タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

パラレルワールド

4

道

著者:白石一文

 ニコラ・ド・スタールが描いた『道』という一枚の絵画をじっと見つめていると、時間を超越して過去や未来にタイムリープしてしまい、そこで人生をやり直そうというお話である。だからと言ってSFという雰囲気ではなく、人間が生きる真理のようなものを描きたかったのだろうか。
 本書の主人公である唐沢功一郎は、大手食品メーカーで品質管理を統括する優秀な男である。だが残念なことに3年前に愛娘の美雨を事故で亡くし、それ以来、精神を病み自殺未遂を繰り返す妻を介抱しながら暮らしている。

 そんな苦しい世界から抜け出したくなった功一郎は、ある方法を使って美雨が事故に遭う直前に戻り、彼女を救出することを決心する。その方法とは、彼が高校受験に失敗した時に、過去に戻り受験をやり直したときと同じやり方であり、『道』という絵画を使って過去に戻ることであった。

 このあたりまでは、タイムマシン代わりに絵画を使うということ以外は、タイムトラベルものによくある展開なのだが、実はタイムトラベルというよりは、時間を遡るパラレルワールドの世界と言ったほうがよいのかもしれない。彼は3回タイムリープを繰り返すのだが、移動するたびに別の世界へ跳んでしまうのである。従って前の世界では東日本大震災が起こったのに、今の世界ではまだ起きていないとか、またそれほど重大な出来事ではなくとも、微妙に変化しているようであった。

 また前の世界に存在していた自分自身が今の世界に跳んできたのではなく、今の世界に住む自分の肉体の中に、前の世界の自分の意識だけが乗り移ったのだ。では前の世界の自分の肉体はどうなってしまったのだろうか。普通に考えれば、前の世界で絵画の前で死んでいることになるのだが、結論は異なっていた。さらにでは今の世界の自分の意識は、一体どこへ行ってしまったのだろうか。これらはラストに全て解明されるのだが、分かったような分からないような、それでいて実に見事な論理で締めくくっている。

 もしあのとき、ああすればよかったと考えてもどうにもならないが、万一その願いが叶ったとしても、結局は何かほかの運命に巻き込まれてしまうのである。それに人の運命なんていうものは、どうにかなるとかならないとかという類のものではなく、たまたま選んだ道の一つでしかない。それが我々の住む世界の心理なのかもしれない。
 さて「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」とは、フランスの画家ポール・ゴーギャンの有名な絵画のタイトルであるが、本作にもなんとなくそんな臭いが漂っていると感じたのは私の勝手な思い込みなのだろうか……。

評:蔵研人

パラレル多次元世界3

パラレル多次元世界

製作:2018年 カナダ 上映時間:104分 監督:イサーク・エスバン

 真夜中に犬の世話をするため部屋から出た女性が、マスクをした何者かに殺害される。そして犯人がマスクを外すと、なんとそいつは殺害された女性と同一人物だった。という奇妙なオープニングに心躍らされるのだが、タイトルを知っているので、すぐにパラレルワールドからやってきた自分自身なのだなと気が付いてしまう。
 つまり犯人が住む世界では既に夫が亡くなっているのだが、この世界ではまだ元気に暮らしている。それで犯人はまだ夫が生きているこの世界に引っ越してきたという訳である。もちろんそのために邪魔になる自分自身を消したのだ。
 ただ面白かったのはこのオープニングだけで、この後に続く話は4人の若者たちの話であり、パラレルワールドの入口以外はオープニングの女性とはなんの関連も持たない。

 さてひょんなことから、シェアハウスに住む若者4人が壁の中にある部屋をみつけて侵入すると、誰かが住んでいた痕跡が残っており、部屋の中には大きな鏡が立てかけてあった。そうこの部屋を使っていたのが、オープニングの犯人であり、そこにある鏡こそパラレルワールドへの入口だったのである。
 さらにこの鏡からは一つだけではなく、いくつものパラレルワールドに繋がっており、戻ってくるときだけは同じ場所に戻る仕組みになっていた。さらに別世界では時間が180倍に膨張しているため、別世界での15分間がこちらではたった5秒であることにも解明される。

 さらにパラレルワールドには自分と同一人物が住んでいて、世の中の仕組みも似ているのだが、モナ・リザの髪がショートカットだったり、進化した発明品が登場していたりと、微妙に異なっているのであった。彼等はそれを利用してアプリや新製品、絵画などをパクったりして金儲けに翻弄することになる。
 ただこんなことを続けていてもいいことばかり起こるはずがなく、4人の友情にもひび割れ現象が起こってくる。そんな中である日、大変な事件が起こってしまうのであった……。

 パラレルワールドそのものは、私好みの興味深いテーマではあるのだが、なんだかすっきりしない。本作がそこそこ面白かったのは認めるが、タイムトラベルやパラレルワールドを利用して金儲けをしたり、自分と入れ替わったりする話は新鮮味がないし、後半に大きなどんでん返しが仕込まれている訳でもなく、もう一捻りが欲しかったね。またしいて言えば本作の真のテーマは、「パラレルワールドを利用したひとの欲望と罪深さ」だったのだろうか……。
 
評:蔵研人

帰去来4



著者:大沢在昌

 主人公は亡父のあとを継いで警官になった志麻由子という美人婦警である。彼女は連続殺人事件の犯人逮捕のため、公園でおとりになっていたのだが、突然背後から犯人らしき人物に首を絞められてしまい意識を失ってしまう。
 その後彼女が目覚めた場所は、なんと光和27年という聞いたこともない時代だった。ただその時代背景や闇市が幅を利かせている街の雰囲気などは、まさに太平洋戦争直後の東京にそっくりなのだ。だが歴史や地名などが微妙に異なることから、過去にタイムスリップしたのではなく、全くの別世界つまりパラレルワールドに迷い込んでしまったのであろうか…。

