消えた時間

製作:2020年 韓国 上映時間:105分 監督:チョン・ジニョン

 都会から閑静な田舎町へ移り住んだスヒョクとイヨン夫妻。スヒョクは小学校教師として穏やかな日々を送っていたが、村人たちはよそ者に冷たく、さらにイヨンの奇妙な行動に不安を募らせていた。ある夜、彼女の“異常な状態”が村中に知れ渡り、ついには夜間だけ鉄扉の部屋に閉じ込められるという、異様な状況へと追い込まれてしまう。

 やがてその家で不審火が発生し、夫婦は焼死。村人たちの証言の曖昧さ、現場の違和感に疑念を抱いた刑事ヒョングは聞き込みを続けるが、誰も真実を語ろうとしない。そんな中、彼は無理やり強い酒を飲まされ、気がつくと“別人”になっていた。村人たちが彼を「先生」と呼ぶことから、どうやら死んだスヒョクに成り代わってしまったらしい……。

 物語は説明のないまま進み、観客は次第に“ここはパラレルワールドなのか”という疑念を抱く。しかし、そもそもヒョングがなぜ異世界に転送されたのかは語られず、終盤になっても謎は解明されない。オチも回収もなく、死んだはずの村人が鹿へと変化する場面に至っては、象徴性すら読み取れず戸惑いだけが残る。

 さらに途中から唐突にヒョングへ主役が交代するにもかかわらず、彼の背景がほとんど語られない点も惜しい。アイデア自体は悪くなく、俳優陣の演技も堅実であるだけに、脚本をもう一段練り込めば、より深みのある作品になったのではないか。非常に惜しく、残念な一作であった。


評:蔵研人

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