著者:平谷美樹
初めは著者の名前を、平谷美樹(ひらたに・みき)と読み違えてしまった。紛らわしい名前なのだが、著者の名は「ひらや・よしき」と読み、紛れもなき男性なのだという。彼は岩手県内の中学校美術教師をしていたが、2000年6月『エンデュミオンエンデュミオン』で作家デビューを果たしている。そして長篇SF『エリ・エリ』で第1回小松左京賞を受賞しており、最近では2014年に〈風の王国〉シリーズで第3回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞している。
さて簡単に本作のストーリーを紹介しよう。25才の医師である主人公高村哲哉が、中学時代に淡い恋心を抱いていた美鈴ちゃんを助けに、10年前の自分の意識にタイムスリップするお話である。そう!とっても可愛かった美鈴ちゃんは、中学3年生のときに、「ある事故」に遭遇してうら若き命を失ってしまったのだ。
ところが、せっかくタイムスリップに成功したのに、皮肉にも美鈴の死にまつわる記憶を失ってしまった主人公。さて一体どうやって美鈴ちゃんを救うのだろうか。ペペンペンペン!。
タイムスリップする中学校は東北にあり、ラストのクライマックスは三陸海岸の近くである。なぜこの場所を舞台に選んだのか、もちろん著者の居住地ということもあるが、実は過去のニュースを調べれば判るのだが・・・。いやネタバレになるのでここでは秘密にしておこう。
この作品はジュヴナイルSFであり、中学生や高校生を対象として書かれているようだ。従って清純で素直で嫌味がないし、ラストは皆んな幸せになる。それが大人にはやや物足りないかもしれないが、甘酸っぱさに、ハラハラ風味をブレンドした青春ドリンクもたまには良いだろう。ただ残念ながら本書は絶版となっており、図書館で探すか中古本を購入するしか手だてはないのだ。
評:蔵研人