著者:天沢夏月
舌を噛みそうな長ったらしいタイトルだが、まさに主人公の心象風景を全て吐露し尽くしているではないか。本書はSFというよりは、バリバリの学園恋愛小説である。ところが彼女が死んだ4年後に、過去の交換日記の空白に、新しい返事が綴られているのだった。そしてそこから再び『彼女との不思議な交換日記』が再開する、というファンタジックなお話なのである。
もしかして彼女は死んでいなかったのか、それとも霊界からのメッセージなのだろうか。いやいややっぱり彼女は死んでいて、この交換日記は過去との「タイムメール」なのだろうか・・・。だとするとあの韓国映画『イルマーレ』そのものである。
果たして主人公はこの交換日記で過去を変え、彼女を死から救うことが出来るのであろうか・・・。いろいろな疑惑と期待の中で、ストーリーは過去と現代を交互に紡ぎ始めるのだ。
高校2年の夏休み直前、図書室で知り合った背の低い女の子は、主人公より先輩の3年生。しかも心臓が弱くて1年留年しているため、実際は2歳年上のお姉さんだった。ペースメーカーを装着している彼女は携帯を持てない。それで二人は昔ながらの『交換日記』を始めるのである。そして夏祭りの日に主人公が彼女に愛を告白し、二人はつきあい始めることになるのだった。
それから二人にとっては、甘辛いラムネソーダのような40日間が流れてゆく。そして夏休みが終わる直前に、彼女が「海に行きたい」とはじめて我がままをいう。それが運命の別れ道となってしまうのだ。・・・・それから4年後、主人公はあのとき海に行ったことを、ずっとずっと後悔し続けていたのである。
甘く切ないラブファンタジーである。もう少し私が若かったら★★★★☆でも良かったのだが・・・。だから少なくとも20歳以下の若い人たちなら、大感動するに違いないだろう。
評:蔵研人