燃ゆる十字架のもとにⅠ~Ⅳ』『炎の山稜を越えてI~Ⅳ』『遥かなる時のこだまI~Ⅲ』の23冊という大構成になっている。しかも一冊が平均500頁と分厚く、そう簡単には読めない。従ってここでは、既に放映済のTVドラマシーズン5までのうち1~3をまとめて簡単に紹介したい。

 ストーリーは、第二次大戦終結直後、従軍看護婦だったクレアが、夫・フランクと一緒にスコットランドのハイランド地方で休暇を過ごすところからはじまる。そして不思議な言い伝えのあるストーン・サークルを訪れた彼女は、突如異様な感覚に襲われ、意識が混濁してしまう。気がつくと、古めかしい衣裳の戦士たちが眼前で戦いを繰り広げているではないか。なんと彼女は18世紀にタイムスリップしていたのであった。

 ここからクレアが過去で体験する波乱万丈の物語が始まる。そのとき彼女は、過去の世界には存在しない薄物の服をまとっていたため、下着でうろついている娼婦と勘違いされてしまう。さらになんとこの時代で最初に遭遇したのが、フランクと瓜二つのイングランド軍のジャック・ランダル大尉だった。実は彼こそフランクのご先祖様で、顔こそフランクそっくりだが、性格は正反対でしつこいサイコ野郎なのだ。
 また彼は、この世界でクレアの夫となるジェイミーとも悪い因縁を持っており二人に執拗に絡んでくる。つまりこの物語の前半では、ジャック・ランダル大尉が最悪の敵役を務めることになるのである。

 主人公のクレア役を演じたのは、元モデルのカトリーナ・バルフで、長身でスタイル抜群のうえ、まるでベテラン女優のような存在感が漂っているではないか。またジェイミーとの濡れ場が多く、惜しげなくその美しい全裸を晒してくれるのだ。同様にジェイミー役のサム・ヒューアンも、美しい自然な筋肉美と全裸を十二分に披露してくれる。いずれにせよ、よくも素晴らしい主人公二人を見つけ出したものである。
 また本作は映画を凌ぐほどのスケール感を誇り、過去の建物や衣装などはもとより、不潔・不衛生・危険が伴う時代考証も正確に描き切っているところが凄いのだ。

 さて本作のジャンルは、基本的に「ラブファンタジー」と呼んでも良いだろう。また主人公のクレアとジェイミーは美女美男なのだが、ともに気性が激しく頑固で逞しい。そして時にはお互いを罵り合うのだが、逆にそのつど愛を深めていくのである。ただいつもクレアの頑固さが原因で、皆が迷惑を被ったり窮地に陥ってしまう展開にはかなりイライラされられてしまう。
 そんなイライラ感が高じて、何度か嫌気が差してしまったことも否めない。ジェイミーが甘過ぎるのかもしれないが、クレアがもう少し素直になっても良いのだが…。

 シーズン1では、ヒロインのクレアが、期せずして過去の世界にタイムスリップしてしまう。そこで彼女は、時代を無視した無謀さが原因で、スパイ容疑をかけられてしまう。その容疑から逃れるため、やむなく自分より年下の美男子ジェイミーと結婚する。
 また当初は元の世界に帰りたかったクレアだったが、ジェイミーと躰を重ね、共に艱難辛苦を乗り越えながら生きているうちに、だんだん強い愛情が芽生えてゆき、彼の子を宿すことになる。

 シーズン2では、パリへ逃げ延びたクレアとジェイミーたちが、歴史上大勢のハイランド人が虐殺された「カローデンの戦い」を回避しようと政治的にいろいろ画策する。だが結局は歴史を覆すことはできないどころか、ジェイミーもその戦いに参加せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。死を覚悟したジェイミーは、妊娠したクレアと胎児を守るため、彼女を無理矢理ストーン・サークルから現代にタイムスリップさせてしまう。

 シーズン3では、クレアは現代で「カローデンの戦い」を乗り越えたジェイミーが、その後も生き延びたことを証明する資料を発見する。そして娘のブリアナが20歳になる年に、再び一人で最愛のジェイミーの住む過去へ旅立ってゆく。多分50歳を超えているクレアであるが、白髪がちらつく程度で相変わらず美貌を誇り、気性が激しく頑固なところも全く変わらない。

