
製作:2005年 日本 上映時間:107分 監督:本広克行 主演:瑛太、上野樹里
ある程度の内容がわかっていて、かつタイムトラべルに興味がある人でないと、全く見向きもしないB級映画だ。多分興行成績は、惨澹たるものだったろうな・・・。それを乗り越えて、この映画を作った人は実に偉い!
前半は途中で画面が真っ暗になるシーンがいくつかあり、受けの悪いドタバタギャグが続くので、うんざりしてしまった。ただこの真っ暗になるシーンが、後半に種明かしされる「問題の事件」があった部分なのだから仕方ないのだが・・・。
ところが中盤にタイムマシンが登場してから、この作品は俄然面白くなるので、それまでは絶対投げずに我慢して観ていて欲しい。しかしこのタイムマシンに乗って、25年後の未来からやってくる田村君のなんとダサイこと。着ている服もへアースタイルも、未来人というより、逆に一昔前の人のようなのだ。しかし、彼のほのぼのとした人柄と、このダサいスタイルがマッチして、この作品ならではのいい味を出していたと思う。
また未来人のくせにデジカメでなく、アナログの古いカメラをぶら下げていたのも変な感じなのだが、これはラストの「落ち」に繋がる小道具ということで、納得するしかないだろう。
それにしても自転車のようなタイムマシンを使って1日前に戻るだけのお話なのだが、この中にはタイムパラドックスや、時間流のねじれ現象などが、面白おかしく見事に描かれているので、なかなか見応えがあるのだ。
この作品を作った人は、H・Gウェルズの『タイムマシン』と、ロバート・A・ハインラインの『時の門』、広瀬正の『マイナスゼロ』が、きっと大好きな人なのだろうなと確信してしまった。
特に「昨日と今日の瑛太」と「カッパの謎」と「リモコンの時間旅行」は、なかなか凝ったアイデアだ。ひとつ理屈が合わなかったのは、ラスト近くに屋上で別れたはずの田村が、どうしてタイムマシンごと部室に戻ったのかということ。
本来なら、タイムマシンで屋上に戻ってから、歩いて部室へ行かねばならないのだが、それでは格好がつかないので、あえてああいう形をとったのだろうか。このあたりのシーンには、バック・トゥ・ザ・フューチャーの影響を感じるね。
製作費の少ない、コミカルでファンタジックな作品ではあるが、今までに余り観た事のない珍しい、そして面白い映画だった。あっ、そうそう言い忘れたが、上野樹里ちゃんが、いつもよりずっと可愛く感じたのは何故だろうか。
評:蔵研人