タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2020年01月

つくられた明日

★★★☆
著者:眉村卓

 タイムトラベルも絡んでくる学園SFミステリーである。氏名、生年月日、血液型、住所、職業、性別などを総合し、人間を260のタイプに分類し、それぞれのタイプごとにその年の全ての日についての出来事が記載されているという画期的な占い本が発売された。
 その本に記載された運命は、まるで未来予告のようにぴたりと当たるものだから、次第にマスコミも取り上げることになり、どんどん販売部数が増加してゆくのだった。

 ところがその本を手にした主人公の運命は、11月から先が空白となっていたのである。つまり彼は10月末に死亡するということなのだろうか。そんなことを悩んでいるうちに、主人公の親友と彼女が何者かに拉致され、行方不明になってしまうのである。
 占い本を発行しているのは誰だ、そして親友たちを拉致したのは誰か、さらにはそれらの真の目的は何なのか?。古い作品でかつジュニア向きなので、少し陳腐感が漂うのは否めないかもしれない。ただ低年齢層向けのジュブナイル小説としては、良くも悪くも無難な内容ではないだろうか。

評:蔵研人

復活の条件

★★★☆
著者:森村誠一

 飼い猫・ミーの毒殺事件を境に、それまで順調だった会社役員・石塚の人生は、大きく狂い始めてしまう。家庭の崩壊、家族や隣人の喪失、親会社の倒産と次々に不幸の嵐が駆け抜けてゆくのだった。
 失意のまま死を覚悟したとき、亡母の声に導かれて「人生再スタートライン」にタイムスリップすることになる。記憶は残ったままなので、同じミスを繰り返さず、ミーの殺害を食い止めて、不幸の連鎖から逃れて、幸福だった人生を取り戻そうとする。果たして石塚の新しい人生やり直しゲームは成功するのだろうか。

 ホームドラマからはじまり、SF、ミステリー、企業小説へと変化してゆく展開は一貫性がないとも言えるのだが、巧みにその全てが繋がって違和感のないストーリーに仕上がっている。ただタイムスリップものとして考えると、タイムパラドックもどんでん返しも、科学的な理論武装も、何もないのでかなり物足りない。
 まあ、人生のやり直しという部分にタイムスリップを利用しただけと考えたほうが良いだろう。結局は森村節の家庭と企業を抱き合わせたミステリー小説なのである。まあいずれにせよ、80歳近くになって、新しい手法に挑戦した森村御大の気概には敬服したい。

評:蔵研人

彼女はパートタイムトラベラー3

製作:2012年米国 上映時間:86分 監督:コリン・トレボロウ

 『私と一緒に過去に行ってくれる人を募集します。安全は保証しません。』という新聞広告に興味を持った雑誌記者のジェフは、出版社でインターンとして働くダリアスとアーナウを連れて、このおかしな広告の真相を探るため、広告主が住んでいると思われる田舎町へと取材に向かう。
 この広告主は、町のスーパーで働いているケネスと言う変人で、常に何者かの追跡に怯えたり、狂言ぐせのある難物であった。同じくちょっと変人で暗い女性のダリアスが、ケネスに近寄り広告応募者を偽ってその真相を探ることになる。はてさて本当にタイムマシンはあるのだろうか。

 低予算のB級映画であり、タイトルから推測するようなSF的な要素は全くなく、どちらかと言うとちょっと風変わりなラブコメと言った趣であった。この取材旅行で仕事をしているのは、ダリアスだけであり、ジェフは昔の彼女とのデートに夢中。もう一人のインド人アーナウは、童貞のオタク青年でただパソコンをいじっているだけなのだ。

 タイトルに引きずられて期待してしまうとがっかりすることになるが、はじめから別のジャンルの作品だと覚悟して観れば、それなりに楽しめるし、ラストシーンもので腹も立たないだろう。それにしても最近やたら期待を煽るような派手な邦題をつける洋画が多くて困っている。ちなみにこの作品の原題は『SAFETY NOT GUARANTEED』であり、広告文に記載されている『安全は保証しません』なのである。

評:蔵研人

未来の想い出 Last Christmas

★★★☆
製作:1992年 日本 上映時間:118分 監督:森田芳光

 まだ工藤静香と清水美砂が若かりし頃、およそ30年前の映画で、原作は藤子不二雄の漫画である。ただ漫画家の主人公がゴルフ場で偶然ホールインワンを達成したところで急死してしまい、その瞬間に10年前にタイムスリップ、これを三回リプレイするという流れ以外は、全く違う作品になってしまっている。