 また現代では巡査部長でお荷物的存在だった由子だったが、この奇妙な世界では大出世して警視まで昇りつめている切れ者刑事だったのだ。ところがこの世界の由子は全く見当たらない。もしかすると由子の精神だけが、この世界の由子に転移してしまったのだろうか。いずれにせよ元の世界に帰れないのなら、なんとかこの世界で生き抜いて行くしかないと由子は決心するのだった。

 パラレルワールドと言えばSF小説のテリトリーなのだが、本作はSFというよりは「刑事もののミステリー小説」なのだと考えたい。たまたまパラレルワールドを「舞台装置」に使ったというだけなのであろう。そう考えないと余りにもSFらしくない顛末だし、超小型タイムマシンの発想はまるでドラエモンで、余りにもお粗末だからである。

 ただ本書はなんと500頁を超える分厚い単行本なのだが、あっという間に読了してしまうほど面白いことだけは保証しても良いだろう。それはドキドキワクワクさせるアクション系の際どいストーリーに加え、パラレルワールドはなぜ出現したのか、果たして由子は現代に戻れるのだろうか、もう一人の由子とは対面できるのだろうか、また連続殺人事件の犯人は逮捕されるのだろうか、などなどの謎を解明したいという読者心理をわしづかみにしているからである。まあいずれにせよ近いうちにTVドラマか映画化されるような気がしてたまらない。

評:蔵研人

ルート2253

原作:藤野 千夜 漫画:志村 貴子

 『ルート225』は、藤野千夜が芥川賞受賞後に書き下ろした長編小説であるが、その後多部未華子主演で映画化され、さらに志村貴子が描く漫画にもなっている。私は何れも読んだり観たりしているのだが、何と言ってもかなり昔のことで、ほとんどあらすじを忘れてしまった。
 覚えていたのは弟を探しに行った姉が、やっと公園で弟を見つけるのだが、なかなか家に帰ることが出来ない。…と言うような出だしの部分と、映画での多部ちゃんがまさにぴったしカンカンだったということだけであった。このたびたまたま本棚の隅っこでこの漫画版を見つけ、漫画ならすぐに読めるだろうと考え再読することにしたのだ。

 まずタイトル 『ルート225』の意味は、単純に数学の√225=15で、ヒロインの年齢ということになる。また同時に弟が見つかった公園に面した国道、つまりパラレルワールドの入口を指すのだろうか…。
 さて15歳と言えばまさに反抗期である。今まで仲の良かった友達になんとなくちぐはぐ感を覚えたり、ことに両親に対してはかなり煩わしい存在に思えてくる年令であろう。だからと言ってまだ生活力がないため、渋々親の言うことにも従っている。

 そんなヒロインの心理状況がパラレルワールドを産み出してしまったのだろうか。だがやはり異世界には馴染めず、弟と二人で必死に元の世界に戻ろうとする。またあんなに鬱陶しかった両親にも逢いたくなる。そしてそんなもう一つの自分の心にも気付いて行く。パラレルワールド自体については、なぜこの世界に迷い込んだのかとか、なぜ自分たちと両親だけが存在しないのかとか、いろいろ突っ込見所が多い。だが本作をSFではなく純文学として捉えれば、その辺りをあまり突っ込んでも意味がないだろう。ただラストがいまひとつ解り辛いので、もう一度小説を読んで確認してみたいと思う。

評:蔵研人

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

★★★☆
著者:廣嶋 玲子

 ときどき思い出したように町の路地裏に佇む奇妙な駄菓子屋さん。そこで店番をしているのは、和服を着てどっしりとしたお相撲さんのようなおばさんである。真っ赤な口紅を塗りたくり、色とりどりの大きなガラス玉のかんざしを何本もさしている派手な彼女は「紅子」という名で、古いお金を集めているようである。

 また店に置いてあるものは、「猫目アメ」、「骨まで愛して・骨形カルシウムラムネ」、「闇のカクテルジュース」、「妖怪ガムガム」、「ぶるぶる幽霊ゼリー」などなど、見たこともない摩訶不思議なお菓子ばかりである。そしてこれらを食べることによって、魔法のような不思議な現象が起こるのである。

 本書では「型ぬき人魚グミ」、「猛獣ビスケット」、「ホーンテッドアイス」、「釣り鯛焼き」、「カリスマボンボン」、「クッキングツリー」、「閉店」の七短編が掲載されているが、読み易くて面白いので遅読の私でさえ1時間程度で読破してしまった。
 好評につき、現在13巻まで出版され、アニメ映画化されたようである。なかなか面白い小説だが、なんとなく藤子不二雄の『笑うセールスマン』を思い出してしまうのは私だけではないだろう。

評:蔵研人

ハッピー・デス・デイ 2U

★★★☆

製作:2019年 米国 上映時間:100分 監督:クリストファー・ランドン
 
 前作『ハッピー・デス・デイ』の完全続編である。だが前作の説明は一切ないため、これを初めて見た人はかなり戸惑うはずである。また前作は、タイムループホラーという珍しいジャンルだったのだが、本作はSF色とコメディ色が強くなり、タイムループよりもパラレルワールド風味に染まっている。それにホラー要素はかなり薄められているので、なにか物足りないのだ。

 そしてタイムループの原因は、理工学部で学ぶライアンたちが開発した量子冷却装置(SISSY)だというのだが、なんとなく無理矢理こじつけた感があり余り共感できない。またこの装置を再起動するための方程式を、ヒロインがタイムループを繰り返して解析するくだりもよく理解出来なかった。

 ヒロイン役の必死の演技には脱帽するが、本作が前作より評価が高いのは不思議でならない。やはり今どきの若者たちには、お笑いが必須なのであろうか…。また更なる続編3の製作が噂されているのだが、本作と同じようなパターンなら、もう観たいとは思わない。

