著者:西澤保彦

 前半はかなり読み辛い。舞台が米国で固有名詞が憶え難いこともあるが、「死後編」と「生前編」の時間設定が異なることが原因であろう。
 次々とゾンビの館を訪れる女達。彼女達はゾンビ達に殺され、生前の記憶を消去され、ゾンビ達の仲間入りをする。しかしその割には、ゾンビ達は増えるどころか、だんだん減っているような感じなのだ。

 また生前の世界では、美貌の人妻クリスティンを取り巻く人々が、次々と殺害されてゆく。犯人はまるで『13日の金曜日』のジェイソンのような不気味な男のようだ・・・。
 なんだかよく判らないままに、「死後」と「生前」のストーリーがジグザグに進行してゆく。ミステリーとホラーをミックスしたような展開にドキドキするものの、やはり正直言って意味不明なのだ。

 ところが終盤になると、生前の連続殺人の謎が、まるで難解なパズルを解き明かすように一挙に解明される。実に凝りに凝りまくっていて、お見事としか言いようが無いが、さらにその後にも「ドンデン返しの扉」が幾重にも張り巡らされているのだ。
 圧倒的に見事な結末とは言え、前半の出来事の大半は霧のかなたである。それで結局もう一度ページを戻して再確認することになる。まるでメビウスの輪の内側を歩いているうちに、いつの間にか外側に出てしまったような気分である。ただラストの「あれ」は何を意味するのだろうか。

評:蔵研人