トランス・フューチャー

製作:2020年 ブラジル 上映時間:99分 監督:ブルーノ・ビニ

 物理学者のダニエルは、ある夜、高層ビルの屋上で何者かに襲われ、瀕死の重傷を負う。目を覚ました彼の傍らには、愛する恋人の冷たい亡骸が横たわっていた。さらに、犯人と思しき男は「今度はもっと急げ」という謎めいた言葉を残し、闇へと身を投げるのだった。

 一体何が起きたのか、そしてこの不可解な言葉の意味は何なのか。ダニエルはもちろん、観客もまた謎の渦に巻き込まれていく。やがて彼は、自らの研究テーマであるタイムトラベル理論を完成させ、過去へと遡る決意を固める。愛する人を救うため、そして真実を掴むために。

 伏線の張り方は巧みで、物語としての構築力も見事である。しかし、全体に画面が薄暗く、映像的にはやや観づらい印象を受けた。また、タイムマシンの造形が簡素で、物語の壮大さに比してスケール感を欠いていたのが惜しい。さらに結末には、もう一段のひねりが欲しく、どこか尻切れトンボのような余韻を残す。

 それでも、本作が描く「過去と現在、愛と罪の交錯」は観る者の心を捉えて離さない。ダニエルの姉を演じた女優も印象的で、物語に一抹の温度を与えている。もしあと一歩の完成度があれば、名作と呼ぶにふさわしい作品となっていたかもしれない。


評:蔵研人
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