タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2026年02月

きょうの日はさようなら

きょうの日はさようなら

★★★☆
著者:一穂ミチ

 森山良子の『今日の日はさようなら』をもじったタイトルがまず目を引く。どんな物語なのかと文庫本を手に取ると、ブックカバーには昔ながらのセーラー服におさげ髪の女子高生が、駅のプラットホームに佇む姿が描かれていた。裏表紙には、次のような紹介文が記されている。

 2025年7月。高校生の明日子と双子の弟・日々人は、いとこがいること、そしてその彼女と一緒に暮らすことを父から唐突に知らされる。
 ただでさえ退屈な夏休みに、面倒ごとが増えるとあって二人はうんざりだ。いとこの存在に期待も興味もない。退屈な日常はそのまま続くかに思われた。
 けれど、彼女──今日子は、長い眠りから目覚めたばかりの“30年前の女子高生”だった……。

 1995年の夏、今日子の家族は火災で全員亡くなり、彼女だけが瀕死の状態で救い出された。その後、治療を受けたのちコールドスリープによる人口冬眠に入り、30年間“眠り姫”として時を止めていたという。外見は女子高生のままだが、実年齢は50歳近い"おばさん"なのである。
 それでも今日子は、入院中に現代の文化や生活背景を学んだこともあり、明日子や日々人と自然に接することができる。

 今日子にとって、目覚めた現代社会は『浦島太郎』やロバート・A・ハインラインの『夏への扉』の未来世界そのものだ。ただし違うのは、まだ30年後の世界であり、高校時代に付き合っていた恋人が今も生きているという点である。彼はすでに“おじさん”になっているが、どうしても逢いたい──そんな思いが、今日子の胸に静かに芽生え始める。

 父親と明日子・日々人の三人で暮らす門司家は、どこか家族関係がぎくしゃくしていた。そこに現れた今日子は、いとこでありながら、どこか“母親のような存在”でもあったのかもしれない。

 ポケベル、ソックタッチ、スーパーファミコン──懐かしい記憶の断片が物語に散りばめられ、軽やかでほんわかとした空気の中に、ふと切なさが漂う。

「きょうの日はさようなら」。そして、その先に続くのは「また逢う日まで」なのだろう。

評:蔵研人

にほんブログ村 その他趣味ブログ SF(趣味)へ
にほんブログ村

ラブ・アンド・タイムトラベル

ラブアンド

★★★☆
製作:2016年 ニュージーランド 上映時間:92分 監督:ヘイデン・J・ウェアル

 珍しいニュージーランド製の映画である。タイトルに掲げられた「タイムトラベル」という言葉に惹かれ、軽い気持ちで鑑賞したのだが、いわゆるタイムマシンが登場するわけでも、時空を自在に行き来する描写があるわけでもない。そのため、観賞中はその意味が掴めず、どこか腑に落ちない感覚が続いた。

 しかし物語の後半になって、主人公自身が五日前の自分に向けてメッセージを残していたことが明かされる。その瞬間、これまで曖昧だった出来事の輪郭が静かに結び直されていく。

 本作の核心は、文字通りの「時間移動」ではなく、時間を隔てた因果の連なりにあるのだろう。「タイムトラベル」という言葉は、その構造を象徴するメタファーに過ぎず、物語の中心に据えられているのは、恋愛と人間関係の微妙な揺らぎである。

 中盤までは明確な方向性が見えないまま物語が進むが、その間にも、ニュージーランドの美しい風景には何度も心を奪われる。また、淡々としていながら突如として激しさを見せる主人公の振る舞いも印象的で、気づけば終盤へと導かれていた。

 一般的な評価は決して高くないようだが、静かに観る者の内側へ入り込んでくる、不思議な魅力を備えた作品である。派手さはないが、ふとした拍子に思い出される──そんな「掘り出し物」と呼ぶにふさわしい一本かもしれない。

評:蔵研人
にほんブログ村 その他趣味ブログ SF(趣味)へ
にほんブログ村

ペリフェラル ~接続された未来~

ペリフェラル

★★★☆
2022年 米国ドラマ

 原作は、ウィリアム・ギブスンによるSF小説『The Peripheral』。
 テクノロジーが社会のあり方を大きく変貌させた2028年、アパラチア山脈の麓に広がる静かな田舎町に暮らす女性フリンは、仮想現実のゲームに没頭する日々を送っていた。だがある日、彼女は何の理由も告げられぬまま、現実世界で突然刺客に狙われる。

 実は、彼女が単なるVRゲームだと思い込んでいた世界は、70年後の未来そのものだった。フリンはゲームを進める過程で、自覚のないまま重大な機密情報を脳に移植されており、それを巡って未来のリサーチ機関の命を受けた刺客たちが、現在の彼女の命を狙っていたのである。

 主人公フリンを演じるのは、子役時代に『キック・アス』で鮮烈な印象を残したクロエ・グレース・モレッツ。活発さと知性を併せ持つ本作のヒロイン像は彼女に驚くほどよく似合い、まるで彼女のために用意された役柄であるかのようだ。

 ストーリーそのものの魅力もさることながら、特筆すべきは「未来に存在するアバターを操作することで時間を越える」というタイムトラベルの発想である。従来の時間移動SFとは一線を画すこのアイデアには、思わず心を打たれた。

 シーズン1は1話約1時間、全8話という構成で、米国ドラマとしては比較的コンパクトにまとまっている。その後シーズン2の製作も発表されたが、全米脚本家組合および俳優組合のストライキの影響を理由に、Amazonスタジオは最終的に制作中止を決定した。

 難解ながらも、クロエの存在感、美麗な映像、そして数多く残された謎に強く惹かれていただけに、物語が途中で断ち切られてしまったことは痛恨の極みである。これほどの世界観を提示しながら、完結を許されなかったことに、やり場のない悔しさを覚えずにはいられない。


評:蔵研人

にほんブログ村 その他趣味ブログ SF(趣味)へ
にほんブログ村
ギャラリー
  • メモリー 記憶の追体験
  • リバース 過去の代償
  • 私タイムトラベル出来るんです!
  • アナザー・タイム
  • 57秒 復讐のタイムループ
  • タイムシフト
  • 2300年から来た男
  • 一秒先の彼
  • 東京少女