 また原作では主人公は男性一人であるが、映画のほうは工藤静香と清水美砂の二人が同時にリプレイする仕掛けになっている。まあ地味な中年男が主人公というより、若い美女二人が主人公というほうが映画受けするので当然の変更かもしれない。そして女性二人が主人公ということで、ストーリーも華やかな展開になってしまったのだろう。

 またこの作品で映画デビューした狂言の和泉元彌が素人染みた演技を披露しているほか、今や大物となった鈴木京香と唐沢寿明がチョイ役で出演しているところが笑える。さらには、今は亡き大御所漫画家の赤塚不二夫、石ノ森章太郎や、さいとう・たかを、つのだじろう、永井豪そして原作者の藤子不二雄なども顔を出すので、オールド漫画ファンは、思わずニヤリとしてしまうことだろう。

評:蔵研人

ジョン・カーター3

製作:2012年米国 上映時間:133分 監督:アンドリュー・スタントン

 この映画の原作は「ターザン」の作者が100年前に書いたアドベンチャー小説なのだという。はじめは「スター・ウォーズ」と「アバター」のパクリのような作品だと思ったのだが、じつはその逆であり、ジョージ・ルーカスやジェームズ・キャメロンのほうが、この小説の影響を受けたらしい。

 ただ残念なことに、背景や世界観が今一つ理解できなかったことと、ジョン・カーターを演じたテイラー・キッチュが、こうしたスペクタクル巨編の主役を演じるには、かなり物足りない体格だったことである。そのうえヒロインの王女デジャー・ソリスを演じたリン・コリンズにも女性的な魅力をほとんど感じられなかった。これはもう完全なミスキャストだったのではないだろうか。このあたりを改善していれば、もっと評価の高い面白い作品に仕上がっていたと思うのは私だけであろうか。

評:蔵研人

タイム・ウォーリアー2

製作:2013年米国 上映時間:93分 監督:ホアキン・ロドリゲス

 『アイアンマン2』のスタッフがVFXを手掛けたSFバトルアクション。というキャッチコピーにつられてレンタルしてしまったのだが、これまた酷いB級映画で、SFバトルアクションのシーンは、最初と最後に同じシーンがちょこっと出てくるだけだった。
 先日観た『パラレル・プラネット』同様、どうしてこの手の映画は箸にも棒にもかからない作品が多いのだろうか。事前に評価の低い映画だと分かっていても、ついついタイトルに惹かれて観てしまうところが、タイムトラベルマニアの悲しい性である。

 架空のゲーム世界が現実と重なり、それによって自分も父親同様『時空戦士』になるという壮大なストーリーなのだが、いかんせん低予算のため、『時空戦士』シーンはほとんどなし。どちらかと言えば、継母と継父を持つ少年同士の不満の吐け口ゴッコというイメージか・・・。
 だからと言って少年たちの葛藤を描くでもなし、現代米国社会を風刺しているという感性も見えない。また主人公が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティーよろしく、スケボーに乗って高校へ通うシーンには笑っちゃうよな。
 いずれにせよ、レンタル料よりも時間の無駄なので、もうこういったB級映画は観ないことにしたい!と宣言したいのだが、いずれ時が経てばまた「タイムトラベルもの」という謳い文句に騙されて観てしまうのだろうな…。

評:蔵研人

時の塔

★★★☆
著者:レイ・カミングス/川口正吉訳

 作者のカミングスは、1887年ニューヨーク生まれのSF作家であるが、なんとあの発明王エジソンの秘書を5年間務めたという。本作は1929年に書かれた古典SFである。
 「時の塔」と呼ばれる塔の形をしたタイムマシンで未来からやって来た少女が、悪人ターバーの病院に監禁されてしまう。それを主人公のエドと親友のアラン、そしてその妹のナネットが救い出すのだが、その代償にナネットがターバーに捕まってしまう。
 なぜかターバーもタイムマシンを所持しており、地球征服の野望に燃え、以前からナネットと結婚しようと目論んでいたのだ。ところが主人公のエドとナネットは相思相愛の仲であり、ナネットを取り返すべくエドとアランの長い旅路が始まるのであった。

