タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2022年12月

時間離脱者

★★★☆

製作:2016年 韓国 上映時間:107分 監督:クァク・ジェヨン

 メガホンをとったのは『ラブストーリー』、『猟奇的な彼女』、『僕の彼女はサイボーグ』などで知られるクァク・ジェヨン監督であり、同監督としては2年振りの最新作である。ジャンル分けの難しい作品だが、大まかに括れば「ファンタジックスリラー」と言ったところであろうか。
 1983年1月1日と32年後の2015年1月1日の同時刻、同じ場所で同じように犯人から致命傷を受け、同じ病院に運ばれ、奇跡的に命を取り留めた二人の男性の物語である。

 過去の男は高校教師のジファンであり、未来の男のほうは刑事のゴヌであった。そしてその日から、ジファンは32年後のゴヌになった夢を見るのだが、ゴヌのほうも32年前のジファンになった夢を見るのである。
 こうして32年の時を隔てて、二人の話がパラレルに進行してゆくのだが、なんとさらに不思議なことに二人の彼女が全く瓜二つで、共に殺されてしまう運命なのであった。過去は回避できないものの、未来は何とかこの不幸な運命を回避しようと二人は協力することになるのだが、果たして運命を変えることが出来るのであろうか。

 実に練り込まれた複雑な脚本であり、出演者もチョ・ジョンソク、イム・スジョン、イ・ジヌクら韓国を代表する演技派俳優が集結している。ただ犯人が意外過ぎて因果関係に乏しく共感が得られないことと、まるでジェイソンやターミネーターのように不死身でしつこいところがかなり興ざめであった。このあたりの詰めが今一つ雑だったことが非常に残念であり、もったいないと思ったのは私だけであろうか。


評:蔵研人

ダレカガナカニイル…

★★★☆
著者:井上夢人

 話の中身は、タイトル通り自分の中から別の声が聞こえてくるという話である。その声が聞こえ始めたのは、新興宗教の教祖が焼死した直後だということで、その教祖が乗り移ったのではないかと推測しながらストーリーが展開してゆく。
 なんとなくホラー染みているが全く怖くない。どちらかと言えばオカルト風味がたっぷり漂ってくる。俄然興味はこの声の主は本当に教祖なのか、またこの声を追い出すことが出来るのか、さらには教祖は自殺したのか殺されたのか。もし他殺だとしたら一体誰が犯人なのだろうか、といったミステリーモードに染まってゆく。

 そして中盤以降の見せ場は、精神科医による催眠術の施術と、それによって「声」が目覚めるということ。また突然現れた教祖の娘とのラブストーリー展開にも、ワクワクとこころが奪われてしまう。さらにラストの着地では、オカルト風味が突如としてSF色に大転換というおまけまでついているのだ。
 約650頁に亘る長編であるが、全く苦も無く退屈せずに一気読みできた。それは本作が新興宗教批判にはじまり、ミステリー、オカルト、恋愛、SFを融合し、ジャンルを超越した面白さに支えられているからであろう。

 さて著者の井上夢人とは、漫画家の藤子不二雄同様コンビで岡嶋二人と名乗り、創作活動を続けていた井上泉と徳山諄一のうち、コンビ解消後の井上泉のことである。そして本作はそのデビュー作となるようだ。従ってデビュー作と言えども、すでにベテランの味がするのは当たり前なのである。まあ間違いなく面白いことは保証するが、終盤の説明なしの急展開は理解不能だし、こんな結末なら全体的にもう少し短くまとめられたのではないだろうか。

評:蔵研人

ザ・ドア 交差する世界

★★★☆

製作:2009年 ドイツ 上映時間:101分 監督:アノ・サオル

 近所に住む女と不倫をしているときに、娘を事故で亡くしてしまい、妻にも離縁され全てを失ってしまう画家のダビット。その後の5年間は、自暴自棄の生活を続け自殺を計るが失敗に終わる。
 ところが失意のどん底に落ち込んだ彼は、不思議なトンネルを発見しその先にあるドアを開けると、なんとそこは5年前の世界であった。そしてそこで彼は、5年前の彼が不倫相手の女の家に向かう後姿を観てしまうのである。

 だがすぐに娘の悲鳴を聞き、娘を救出するためプールのある庭に向かうのだった。プールでは娘が溺れかけていたが、今回は間一髪プールに飛び込んで、娘を救出することが出来たのである。
 ダビットは、助けた娘を寝かしつけてリビングで探し物をしていると、そこに過去の彼が戻って来るのだった。そしてストーリーは、ファンタジーからヒチコック風のスリラーへと急展開してゆくのである。

 はじめは摩訶不思議でファンタスティックな展開だったのだが、過去の自分との遭遇からは一挙にミステリアスな展開に終始することになる。私的にはどちらかと言えばファンタスティックなほうが好きなのだが、最近の傾向としてはスリリングな展開のほうが好まれるのだろうか。
 ラストはハッピーでもバッドエンドでもなく皮肉ぽい締め括りで終わっている。どちらかと言えば、タイムトラベル系というよりは、ミステリーゾーン系といったストーリー展開であった。まあこれはこれで面白かったのだが、期待していたものとはやや異なる感があったことも否めない。

作:蔵研人
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