製作:2006年 米国 上映時間:107分 監督:フランク・コラチ 主演:アダム・サンドラー

 『クリック』という原題もつまらないが、この邦題もちょいと誤解を招き易いタイトルだ。つまり何度も昨日をやり直す、『ターン』あるいは『恋はデジャヴ』のようなストーリー展開なのかと勘違いしてしまうからである。

 この映画の流れは、仕事と家庭サービスの板挟みになったアダム・サンドラーが、ひょんなことから『人生万能リモコン』を手に入れ、人生を操るつもりが、実は操られてしまうという仕組みなのだ。
 この『人生万能リモコン』は、リモコンを向けた先が、TVであろうがガレージであろうが、はたまた動物でも人間でも何に対しても効力を発揮するのである。
 例えば、犬の声がうるさければ、リモコンを犬に向けて「消音ボタン」を押せば、犬の泣き声が聞こえなくなる。また面倒な事態が生じたら、「早送りボタン」を押せば、猛スポードで面倒な事態がスッ跳んで行くのだ。

 さらにはリモコンを自分に向けて「巻戻しボタン」を押せば過去に戻る事も出来る。まるでドラエモンの「ポケットタイムマシン」である。
 ただし未来には行けるものの、過去に戻るほうは、過去の映像を観ることしか出来ない。だからタイトルのように、昨日を選ぶ事は出来ないし、やり直しも利かないのだ。これがこの映画の最大のポイントになるのだから、冒頭で邦題のつけ方がおかしいと言ったのである。

 まあ・・・だからといって、この映画がつまらないわけではない。どちらかと言えば、かなり面白い映画だしリモコンのアイデアも見事である。
 また前半はコメディで、中盤のリモコンを使いまくる派手なシーンは、ジムキャリーの『マスク』を髣髴させられるだろう。そして後半はややシリアスタッチに変って、かなり泣かされる事になる。涙あり笑いあり、多彩な音楽にアクションとスピード感も満点と、まさにエンターティンメントの王道のような映画なのだ。
 そしてエンディングクレジットを観ながら、誰しもが主人公の人生を、自分の人生に重ね合わせ、しみじみとした気分になるであろう。ただ難を言えば、余りにも大味でご都合主義のアメリカンタッチである事と、家族全員が皆良い人ばかりなのが鼻につくかもしれない。

評:蔵研人