タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2024年01月

スイート6ストーリーズ『恋するダイアリー』 4

スイート6ストーリーズ『恋するダイアリー』

 スイート6ストーリーズとは、6つの短編韓国ドラマのことを指す。15分程度にまとめられた話が約10話ほどで完結するので、時間を無駄に消費しないで済むので実にありがたい。米国のTVドラマのように45分ものを30話ほどで1シーズンとし、シーズン5まで続くようなものは、わざとらしい引き延ばしストーリーが多くてイライラが募るばかり。そのうえスポンサーの都合などで、途中で尻切れトンボになったりするものもあり、「時間を返してくれー!」と叫びたくなるときがあるからだ。
 さて本作『恋するダイアリー』は、やはり15分・10話完結の、時空を超えて愛する人を救う青年の奮闘を描いたラブファンタジー作品である。また主演は、韓国人気アイドルグループSHINeeのミンホとなっている。
 
 整形外科医のギョンフィ(ミンホ)は、高校時代に同級生からいじめを受けていた弱々しい青年だった。ある日大勢の前でズボンを脱がされる辱めを受け、耐え切れず自殺をしようとしたところ、転校生のナビの言葉で自殺を思いとどまる。
 その後彼はナビへ好意を寄せるようになるのだが、ある日突然ナビが自殺してしまうのだ。それから10年が経過し医師になった今も、ギョンフィはなぜナビが死んだのか分からないまま悩み続けていた。

 ところがある日、酒に酔ったギョンフィが街でナビらしき人物を見かけ、彼女が入ったドアを開けると、なんとそこは10年前の世界であった。なんだかドラえもんのどこでもドアみたいだな……。もちろん10年前に戻ったと言っても、意識だけが10年前の自分の中に戻ったと言ったほうがよいのかもしれない。さて、果たしてそこで彼は、ナビの自殺の原因を探り、彼女を守ることができるのだろうか、お楽しみ!じゃじゃんじゃん。

 そんな分かり易い展開に好感度がアップしてしまう。さらに突出した美人ではないものの、ナビを演じたイ・ユビの暗い雰囲気とスタイルの良さが、それとなく本作を盛り上げていたように感じた。まあラストにもう一捻りが欲しかったが、なんとかギリギリまとめたような気がしないでもないね。自分の好きなテーマだったので、ちょっと甘いかな……。

評:蔵研人

LOOP/ループ -時に囚われた男-4

LOOP

製作:2016年 ハンガリー 上映時間:95分 監督:イシュティ・マダラース

 麻薬密売人のアダムが、ボスから預かった大量の麻薬を持ち逃げしようとするところから始まる。だが一緒に逃げようと思っていた恋人のアンナが妊娠してしまい、計画変更を余儀なくされる。ところがなぜか、アダムの企みに気付いたボスが部屋へやってきて、アダムを殺害してしまうのだ。そのうえ逃げていたアンナまでも、偶然ボスの車に撥ねられて死んでしまうのである。
 ここまでが大きな1ループで、何度も同じシーンを繰り返すことになる。もちろんこの連鎖を断ち切ろうとするアダムの行動変化によって、枝葉的な部分は少しずつ変化するものの、結果的には何度もアダムとアンナが死亡を繰り返すことになる。

 部分的には突っ込みどころがいくつもある作品であるが、そもそもタイム・ループそのものが荒唐無稽なことなので、ここでいちいち目くじらを立てることもないだろう。それよりも、どうすればこのループから抜け出せるのか、アダムとアンナは無事生還できるのか、といった興味が深々と湧いてくるのだ。
 そして終盤はそれらを見事に収束して、ほぼ満足な結末で締めくくっているではないか。ただなぜタイム・ループが起こったのかは、解明されないままなのだが、オープニングとラストに登場する地下鉄内のホームレスがそのカギを握っているような気がする。これもなかなか味のよいエンディングだ。
 それにしても欧州のタイム系映画は、似たような雰囲気の作品が多いよね。例えばスペインの『TIME CRIMES タイム クライムス』やドイツの『ザ・ドア 交差する世界』などにその傾向が見受けられ、いずれも私の好きな映画であることに変わりはない。

