タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

死後

月の満ち欠け

【Amazon.co.jp限定】『月の満ち欠け』通常版DVD ※特典 : ペーパーコースター 付き [DVD]
★★★☆
著者:佐藤正午

 佐藤正午の作品を読むのは今回で二回目である。初めて読んだのは『Y』という小説なのだが、その妙な『Y』というタイトルの意味は、人生の分岐点と考えるらしい。あの日あのとき、もし別の選択をしていたら、現状とは全く異なる人生を歩んだかもしれない……。つまり「あの時に戻ってやり直しをしたい」という、人間の永遠のテーマを描いたファンタジックなストーリーであった。

 一方本作のほうは、輪廻転生のスピリチュアル・ラブ・ストーリーで、三人の男性と月の満ち欠けのように何度も生まれ変わるヒロイン瑠璃が紡ぐ30余年におよぶ時の流れと、さまよい続ける魂の物語といえるだろう。なお本作は第157回直木賞受賞作品であり、2022年に大泉洋、有村架純などのキャスティングで映画化されている。映画のほうは本作を読んでから気付いたため、残念ながら今のところは未鑑賞であるが、できればすぐにでもDVDで観賞したいものである。

 とにかく本作はパズルのような時間の繋ぎ方をしながら進行してゆくため、じっくり読んでゆかないと登場人物たちの関連性を把握できない。できれば登場人物の相関図を創って欲しかったよね。ただ結末が気になって気になって、終盤は猛スピードで読み切ってしまった。その割りにはややあっけない結末だと感じたのは、私の読解力が不足しているためであろうか。もしかすると、二度読みする必要があるのかもしれない……。


評:蔵研人

奇蹟の輝き4

著者:リチャード・マシスン

 短編ホラー作家のリチャード・マシスンが書いた二つの超次元恋愛長編小説のうちの一冊である。もう一冊はタイムトラベル恋愛小説の『ある日どこかで』で、両方とも映画化されている。
 本作は不慮の事故で命を落とした主人公クリスが「常夏の国」と呼ばれる天国へ辿り着くのだが、毎日のように最愛の妻アンのことばかり気になって落ち着かない状況が続く。そんな折現世では、やはり最愛の夫を亡くしたショックから立ち直れない妻のアンが自殺をしてしまうのだった。

 悲しいことに自殺をした者はすぐには天国へ向かうことが出来ない。そして長期間に亘って、自分の創り出した闇の世界である地獄に閉じ籠ってしまうのだ。
 そのことを知ったクリスは、愛するアンを地獄から助け出すために、恐ろしい闇の世界へと旅立つのである。だがその難行は未だかつて誰も成功したことがなかった。そして事実クリスも地獄では多くの苦難に遭遇し、やっと逢えたアンにも自分の存在を認めてもらえず、挫けそうになるのだった。

 熱烈な恋愛小説仕立てに調理しながら、実は『死後の世界』を科学的に説明してゆく構成は、かなりユニークな実験的手法と言えよう。そして見事にまとめられた思想的背景は、スウェーデン王国出身の科学者スウェーデンボルグが語った死後世界を彷彿させられる。またギリシャ神話や仏教にも染まっているように感じられる。

 いずれにせよ、死は誰にでも訪れるものである。だからこそ死に対して無頓着な人は少ないはず。本書は『死後世界の入門書』として、あるいは『死を恐れないための護符の書』として、全世界の人々にとって大いに役に立つはずである。死後世界について興味のある方、また逆に死後世界の存在を全く認めない方たちに、本書を一読されることをお薦めしたい。

 さて映画のほうはロビン・ウイリアムスの主演で1998年に上映されている。そしてクリストファー・リーヴ主演の『ある日どこかで』と同様かなり高評価のようだ。私はまだ映画化された『奇蹟の輝き』のほうは未観なので、是非ともレンタル屋でDVDを探し出そうと考えているところである。


評:蔵研人

ダレカガナカニイル…

★★★☆
著者:井上夢人

 話の中身は、タイトル通り自分の中から別の声が聞こえてくるという話である。その声が聞こえ始めたのは、新興宗教の教祖が焼死した直後だということで、その教祖が乗り移ったのではないかと推測しながらストーリーが展開してゆく。
 なんとなくホラー染みているが全く怖くない。どちらかと言えばオカルト風味がたっぷり漂ってくる。俄然興味はこの声の主は本当に教祖なのか、またこの声を追い出すことが出来るのか、さらには教祖は自殺したのか殺されたのか。もし他殺だとしたら一体誰が犯人なのだろうか、といったミステリーモードに染まってゆく。

 そして中盤以降の見せ場は、精神科医による催眠術の施術と、それによって「声」が目覚めるということ。また突然現れた教祖の娘とのラブストーリー展開にも、ワクワクとこころが奪われてしまう。さらにラストの着地では、オカルト風味が突如としてSF色に大転換というおまけまでついているのだ。
 約650頁に亘る長編であるが、全く苦も無く退屈せずに一気読みできた。それは本作が新興宗教批判にはじまり、ミステリー、オカルト、恋愛、SFを融合し、ジャンルを超越した面白さに支えられているからであろう。

 さて著者の井上夢人とは、漫画家の藤子不二雄同様コンビで岡嶋二人と名乗り、創作活動を続けていた井上泉と徳山諄一のうち、コンビ解消後の井上泉のことである。そして本作はそのデビュー作となるようだ。従ってデビュー作と言えども、すでにベテランの味がするのは当たり前なのである。まあ間違いなく面白いことは保証するが、終盤の説明なしの急展開は理解不能だし、こんな結末なら全体的にもう少し短くまとめられたのではないだろうか。