 
評:蔵研人

君に出会えた4%の奇跡3

著者:広瀬未衣

 恋人と婚約した灯里が、京都の実家で高校時代に書いた若草色の日記を見つけた。だがそこに書いてあるべきある人の名前が空欄になっている。また物置で探した手作りの小さな提灯には、薄っすらと「コウ」と書かれた跡があった。

 物語の大部分は、そのコウなる謎の人物が現れる満月の4日間の出来事に終始する。その4日間の青みがかった月をブルームーンと呼び、過去へ行けるという奇跡が起こるという。
 まさに少女漫画をそのまま小説にしたような恋愛ファンタジー小説である。ただ理想の男性像のようなコウ君は、なんだか無機質の幽霊みたいで物足りないし、ストーリーにも全く幅が感じられない。また最終章の種明かしにも、余り工夫がなかったのが残念である。

 京都の古い街並みや観光地の情景描写が、なかなか幻想的で美しく綴られているので、女子学生たちには楽しめるかもしれない。だが人間描写やストーリーの奥行きが薄いため、大人たちが読んでも、まず感情移入することはあり得ないだろう。

評:蔵研人

イエスタデイ4

製作:2019年 英国 上映時間:117分 監督:ダニー・ボイル
 
 イギリスの小さな海辺の町で、シンガーソングライターのジャックは、スーパーでバイトをしながら、時々ライブ活動をしている。幼馴染みで教師をしているエリーが、マネージャー役を買ってくれていたのだが、彼の歌は誰にも振り向かれない。
 虚しくなったジャックは、そろそろ売れないライブ活動を辞めたい胸の内をエリーに打ち明けるのだった。そして自転車で帰宅途中、突然全世界に12秒間の大停電が訪れ、暗闇の中でジャックは、自転車もろともバスにはねられてしまう。

 不幸中の幸いで、ジャックは前歯を2本折っただけの状態のまま、病院のベッドで目覚めるのだった。その後退院祝いに友人たちから新しいギターをプレゼントされ、誰もが知っているビートルズの『Yesterday』を演奏するのだが…。
 それを聞いた友人たちは茫然となり、「なんて素晴らしい曲だ、いつ作ったの?」と大絶賛する。なんと彼が目覚めた世界は、ビートルズが現れていない世界だったのである。

 それを知ったジャックは、ビートルズの曲を次々に演奏し、大スターへと昇りつめてゆく。といった流れのドラマなのだが、実はかわぐちかいじのマンガ『僕はビートルズ』をパクったのではないかと思われるほどよく似ているのだ。しかし天下のユニバーサルやアカデミー監督ダニー・ボイルが、日本のメジャーでもないマンガをパクるであろうか…。まあいずれにせよその真偽は闇の中だ。

 本作はビートルズへのオマージュのような感があったのだが、どうも熱狂的なビートルズファンには不評のようである。それはビートルズの名曲に潜む「こころ」の解析にまでは踏み込まず、単なる美しい曲として紹介されているからだという。またいくらビートルズの名曲でも、レコード会社の資本力のバックアップがないと、現代の世界では通用しないと言いたげなアイロニーが練り込まれているところが気に入らない。…ということになる。

 まあ確かにそんな見方も出来るし、ジャックが家族に『Let It Be』を歌うときは、観ているほうもイライラとむかむかを禁じえなかったことも否めない。ただそこまで小難しく考えず、ビートルズの名曲に浸りながら、アメリカンドリームとラブコメを掛け合わせたコメディー映画を観ているのだ、と言い聞かせれば決して腹も立たないだろう。

評:蔵研人

パラレルワールド・ラブストーリー3

製作:2018年 日本 上映時間:108分 監督:森義隆

 原作となった東野圭吾の小説を読んだのは、もう20年以上前である。従って覚えているのは、冒頭での京浜東北線と山手線が並行して走るシーンだけなのだが、かなり面白く読ませてもらった記憶だけが残っている。
 だがなぜ今頃になって映画化されたのだろうか。と思いながらも、やはり好印象だった小説への想いに押されて、本作が観たくてたまらなくなったのである。

 ところが残念ながら、映画のほうはかなり期待外れだった。と言うよりは、なんだかよく分からないまま終盤に突入し、余りにも当たり前すぎる結末に拍子抜けしてしまったと言うべきかもしれない。やはり映像では単調になりがちで、小説だから面白かったのだろうか。或いはミスキャストによる消化不良だったのだろうか、はたまた私自身の感性の激変なのだろうか。それらを確認するには、もう一度小説を読み直してみるしかないよな・・・。

評:蔵研人

シンデレラ III 戻された時計の針

★★★☆

製作:2013年 日本 上映時間:75分 監督:フランク・ニッセン

 ディズニーアニメの名作『シンデレラ』をパラレルワールドの世界として創りあげたストーリーである。つまりもしガラス靴が義姉アナスタシアにぴったりだったらどうなるのというお話なのだ。
 ある日、魔法の杖を手に入れた義母が時間を過去に戻し、アナスタシアに合わせたガラスの靴を作り、お城に呼ばれることになるのである。もちろんシンデレラの顔を覚えている王子が、アナスタシアをダンスの相手と認めるわけがないのだが、また魔法の杖によって記憶を入れ替えられてしまうのだ。

 まあ視点を変えたシンデレラストーリーということでは評価できるのだが、やはりなんとなく結末は分かってしまうし、ねずみが大活躍という子供向けの展開にちょっぴり興ざめしてしまった。楽しい映画であることは間違いないのだが、大人がのめり込むにはもう一捻りが必要だろう。