評:蔵研人

ラ・ブレア

ラブレア

★★★☆
 米国のTVドラマである。タイトルの由来は、ロサンゼルス中心部のラ・ブレア地区で、突然道路が陥没して巨大なシンクホールが開き、多くの人々や車、建物などが瞬く間に落下するところからはじまるからであろう。
 TVドラマなのだが、とにかくスケールが大きい。ロスの巨大陥没穴は、単なる穴ではなくその下には、紀元前1万年前の世界が存在していたのだ。つまりパニック作品ではなく、タイムトラベルSF作品だったのである。

 あれだけ深い穴に落ちても、どうして人間だけが無傷なのか、なぜ古代人が英語を普通に話せるのか、愛している愛していると言いながら、なぜ簡単に浮気をしてしまうのか、などなど突っ込みどころ満載なのだが、謎が謎を呼ぶような展開に引きずり込まれて、ついつい次の話を観てしまうのだ。そして気が付いたら、シリーズ2が終了してしまった。日本でのシリーズ3開始日が分からないまま、イライラが募ってしまうのだ。

評:蔵研人

ハウンター3

ハウンター
製作:2013年 カナダ 上映時間:97分 監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ

 主人公はリサという高校生の少女なのだが、この話は彼女の誕生日前日がずっとループしているところから始まる。だからタイムループ作品なのかと勘違いしてしまったのだが、実は彼女は既に少女殺人鬼エドガーによって殺されていたというホラー作品なのであった。
 ただ余りにも同じことの繰り返しが多く、外には出られず家の中のシーンばかりなので中だるみしてしまうのだ。それに両親や兄弟が入れ替わったりと、なんだか異次元を彷徨うような展開にも、正直言って戸惑いうんざりしてしまった。

 ヴィンチェンゾ・ナタリ監督と言えば、「CUBE」が有名だが、本作もその流れを汲んで、なかなか家の外に出られないというシチュエーションなのであろうか。ただ同じ日が何度も繰り返したり、父親の性格が変貌したり、家族が入れ替わったり、といった謎についての丁寧な解説がなかっため、観賞後もなんとなくすっきりしなかった。私の読みが浅かったのかもしれないが、万人向けではなく不親切な作品であったような気がしたのは私だけであろうか……。
 
 
評:蔵研人

君が落とした青空3

君が落とした

製作:2022年 日本 上映時間:93分 監督:Yuki Saito

 原作は2010年に公開された櫻いいよのケータイ小説で、その後スターツ出版文庫として新装版が出版されている。
 基本的には学園ラブストーリーなのだが、事故に遭った恋人を救うためタイムループの中で何度もチャレンジする女子高生を描いて行く、というラブファンタジー系のような作品であった。

 高校生の実結と修弥は映画の趣味が一致し、付き合い始めて2年目になる。そして毎月1日には、必ず一緒に映画を観るというデートを重ねていた。ところが映画館のロビーで突然修弥に電話があり、彼は理由も言わずに急用ができたからと、デートを中断して実結を残したまま去ってしまう。
 その後、傷心の実結が帰路の途中、修弥からメールを受信して指定された時計台がある場所へ向かう。だがそこでトラックに轢かれそうになった実結をかばった修弥が撥ねられてしまう。その時時計台の針は午後7時を指していた。

 するといつの間にか実結は、自宅のベッドの中にいて、午前7時の目覚まし時計が鳴っているではないか。あれは夢だったのか、と考えたのだが、その後のあらゆる展開が夢と同じなのである。そして次の日も……。結局のところ実結は、毎日同じ1日を繰り返しているようなのだ。なぜそうなったのかは分からないのだが、彼女はなんとか修弥が事故に遭遇しないように努力する。だが結局事態はいつも好転せず、彼はどうしても事故から逃れられない。

