
★★★☆
アニメ 監督:田口智久
長ったらしいタイトルだが、『夏へのトンネル』の部分は、多分ロバート・A・ハインラインの小説『夏への扉』のオマージュなのであろう。と言うことは、ぼくの大好きなタイムトラベル系のストーリーと言うことになる。だから小躍りしながら本作を鑑賞してみた。
ウラシマトンネルに入ると、なくしたものがなんでも手に入るという。ただしトンネルの中と外の世界では時間の進み方が大きく違っている。まさに竜宮城から帰った浦島太郎が、未来の世界に来てしまったのと同じことが起きるのである。だからトンネル内ではウロウロしていられない、急いで欲しいものを探し、全速力で戻らなければならないのだ。
主役は掴みどころがなくぼやっとしているように見え、いつまでも過去の事故を心の傷として抱える高校生・塔野カオルと、不愛想だが芯の通った態度を貫きながらも、理想像を求める女子高生・花城あんずである。
まず駅での二人の出会いに始まり、転校生ながらいじめっ子の同級生に強烈なパンチを見舞うあんずの行動に度肝を抜かれだろう。そしてカオルがみつけた謎のウラシマトンネルにもドキドキしてしまう。
ただそれ以外にほとんどストーリーが無く、というよりストーリー間の繋がりが見つけられず、いつも二人だけの世界に閉じこもっているため、余り深みを感じられなかったのが残念である。だから終盤になってウルウルしたものの、激しい涙の嵐には遭遇しなかった。そのあたりの修正と、ラストのどんでん返しを用意できたなら、もっと素晴らしい作品に仕上がったと思うのだが……。
評:蔵研人