アナザータイム
★★★☆
製作:2018年 米国 上映時間:89分 監督:トーマス・ヘネシー

 有能なアカウントマネジャーであるエリックは、高給取りでありながらも現実主義者で、狭い部屋に暮らし、当然マイカーも一台。将来に備えて着実に貯蓄を続けている。加えてイケメンとくれば女性に困るはずもないのだが、彼自身が心を動かされる出会いには恵まれてこなかった。

 そんな彼が、ある仕事でチームを組んだジュリアに“運命”を感じ、抑えきれない恋心を告白する。しかし彼女にはすでに婚約者がいた。「もっと早く知り合っていれば」と彼女は言うのだが、その言葉はエリックの胸に深く刺さる。

 意気消沈した彼は、宇宙科学の番組で“タイムトラベルは理論上可能だ”と語るゴイヤー博士のビデオを目にし、もしジュリアが婚約者と出会う前に自分と出会っていたら────そんな思いに取り憑かれていく。行方不明となっている博士を探すため、エリックは博士の故郷アリゾナへ向かう。

 こうして彼は5年前へのタイムトラベルを試みるのだが、その準備に費やされる時間が実に長い。過去へ跳んでからラストまではわずか15分ほどしか残されておらず、本作は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような冒険譚ではない。

 しかし、タイムトラベルの理論づけは意外なほどしっかりしている。過去といっても“同じ世界の過去”に戻るのではなく、タイトルの「アナザー」が示す通り、分岐したパラレルワールドの過去であり、元の世界には戻れない────その感覚が丁寧に描かれており、私はそこに好感を覚えた。

 終盤があっけないためかネットでは不評も多いが、私は途中で“そうなるのではないか”という予感のようなものが芽生え、むしろ静かな納得を得た。人生は一度きり。悔いのない生き方を選ぶべきだという、控えめながらも確かなメッセージが、そっと胸に残る作品だった。


評:蔵研人

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