製作:2009年 フランス他 上映時間:137分 監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル

 21世紀末の近未来では、人は死なない存在になっていた。そこでは肉は食わず、タバコも吸わず、セックスさえしない。そんな世界で最後の死ねる人間となったのが、ミスター・ノーバディ氏であった。
 彼は全ての記憶を失ってしまったのだが、死ぬ間際になって、催眠術により断片的な記憶を取り戻す。だがその記憶とは、もしあのときこうすれば、こうなっていたというパラレルワールドの世界だったのである。
 その原因となったのは、彼が5才のときに両親が離婚したことであり、そのときに彼が郊外に住む父親の元に残るか、母親と一緒に都会に出るかの厳しい選択だった。

 ここまでざっとあらすじを書いていると、あたかも分かり易い作品のようなのだが、実際にはかなり前衛的で難解な創り方をしているのである。従って最後までこの映画のメッセージを正確に受け止めることが出来なかった。
 だからといって決して駄作というわけではなく、それなりに面白いし、ヨーロッパ映画にしては製作費も使っているし映像も美しい。ただハリウッド風に時間の逆行やパラレルワールドという構成を意識し過ぎると、多少期待外れ感を抱くかもしれない。あくまでもヨーロッパ映画であることをお忘れなく。

評:蔵研人