 はじめはSFというよりも、こじんまりとした冒険小説のような佇まいであった。ところが太古の時代から超未来へ、そして未来でのターバーとの戦いが始まると、俄然スケールが大きくなってくる。映画にしても良いのではと思ったが、現代では古典SFとなってしまい、かなり古臭いストーリー展開なので、現代風にアレンジする必要があるかもしれない。
 またタイムトラベルものとしても、まだまだ単純でタイムパラドックスなども考慮されてあらず、単に冒険を広げるためにタイムマシンを利用しただけに留まっている。まあこの時代のSFなので仕方がないと言えばそれまでであるが、タイムトラベルファンには、ちょこっとばかり物足りないかもしれない。

評:蔵研人

パラレル・プラネット2

製作:2013年カナダ 上映時間:87分 監督:オースティン・ハインズ

 物理学者のピーターは、妻をほったらかして、毎晩のようにラボに閉じ籠ってある研究を続けていた。その結果子供のころに観た摩訶不思議な世界に再び遭遇することになる。それこそがパラレルワールドへの扉なのであった。
 と書くと、いかにも魅力的なストーリー展開を感じるのだが、はっきりいって何もないのだ。とにかく退屈な前置きが長過ぎるし、やっとパラレルワールドの登場かと思えば、現実の中の妄想とほとんど変わらない描写にがっかり。
 
 やはりSFは、湯水のごとく金をつぎ込んだハリウッド製でないと観るに堪えない。また低予算でもアイデアとかストーリーに奇抜さがあればそれなりに楽しめるのだが、そのあたりもクリア出来ていないところが悲しいね。どうも最近この手の映画は不作のような気がする。

評:蔵研人

時の重なる女3

製作:2009年イタリア 上映時間:95分 監督:ジュゼッペ・カポトンディ

 タイトルの「時」に釣られてレンタルしてしまったが、タイムトラベルものとはほど遠い作品だった。ジャンルとしては、ミステリー仕立てなのだが、あのデビット・リンチを彷彿させるような、幻想的で難解な作品でもあった。
 ただ結局は夢落ちというところが、かなり不満である。ただし単純な夢落ちに終わらず、そのあともストーリーは続いて行き、二重三重に張りめぐされた複雑なトラップで構成されているところは秀逸なのかもしれない。

 主人公でメイドのソニアがホテルの一室を掃除しに来た時、客らしい少女が「髪は下ろした方が素敵よ」と言って、窓から飛び降り自殺をする事件が勃発する。だが何事もなかったように別のシーンに移り、お見合いパーティでグイドと言う男性と知り合う。
 その後二人は深い関係となり、警備員のグイドが働いている邸宅でデートをする。するといきなり強盗に襲われてグイドは撃たれ、ソニアは意識を失ってしまうのである。

 そしてその後ソニアは目覚めるのだが、幻覚が続きノイローゼ気味になる。さらには行ったことのないブエノスアイレスで、グイドと一緒に写した写真が見つかったり、突然親友のメイド仲間が死んでしまったりと、訳の分からないことが次々に起こるのである。また何となくソニアやグイドと風貌の似た人物が登場するので、はじめはそれらがごっちゃになって余計に分かり辛くなってしまったようだ。

 一体何が真実で、何が幻想なのか、数々の謎の意味は何なのか、全てがソニアの深層心理での出来事だったのだろうか。そしてラストには大ドン伝返しが待っていたのだが、もしかしてそれも幻想なのかと疑ってしまったくらい気難しい作品であった。まあ良し悪しは別として、余り後味の良くない作品であることは否めないだろう。


評:蔵研人

冷たい校舎の時は止まる4

著者:辻村深月
 

 辻村深月のミステリーで、第31回メフィスト賞受賞作である。主な登場人物は、青南学院高校3年生10人程度。別段実話でもないのに、その中の一人に作者と同姓同名の「辻村深月」がいるのは笑えるよね。
 ストーリーは、雪の降るある日、いつも通りに登校した8人の高校生が学校に閉じ込められてしまう。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。寒々しい校舎の中からどうしても出ることができない。きっとこれは2ヶ月前に、学園祭の最中に死んだ同級生の精神世界の中なのだろうという推測。だが閉じ込められている8人全員が、その自殺した同級生の顔も名前も思い出せない。

 結局はこの自殺した同級生は、一体誰だったのだろうか、ということがこのミステリーの謎解きテーマである。それにしても、それだけのことを解明するために延々と物語は続いてゆくのだ。社会問題や恋愛などを描くわけでもなく、高校生の心理状態だけを克明に追いかけてゆく。普通の社会人にはかなり退屈な前半であった。ところが後半になって登場人物の過去の背景などが語られ、犯人らしき人物が登場してくると、俄然面白くなってくる。そして前半の10倍のスピードで一気に読み終わってしまった。まさに想像外の犯人とラストのどんでん返しは、流石にメフィスト賞受賞作だと唸ってしまった。