評:蔵研人

幽霊人命救助隊4

著者:高野和明

 東大二浪で首吊り自殺した裕ー、キャリァウーマンになり損ねて飛び降り自殺した美晴、会社経営に失敗し服毒自殺した市川、ヤクザ稼業の限界に絶望し、短銃自殺した八木。この四人が神様の命令で、地上に降り幽霊になって100人の自殺願望者を救うという荒唐無稽なお話である。しかも夕イムリミットは49日間、1日2人以上のペースで自殺をくいとめなくてはならない。

 これが成功した暁には、成仏して天国ヘ行けるという。なんだか、浅田次郎の「椿山課長の七日間」と通じるものがある。
 彼等は人には見えない聞こえない、透過してしまう存在であるが、なぜか物質に対しては存在感がある。だが彼等は物質を動かせない。つまり、例えば誰かがドアを開けない限り、彼等だけではドアを開けられない、入れないのである。
 こんな状態で、どうすれば100人もの人間を救助出来るのか。ところが、彼等はこの八方塞がり状況を打破すべく「七つ道具」を所持していたのである。

 このマンガのようなバカバカしいお話が面白いのは、裕一以外の三人が自殺したのが、裕一よりずっと以前だったということだ。市川が15年前、美晴が17年前、八木に至っては、なんと24年前なのである。
 ということは、市川、美晴、八木にとっては、現代の日本はカルチャーショックで、まるでタイムマシンで未来に跳んできたのと同じなのだ。そのあたりの彼等の驚きようや、時代遅れな流行語が飛び交う様が楽しいよね。

 それから自殺願望者の大半は「うつ病」である。だから著者はうつ病について、かなり詳細に調べている。おかげで自殺とうつ病についての認識がかなり高まってしまった。楽しみながらお勉強出来るという具合で、一粒で二度美味しいのだ。
 ただ100人助けるまでに、何人もの同じような救助が続くので、途中少し辟易してしまうかも…。だが実は、最後100人目の自殺願望者の救助こそ、本作中最大の焦点なのである。この感動のクライマックスでは、きっと誰もが熱い涙を流さずにはいられないだろう。

評:蔵研人

死者は黄泉が得る4

著者:西澤保彦

 前半はかなり読み辛い。舞台が米国で固有名詞が憶え難いこともあるが、「死後編」と「生前編」の時間設定が異なることが原因であろう。
 次々とゾンビの館を訪れる女達。彼女達はゾンビ達に殺され、生前の記憶を消去され、ゾンビ達の仲間入りをする。しかしその割には、ゾンビ達は増えるどころか、だんだん減っているような感じなのだ。

 また生前の世界では、美貌の人妻クリスティンを取り巻く人々が、次々と殺害されてゆく。犯人はまるで『13日の金曜日』のジェイソンのような不気味な男のようだ・・・。
 なんだかよく判らないままに、「死後」と「生前」のストーリーがジグザグに進行してゆく。ミステリーとホラーをミックスしたような展開にドキドキするものの、やはり正直言って意味不明なのだ。

 ところが終盤になると、生前の連続殺人の謎が、まるで難解なパズルを解き明かすように一挙に解明される。実に凝りに凝りまくっていて、お見事としか言いようが無いが、さらにその後にも「ドンデン返しの扉」が幾重にも張り巡らされているのだ。
 圧倒的に見事な結末とは言え、前半の出来事の大半は霧のかなたである。それで結局もう一度ページを戻して再確認することになる。まるでメビウスの輪の内側を歩いているうちに、いつの間にか外側に出てしまったような気分である。ただラストの「あれ」は何を意味するのだろうか。

評:蔵研人

椿山課長の七日間5

製作:2006年 日本 上映時間:118分 監督:河野圭太 主演:西田敏行

 「いや~映画ってほんとにいいですね!」と思わず叫びたくなるほど超・面白い映画だった。ジャンルは珍しいファンタジックコメディといったところだろうか。
 デパートに勤務する椿山課長は、仕事中に突然死してしまう。だが天国に行く前に、初七日まで地上に戻ることを許される。そしてそこで、今まで知らなかったことが、次々と解明されてゆくのである。

 ところで彼が地上に戻ると、絶世の美女に変身していたのである。天国の使者曰く、全く正反対の姿に変身させたというのだ。この椿山課長にブクブクの西田敏行、変身後のスレンダーな美女に伊藤美咲とくれば納得、そして大笑い間違いなし。
 原作はここのところ映画づいてきた「浅田次郎」なのだが、因みに私はまだこの小説を読んでいない。
 さて、西田敏行と伊藤美咲という、美女と野獣のような組合せが、意外と良かったね。それに美女の伊藤美咲は、シリアスな役よりコミカルな役のほうが向いているようだ。

 また蓮子役の志田未来もなかなか可愛いい。彼女も死ぬ前は、少年だったのだが、蘇ると少女になってしまうのだ。
 施設で育った彼女(彼)は、実の父母に会いに行く。ここから先はネタバレになるので、詳しくは書かないでおこう。ただ例え姿形が変わっても、我子を見分ける母性愛に感動してしまった。
 あと椿山課長の同僚で、元カノジョの知子を演じた余貴美子が良い。彼女は目尻が下ったほのぼのフェイスで、私の好きなタイプの女性である。だから真実を知ったら、余計に切なくなってしまった。

 この作品のテーマは、生きているときは判らないことが沢山あるということだろうか・・・。人生には、知らないほうが良いこともある。だが椿山課長にとっては、真実を知って本当に良かったのではないかと思った。
 館内は笑いが絶えなかったが、時々すすり泣く声も聞こえた。またラストシーンも清々しく、こうした作品にありがちな後味の悪さは全くなかったね。久し振りに本当に映画らしい邦画にめぐり逢った気がしたものである。ただもうひと捻りがあると、100点満点だったのだが・・・。

評:蔵研人

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