
著者:青山拓央
興味深いタイトルとデビュー作『タイムトラベルの哲学』が読み易く面白かった印象が強かったため、有無を言わず本書を手にしたのだが…。残念ながら本書はかなり読み辛く、内容についても「抽象論」に明け暮れ、「今」についての執拗な解釈論を展開するばかりで全く引き込まれないのだ。また残念ながら、タイトルの匂いを感じるような文章は、最後の数ページにしか見当たらなかった。
さて『タイムトラベルの哲学』は、著者がまだ大学院に在籍時に「哲学をブレンドしたタイムトラベル論」を、気取らずのびのびと記したためか、実に分かり易く面白かった。ところがそれから17年後に本書を記した頃は、結婚し京都大学の准教授となり、かなり驕りや気取りが見え隠れしている感がある。それが本書をつまらなくしている最大の原因かもしれない。
評:蔵研人