製作:2006年 米国 上映時間:98分 監督:アレハンドロ・アグレスティ 主演:キアヌ・リーヴス、サンドラ・ブロック
この映画は、2000年製作の韓国オリジナル版をハリウッドでリメイクしたものである。『イルマーレ』とは、イタリア語で”海”のことらしい。だからオリジナル版では、あの家は海辺に建っていた。
ところが米国版では、湖畔の家に変わっていたのである。従って『イルマーレ』は邦題で、原題は『The Lake House』となっていたのである。
テーマは“2年の時空を超えた文通恋愛“ということで一致しているが、バックボーンの設定には、かなり変更が加えられていた。
まず主役の二人だが、米国版はご存知『スピード』コンビの、キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックであるが、オリジナルはイ・ジョンジェとチョン・ジヒョンという一回り以上若いコンビでなのである。
ここでは若い二人が演じるオリジナルに、軍盃をあげたい。やはり“時空を超えた文通“などというは、当然純情な若者同士のほうが似合うからだ。
それでもあえてキアヌとサンドラを起用したのは、リメイクという名に対するヒガミだろうか。それで『スピード』以来の大物俳優コンビが、客寄せパンダに指名されたのかもしれない。
それから家の前に建つ時空を超えるポストだが、オリジナルではロマンチックなデザインでやや大きめのポストだったのに、米国版は何の変哲もない古ぼけた小さなポストなのだ。このポストこそ、この作品の本当の主役なのであるから、もう少し夢のあるデザインに出来なかったのだろうか。こんなところに、この監督のデリカシーのなさが顔を出してしまうのだ。
あと家のデザインもオリジナルのほうが良かった気がするが、これは好みの問題かもしれないし、オリジナルの家は少しキンキラキンかもしれない。
米国版がオリジナルに劣るようなことばかり書いてしまったが、やはり街の風景や音楽、そして全搬的な映像の美しさは、米国版のほうが断然素敵である。そして大人の味がする。だからデートで観るなら米国版のほうが、絶対に盛り上がるだろう。
恋する二人はポストでは繋がっているものの、文通が始まった時、キアヌが2004年、サンドラが2006年に住んでいるのだ。そしてスクリーンは2004年と2006年を行ったり来たりする。だからこの物語の流れを多少理解していないと、何が何やら判らなくなるかもしれない。
またオリジナルとの比較になってしまうが、オリジナルは2年の時空のズレによる悲恋を描き、全搬的に切なくリリカルロマンスの香りがする。そして二人はなかなか巡り逢いの扉を開くことが出来ないのだ。
一方の米国版は、あっさりと巡り逢ってしまい、彼女の居場所まで判ってしまうのだから、なぜすぐにアタックしなかったのかの疑問が残る。そして時空の違いに苦悩することも少なく、簡単に結ばれてしまったような気がするのだ。これは国民性の違いだと思うが、同じアジア民族としては韓国の感性のほうに同調してしまうのである。
また二人とも恋人らしき異性が存在しているのだが、どういう関係なのだろうか。また彼等の存在そのものに何か意味があったのだろうか。
最後にタイムトラべルものに必ずつきまとう”タイムパラドックス”について一言。ラストのドンデン返しには、エンドレスのグルグル回わりのタイムパラドックスが生じているが、難しく考えずにパラレルワールドの世界なのだと片付けてしまおう。但しオリジナルのほうは、パラレルワールドではなく、“リプレイ”なのだろうね。
評:蔵研人