
★★★☆
製作:2016年(日本)/上映時間:126分/監督:松山博昭
原作は石井あゆみによる同名マンガ。第57回小学館漫画賞(少年向け部門)を受賞し、「全国書店員が選んだおすすめコミック2012」でも第7位にランクイン。2016年9月時点で累計発行部数は450万部を超えるなど、まさに一大ヒット作となった。アニメ、実写ドラマ、そしてこの映画版と、三つのメディアで同時展開された点も異例だ。
本作はその実写ドラマ版の続編にあたり、キャストも続投されているため、ドラマ未視聴の観客には若干ハードルが高い部分があるかもしれない。しかし、そこは“織田信長”という誰もが知る歴史上の人物の物語。背景が多少分からずとも、大筋は自然と飲み込めてしまうだろう。
物語は、現代の高校生・サブローが突如戦国時代にタイムスリップし、瓜二つの織田信長と出会うところから始まる。気弱な本物の信長は、自分の代わりに“信長”として生きてくれと頼み、姿を消してしまう。
歴史の知識もなく、戦を嫌うサブローは、「平和な世を作りたい」という思いだけで、この時代で信長として生きることを決意する。しかし彼は、本能寺の変で信長が死ぬ運命にあることさえ知らないのだった……。
この設定だけでも十分ユニークだが、本作の面白さは「歴史をなぞるのか、それとも変えるのか?」という問いに終始するところにある。歴史の枠を超えた展開、パラレルワールド的な視点、そして主人公たちの心情の揺らぎが、物語に奥行きを与えている。
なかでも、小栗旬演じるサブローと、柴咲コウ演じる帰蝶との戦国風ラブストーリーは、戦国という時代背景の中にささやかな人間ドラマを刻んでおり、終盤のどんでん返しと相まって、観終わった後には不意に胸が熱くなる。単なる歴史フィクションではなく、「信長とは何か」「生きるとはどういうことか」を問いかける一作だった。
評:蔵研人