タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2026年07月

神回

神回

★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:88分 監督:中村貴一朗

 17歳の夏休み。文化祭の実行委員となった沖芝樹と加藤恵那は、高校の教室で待ち合わせをしていた。早めに到着した沖芝が机に顔を伏せて眠っていると、13時に恵那が現れ、彼を起こす。ところが13時5分になった瞬間、沖芝の周囲に異変が起こり、時間が再び13時へ巻き戻ってしまう。こうして、このたった5分間のループが延々と続くことになる。

 校舎の外へ出ても状況は変わらず、怪しそうな用務員や生徒会室を調べても手がかりはない。それどころか自殺しても、すべては5分前へ戻ってしまう。なぜ5分間なのか、何が原因なのか、まったく先が読めない。物語はほぼ同じ場所での5分間を繰り返すため、興味は“謎の解明と結末”へと一点に集中していく。

 やがて沖芝は恵那への強い好意と欲望を抑えきれず、衝動的に彼女に襲いかかってしまう。もしここでエッチを完遂してしまったら……。それではただのアダルトビデオに堕してしまう。しかしそれも叶わず、彼の想いは果てしなく一方通行のまま空回りしていく。

 終盤、病院のベッドシーンでようやくループの理由が明かされるが、その真相はあまりにも切なくて救いようがない。そして明るかった教室も暗がりに沈み、心には重たい靄がかかる。悲しい、実に悲しい物語だった。

 本作はアイデア重視のB級作品ではあるものの、沖芝役の青木柚の確かな演技力と、恵那を演じた坂ノ上茜の可憐さは大いに評価したい。ただ、5分間の繰り返しがあまりにも長く続くため、次第に退屈感が募る。もしループの長さを30分ほどにして、物語にもう少し幅を持たせていれば、より深みのある作品になったのではないだろうか。

評:蔵研人
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サマーハウス

サマーハウス
★★★☆
製作:2026年 トルコ 上映時間:105分 監督:エルデム・テペゴズ

 滅多に出会えないトルコ映画───しかも過去へのタイムトラベルを扱ったファンタジー作品という点で、まず驚かされる。

 21歳のセリンは我儘で職場に馴染めず、弁護士である母親から叱責される日々を送っている。ある日、古くなった母の実家を処分することになり、家の整理を任される。そこで見つけたのは、若い頃の母の写真や、亡き祖母の詩集だった。さらに近くの海で拾った美しい石を抱いて古いソファーで眠り込むと、目覚めた先は1996年の夏だった。寂れていた海岸は若者たちの歓声で満ち、まるで別世界のように輝いているではないか───。

 セリンはこの時代の祖父母や若き日の母と親しくなり、厳しかった母もかつては祖母に叱られていたことを知る。二人はいつしか心を通わせ、さらに将来の父となる男性まで姿を現すのだが……。

 果たして両親は、現実通り結ばれるのか。そしてセリンは現代へ戻れるのか。終盤には胸が締めつけられ、涙がにじむはずである。

評:蔵研人

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ジェニーの肖像4

ジェニーの肖像

製作:1947年 米国 上映時間:86分 監督:ウィリアム・ディターレ

 ロバート・ネイサンが1939年に発表した名作小説『ジェニーの肖像』を原作とする同名映画を、アマゾンプライムで鑑賞できたことに深い感動を覚えた。

 冬空の下、売れない画家イーベン・アダムスはセントラル・パークでジェニーと名乗る可憐な少女と出会う。彼女は、両親がハマースタイン劇場で綱渡りをしていると語る。しかしその劇場はすでに取り壊され、今は存在しない。語る内容も服装もどこか古めかしく、彼女はまるで“過去”から現れたようだった。やがてジェニーはマフラーを忘れたまま姿を消し、アダムスの心に不思議な余韻を残す。

 忘れられない彼女を思いながら描いたスケッチは、画商に高く評価され、アダムスは初めて作品を高価で買い取ってもらうことになる。
 数日後、スケート場で再会したジェニーは、わずかな時間で驚くほど成長していた。その後も逢瀬を重ねるたびに美しく成熟していく彼女に、アダムスは次第に心を奪われ、ついに彼女をモデルとした肖像画の制作に没頭する。しかし完成間近になったところで、ジェニーは再び姿を消してしまう。

 モデル不在のまま仕上げられた肖像画は大評判となり、アダムスは一躍画壇の寵児となる。だが彼はジェニーを忘れられず、彼女の行方を求めて尼僧院を訪れ、そこで思いもよらぬ事実に触れることになる……。

 モノクロ作品でありながら、ラストに映し出される『ジェニーの肖像』だけが美しいカラーで彩られている演出は圧巻である。時をめぐる切ない恋物語であり、同時に“肖像画という永遠”を描いた映画でもあった。まさに、この完成度の高い一枚の絵を見るための作品と言っても過言ではないだろう。

 さらに劇中のセリフも心を捉える。

「私が大きくなるまで、待っててくれますように」
「あの絵が教えてくれるわ。必要なのはあの子に感じたひらめきよ」
「妄想ではなく、ひらめきよ。大事なのは本当に逢ったかではないわ」
「君は時を超越した魅力を描き出した。少女の面影を残しつつ、不変の魅力がその顔に現れているんだ」

