著者:高野和明

 なぜか他人の非日常未来が見えてしまう「予言者」山葉圭史が絡むオムニバス中編集である。タイトル作品のほか『時の魔法使い』、『恋をしてはいけない日』、『ドールハウスのダンサー』、『3時間後に君は死ぬ』の5作を収録している。1~4話までは若い女性が主人公で、圭史はそれを助ける役割となる。SFと言うよりは、サスペンス、ミステリー、ファンタジーという趣であった。

 また『3時間に君は死ぬ』は、タイトルの『6時間後に君は死ぬ』の完全続編で、5年前に出逢った山葉圭史と原田美緒が再会を果たす。そして3時間後に起こる大惨事を食い止めようと、ハラハラドキドキの探索を行うのである。続編でありながらも、『6時間後に君は死ぬ』よりずっと面白かった。

 『時の魔法使い』と『恋をしてはいけない日』は、まるで梶尾真治の描く時間テーマラブファンタジーを髣髴させられる。もしかすると著者も梶尾真治のファンなのだろうか・・・。
 私的に一番感銘を受けたのが、『ドールハウスのダンサー』で、現実を人形に置き換えたかのような魔可不思議な世界に惹き込まれてしまった。
 主役というわけではないが、全編を通じて登場するのが、ビジョンという予知能力を持つ山葉圭史であり、この中編小説のアテンダーでもある。代表作『13階段』を書いた高野和明とは全く別人のような話の展開に、思わず著者の貪欲さと懐の広さを感じてしまった。

評:蔵研人