また君と出会う未来のために

★★★☆
著者:阿部 暁子

 仙台の大学に通う支倉爽太には「ある秘密」があった。九歳のころに海で溺れ、その瞬間に時を超えて2070年の世界へ迷い込んだことがあるのだ。現代に戻ったあとも、未来で助けてくれた女性を忘れられずにいたが、八宮和希という天才的なピアニスト青年に「自分も過去から来た人に会ったことがある」と告げられるのだった。
 この八宮和希は、前作『どこよりも遠い場所にいる君へ 』で主役だったので、本作はその続編というか亜流といった作品なのだろう。ただどちらを先に読んでも違和感は湧かないはずである。

 本作は全5章に分類され、仙台の会員制クラブでアルバイトをしている主人公の支倉爽太と、面倒見の良い先輩の尾崎幹也、そしてその友人である八宮和希との遭遇で始まる。そして和希は、爽太の同級生である圭と千晴と組んで、駅コンでピアノ四重奏を奏でて絶賛されることになるところまでが、「第一章 はぐれ三重奏とピアニスト」なのである。

 さらには「第二章 昔行った未来の話」では、爽太が九歳のころに海で溺れて2070年の世界へタイムスリップし、五鈴と言う女性に助けられた時の思い出話へ突入してゆく。またそれを受けて「第三章 過去のかけらが眠る島で」では、前作『どこよりも遠い場所にいる君へ 』で主役だった和希が、かつて過去からタイムスリップしてきた七緒と遭遇した島へ爽太を連れて二人旅をすることになる。

 そして「第四章 虚偽と祈り」では、未来の話で謎だった五鈴の正体などが解明されるのだが、だいたいぼくが想像していた通りだったのでそれほどの驚きや感動はなかった。とここまでは、優れた筆力を駆使していろいろな話を練り込んだバランスの良い小説という印象を受けた。
 ただ残念ながら「最終章 彼と彼女の未来のために」を一気に読み抜いたあとには、期待していたような高揚感が湧かなかったのだ。もちろん決して悪いエンディングではないのだが、何となく端折られたような気分が残って十分なカタルシスを得られなかったのが悲しいね。

評:蔵研人

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