 こうした言葉の数々が、作品の余韻をさらに深くしていることも確かである。

評:蔵研人

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ペナルティループ3

ペナルティループ

製作:2024年 日本 上映時間:99分 監督:荒木伸二

 ある日突然、岩森淳の自宅に警察が訪れ、殺人事件の検視を依頼される。遺体は、朝元気に家を出たばかりの恋人・唯だった。犯人は溝口という男。しかもその溝口が、なぜか岩森の勤務先に車で現れる。復讐を決意した岩森は、衝動のまま溝口をナイフで滅多刺しにし、唯と同じように袋詰めにして川へ沈めてしまう。

 ところが翌朝、目覚めた岩森の前に広がっていたのは、昨日とまったく同じ世界。殺したはずの溝口も生きている。時間が“昨日”へ巻き戻っていることに気づいた岩森は、戸惑いながらも復讐を繰り返す。しかし何度殺しても、また同じ日に戻り、溝口も蘇るのだった。

 タイムループものといえば、大切な人の死を防ごうと奮闘するのが常道だが、本作はその“逆バージョン”と言えるだろう。ただし、伏線や回収はほとんどなく、同じパターンの繰り返しが続くため、次第に退屈さが募ってくる。物語が何を語りたいのか、その主題も最後まで見えてこない。またなんとなく薄気味悪く、全ての状況と行動が謎に塗れているので、タイムループものというより「世にも奇妙な物語」といえなくもない。

 いずれにせよ、なぜタイムループするのか、その仕組みは何なのか。なぜ犯人が溝口だと分かったのか。なぜ彼は勤務先に現れるのか。なぜ殺されることを予知したような反応を見せるのか。そしてラストの事故の意味は何なのか───。いずれも説明が不足しており、手抜き感が否めないのが残念であった。

 ただし、電子管理された広大な水耕栽培工場の映像は美しく、強い印象を残してくれた。あの舞台をもっと物語に活かせていれば、作品全体のスケール感も大きく広がったはずで、そこが何より惜しまれる。


評:蔵研人 

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ラブ・スタック~バグった人生で愛に出会う~

ラブストック
★★★☆
製作:2024年 タイ 上映時間:116分 監督:チョンドル・スクルワラパット

 2020年製作の米国映画『明日への地図を探して』をタイでリメイクした作品である。タイムループの“仕掛けの妙”だけで言えば、初見ということもありオリジナルに軍配が上がるが、物語としての面白さは本作のほうが勝っているかもしれない。また神木隆之介を思わせる、ハチャメチャに明るい主人公トイにも好感を抱いた。ヒロインもどこかで見たような美貌の持ち主だが、個人的には妹役の女優のほうが可愛らしく映ったのは、単なる趣味の問題だろう。

 お調子者のトイは、原因不明のタイムループに陥り、大みそかを何度も繰り返している。終わりのない“今日”から抜け出そうと悪戦苦闘する中で、謎めいた美女ウィーと出会う。彼女もまた同じループに囚われていたのだ。二人は協力してループから抜け出す方法を探るが、トイは次第にウィーへ惹かれていく。

 終盤でタイムループの原因が明かされるものの、それはあくまでウィーに関する理由であり、オリジナル同様、なぜトイがループに巻き込まれたのかは語られないまま物語は幕を閉じる。それでも映像は美しく、ストーリーも破綻なく進み、タイ映画の水準が確実に向上していることを実感させられた。


評:蔵研人
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右へいってしまった人

右に行った人
★★★☆
製作:2023年 日本 上映時間:103分 監督:堂野アキノリ

 タイトルだけを見ると右翼系の映画なのかと錯覚する人もいるかもしれない。だがここでいう“右”とは「右側の駐車場」のこと。左側の駐車場に停めた現実とは異なる運命が待っている───そんな寓意を含んだ物語である。

 40歳の鷹介は、28歳の夏、仲間と海へ出かけた日の夢を見る。現実では左の駐車場に車を停めたはずが、夢の中では右の駐車場へと入ってしまう。その小さな違いのせいで、妻・水帆とは出会わないまま、まったく別の人生が始まってしまうのだ。

 しかもその夢は朝になっても覚めず、そのまま鷹介の日常となる。気づけば彼は水帆とすれ違い、親友の修二と付き合うことに。これは夢ではなく、過去のパラレルワールドへタイムリープしたのかもしれない。
 妻と結ばれなかった人生の中で、鷹介は“本当に大切なもの”を静かに見つめ直し、かつて諦めた音楽家への道に再び挑戦していく。

 タイムリープやパラレルワールドといっても、伏線の回収やどんでん返しがあるわけではない。ただ淡々と、もうひとつの現実を歩むだけだ。しかし、鷹介が作曲した歌を熱唱する場面では、なぜか胸が熱くなり、涙が滲んでしまった。歌が上手いと思えば、演じた平松賢人さんは本職の歌手だと知り、妙に納得させられる。

 ラストはよくあるパターンで、特筆すべき驚きはないものの、ある意味では“おまけのご褒美”のような温かさがある。出演者は津田寛治さん以外ほぼ無名だが、水帆を演じた高田夏帆さんの大きな瞳と笑顔は、作品に柔らかな光を添えていた。

評:蔵研人

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