著者:梶尾真治
ノーネーム(名無し)の逆さ綴り「EMANON」を通称とする少女「エマノン」。彼女は太古の時代からの記憶を持ち続けている。
だがその記憶は、子供を産むとその子に引き継がれ、自分自身の記憶からは消去されてしまうのだ。そして記憶を引き継いだ娘がエマノンとなり、全国放浪の旅に出る。
なかなか斬新なアイデアである。このエスパー少女を主人公にして、オムニバススタイルのショートストーリーが連なっている。本書にはタイトルの「おもいでエマノン」ほか全8作のストーリーが詰め込まれている。
著者の梶尾真治は、初めの「おもいでエマノン」だけで完結にするつもりだったらしい。そのあと好評を得たため、何となくエマノンを登場させているうちにシリーズとなってしまったようだ。
本作以外にも『さすらいエマノン』、『かりそめエマノン』、『まろうどエマノン』と、たて続けに出版されている。そして今も継続中である。小説のほうは無理に引き延ばしている感があり少し食傷気味かな。
だが鶴田謙二が描くカバーイラストがとてもいいね。亜麻色の長髪をなびかせた大きな瞳の少女は、エマノンのイメージぴったりだ。きっとこのイラストに惹かれて、この本を手にする人も多いことだろう。
評:蔵研人