 もともとこの本を読むきっかけになったのは、タイトルの「時は止まる」がタイムトラベルものをイメージさせたからである。だがその期待は見事に裏切られてしまった。確かに時計は5時53分で止まっているのだが、それは同級生が自殺した時間であり、時を止めるというより幽霊の時間という感じだった。まあ犯人いや自殺した人物探し、ということではミステリーと言えるが、どちらかというと女子高校生たちの心理やいじめなどを巧みに描いた青春学園ドラマという趣でもあった。社会経験豊富な大人には、ちょっと物足りないが、中学生や高校生ならば大感動間違いなしであろう。

評:蔵研人

REPEAT リピート2

製作:2012年米国 上映時間:93分 監督:スティーヴン・R・モンロー

 原題は『MONIKA』、これは殺された女の名前だ。もしこのタイトルのままだったら、このDVDは借りなかったかもしれない。 
 邦題の『REPEAT リピート』をはじめ、キャッチコピーの「反復するビジョン」とか「昨夜死んだはずの女」とか「終わらない悪夢の連鎖」など、タイムトラベルマニアにとっては、かなり魅力的な言葉が羅列されている。その甘い言葉と、ポスターに釣られてレンタルしてしまったようだ。

 まあ日本劇場未公開という低予算B級作品なので、ある程度の期待外れは覚悟しなくてはならないだろう。案外、安モーテルが舞台というよくある場末パターンと、殺された女モニカに係る人間は皆殺されるという、暗くて悲惨なシチュエーションが、ネオハードボイルド感をそそってくれるかもしれない。そしてご覧のように、「死んだ女のポスター」もなかなか刺激的だ。はたして女は幽霊なのか、それとも時を超越した存在なのか。

 しかしながら、タイトルの『REPEAT リピート』に期待すると、かなり失望することになるだろう。さらにはラストの「掟破りの禁じ手」は、かなり行き詰まった卑怯な手段である。確かにキャッチコピーの「終わらない悪夢の連鎖」そのものなのだが…。DVDだから良いけど、観客を馬鹿にするのもいい加減にしてくれと言いたくなるよね。

評:蔵研人

未来からの恋人4

著者:リンダ・ハワード

 1985年、米国南部の穏やかな田舎町での出来事。郡庁舎の広場にタイムカプセルが埋められ、開封予定は百年後となっていた。ところが、わずか二十年後に、カプセルは何者かに掘り返され、同じ夜に弁護士が槍で突き殺されたのである。郡・捜査官ノックスは、殺害現場でFBIを名乗るニキータと出会うのだが、間髪をおかず何者かに狙撃されるのだった。

 実はニキータは、200年後の世界からタイムトラベルしてきた未来のFBI捜査官だったのである。はじめはその身分を隠していたのだが、殺人現場にいた不審者としてノックスに逮捕されたため、その身分を明かさざるを得なかった。幸いその場にはノックスしか居なかったため、未来人であることは二人の秘密にし、当面ニキータはノックスの家に泊まることになる。

 一つ屋根の下に男女が暮らし始めれば、何も起こらないはずがない。ましてやニキータは美女だしノックスはイケメンなのだから…。ある事情から最初はノックスのアタックを拒んでいたニキータだったが、緊張感の張りつめたある夜に、とうとう結ばれてしまうのだった。
 ここにいたるまでの展開はかなりダラダラしていてちょっと飽きていたのだが、二人が結ばれる晩あたりからは、急に話のテンポがよくなり、また殺人鬼の追撃がしつこくなりドキドキ感がヒートアップしてくる。それで一時も本を手放したくなくなり、一気に読み進めたくなってしまうのである。

 タイトルそのまま、基本的にはSFロマンス小説といってよいだろう。ノックスとニキータの二人が結ばれるまでの過程をなぞるのも楽しいが、私には未来社会での慣習や小物類の描き方もなかなか興味深かった。ただ未来と過去を行ったり来たりする訳ではないので、タイムパラドックスについては、ほとんど言及しないところが、タイムトラベルファンとしては、やや物足りないかもしれない。
 ただエピローグで、過去から200年後の未来に手紙が届くところは、なかなか洒落たエンディングだと思った。映画化にはおあつらえ向きの作品なので、いずれは映画化されるかもしれないね。今からそれが楽しみである。

評:蔵研人

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