 ざっとシーズン3までのあらすじを殴り書きにしてみたが、中身はずしんと重い。年を重ねたジェイミーはかなり丸くなっているのだが、クレアのほうは相変わらずの頑固者で、医師の資格を取ったためか、さらにプライドが高くなり無謀さ健在、まるで「迷惑の根源」のようだ。このあたりでイライラ感が、だんだんクレアに対する腹正しさに変化してゆくのは私だけではないはずである。
 

評:蔵研人

過去へ旅した女4

製作:1979年 米国 上映時間:100分 監督:フランク・デ・フェリッタ

 日本版DVDは未発売だが、NHKで放映されていたものが、ユーチューブの書庫で見つかったのだ。画像の粗い小さな画面で9分割にされているが、もうここでしか観ることが出来ない。従って、こういうときのユーチューブは、本当にありがたいよね。

 若い夫婦が、田舎の古い屋敷を借りるのだが、屋根裏部屋には古いドレスが飾ってある。妻がこのドレスを着ると19世紀末の世界にタイムスリップしてしまう。そしてその時代にこの家に住んでいた画家と出逢うのである。
 浮気をした夫に対して、信頼感が薄れていたということも手伝って、彼女は過去の世界でこの画家と恋に落ちてしまうのだ。ぶっちゃけていえば不倫をしちゃたわけだ。
 ところが彼女には、後ろめたさが全くなく堂々と恋をしているように見えた。これは過去の世界ということと、先に夫が浮気をしたという前提によるある種の錯覚かもしれない。

 ノスタルジーの漂う世界感とタイムスリップという題材は、『ある日どこかで』を髣髴させられる。なかなか良質で素敵な作品であったが、やはりTVドラマであるためのチープさは完全に拭えなかった。
 また日本語バージョンであること、ユーチューブの9分割だったのも残念であった。もしDVDでまっとうな映像を観ていたら、もっと評価が上がったかもしれない。また過去の画家によって描かれた絵が、タイムパラドックス的な要素を含みなかなか味わい深い作品である。

評:蔵研人

フォルトゥナの瞳4

★★★★
製作:2018年 日本 上映時間:111分 監督:三木孝浩

 幼いころに飛行機事故で同乗していた両親を亡くした木山慎一郎。奇跡的に助かった彼は成長し、自動車整備会社で真面目一筋に働いている。
 ところが最近になって、死の近い人が透けて見えることに気が付き始めるようになっていた。そしてその能力を使って彼女や社長の命を救うのだが、その能力を使うたびに自分の命を縮めていることを知らされる。

 それで透けて見える人たちを発見しても、何もせずにじっと我慢するようにした。だが真面目な慎一郎は、彼らの死が分かっていながら、何もできない自分に対してイライラし続け自己嫌悪に陥ってしまう。
 そしてある日、幼稚園児たちが遠足で乗る電車が事故に遭遇し、全員死亡してしまうことが分かってしまうのである。もし彼等を救えば確実に自分も死ぬだろう。そうすると当然彼女とは結婚できなくなり、彼女を悲しませることになってしまう。
 この二つのジレンマに挟まれ、慎一郎は悩みに悩み抜き、ある決断を下すのだが・・・。

 原作は百田尚樹の小説でまだ未読なのだが、映画を見た限りではなかなかの秀作で、かなり凝ったストーリー展開だと感じた。是非とも小説のほうも一読してみたいものである。それにしても、あの終盤のどんでん返しは「皮肉」で塗りつぶされているように感じたのは私だけであろうか・・・。
 またあのエンディングには賛否両論があるかもしれないが、私的にはなんとなく納得してしまった。まあいずれにせよ、総括すれば「ちょっと切なく心残りな、ミステリー風味のラブ・ファンタジー」ということになるだろう。


評:蔵研人

クロノス・ジョウンターの伝説 映画3

 製作:2019年 日本 上映時間:87分 監督:蜂須賀健太郎
 
 タイムトラベル小説の御大である梶尾真治の作品が原作となっている。
 住島重工の開発部門に勤務している吹原和彦は、毎日通勤時に通りかかる花屋で働いている蕗来美子に淡い恋心を抱いていた。ところが来美子の働く花屋の前で、タンクローリーが衝突して大惨事を引き起こす。そして悲しいかな、彼女もその事故に巻き込まれて死亡してしまうのだった。