 最近になってこうしたタイムリープ系の映画が数多く製作されているが、なんといってもその元祖は米国映画の『恋はデジャヴ』である。本作も序盤はそのセオリー通りの繰り返しパターンが描かれていたのだが、結論的にはタイムトラベルではなく、夢落ちという掟破りの手法だったのは非常に残念だ。だからどんでん返しもなければ、タイムパラドックスも生じない。それに主人公を含めたキャスト陣もいま一つな感があり、余りのめり込めなかったな……。

評:蔵研人

ベル・エポックでもう一度3

ベルエポック
製作:2019年 フランス・ベルギー 上映時間:115分 監督:ニコラ・ブドス

 自分が望む過去を映画撮影セットで再現する、と言う『体験型サービス』に、はまった老人の人生模様を描いたロマンティック・コメディーである。と言っても、タイムトラベル作品ではなく、あくまでも映画セットと俳優たちで過去を再現するサービスである。発想的にはなかなかユニークなのだが、ジャック・フィニイの『ふりだしに戻る』という小説の過去に戻る手法を参考にしたのかもしれない。

 進歩した現在を否定し、あくまでも過去に固執する元・売れっ子イラストレーターのヴィクトルは、今は職を失い妻にも見放されてしまう。そんな彼に孝行息子が、莫大な金がかかる『体験型エンターテイメントサービス』の招待券をプレゼントしてくれる。そしてヴィクトルが選んだ過去とは、愛する妻と巡り合った1974年のカフェであった……。

 序盤はなかなか興味深かい展開だったのだが、中盤以降は急にテンポが悪くなり、やや中だるみ感が漂い始めたのが残念であった。たぶん息子の友人でこの体験サービス会社を立ち上げたアントニーと、彼の恋人である女優の絡みが平行描写されたため、ストーリーの目的が分かり難くなってしまったからかもしれない。あくまでも本作では、ヴィクトルとその妻にだけに焦点を絞ったほうが、もっと感動を呼び込めたような気がするのだが……。


評:蔵研人

ウィンズ・オブ・ゴッド

ウィンズ・オブ・ゴッド
★★★☆
製作:1995年 日本 上映時間:97分 監督:奈良橋陽子

 売れない漫才師コンビ田代と金太は、交通事故のショックで、太平洋戦争中にタイムスリップし、なんとあの「神風特攻隊員」になっていたのである。ただしタイムスリップというよりは、魂が過去の人物と入れ替わったのだから、映画の中でも語られているように、「輪廻転生」の変形と考えたほうがよいのかもしれない。
 この過去の世界で、田代は戦争批判を繰り返し、独房に叩き込まれるのだが、純な金太のほうはだんだん過去の世界に馴染んでゆく。仲間の特攻隊員たちは、田代の説得にも応じず、家族や国を守るため次々に敵艦めがけて自爆してゆくのだった。そしてしまいには金太までが……。

 そもそも本作は1988年に今井雅之が舞台用に書き上げた戯曲なのだが、これが大好評を得て1995年に小説化・映画化されたものである。映画ではその今井雅之が田代役で主役を演じているのだが、残念ながら2015年に大腸がんのため54歳の若さで死亡している。
 
評:蔵研人

ぼくが処刑される未来

ぼくが処刑される
★★☆
製作:2012年 日本 上映時間:87分 監督:小中和哉

 自分の意見をはっきり言えず、ただ漠然と毎日を過ごしていた大学生の浅尾幸雄は、橋の上で酔っ払いが寝転んでいるのを見ていた時、突然まばゆい光に包まれてしまう。気が付くとそこは25年後の未来で、なんと警察の取調室で身柄を拘束されているではないか。
 彼は未来に罪を犯したという理由で未来にタイムワープさせられたのだが、未来の罪を償うため過去の彼が処刑されると言う奇妙な理屈なのだった。それを決めたのは、未来に開発された量子コンピューターで、その計算能力は神がかりで絶対に間違いがないと言うのである。

