タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2022年10月

初恋ロスタイム3

著者:仁科裕貴

 ある日、僕以外の時間が止まってしまった。それは平凡な高校生活を送る僕・相葉孝司に、唐突に訪れた特別すぎる青春であった。毎日午後1時35分になると、1時間だけ自分以外の時間が止まるのである。その時間を、僕はロスタイムと名付けた。そんな停止世界に突然現れた魅力的な少女・篠宮時音、僕は彼女に恋をしてしまう。それにしてもなぜ時間は止まるのか、また謎めいた少女が抱える大きな秘密とは……。

 時間を止められたら、下品なおじさんたちが考えるのは、たぶん泥棒とエッチなことに違いない。本作でもちょぴりエッチな想像があったけど、その前に早々と少女が登場してしまったので未遂に終わってしまった。
 いずれにせよ、本作はエロ小説ではないし、かと言って純粋なSFでもなく、とどのつまりややSF絡みの難病ラブストーリーと言った位置付けなのだろうか。そんな訳でSFとしても恋愛ものとしても中途半端で、ちょぴり物足りなさを感じたのは私だけであろうか……。
 なお本作は2019年に映画化されているが、その感想については下記を参照にされたし。
タイムトラベル 本と映画とマンガ : 初恋ロスタイム (livedoor.blog)


作:蔵研人

13時間前の未来4

著者:リチャード・ドイッチ

 何者かに最愛の妻を殺害され、そのうえ犯人容疑で警察に拘留されてしまうニック。無実を叫ぶものの、凶器に使われた拳銃にはニックの指紋が付着していたのである。そんなとき、混乱するニックの前に謎の初老の男が現れ「きみには12時間ある」言い残し、古い懐中時計を置いて去ってゆくのだった。
 なんとこの懐中時計は、一種のタイムマシンであり、1時間前の世界に戻って1時間経過すると、又2時間前へ戻る仕組みになっているのである。その度に、事件の真相に迫ってゆくのだが、協力してくれた友人などが殺されたり、妻が別の形で死んだりして、なかなか上手くゆかないのだ。

 過去に戻って何度もやり直すタイムループ作品は、小説では『リプレイ』、映画では『恋はデジャヴ』などに代表され、その他にも多くの作品が発表されている。だが本作は単純に同じ過去をやり直すのではなく、1時間前へさらに1時間前へと13時間前まで、1時間ずつ過去に向かってやり直してゆくところが実にユニークなのである。

 いずれにせよスピード感に溢れ、細かい捻りや趣向も随所にちりばめられており、息をつかせぬ連続ドラマを観ているかのようだった。またタイムトラベルあり、謎解きあり、アクションあり、恋愛ありの贅沢三昧な物語なのである。だから映画化される予定だったのだが、残念ながら今のところ製作された軌跡はないようだ。多分映画化するには長過ぎるので見送られたのかもしれない。しかし連続TVドラマならばピッタリカンカンなので、いずれはその方向で検討されることだろう。

 ただコアなSFファンの評価はいまひとつなのだが、そもそもタイムトラベル自体が荒唐無稽なのだから、余りむきになってタイムパラドックスや時間論を戦わせる必要はないと考えたい。なかなか馴染めない海外小説が多い中で、これほどスタートからスラスラと読み続けられた小説は珍しい。エンタメは面白ければよいので、クドクドとあら捜しをせず素直に楽しもうではないか。と言いながらも、ダンス刑事のしぶとさと悪知恵にはムカムカ・イライラが募ったね。

 さて著者のリチャード・ドイッチの本業は不動産投資関連の仕事で、執筆活動は夜の9時から午前3時までを当てているとのことである。彼はトライアスロン、スキー、スキューバダイビング、スカイダイビングなどをこなし、さらにギターとピアノの腕前を駆使して作曲まで手がけるスーパーマン振りを発揮しているらしい。

評:蔵研人
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