タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2024年08月

アゲイン!! 全12巻

アゲイン
★★★☆

著者:久保ミツロウ

 著者の作品の多くは本作も含めて『週刊少年マガジン』へ連載しているし、名前も男名なのでてっきり男性漫画家だと思い込んでいた。ところがよくよく調べてみると、本名が久保美津子という48歳の女性だったのだ。また著者はかなりの遅筆で作品数も少ないのだが、代表作の『モテキ』が大ヒットし、TVドラマや実写映画化されている。

 本作は、3年間の高校生活を友達も出来ず部活にも入らず自堕落に生きてきた今村金一郎が、卒業式の日に急階段から転がり落ち、3年前の入学式の日にタイムスリップしてしまい、もう一度高校生活をやり直すというお話である。まあ最近ではよくあるストーリーなのだが、応援団員として活躍するというところがユニークかもしれない。
 さらにそのときの応援団長が美女だと言うところも珍しい設定である。と思ったら、よしづきくみちが本作より以前に『フレフレ少女』という女応援団長を描いたマンガを発表していたんだね……。

 もちろん応援団だけの話では退屈してしまうので、野球部の話や演劇部の話を絡めながら応援団の内情などを描いてゆく。画風は一見シリアス気味なのだが、あの『鬼滅の刃』同様、おバカなギャグ絵を織り込むという最近流行りの手法を用いている。
 登場人物も個性的でユニークなキャラばかりなので笑いながら読んでいるうちに、あっという間に読了してしまった。ただ最終回の話が分かり難く、中途半端な締めくくりだったのは残念だったな。
 またアゲイン後の今村が、余りにもモテモテで一体誰と結ばれるのかが興味深いのだが、なんとなく「なぜそんなにモテるんだ!」といった不自然感が湧いてきたことも否めなかった。たぶんある意味で『モテキ』の亜流作品なのかもしれないね。

評:蔵研人
 

時空旅行者の砂時計

 時空旅行者の砂時計
★★★☆
著者:方丈 貴恵

 序盤は主人公の加茂が瀕死の妻を救うため、謎の人物マイスター・ホラに導かれてタイムスリップするまでの経緯と、タイムスリップについてのいくつかのありきたりな蘊蓄が並ぶ。そのあとは加茂が探偵になりすまし、竜泉家で起こった二人の殺人事件について調査するという流れになる。舞台は1960年の竜泉家別荘で、登場人物は竜泉家の一族とその関係者という構成になっている。広い敷地と複雑な人間関係が絡む話なのだが、人物相関図や建物の図面などが挿入されているので分かり易くありがたかった。

 SFやファンタジーの匂いを振り撒いてはいるが、横溝正史 の長編推理小説『犬神家の一族』のオマージュ作品と言っても過言ではないだろう。ただ本作は真犯人を暴くだけではなく、閉ざされた館の中で起きた不可能犯罪の手法や犯行理由、さらにマイスター・ホラとは何者なのか、果たして加茂の妻は助かるのか、加茂は2018年に戻ることができるのか、といった諸々の謎の解明にも興味を惹かれてしまうはずである。

 もちろん終盤になれば、全ての疑問や犯人の動機などが明かされることになるのだが、タイムトラベル絡みのトリックはやや反則臭いし、次々に殺人が起きているのに、「全く警察に連絡しない」といった現実離れした展開にはやや馴染めなかった。まあ密室殺人をタイムトラベル手法を使ったパズルゲームに仕立てたミステリーと割り切って読めば、その巧みに準備された構成力には脱帽するしかないだろう。また爽やかで優しさの滲んだ締めくくり方にも、大いなる拍手を送りたい気分である。


評:蔵研人

そろそろタイムマシンで未来へ行けますか?

そろそろタイムマシン

★★★☆
著者:斎田興哉

 著者はJAXAにも勤務経験のある工学博士で、宇宙ビジネスのコンサルタントだという。だから本書は小説でもマンガでもない。タイトルを見る限りでは、タイムマシンやタイムトラベルの解説本なのかと勘違いしてしまうだろう。
 もちろんタイムトラベルやタイムマシンについての記載もあるのだが、それは30ある質疑応答の中の一つに過ぎない。本書の目的は、大人にも満足でき子供にも分かり易い「超・科学入門書」のようである。

 従って内容的にはタイムトラベルのほか、UFOや宇宙人の存在、不老不死の生物、アイアンマンのようなスーツ、透明人間、予知能力、サイボーグ、核融合、などについての現状と可能性を科学的に分析し分かり易く解説している。まあこのような超常現象やSFの世界を、大真面目に分かり易く科学的に説明した本は読んだことがなかったので新鮮であった。
 ある意味勉強になったところもあるが、ちょっぴり物足りなさを感じたことも否めない。ただ文章の中から著者の懸命な努力を感じたので、それなりに評価してあげたいと思う。

評:蔵研人

鳥類学者のファンタジア3

鳥類学者のファンタジア

原作:奥泉光 画:望月玲子

 不可思議な音階がジャズピアニスト・希梨子を時空を超える冒険に巻き込んでいく。……謎の音階を探して、現代から第二次大戦中のドイツへと時空を超える旅を描いたマンガなのだが、とにかく音楽と宇宙の蘊蓄が脈絡もなく混在し難解で、凡人の私には理解しがたい内容であった。

 それもそのはず、原作が芥川賞作家・奥泉光の小説だったのである。原作は未読であるが、マンガでさえ理解不能なので、小説はさらに難解なのだろうか、いやたぶんマンガには不向きの原作なのかもしれないね。……ごめんなさい、いずれにせよもうこれ以上は、評論を書く元気も喪失してしまったようだ。あーあ、マンガを読んでこれほど疲れたのは、生まれて初めてかもしれない。

評:蔵研人

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