評:蔵研人

テセウスの船

 ★★☆

 日曜の夜10回に亘って放映された『セテウスの船』がやっと最終回を迎えた。東元俊哉による原作マンガは未読だが、その結末についてはネットで拡散しているため殆どの人が承知しているはずである。だから原作とTVドラマには最終犯人をはじめとして、いろいろと相違点が多いことも周知の事実であろう。
 そこで原作からのネタバレを恐れ過ぎたのか、あるいはお茶の間ドラマの雰囲気に拘り過ぎたのか、余りにも辻褄が合わない脚本に失望してしまった。そしてうたい文句のSFミステリーを逸脱して、なんと家族愛に溢れたホームドラマに落ち着いてしまったのである。またタイムトラベルものとしても、ラストの結末がパラレルワールドだということ以外は、ほとんど体をなしていないし、あの『JIN仁』の足元には全く及ばない。

 ただ最終回に至るまで、かなりの高視聴率を稼いだことだけが、TV局としての大成功と言って良いだろう。確かに5話くらいまでは、次回はどうなるのだろうかと、視聴者たちが期待に胸を膨らませる展開だった。しかしその手法が余りにも単調でしつこ過ぎて、だんだんイライラが募ってきたことも否めないはずである。

 きっとこいつが真犯人だろう、と思わせぶりな展開が何度も繰り返されていくうちに、だから逆にこいつは犯人ではないだろうと推測してしまう。ところがギッチョン。最終回では、まさかこんな奴がこんな動機で、あれだけの犯罪を犯すのだろうか、という結末に遭遇してしまうのだ。これには驚くより呆れてものも言えなかった。
 これはアッと驚く結末でもどんでん返しでもない。散々犯人らしき人々をバラまき散らした上に、全てお見通しで先回りする頭脳抜群の犯人を臭わしておきながら、実はこんなオトボケ男が犯人だというのだ。
 これではさんざん好き勝手な展開を繰り返しておいて、実は夢でしたという「夢オチ同様の反則技」であり、無理矢理ザ・エンドにしてしまった感も拭えない。さらに生意気で大人顔負けのワルだったみきおが、急に誠実な子供に逆戻りというのも全く納得できない。

 バカにするのもいい加減にしてくれ!10週間もの間さんざん引っ張り続けて、多くの視聴者の貴重な時間を無駄に使わせやがって、と怒涛の如く怒りをぶちまけたくなる。そしてあっという間に家族全員が幸せいっぱいのハッピーエンドとは、視聴者全員がコケにされたようなものではないか。

 とにかくハラハラドキドキではなく、イライラダラダラの蔓延したドラマだった。また主人公が勿体ぶってなかなか真実を語らないため、状況は増々悪化してゆくばかり。さらに主人公と一緒に過去に戻ったと思われる大人のみきおは、その後一切登場しない。それなら彼は何のため登場したのだろうか。いずれにせよ、不要なものが延々と登場し、必要なものが歯抜けになっているという超ムカつく展開に終始していたドラマだった。

評:蔵研人

イマジン

★★★★☆
著者:清水 義範

 この著者の作品はとても読み易くて面白いので、すぐに読むつもりだった。ところがいつもの薄い短編集ではなく、なんと667頁に及ぶ分厚い文庫本だったため、恐れをなして本棚の隅っこで眠ってしまったのである。だが本棚でこの本を見つけるたびに気になり、満を持してこの長編小説を読んでみたところ、超・遅読者の私でもあっという間に読破してしまったのだ。
 もちろんタイトルの『イマジン』は、あのジョン・レノンの名曲を意味しているのだが、直訳した「想像する」という意味も兼ねているようである。ある意味「若き日の父への想像や未来の自分自身への想像」、ということであろうか・・・。

 父親と大喧嘩をして一人暮らしをしはじめた19歳の翔悟は、どうした訳か何と23年前にタイムスリップしてしまうのである。だがその世界では使える金も知り合いもない。頼れるのはただ一人、若き日の父・大輔しかいないことに気づき、仕方なく父が暮らしていたというアパートを探し当てるのだった。
 そして翔悟は偶然、酔いつぶれて路上で倒れている若き日の父・大輔に遭遇し、彼を助けることになるのである。若き日の父はちょっぴり頼りないが、とても好人物で真面目な男だった。そして二人は互いに何か引き寄せられる絆を感じ合ってしまう。だからすぐに二人は親友になり、しかも息子の翔悟が、未来では厳しい父が出世する礎を創ってあげることになるのだ。
 さらに仕事の話が一段落したあと、まだ暗殺されていないジョン・レノンを救出するために、二人でニューヨークに向かうのである。そんな急展開・荒唐無稽・とんでもハップンな展開に、清水節が冴えわたることになる。

 さてタイムスリップして「若き日の父親に遭遇」というパターンは、浅田次郎の『地下鉄に乗って』、本多孝好の『イエスタデイズ』、重松清の『流星ワゴン』さらに映画においても『オーロラの彼方へ』、『青天の霹靂』など、実によくある話なのだが、きっと誰でも感情移入してしまう特効薬なのかもしれない。
 本作ではことに、過去から現在に戻ってからの「再遭遇」が実に感動的であった。父親と息子の関係とは、照れ臭さと反発さえ除外してしまえば、それほど素晴らしい絆で結ばれているのだろうか。中学生のときに父親が他界してしまった私にとって、親父と一緒に酒を酌み交わすことは、あの世で実現させることしか出来ないのが悲しいね・・・。

 さてそれにしても本作は、かなりの引用やオマージュが鏤められているものの、矛盾が生じないよう細かい部分に神経を配りながら、分かり易くて読後感のすっきりした作品に仕上がっているではないか。ただ唯一気に入らないのが、ダコタ・ハウスで突然出現するアーノルドの存在だ。この男の任務の設定が実に安易で古臭く、手垢が付き過ぎているからである。
 いずれにせよ歴史には拘らず、パラレルワールド含みのどんでん返しで締めくくっても良かったのだ。また歴史通りの進行を選んでも、あともうひと捻りの工夫が欲しかった、と感じたのは決して私だけではないだろう。だがその部分に目をつぶってしまえるほど面白い、「時を超えた父子の絆」を描いた感涙長編ファンタジー小説なのである。

