
著者:成田 名璃子
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本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。


















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著者:天沢夏月
10年後に掘り起こすと約束し、小学生のころに埋めたタイムカプセルが今開かれる。幼い頃のひらがなばかりの文字と正直で純真な文面が懐かしい。だがそこには懐かしさだけではなく、現実の悩みとリンクする心の叫びが染みついていた。
本書はタイムトラベル小説ではないが、タイムカプセルが「止まっていた心の時間を動かした」と考えれば、ある種のタイムトラベルなのかもしれない。
さてタイムカプセルに詰まっていた少年少女の熱い思いを、10年後の彼らはどう受け止めるのだろうか。それが6人の悩める高校生たちの運命を変えてゆくパワーを生み出すことになるのだろうか。そしてその主役の6人については、それぞれにパートが独立していて、彼らが抱える特殊事情や心理状況が鮮明に描かれているところが嬉しいね。
ひきこもりの少年少女、自分の意志をはっきりと伝えられない少女、自分の進むべき道を見つけられない少年などが主役である。そして青春時代の葛藤が巧みに綴られてゆく。だからこそ、若い読者たちはかなり共感できるのだろう。さらにはオープニングの「浅井千尋の章」と、ラストの「矢神耀の章」が、実に見事に繋がってゆくではないか。
また暗い主人公が多いのだが、全般的に優しい世界観に包まれており、最後は皆前向きでハッピーに包まれるので安心して読めるだろう。天沢夏月作品は何冊か読んでいるが、本作の出来が一番かもしれない。
評:蔵研人

★★★★
著者:百田尚樹
最近、神木隆之介と有村架純主演の同名映画を観たばかりなのだが、幾つか気になってたシーンがあり、それを確認するためにこの原作小説を読んだ。
死が近い人の体が透けて見える能力を知った木山慎一郎が、恋人・桐生葵と幸せな人生を送るか、二人の不幸を犠牲にして幼稚園児を含む大勢の命を救うのかの選択に迷い、葛藤してゆく姿を描いてゆく物語である。また言葉を変えて言えば、SF風味を漂わせながら、ミステリアスでヒューマニズムを追求したラブストーリー、という贅沢な小説なのだ。
慎一郎は、透けて見えた人を救うたびに自分自身の命が蝕まれてゆく。それなのに自分の命と恋人を裏切ってまで「見ず知らずの人を助ける」という気持ちが、私にはどうしても理解出来ない。確かに目の前に死にそうな人がいて、助けられるかもしれないのに、知らんぷりをするのは寝覚めが悪いかもしれない。
だが本作の中で医者の黒川が言ったように、そんなことをしても誰にも感謝されないし、場合によっては変質者扱いされ、結局自分の命を削ってしまうだけじゃないか。それにある人を助けたとしても、それが殺人犯だとすれば、その反動で別の人が被害に遭うかもしれないのだ。だから簡単に人の運命を変えてはならない。
またどうしても透ける人を見たくないのなら、外出時は濃いサングラスなどをして他人のことをなるべく見ないようにすれば良いではないか。それなのに慎一郎は外出の都度、キョロキョロし過ぎるし余計な行動が多すぎる。その慎一郎の神経質な心証に、ずっとイライラさせるところが本作の狙いなのかもしれない。だがラストがあれでは、救いどころがなさ過ぎて今ひとつ感動に結びつかないのだ。
また本書を読むきっかけとなった「映画の中での気になるシーン」だが、かなり映画のほうに脚色があり、原作を読んでも全く解消されなかった。やはり映画には多少荒唐無稽でも見た目の派手さが必要だし、逆に小説のほうは心理描写に力点を置くことになるのであろうか。
それから余計なことかもしれないが、本作の解説文には呆れてものも言えない。素人が気張りすぎたのかもしれないが、7頁の解説文の中にはほとんど本作の解説はなく、ただ百田氏の作品は全部おもしろいと記しているだけなのだ。
あとは本書と関係のない私事をパラパラ綴っているだけなのである。この解説文を書いたのは素人なので、ある程度仕方がないとしても、こんな雑文をそのまま解説文として載せた新潮社の編集者の罪は大きいのではないだろうか・・・。
評:蔵研人

著者:藤崎翔
著者の藤崎翔はお笑い芸人だったが、6年間活動した後にお笑いコンビを解消。その後バイトをしながら小説を執筆し、様々な文学賞に応募を続ける。そして4年後の2014年にはじめて書いた長編ミステリー『神様の裏の顔』で第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞して小説家デビューを果たす。 という苦労人タイプの小説家である。
本作は勉強嫌いでおっちょこちょいな笹森陽太と、学力抜群の相沢がコンビを組んで犯人探しをする学園ミステリーである。そしてストーリーは笹森の「俺」という一人称視点の軽いコミカルタッチで、まるで高校生の日記の如く飾り気なしにテンポ良く進んでゆく。なんとなくお笑いコントネタを小説にした感があるのだ。
さて主人公の笹森は、勉強も出来ないしスポーツもダメで、気が弱くていつも便利屋としてこき使われているのだが、ある日自分に特殊能力が秘められていることに気付く。その特殊能力とは、なんと「ひょっとこのような変顔をし、息を止めている時だけ時間を止めることが出来る」という信じられない超能力だった。
ただこんな動作は長続きしないため、時間を止めると言ってもせいぜい30秒くらいだ。だから時間を止めて、誰にもバレないうちに出来ることは殆どなかった。せいぜい女の子の後ろに回って時間を止めて、ちょこっとだけオッパイをもみもみする程度だけだろう。そう考えた笹森はさっそく意中の女子2人に対してもみもみ作戦を開始するのだが・・・。いずれにせよ、時間停止能力がつまらないことばかりに使われていて、もう一捻りが足りないところが非常に残念であった。
評:蔵研人