製作:2004年 日本 上映時間:98分 監督:内田けんじ
 
 2005年カンヌ国際映画祭評論家週間で4賞を受賞した話題作。だが自主製作映画という趣きの低予算作品で、無名の俳優と僅かな映画館での上映に限定されていたため、DVD化されるまでは、ほとんどその存在さえ知らなかった。話の内容は、どこにでもいる平凡なサラリーマンの一晩の体験という、シンプルな異色コメディーだ。

 ところが、ところがである。これがとてつもなく面白かったのだ!。男に捨てられた女、女に逃げられた男、探偵をしている親友、逃げた女の愛人であるヤクザの組長、そして逃げた女。この5人それぞれの視点でストーリーは時間を遡ったり、パラレルに進んだりしながら、がっちりと一つの輪のように繋がってゆく。
 この異なった視点とフラッシュバックによって、それまで謎めいていた事象が少しずつ解明されゆくのだ。玉手箱を開けたようなその道筋が楽しいし、それまでの恐怖感が苦笑に変わって、一人ほっとしたりする。

 なんと素晴しいアイデアと脚本力ではないか!。低予算でもこれだけの作品が創れるのだから、やはり映画は金だけじゃないということを再認識させられた。
 それからラストは、エンディングクレジットが終わるまでしっかり観よう。いかにも終了したかのような仮エンドがあり、そのあとに気になっていたシーンが入るからだ。 この本当のラストシーンは、たぶん賛否両論で、評価が真二つに別れるだろう。僕的には良かったのではと思う。

 ・・・と言うのも、あのラストシーンの彼女の行動は、二つの理由が考えられるからである。具体的に言うとネタバレになるので、はっきり書けないのが辛いのだが、是非DVDを観て確認して欲しい。
 本作は正当なタイムトラベル映画ではない。だが同じ時間の同じ場所なのに、視点を変えて見るだけで全く違って見えるものだ、ということを映像表現しているパズル的作品なので、ある意味でタイム・ループ的な位置づけと考えてみたのである。

評:蔵研人