
著者:アン・スチュアート 訳:米崎邦子
結婚式を目前に控えたスーザン・アポットは、誰もが羨むような聡明で礼儀正しく、未来に希望を抱く理想的な女性として描かれている。しかし物語の冒頭、彼女は珍しく苛立ちを見せる。母のメアリーや友人たちはそれを「マリッジブルー」と見なしていたが、実のところ、それ以上の違和感が彼女の中にくすぶっていた。婚約者エドワードは、裕福で愛情深く献身的な申し分のない男性だが、どうしても心が浮き立たないのである。
そんな折、名付け親ルイーザの使いと名乗る放浪者ジェイクが現れ、かつて伯母のタルーラが着たという一着のウェディングドレスを彼女に託す。
スーザンがそれを身にまとった瞬間、急に七色のまばゆい光が彼女を包み、気がつけば、50年前の世界へと迷い込んでいた。そこにはまだ少女だった母メアリーがいて、鏡に映る自分の姿は、かつて悲劇的な最期を迎えた伯母・タルーラだった。
スーザンがそれを身にまとった瞬間、急に七色のまばゆい光が彼女を包み、気がつけば、50年前の世界へと迷い込んでいた。そこにはまだ少女だった母メアリーがいて、鏡に映る自分の姿は、かつて悲劇的な最期を迎えた伯母・タルーラだった。
3日後に予定されているタルーラの結婚式。3日後の結婚式の日、彼女は列車事故で命を落とすと母のメアリーから聞いている。ではタルーラの心の中にタイムスリップしたスーザンの命も、あと3日間しかないことになる。
果たしてスーザンは、タルーラの中に入り込むことで何を成し遂げようとしているのか。運命を変えるためなのか、それとも何かを学ぶためなのか――。
果たしてスーザンは、タルーラの中に入り込むことで何を成し遂げようとしているのか。運命を変えるためなのか、それとも何かを学ぶためなのか――。
物語の展開はテンポよく、時空を越えるという設定もありながら、読者を置き去りにしない分かりやすさがある。ラブロマンスとしての要素もふんだんで、映像化にも耐えうる構成だと感じた。
一方で、主人公スーザンの人物造形にはやや違和感が残った。「理想的な女性」と紹介される彼女だが、実際には気が強く、どこか自信過剰な印象を受けたため、感情移入しにくかったのは否めない。その点で、彼女に魅力を感じづらく、なぜ複数の男性が彼女に惹かれるのか、説得力に欠けるようにも思えた。
とはいえ、全体としては軽やかに楽しめる一冊であり、読後感も悪くない。「毒にも薬にもならない」と切って捨てるには、やや惜しい。肩の力を抜いて読む分には十分に満足できる、小説としての魅力を備えている。
評:蔵研人
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