作:蔵研人


パーフェクト・ワールド 世界の謎を解け3

製作:2018年 ロシア 上映時間:116分 監督:セルゲイ・モクリツキー

 単に『パーフェクトワールド』で検索すると、ケビン・コスナーの作品とか岩田剛典の邦画、その原作である有賀リエのマンガが引っかかってくるのだが、本作はなかなか見つからない。そこで『パーフェクト・ワールド 世界の謎を解け』で検索するとやっと引っかかるという、余り名の売れていないロシアのSF映画なのである。

 原題は『CHERNOVIK/A ROUGH DRAFT』と言うことだが、はっきりした意味は分からないが、直訳すると『ラフな草案』というような意味のようである。邦題は意味不明だが、主人公がパラレルワールドに迷い込んでしまうため、こんないい加減なタイトルを付けたのかもしれない。

 若くて才能に満ちたキリルは、高給を手に出来る仕事と美しい恋人を手に入れて、優雅な人生を楽しんでいた。ところがある日、自宅に帰ると、見知らぬ女性が住み付いていて、ここは自分の家だと主張するのだった。そしてキリルはその日を境にして、自分を知る人が誰もいないパラレルワールドに迷い込んでしまうのである。

 こんな感じでストーリーが流れてゆくのだが、いろいろと奇妙な展開が続く割には、ストーリーにのめり込めず退屈感に襲われてしまう、という摩訶不思議な作品なのだ。2018年に創られたのだが、なんとなく一昔前のSF映画という感が否めないし、結末も曖昧なままで終わってしまった。邦題にも騙されたようで、ちょっと不満の残る作品かもしれない。

評:蔵研人

スライディング・ドア4

製作:1997年 米国 上映時間:100分 監督:ピーター・ハウイット

 米国製のラヴ・ストーリーとしては、ちょっと異色な作品かもしれない。重大会議のある朝に遅刻してしまったヘレンは、ほかにもいろいろあってクビになってしまう。それでしょげかえって、そのまま帰宅しようと地下鉄の駅に向かう。
 改札を潜ると、ちょうどホームに電車が到着したところだった。急いで階段を走るのだが、途中で子供とぶつかり電車のドアは閉まってしまう。だがその瞬間にもう一人の自分がいて、子供との衝突を避けて間一髪で、ドアをこじ開けて電車に乗ることが出来るのである。

 もしあの時こうしていたら、運命はこう変わっていたという題材でスタートするこの作品。ここからは二人のヘレンのパラレルワールドが始まるのであった。二人を区別するため、電車に乗れたヘレンは髪を切りブロンドに染める。

 では二つの運命はどのように変わったのだろうか。実はその後事故が発生し、この次の電車が大幅に遅れてしまうのだ。さらには電車に乗れたヘレンは、車内で隣席のジェイムズという男と運命的な出会いをすることになる。
 だが早く帰宅したため、同棲しているジェリーと浮気相手の情事の真最中に遭遇してしまう。一方電車に乗れなかったほうのヘレンは、電車の遅れとひったくりによる怪我などのお蔭で帰宅は大幅に遅れ、その間にジェリーの浮気相手は帰り、浮気現場に遭遇することは無かった。

 こうして二人のヘレンとその後の展開がパラレルに進行してゆくのだが、ストーリーは二転三転してゆく。果たしてどちらのヘレンが幸せになれるのだろうか。とワクワクしながら、あっという間に意外なラストへと進んでゆくのである。
 まるでヨーロッパ映画のような展開で、よく練り込まれたちょっぴりお洒落な脚本といえるだろう。またヘレンを演じた長身の女優も、なかなかキュートで魅力的だなあと思いながら観ていた。
 実はそのヘレンを演じた女優こそ、この作品から11年後に製作された『アイアンマン』でヒロインを演じるグウィネス・パルトローその人だったのである。

評:蔵研人

orange-オレンジ-

★★★☆

製作:2015年日本 上映時間:139分 監督:橋本光二郎

 原作は高野苺の少女コミックで、美しい風景の松本市を舞台にした学園SFラブファンタジーである。主演はなんとNHKの朝ドラ『まれ』と同様、山崎賢人と土屋太鳳の『けんたお』コンビなのだ。

 さてストーリーのほうは、10年後の自分から、高校2年生の高宮菜穂宛に手紙が届くところからはじまる。そしてそこには、間もなく東京から転校してくる成瀬翔を好きになってしまうこと、そしてその翔は1年後に死んでしまうことが書かれていたのである。
 はじめは誰かのいたずらではないかと思っていた菜穂だが、手紙に書いてあることが全て実現してしまうため、手紙の内容を信じるようになる。そして翔の死を防ぐため、仲間たちにも協力してもらいながら、翔の運命を変えるべく行動を次々に実行するだった。

 映像を観ていても、まさにこれぞ少女マンガという雰囲気がプンプン匂ってくる清純ラブストーリーである。従って軸足は常に恋愛であり、タイムトラベル理論にしても、タイムパラドックスとパラレルワールドのさわりをチラつかせただけに過ぎない。

 また未来からの手紙がどうして届いたのかについても、はっきりとした説明がないまま終わってしまった。それにこの種の話によくあるどんでん返しや洒落たオチもなく、ふんわりとしたままエンドロールを迎えてしまったのも、なんとなく物足りない気分である。
 まあ随所で泣かされるシーンもあり、そこそこ楽しめる作品なのだが、あの名作『いま、会いにゆきます』には遠く及ばないことも否めないだろう。

