LOOP

製作:2016年 ハンガリー 上映時間:95分 監督:イシュティ・マダラース

 麻薬密売人のアダムが、ボスから預かった大量の麻薬を持ち逃げしようとするところから始まる。だが一緒に逃げようと思っていた恋人のアンナが妊娠してしまい、計画変更を余儀なくされる。ところがなぜか、アダムの企みに気付いたボスが部屋へやってきて、アダムを殺害してしまうのだ。そのうえ逃げていたアンナまでも、偶然ボスの車に撥ねられて死んでしまうのである。
 ここまでが大きな1ループで、何度も同じシーンを繰り返すことになる。もちろんこの連鎖を断ち切ろうとするアダムの行動変化によって、枝葉的な部分は少しずつ変化するものの、結果的には何度もアダムとアンナが死亡を繰り返すことになる。

 部分的には突っ込みどころがいくつもある作品であるが、そもそもタイム・ループそのものが荒唐無稽なことなので、ここでいちいち目くじらを立てることもないだろう。それよりも、どうすればこのループから抜け出せるのか、アダムとアンナは無事生還できるのか、といった興味が深々と湧いてくるのだ。
 そして終盤はそれらを見事に収束して、ほぼ満足な結末で締めくくっているではないか。ただなぜタイム・ループが起こったのかは、解明されないままなのだが、オープニングとラストに登場する地下鉄内のホームレスがそのカギを握っているような気がする。これもなかなか味のよいエンディングだ。
 それにしても欧州のタイム系映画は、似たような雰囲気の作品が多いよね。例えばスペインの『TIME CRIMES タイム クライムス』やドイツの『ザ・ドア 交差する世界』などにその傾向が見受けられ、いずれも私の好きな映画であることに変わりはない。

評:蔵研人