著者:大沢在昌

 携帯電話配信で連載された小説だという。著者の大沢在昌の作品は初めて読んだのだが、私には余り縁のないハードボイルド系の『新宿鮫 無間人形』で第110回直木賞を受賞している。
 本作はハードボイルドではなく、ファンタジーなのだが、終盤になってヤクザが登場すると、それまでおとなしかった文章がたちまち活々としてきた。やっぱり著者はハードボイルド作家なんだね。

 ストーリーのほうは、未来世界から助けを求める「Jという名の少女」を救うため、物理学者・小説家・占い師・高校生・女子中学生の5人が結束して謎を追う、という展開である。なぜこの5人が選ばれたのかは、読んでのお楽しみだが、それぞれの特技を生かすためとだけ言っておこう。
 正直言って、SFとかファンタージーとしての完成度は余り高くはない。なんだか、大人を巻き込んだ「学園ミステリードラマ」といった香りもする。だが最終章を一般公募するという、画期的な企画により、ラストでだいぶSF色を施し、やっと少し挽回することが出来たようだ。

評:蔵研人