著者:折原みと
 電車の中で少女向けの講談社X文庫を読み、おじさんはかなり恥ずかしかった。だってカバーを見ればわかるけど、少女マンガ家でもある著者が描いた『瞳の大きな女の子のイラスト』が、堂々と大きく描かれているからである。

 さてストーリーのほうは、映画の撮影中に、アイドル女優である日米ハーフの少女が、原爆が落とされる1ヵ月前の広島にタイムスリップするところから始まる。そしてそこで、同い年でありながらも、心優しく正義感の強い青年と知り合い、恋に落ちてゆくというお話である。所々にイラストが挿入してあるページもあるし、文体も平易で大変読み易いと感じた。

 さてネタばれになるため、ラストシーンの詳細は秘密なのだが、巧みに過去と現在を結合して締めくくっているところが見事であった。また当時の人々の純な気持ちが伝わってきて、誰もがジ~ンと心を打たれてしまうだろう。何年経っても大切なものは変わらない。少女向けの小説とはいえ、決して侮れないのである。

評:蔵研人