著者:神林長平
映画は断然ハードSFに限るが、小説はどちらかと言えば、ソフトタッチのファンタジーのほうが好きである。しかしたまには、ハード系のSF小説も悪くはないね。本作はタイトルからしてガチガチのハードSFのように感じるが、同じハードでもハードボイルドタッチに仕上げられているので読み易かった。
未来の火星からやってきた主人公の邑谷武は、脳に組み込まれたTIPによって戦闘モードに変身すると、まるでターミネーターだ。そして敵の無期生命体マグザットは、マトリクッスに登場するイカ野郎のセンティネルを髣髴させられる。
また本作では、時間軸を行ったり来たりするのだが、機械の未来は人間の過去であり、人間の未来は機械の過去だという発想がユニークである。だからこそ、著者が渇望した「未来に原因のあるSF」が完成したのであろう。
評:蔵研人