
★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:103分 監督:堂野アキノリ
タイトルだけを見ると右翼系の映画なのかと錯覚する人もいるかもしれない。だがここでいう“右”とは「右側の駐車場」のこと。左側の駐車場に停めた現実とは異なる運命が待っている───そんな寓意を含んだ物語である。
40歳の鷹介は、28歳の夏、仲間と海へ出かけた日の夢を見る。現実では左の駐車場に車を停めたはずが、夢の中では右の駐車場へと入ってしまう。その小さな違いのせいで、妻・水帆とは出会わないまま、まったく別の人生が始まってしまうのだ。
しかもその夢は朝になっても覚めず、そのまま鷹介の日常となる。気づけば彼は水帆とすれ違い、親友の修二と付き合うことに。これは夢ではなく、過去のパラレルワールドへタイムリープしたのかもしれない。
妻と結ばれなかった人生の中で、鷹介は“本当に大切なもの”を静かに見つめ直し、かつて諦めた音楽家への道に再び挑戦していく。
タイムリープやパラレルワールドといっても、伏線の回収やどんでん返しがあるわけではない。ただ淡々と、もうひとつの現実を歩むだけだ。しかし、鷹介が作曲した歌を熱唱する場面では、なぜか胸が熱くなり、涙が滲んでしまった。歌が上手いと思えば、演じた平松賢人さんは本職の歌手だと知り、妙に納得させられる。
ラストはよくあるパターンで、特筆すべき驚きはないものの、ある意味では“おまけのご褒美”のような温かさがある。出演者は津田寛治さん以外ほぼ無名だが、水帆を演じた高田夏帆さんの大きな瞳と笑顔は、作品に柔らかな光を添えていた。
評:蔵研人
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