 その頃、吹原が勤務する開発部門では、時間軸圧縮理論を採用して物質や生物を過去に送ることが可能なタイムマシン「クロノス・ジョウンター」の実験を行っていた。この実験はほぼ成功したものの、過去に送ったはずの物体などが現在に戻るのに、数分間のタイムロスが発生してしまうところが問題であった。

 そのタイムロスが起こる理由や法則は全く不明であったが、吹原は来美子を救うため過去に跳ぶ。だが実験で解明されていなかったタイムロスによって、一定の時間しか過去には存在できず、その反動でずっと先の未来に跳ばされてしまうのだった…。

 ネットの評価はそこそこ高いのだが、原作を読んでいる私には今一つ感情移入ができなかった。その最大の原因は、あまりにも低製作費であることだろう。そのため肝心のクロノス・ジョウンターがちゃちいこと、吹原が跳んだそれぞれの未来の時代考証がほとんど描かれていないこと、友人の風貌が全く変わっていないこと等であろう。
 さらにラストのハッピーエンドは、原作と乖離しているだけでなく、かなり科学的に無理があった。ともかく、SF映画はガンガン金を使い、いかに嘘を本物らしく見せるかが勝負なのである。またそれなりに納得できそうな理論体系を構築しておかないと、バカバカしくなってしまうものである。このあたりが邦画にSFものが少ないない原因なのであろうか。

評:蔵研人

三尺魂4

製作:2017年 日本 上映時間:93分 監督:加藤悦生

 奇妙なタイトルであるが、三尺とは打ち上げ花火の大きさであり、主人公が花火職人といったところである。ではこの作品は花火職人の映画なのかというと、全く的外れで自殺願望の4人が花火の爆発で死ぬたびに、自殺直前に戻ってしまうというタイムループのお話なのだ。SFというにはスケールが小さ過ぎるのでファンタジーと言うことにしておこうか。

 SNSの自殺サイトで知り合った4人が、何度もループを繰り返すうちに、タブーである本名を明かしたり、自殺の理由を打ち明けたりしてゆく。この4人の中には、一人だけ女子高生がおり、全員で彼女を説得するのだが、彼女の決意は固くなかなか説得に応じてくれない。

 低予算映画であるが、アイデア・脚本・演技力がしっかりしているため、最後まで面白く鑑賞させてもらった。製作費の少ない邦画のお手本的な作品であった。こんな映画をもっと創って欲しいものである。
 苦しいから、逃げたいから死にたい。それが冷静に考えたら違う事もあるかもしれない。やっぱり映画はハッピーエンドでなくてはね。それにしてもラストの幸福の連鎖とデジャブは実に見事だったね。


評:蔵研人

ハッピー・デス・デイ 2U

★★★☆

製作:2019年 米国 上映時間:100分 監督:クリストファー・ランドン
 
 前作『ハッピー・デス・デイ』の完全続編である。だが前作の説明は一切ないため、これを初めて見た人はかなり戸惑うはずである。また前作は、タイムループホラーという珍しいジャンルだったのだが、本作はSF色とコメディ色が強くなり、タイムループよりもパラレルワールド風味に染まっている。それにホラー要素はかなり薄められているので、なにか物足りないのだ。

 そしてタイムループの原因は、理工学部で学ぶライアンたちが開発した量子冷却装置(SISSY)だというのだが、なんとなく無理矢理こじつけた感があり余り共感できない。またこの装置を再起動するための方程式を、ヒロインがタイムループを繰り返して解析するくだりもよく理解出来なかった。

 ヒロイン役の必死の演技には脱帽するが、本作が前作より評価が高いのは不思議でならない。やはり今どきの若者たちには、お笑いが必須なのであろうか…。また更なる続編3の製作が噂されているのだが、本作と同じようなパターンなら、もう観たいとは思わない。

