からくりアンモラル

著者:森奈津子

 「信じられるのはこの快感だけ」と腰巻に記され、切なく凛々しい性愛SF短編小説が9編収められている。いずれにせよ性を真っ向から描いたSF小説は珍しいのだが、タイトルと童画風の怪しいカバーイラストを見ればなんとなく中身が想像できるだろう。
 とりあえず簡単だが、本作に収録されている9編の紹介をしておこう

からくりアンモラル
 表題作で少女とロボットの恋、いやセックスを描いている
あたしを愛したあたしたち
 全くタイトル通り、未来や過去から来た自分自身とのセックスストーリーである
愛玩少年
 吸血鬼が人間を支配し、人間たちはセックスドールになっているという話
いなくなった猫の話
  正確には猫ではなく「猫人間」なのだが、猫の時間と人間の時間差がまるでタイムトラベルのように切なくなる話なのだ
繰り返される初夜の物語
 全裸でベッドに縛りつけられ大股開きの姿勢に固定され、客のやりたい放題にじっと耐えている少女。実は彼女は人間ではなく、毎日記憶を書き換えられているAI人形だった
一卵性
 双子の姉妹の異常性愛を描いているのだが、かなり暴力的で不愉快な雰囲気が漂ってくるのが気に入らない
レプリカント色ざん
  レプリカントとは精巧なアンドロイドのことだ。前作の一卵性と同じく、コピーされたレプリカントが共に愛した人間女性への復讐談である
ナルキッソスの娘
 13歳違いの父親は、女好きのするジゴロである。そんな内容の割には珍しく性描写がなく切ない話だった
罪と罰、そして
  子供のころ、美園を岩の上から滝壺に飛び込むように無理強いし、彼女を車椅子生活に追い込んだアサギの罪、そして10年後に美園からその罪に対する罰を受けるアサギの物語

 とにかくほとんど全編セックス描写が生々しく凄まじい。だから逆に全く興奮しないのだろうか。いまだかつて余り大手出版は扱わなかった作品であり、どちらかといえば同人小説とかネット小説の臭いがする。まあ著者が女性であることと、斬新なSFとして描いているということで出版できたのかもしれないね。

評:蔵研人