 テーマ的には興味深いし、福士蒼汰と吉沢亮が主演だと言うことで、本作を観る気になったのだが、余りにもチープ過ぎてがっかりしてしまった。低予算と言うこともあるが、脚本も悪いしタイムトラベルものの設定や展開などのルールも全く無視状態なのだ。そもそもドラマとしても失格なのに、これではタイムトラベルファンの心さえも掴めないよな。
 
評:蔵研人

君のためのタイムリープ 3

君のためのタイムリープ

製作:2017年 台湾 上映時間:104分 監督:シェ・チュンイー

 高校時代に『月球組』というバンドを結成していた5人組のボーカル・恩佩(エンペイ)は、その才能を認められて日本で活躍するのだが、落ちぶれてしまった挙句に若くして自殺してしまう。彼女の葬儀の後、5人組の一人だったジョンシャンは、路上で不思議な老婆から「一輪一晩」と言われて、三輪の玉蘭をもらう。そしてジョンシャンがその玉蘭の匂いをかぐと、なんと彼は高校時代にタイムリープしていたのである。
 高校時代なので当然だが、エンペイはまだ生きていて、必死でオーディションの練習をしていた。ジョンシャンはエンペイに死んで欲しくなくて、必死に彼女がデビューしない方法を考え邪魔をするのだが……。

 1997年の台湾が舞台なのだが、日本の風景も織り込まれており、安室奈美恵や小室哲哉や飯島愛に憧れている台湾の青年たちを観て、「そんな時代もあったなあ」と懐かしさがこみあげてきた。さらには『たまごっち』、『プリクラ』、『将太の寿司』などの日本カルチャーが満載なのだ。当時の台湾では、まだ日本が憧れの国だったのだろうか。
 決してつまらない映画ではないのだが、脚本が単純すぎるし、主人公とヒロインが余り魅力的ではなかったためか、中だるみ感を禁じえなかった。ただラスト前の15分間は、スクリーン全体に優しさが漂っていたよね。それにしてもその15分間のために、約100分間も我慢しなければならないのは辛過ぎるじゃないの……。

 
評:蔵研人

十二単衣を着た悪魔

12単衣

★★★☆
製作:2020年 米国 上映時間:112分 監督:黒木瞳

 エンドロールを見て監督がなんと女優の黒木瞳と言うことで驚いたのだが、彼女が監督した映画は本作が3作目で、最近まですでに4作を数えていたのである。もうすでにりっぱな映画監督ではないか。

 京大合格の弟に劣等感を抱くフリーターの伊藤雷が、ひょんなことから源氏物語の世界にタイムスリップする話である。さて彼がタイムスリップしたときに持参していたものは、スマホと源氏物語冊子と薬のサンプルだけだったのだが、なんとそれが全て役に立って平安時代に陰陽師として生きることになるのだった。
 そして彼は持参していた風邪薬で、ときの皇后だった弘徽殿女御を病から救うことになり、彼女に仕えて行くうちにだんだん平安時代にも慣れてくる。さらには妻をめとり、子まで設けることになり、元の世界には帰りたくなくなるのだった。
 
 源氏物語では悪女として知られた弘徽殿女御。さしずめ現代なら超やり手女社長といった雰囲気で、強靭な心と冷静な分析力で息子の一宮を帝にしようと野心に燃え続けるのだが、彼女こそ多分あの『プラダを着た悪魔』のメリル・ストリープと重ね合わされたのだろう。まさに本作は、そのオマージュとして創られた平安時代版『十二単衣を着た悪魔』なのであろう。
 
 原作はなんとまあ、あの内館牧子の『十二単衣を着た悪魔 源氏物語異聞』という長編小説だと知って二度びっくり。それにしても、ダメ男がタイムスリップしていろいろ経験を積むうちに成長してゆき、元の世界に戻ると、過去の世界にいた人とそっくりの人と巡り合う……というタイムトラベル系のお約束をしっかり守った王道作品だったよね。
 
 
評:蔵研人

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