 
評:蔵研人

ハッピー・デス・デイ4

製作:2017年 米国 上映時間:96分 監督:クリストファー・ランドン

 笑う坊やのようなマスクを被った殺人鬼に、何度も繰り返し殺される誕生日。あの名作『恋はデジャヴ』を、ホラー版に改変したようなタイムループ映画である。

 毎晩飲んだくれて、いろいろな男とすぐ寝てしまう悪たれ女子大生のツリーが、二日酔いで目覚めると、見知らぬ男のベッドの中であった。彼カーターは、酔い潰れたツリーを親切に介抱してくれただけなのだが、彼女はお礼も言わずに不快感を抱いたまま帰宅する。
 そしてその夜、誕生パーティーに出かけるのだが、途中でベビーマスクに襲われて殺されてしまう。その瞬間に、目が覚めるのだが、そこはまたカーターの部屋のベッドの中だったのである。

 ツリーはなんだか奇妙な気分のまま、父からの電話を無視 カーターの友人とドア前で会う サングラスの男と環境保護活動家に遭遇 スプリンクラーの吹き出す水 車のクラクションの音 集会で一人の男が倒れる ティムになぜメールの返信をしないのかと問われる 家の前で女の子に挨拶される 一階で友人に朝帰りを咎められる 同室の女性に誕生ケーキを貰う

 このあとやはり殺人鬼に別の方法で殺されるのだが、ここまでは生還したあとに何度も繰り返されるのであった。彼女に不快感を持っている者は数知れないが、なぜ殺されなくてはならないのか、犯人は一体何者なのか、またどうしてデジャヴのようにループが続くのだろうか。
 興味津々の中、テンポよくストーリーが流れてゆく。そしてやっと犯人を探し当てて葬ったのだが、なんとあの忌まわしいループは終わっていなかった・・・。

 そしてラストのどんでん返しに繋がってゆくのである。主人公は性悪女で感情移入し難いし、ストーリー的にもかなり雑な部分があり、突っ込見所も多い。だが・・・と言うより、だからこそテンポよく、お気楽に楽しめたのかもしれない。またホラーと言っても、コミカルホラーなので、ホラーが苦手な人でも安心して観ることができるだろう。
 なお本作の続編『ハッピー・デス・デイ 2U』もDVD化されているようである。こちらはSF色が濃くなって、タイム・ループの謎も解明されるようなので、絶対にレンタルしてみたいね。

評:蔵研人

ターミネーター:ニュー・フェイト4

製作:2019年 米国 上映時間:129分 監督:ティム・ミラー

 ターミネーター映画は、度重なる権利の移動が続き、連続性を欠きながらも、人気シリーズのため何とか延命してきた推移がある。ただし生みの親であるジェームズ・キャメロンは、これを良しとせず第1作から2作へと引き継がれてきた世界観を引き戻すため、本作をキャメロン版第3作として位置付けて製作に携わったという。

 そして舞台は米国からメキシコへと移り、未来から来たターミネーター「REV-9」が、メキシコシティの自動車工場で働いている21歳の女性ダニーに襲い掛かる。このダニーは未来において活躍する大切な女性の一人だったのである。
 危機一髪の状況で彼女を救うのが、やはり未来から送られてきた強化型兵士のグレースであった。だが一度は危機を脱出したものの、絶対に破壊されない「REV-9」が、執拗に二人を探し当てて追いかけてくる。

 とにかくすごい迫力だ。もしかするとシリーズで一番のド迫力かもしれない。だが第2作・T2とほぼ同じようなストーリー展開なので、大好評だったT2のような驚きは全くなかった。
 またシュワちゃんのターミネーターが年を取ったのは、それなりに理屈があるようなのでそれは良いとしても、家族をもって人間のように暮らしている姿はアンバランスな感がある。それから年取ったリンダ・ハミルトンが、再びサラ・コナー役を演じる必然性も全く感じない。大した活躍も出来ないわけだし、彼女は単なる客寄せパンダだったのだろうか。

 何となくT2をバージョンアップしたような作品で、その製作意図がいまひとつ理解できない。もしマッケンジー・デイヴィス演じるグレースが登場しなければ、★はひとつ減らしただろうな…。


評:蔵研人

信長協奏曲

★★★☆

製作:2016年 日本 上映時間:125分 監督:松山博昭

 原作は石井あゆみの描いたマンガで、第57回小学館漫画賞少年向け部門を受賞している。その後テレビアニメと実写テレビドラマを経て、実写映画化されたものである。

 ただ本作映画版はTV実写ドラマの続編として製作されているため、出来れば先にTVドラマを観ておいたほうが馴染み易いだろう。また原作がいまだ連載中のためか、アニメは10話で途中終了している。
 さらに映画のほうは完結したものの、原作とはキャラの個性や性格がだいぶ異なっている。原作が終了していないため何とも言えないのだが、もしかすると結末は原作とは違っているのかもしれない。