評:蔵研人

パラレル・プラネット2

製作:2013年カナダ 上映時間:87分 監督:オースティン・ハインズ

 物理学者のピーターは、妻をほったらかして、毎晩のようにラボに閉じ籠ってある研究を続けていた。その結果子供のころに観た摩訶不思議な世界に再び遭遇することになる。それこそがパラレルワールドへの扉なのであった。
 と書くと、いかにも魅力的なストーリー展開を感じるのだが、はっきりいって何もないのだ。とにかく退屈な前置きが長過ぎるし、やっとパラレルワールドの登場かと思えば、現実の中の妄想とほとんど変わらない描写にがっかり。
 
 やはりSFは、湯水のごとく金をつぎ込んだハリウッド製でないと観るに堪えない。また低予算でもアイデアとかストーリーに奇抜さがあればそれなりに楽しめるのだが、そのあたりもクリア出来ていないところが悲しいね。どうも最近この手の映画は不作のような気がする。

評:蔵研人

時砂の王3

著者:小川一水

 西暦248年、邪馬台国の女王卑弥呼は、突然おぞましい「物の怪」に襲われるのだが、「使いの王」と呼ばれる未知の人物に助けられる。実は「使いの王」とは、遥かな未来から時空を超えてやって来たメッセンジャーと呼ばれる人工生命体であり、オーヴィルの頭文字Oを王と聞き違えて、この時代では「使いの王」と呼ばれることになったのである。
 邪馬台国の時代より遥か2300年後の未来においては、謎の増殖型戦闘機械群により地球は壊滅してしまい、さらに人類の完全殱滅を防ごうとその機械群を追って来たのがメッセンジャーたちであった。またその邪悪な機械軍が、邪馬台国の時代には物の怪と呼ばれる存在であった。

 邪馬台国の時代を中核に描きながらも、オーヴィルたちが戦い続けてきた別の時代やパラレルワールドを交錯させながら、この壮大なストーリーは紡がれてゆく。この大作を僅か300ページ足らずの文章にまとめた技巧は実に見事である。ただそのためか、状況説明的な文章が多くなり過ぎて、登場人物の背景や心理描写などが希薄になってしまった感が否めない。
 このあたりが最近のSF小説の特徴で、データー量の多さや精密な論理については申し分ないのだが、ジンジンと心に響き渡ってくるような熱い感情が湧かないのだ。ただこれが小説ではなく、映画やアニメやゲームの原作となると、小説では見えなかった映像や音源などとの融合により、迫力ある素晴らしい作品となるのだろう。事実この作品もハリウッドで映画化されることが決定されたようである。

 もし若者たちから、「それが現代SFなんだよ、おっさん!」と叱られれば、「さようでございますか、勉強不足で申し訳ございませんでした。」と応えるしかないだろう。ただ良い悪いは別にして、星新一や小松左京たちが活躍していた頃のSFと比べると、もう全く別ものと言って良いほど、近年のSF小説が変わってしまったことは間違いない。またSF小説だけではなく、マンガもアニメ風の絵柄に変化しSF同様の道を辿っているような気がしてならない。

評:蔵研人

去年はいい年になるだろう 4

著者:山本弘

 文法的に齟齬感のある奇妙なタイトルである。だが時間を遡るタイムマシンが登場する話となれば、なんとなく納得出来てしまうのが、タイムトラベルファン心理である。
 もし2001年9月11日、米国で起こったあの悲劇が起こらなかったら、世界の歴史はどのように変遷していたのだろうか。きっと誰もが考えそうなテーマである。

 そして本作では、24世紀から巨大タイムマシンに乗ってやってきた500万体のアンドロイド集団「ガーディアン」が、大規模な歴史改変を開始するのだ。彼らは人類を攻撃するのではなく、テロや事故や犯罪を未然に阻止するために未来からやってきたのである。
 さらに彼らは、全世界の軍備を無力化し、一部の独裁政権を解体することにより戦争を不可能にした。これはあくまでも人間を守るための手段であり、それこそが彼等の本能的行為でもあった。

 ここまで書くと、一大スペクタクルSF巨編というイメージが先に立つのだが、実は作者である山本弘氏自身が主人公の私小説的SF小説なのである。従って彼の家族や友人、編集者たちまでもが実名で登場し、彼の著作物やイベントなども全て実際にあるものばかりと、かなり凝りまくっている。
 著者自身が主人公になるSF作品はほかにもあるが、ここまで実名に拘ったSF作品は読んだことがない。まあ、ある意味現実感が伴って面白いのだが、山本氏のことを十分に知っている読者でない限り、少々うざったい気分になりかねない。ただ壮大でシリアスな展開の中に実生活を組み込んだことで、妙な親近感が沸き、かなり読み易くなっているで、あっという間に読破出来たのは良かった。

 本作は無数の改変されたパラレルワールドと、その結果生じるパラドックスを見事に描いた傑作であることは間違いないだろう。ただ余りにも私小説的手法に拘って描いたため生活臭が漂い過ぎて、壮大なるSFというイメージとねじれ現象を引き起こしてしまった感がある。また著者が真面目なのか妻に遠慮したのか、あの美少女アンドロイド・カイラとの絡みが、いやにあっさりし過ぎていたのが物足りなかった。

評:蔵研人

ミッション:8ミニッツ5

製作:2011年 米国 上映時間:93分 監督:ダンカン・ジョーンズ 主演:ジェイク・ギレンホール

 正確にはタイムトラべルではないのだが、『恋はデジャ・ブ』とか『ターン』とか『リプレイ』などのように、何度も時間を繰り返すストーリーである。私の大好きなテーマということもあり、ちょっと採点が甘いかもしれないが、最近観た映画の中では一番面白かった。

