製作:2007年 日本 上映時間:107分 監督:荻島達也 主演:成海璃子、小出恵介

 1時間の時差があるケータイ電話の恋。まるで韓国映画『イルマーレ』のケータイ版じゃないか。原作者は映画化作品の多い人気作家の乙一であるが、小説のほうはまだ未読である。しかしこの映画を観て、原作のほうも無性に読みたくなってしまったのは、決して私だけではないだろう。

 話すことが嫌いで孤独な少女と、話したくとも言葉を持たない聾唖の青年のラブストーリーなのである。それをとり持つのが、道端に捨てられていた不思議な携帯電話だった。
 この電話は心で話す事で相手に通じるのである。だから聾唖者でも会話が出来ることになる。そのうえ電話器がなくとも大丈夫なのだ。それではなぜ携帯電話など拾う必要があったのかと言いたくなるが、たぶんこれはイメージなのだと考えるしかないだろう。

 この映画の見所は二つ。一つは壊れたものを丁寧に修理して、大切に使う聾唖青年の優しい心象風景。そしてもう一つは、終盤のタイムパラドックスへの挑戦である。1時間の時差が、ここで本領発揮するのだ。
 またもう一人のケータイ友達である「原田」の正体も同時に明かされる。その手際良さは実に見事な職人芸である。
 もしかすると始めに終わりありきで、終盤の数十分のために創られた作品なのだろうか。このあたりの感覚はあの絶品名作『いま、会いにゆきます』とも重なってくるのである。

評:蔵研人