 前置きが長くなったが、あらすじを簡単にまとめると次のような展開になる。
 小栗旬が扮する歴史が苦手な高校生サブローが戦国時代にタイムスリップし、織田家を逃げ出した本物の信長と遭遇。二人はまるで双子のように瓜二つだったため、信長の希望で入れ替わることになる。

 あとは歴史通りのストーリーをコミカルに描いて行くのだが、明智光秀と羽柴秀吉の扱い方が歴史とは大きく異なってくる。またサブローのほかにも、未来からタイムスリップした男が数人登場する。それが誰なのかは映画を観てのお楽しみとしておこうか。
 本作は歴史ものとしてはやや物足りないし、突っ込見所も多かった。だが、のほほんとしたお人好しの信長をはじめとして、歴史観とは一風異なるキャラの性格づけが楽しい作品と言えるだろう。
 

評:蔵研人

幕末高校生

★★☆
製作:2013年 日本 上映時間:108分 監督:李闘士男

 高校生の男女三人と女教師の4人が、幕末の時代にタイムスリップするSFコメディーである。なお幕末と言っても、彼等がタイムスリップしたのは、ちょうど勝海舟と西郷隆盛が話し合いをする前の数日前で、戦争か江戸開城かの選択を迫られている歴史的瞬間であった。
 こう記すと、いかにも格調高いストーリーのようだが、実は勝海舟はギリギリまで何もしない怠け者だった。そして西郷隆盛と話し合えるのかダメなのか、ギリギリまでイライラさせる展開を、おバカタッチで大真面目に描いている。
 
 主な出演者は勝海舟に玉木宏、西郷隆盛に佐藤浩市、女教師に石原さとみ、その他千葉雄大、川口春奈、柄本明、伊武雅刀、石橋蓮司などそうそうたる俳優陣を配している。また江戸のCGや武家屋敷のセットなどもしっかり揃えてあり、それなりの製作費を消費した跡が見受けられる。

 ところがなぜか全然面白くないのである。まずおバカを前面に出し過ぎたためか、人物像が薄すぎて全員がバタバタしているだけなので退屈感が拭えない。またおバカなら、おバカに徹すればよいのだが、真面目とおバカが調和せず中途半端で空回りしているのだ。
 そしてせっかく未来からタイムスリップしてきたのに、車も一切使わないし、歴史にも触れないので、全くタイムスリップの意味がないし、どんでん返しらしきものもほとんどなかった。結局は脚本の大失敗なのだが、実にもったいない創り方をしたものである。


評:蔵研人


アンダー・ザ・ウォーター

★★★☆
製作:2017年 スウェーデン、デンマーク・フィンランド 上映時間:88分 監督:マックス・ケストナー

 珍しい北欧発のタイムトラベル系SF映画である。未来社会は薄暗いし全般的に地味で難解な映画なので、ハリウッド系のSF映画を期待すると失望するかもしれない。だが海に浮かぶタイムマシンや、未来に残る者と過去に跳ぶ者に分身するという発想は、いまだかつてなかったので新鮮に感じた。

 2095年。海面上昇で大陸は海に飲み込まれている。動植物は塩病にかかり絶滅していた。真水はぜいたく品である。今や時空移動が可能な時代。ただし実行できるのは量子網分離官(QEDA)だけである。彼らは2人に分裂でき現在と移動先とで繋がり合うのだ。

 という前置きでこの物語は始まる。主人公のファン・ルン大尉は、国防省の科学防衛の責任者である。時空移動を廃止するのが彼の任務だったが、秘密裏に量子網分離官(QEDA)となりふたりに分裂し、その一方が2017年へ時空移動を行った。その目的は海水を淡水化する研究データを持ち帰り世界を救うことであった。