 テロによって、乗客全員が死亡する列車爆発事故が起こる。更なる犠牲を出さないため、政府の極秘ミッションが始動。「ある方法」によって犯人を探し出すというのだ。
 その「ある方法」とは、ある兵士の意識に、死亡した乗客の記憶を転送するという技術である。だがそのタイムリミットは8分間だという。つまり死者には、残像と同様に、絶命寸前8分間の記憶が残存しているという仮定による。
 だが8分間では何も出来ない。従ってこれを何度も繰り返すことによって、無駄を省き重要な事実だけを探り当てるのだ。ただ兵士の体力の限界もあるため、ある程度の回数しか繰り返すことは出来ない。

 実によく出来ている設定である。もしその8分間の中で、途中下車するなどして、事実と異なる行動をとったらどうなるのか。そして物語は核心に迫ってゆく…。またこの結末は、誰にも予測が困難だという。本作はタイムトラベルではなく、どちらかというとパラレルワールドだと言えば、何となく結未も予測出来るだろう。

 キャストは主役のコルター・スティーヴンス大尉に、『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』のジェイク・ギンレイホール。ヒロインのクリスティーナには、『デュー・デート』のミシェル・モナハンといったところ。
 双方ともなかなか役柄にはまっていたよね。またスクリーン上の主人公同様、初めは余り乗り気のしない女性だったミシェル・モナハンが、何度も繰り返して会っているうちに、だんだん愛しくなってきたから不思議である。
 この映画の内容については、余り詳しく語らないほうが良いだろう。とにかく決して損はないと思うので、劇場で観てもらうしかないね。

評:蔵研人

ミスター・ノーバディ3

製作:2009年 フランス他 上映時間:137分 監督:ジャコ・ヴァン・ドルマル

 21世紀末の近未来では、人は死なない存在になっていた。そこでは肉は食わず、タバコも吸わず、セックスさえしない。そんな世界で最後の死ねる人間となったのが、ミスター・ノーバディ氏であった。
 彼は全ての記憶を失ってしまったのだが、死ぬ間際になって、催眠術により断片的な記憶を取り戻す。だがその記憶とは、もしあのときこうすれば、こうなっていたというパラレルワールドの世界だったのである。
 その原因となったのは、彼が5才のときに両親が離婚したことであり、そのときに彼が郊外に住む父親の元に残るか、母親と一緒に都会に出るかの厳しい選択だった。

 ここまでざっとあらすじを書いていると、あたかも分かり易い作品のようなのだが、実際にはかなり前衛的で難解な創り方をしているのである。従って最後までこの映画のメッセージを正確に受け止めることが出来なかった。
 だからといって決して駄作というわけではなく、それなりに面白いし、ヨーロッパ映画にしては製作費も使っているし映像も美しい。ただハリウッド風に時間の逆行やパラレルワールドという構成を意識し過ぎると、多少期待外れ感を抱くかもしれない。あくまでもヨーロッパ映画であることをお忘れなく。

評:蔵研人

時間をまきもどせ4

著者:ナンシー・エチメンディ 翻訳:吉上恭太

 誰にでも失敗したことを取り消して、もう一度やり直したいと切望するときがあるだろう。この作品は、パワー・オブ・アンという携帯用タイムマシンを使って、そうした願いを叶えようとする少年のお話である。とても心温まるファンタジー系SFジュブナイルといえよう。

 主人公の妹が、犬を追いかけてトラックにはねられてしまうのだが、この事件を抹消するために過去に戻る。だが、なかなか思うように軌道修正が出来ない。妹が助かっても別の犠牲が生じてしまうからだ。
 ゲームのコンテニューなら、何度も繰り返しているうちに確実にゲームを終了することが出来る。だが人の世界はそう簡単にはゆかない。なにかが異なれば、因果律が狂って別の結果を生み出してしまうからだ。

 これをパラレルワールドと呼ぶのだが、人生とはなかなか難しいものである。児童文学とはいえ、いろいろと考えさせられる作品であった。
 大きい文字で約210頁の中編であり、ハラハラさせるストーリー展開なので、通勤の行き帰りであっという間に読破してしまった。タイムトラべルに興味のない大人にも薦めたい一冊である。

評:蔵研人

ポンコツタイムマシン騒動記4

著者:石川英輔

 町の発明家先生が、廃品回収した電機製品を利用してタイムマシンを作りあげ、娘のトキ子とラーメン屋の三郎少年を乗せて過去に旅立つ。コミカルなジュブナイルで、舞台はたったの2ヵ所、登場人物も10人以下という、映画ならばさしづめ「超B級低予算映画」といったところか。

 ストーリーも単純で、同じ場所を行ったり来たりするだけである。これは舞台劇にはおあつらえ向けだね。ところがタイムトラベルファンにとっては、この単調さがなかなか味わい深いのである。
 同じ場所といっても、時間軸と次元が異なるため、正確には違う場所になるのかもしれない。その同じような場所での微妙な変化を楽しむのが、タイムトラベルファンの醍醐味なのだ。

 これはバック・トゥ・ザ・フューチャーの、主人公マーティーを取り巻く人々の変化と、ある意味似ているよね。しかし決定的に違うのは、本作ではタイムマシンで跳ぶ世界は、全てがパラレルワールドだということである。この設定には少しイライラするのだが、現状の理論では一番矛盾の少ない設定なのだろう。
 ちなみに、バック・トゥ・ザ・フューチャーの場合も、ある意味パラレルワールドに近いのだが、両親が結ばれそうもなくなると、マーティーの写真が消えそうになる発想は、パラレルワールドではない感じでもあり、いまひとつはっきりしないんだね・・・。

