作者:石川賢
柳生十兵衛が、パラレルワールドから攻めてくる魔人達を、バッタバッタと斬り捨ててゆく荒唐無稽な時代劇である。しかも敵の総大将は、徳川家康なのである。原作はあの山田風太郎であるが、なんと95%以上を石川賢流に大胆アレンジしてしまった。こうしたアレンジでは、夢枕獏の小説を自分流のマンガに変えてしまった、板垣恵介の『餓狼伝』があるがそれ以上の超改編アレンジなのだ。
未来と江戸時代が同居し、そこに超人・魔人が入り乱れて、戦争さながらの大活劇が始まる。それを石川賢が、例のグログロでド派手なタッチで描くのだから堪らない。時は忍者たちが支配する世界で、徳川家康はもちろんのこと、秀忠や家光さらには本多忠勝や佐々木小次郎まで忍者なのだ。
それにしても柳生十兵衛が、メチャメチャ強い。強いとなると、限りなく強くしてしまうのが石川流である。心理描写なんてどこにもない。ただひたすら強いだけなのである。それが永井豪を超えられない理由の一つかもしれないね。
ストーリーはだんだんエスカレートしてゆき、いよいよ御大・家康の出番かと思わせておいて、いきなり途中で終了してしまった。最近納得いかないまま終了してしまうマンガが多いのだが、このマンガは本当に話の途中で終ってしまったのである。
なにしろこれだけ大風呂敷を広げるだけ広げておいて、「あとは知らないよ」はないだろう。出版社の都合なのか、作者の都合なのか知らないが、全く失礼このうえない。読者をバカにするのもいい加減にしろと言いたい。
ところがこの作品、ネット上では熱烈な支持を受けている「魔化不思議な幻の作品」なのである。ただ現在絶版になっているため、どうしても読みたければ、中古本を購入するしかないだろう。
評:蔵研人