 2017年で海水を淡水化する研究をしていたのは、モナという女性だった。ところが、なんと彼女は「ファン・ルンの妻の曾祖母」であった。そして彼女は飛行機事故に巻き込まれ、研究データも消えてしまうことになっていた。それでその前に、研究データの在り処を見つけて、それを未来に送るためにファン・ルンの分身がやって来たのだ。

 分身はそれなりに成果を上げるのだが、約束の時間を過ぎても未来に戻ってこないし、連絡も取れなくなってしまう。それに焦れたファン・ルンは、上司の反対を無視して、自らが2017年に時空移動をするのである。そこで彼が知ったことは・・・。

 なかなか見応えのある瑞々しい作品なのだが、一つだけはっきりしない部分がある。2017年に住む女性研究者モナのことである。本ブログでは、あえて彼女を「ファン・ルンの妻の曾祖母」と記したのだが、ネット評論の大半はなぜか「ファン・ルンの祖母」と説明しているのである。78年前だから、主人公とモナが同年代とし、約80歳の年の差があると考えれば、曾祖母と考えたほうがノーマルであろう。

 また映画の中では主人公がモナを見て、「お前のひいひいばあさん」とつぶやいているのだが、これも辻褄が逢わない。そしてお前のの、「お前」とは「妻よりも自分自身」を指しているように取れるので、モナのことを「ファン・ルンの祖母」と勘違いした人が多いのだろうか。
 ただそれだとモナとその娘が亡くなった瞬間にパラドックスが生じて、ファン・ルン自身も消失してしまうはずである。ところがファン・ルン自身はそのまま生き残り、自分の娘が描いたタトゥーだけが消えたのである。

 ということは、モナは「ファン・ルンの妻の曾祖母」でなければおかしいということになる。またラストシーンで、主人公が帰る場所がないと嘆いている。つまり帰りを待つ妻も娘も存在しないからである。
 さらにもしモナが自分自身の祖先なら、性的関係を結ぶはずもない。もしかすると「お前のひいひいばあさん」という字幕は、翻訳ミスだったのかもしれないね・・・。

評:蔵研人

パラレルワールド・ラブストーリー3

製作:2018年 日本 上映時間:108分 監督:森義隆

 原作となった東野圭吾の小説を読んだのは、もう20年以上前である。従って覚えているのは、冒頭での京浜東北線と山手線が並行して走るシーンだけなのだが、かなり面白く読ませてもらった記憶だけが残っている。
 だがなぜ今頃になって映画化されたのだろうか。と思いながらも、やはり好印象だった小説への想いに押されて、本作が観たくてたまらなくなったのである。

 ところが残念ながら、映画のほうはかなり期待外れだった。と言うよりは、なんだかよく分からないまま終盤に突入し、余りにも当たり前すぎる結末に拍子抜けしてしまったと言うべきかもしれない。やはり映像では単調になりがちで、小説だから面白かったのだろうか。或いはミスキャストによる消化不良だったのだろうか、はたまた私自身の感性の激変なのだろうか。それらを確認するには、もう一度小説を読み直してみるしかないよな・・・。

評:蔵研人

隠された時間4

製作:2016年 韓国 上映時間:130分 監督:オム・テファ

 母親が事故死して義父と一緒に離島で暮らすことになった小学生少女スリンは、新しい学校に馴染めず変人扱いされていた。ただ両親を亡くし施設に入所している少年ソンミンとだけは心を通わせることが出来た。
 ある日ソンミンの友達と一緒に立入禁止区域内にある洞窟に潜入し、そこで奇妙な卵のようなものを見つけるのだが・・・。スリンが洞窟から戻る前に、3人の少年たちがそれを割ると時間が止まってしまうのであった。

 数日前にやはり時間が止まってしまう『初恋ロスタイム』という邦画を観たばかりである。しかしながら、映像の美しさ、時間が止まった風景、綿密に練り込まれた脚本と、どれをとっても本作のほうが断トツに優れているではないか。
 さらに本作では時間を取り戻した後の「浦島太郎状態」がメインテーマであり、ファンタジーでありながら、世間での現実的かつ常識的な対処と主人公とヒロインの葛藤を巧みにブレンドしている。まさにこの分野では、韓国映画の面目躍如と言ったところだろうか。ただ穏やかでリリカルなラストシーンも悪くはないのだが、余りにも切な過ぎて感動の涙を流せなかったことだけが心残りである。


評:蔵研人

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