製作:2006年 米国 上映時間:97分 監督:ダーレン・アロノフスキー 主演:ヒュー・ジャックマン

 10年以上前に製作された映画だが、ネットではかなり酷評が多く、本作の上映館もかなり少なかった。だから眠くなっても仕方がないと覚悟して劇場に入ったのだが、予想に反してかなり素晴しい作品であった。そのことを裏付けるが如く最終日にもかかわらず、当時の銀座テアトルでは座席の半数以上が埋まっていたことを記憶している。

 テ一マは生と死と愛。既に語り尽くされたテーマだが、人間にとっては永久に解けない命題でもある。
 時空を超えて三つの世界を生きる主人公。そしてファンタジックに輝く美しい映像。それは最愛の妻が書き残した物語なのか、それとも主人公の精神世界なのだろうか。

 ファウンテンとは、聖書に記された「生命の泉」のことである。癌に冒された妻を救うため、必死になってそれを探す主人公。一方妻のほうは、死を受け入れる決心を固め、書き残した最終章の完成だけを夫に託すのだった。

 究極的には生も死も超越し、「人と自然と宇宙」がひとつに融合するのだろうか。あるいは死こそ本来の生への入口なのか。そんなことを示唆するような作品で、改めて人の進むベく道を考えさせられた。
 そして何といっても、ヒュー・ジャックマンとレイチェル・ワイズの熱演が、ジンジンと観る側の心に響いてくるのだ。この映画は観る人によって感じることが、だいぶ異なるかもしれない。だが私にとっては、忘れていた「何か」を思い出させてくれた名作品であった。

評:蔵研人