 さてこの小説は、1979年に朝日ソノラマから出版され、その後の2003年に大幅に改訂して講談社から再版されたという。朝日ソノラマ版を読んでいないので、どの部分を手直ししたのかは判らない。
 しかしほのぼのとした時代背景はともかくとして、タイムトラベル理論には余り古さを感じないことからして、そのあたりを直したのかもしれないね。また、あさりよしとお氏が描くイラストの雰囲気も、本書のイメージにピッタリとはまっていると思う。

評:蔵研人

イルマーレ(米国版)3

製作:2006年 米国 上映時間:98分 監督:アレハンドロ・アグレスティ 主演:キアヌ・リーヴス、サンドラ・ブロック

 この映画は、2000年製作の韓国オリジナル版をハリウッドでリメイクしたものである。『イルマーレ』とは、イタリア語で”海”のことらしい。だからオリジナル版では、あの家は海辺に建っていた。
 ところが米国版では、湖畔の家に変わっていたのである。従って『イルマーレ』は邦題で、原題は『The Lake House』となっていたのである。

 テーマは“2年の時空を超えた文通恋愛“ということで一致しているが、バックボーンの設定には、かなり変更が加えられていた。
 まず主役の二人だが、米国版はご存知『スピード』コンビの、キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックであるが、オリジナルはイ・ジョンジェとチョン・ジヒョンという一回り以上若いコンビでなのである。
 ここでは若い二人が演じるオリジナルに、軍盃をあげたい。やはり“時空を超えた文通“などというは、当然純情な若者同士のほうが似合うからだ。
 それでもあえてキアヌとサンドラを起用したのは、リメイクという名に対するヒガミだろうか。それで『スピード』以来の大物俳優コンビが、客寄せパンダに指名されたのかもしれない。

 それから家の前に建つ時空を超えるポストだが、オリジナルではロマンチックなデザインでやや大きめのポストだったのに、米国版は何の変哲もない古ぼけた小さなポストなのだ。このポストこそ、この作品の本当の主役なのであるから、もう少し夢のあるデザインに出来なかったのだろうか。こんなところに、この監督のデリカシーのなさが顔を出してしまうのだ。
 あと家のデザインもオリジナルのほうが良かった気がするが、これは好みの問題かもしれないし、オリジナルの家は少しキンキラキンかもしれない。
 米国版がオリジナルに劣るようなことばかり書いてしまったが、やはり街の風景や音楽、そして全搬的な映像の美しさは、米国版のほうが断然素敵である。そして大人の味がする。だからデートで観るなら米国版のほうが、絶対に盛り上がるだろう。

 恋する二人はポストでは繋がっているものの、文通が始まった時、キアヌが2004年、サンドラが2006年に住んでいるのだ。そしてスクリーンは2004年と2006年を行ったり来たりする。だからこの物語の流れを多少理解していないと、何が何やら判らなくなるかもしれない。
 またオリジナルとの比較になってしまうが、オリジナルは2年の時空のズレによる悲恋を描き、全搬的に切なくリリカルロマンスの香りがする。そして二人はなかなか巡り逢いの扉を開くことが出来ないのだ。

 一方の米国版は、あっさりと巡り逢ってしまい、彼女の居場所まで判ってしまうのだから、なぜすぐにアタックしなかったのかの疑問が残る。そして時空の違いに苦悩することも少なく、簡単に結ばれてしまったような気がするのだ。これは国民性の違いだと思うが、同じアジア民族としては韓国の感性のほうに同調してしまうのである。
 また二人とも恋人らしき異性が存在しているのだが、どういう関係なのだろうか。また彼等の存在そのものに何か意味があったのだろうか。
 最後にタイムトラべルものに必ずつきまとう”タイムパラドックス”について一言。ラストのドンデン返しには、エンドレスのグルグル回わりのタイムパラドックスが生じているが、難しく考えずにパラレルワールドの世界なのだと片付けてしまおう。但しオリジナルのほうは、パラレルワールドではなく、“リプレイ”なのだろうね。

評:蔵研人

柳生十兵衛死す 全五巻3

作者:石川賢

 柳生十兵衛が、パラレルワールドから攻めてくる魔人達を、バッタバッタと斬り捨ててゆく荒唐無稽な時代劇である。しかも敵の総大将は、徳川家康なのである。原作はあの山田風太郎であるが、なんと95%以上を石川賢流に大胆アレンジしてしまった。こうしたアレンジでは、夢枕獏の小説を自分流のマンガに変えてしまった、板垣恵介の『餓狼伝』があるがそれ以上の超改編アレンジなのだ。

 未来と江戸時代が同居し、そこに超人・魔人が入り乱れて、戦争さながらの大活劇が始まる。それを石川賢が、例のグログロでド派手なタッチで描くのだから堪らない。時は忍者たちが支配する世界で、徳川家康はもちろんのこと、秀忠や家光さらには本多忠勝や佐々木小次郎まで忍者なのだ。
 それにしても柳生十兵衛が、メチャメチャ強い。強いとなると、限りなく強くしてしまうのが石川流である。心理描写なんてどこにもない。ただひたすら強いだけなのである。それが永井豪を超えられない理由の一つかもしれないね。

 ストーリーはだんだんエスカレートしてゆき、いよいよ御大・家康の出番かと思わせておいて、いきなり途中で終了してしまった。最近納得いかないまま終了してしまうマンガが多いのだが、このマンガは本当に話の途中で終ってしまったのである。
 なにしろこれだけ大風呂敷を広げるだけ広げておいて、「あとは知らないよ」はないだろう。出版社の都合なのか、作者の都合なのか知らないが、全く失礼このうえない。読者をバカにするのもいい加減にしろと言いたい。
 ところがこの作品、ネット上では熱烈な支持を受けている「魔化不思議な幻の作品」なのである。ただ現在絶版になっているため、どうしても読みたければ、中古本を購入するしかないだろう。

評:蔵研人

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