テネット
★★★☆
製作:2020年 米国 上映時間:150分 監督:クリストファー・ノーラン

 突然ウクライナ・キーウのオペラハウスにおけるテロリストによる立て籠り事件が勃発するシーンから始まる。オペラハウスに集まっている大勢の観客たち、このエキストラ数だけでも驚かされるのにだが、いきなり舞台でドンパチが始まり観客全員がガスで眠らされてしまい、その後この巨大劇場は大爆破されてしまう……とにかく圧巻圧巻としか言いようがないオープニングなのだ。
 だがこれが何のために仕組まれたのか、一体首謀者は誰なのかもよく分からないまま、全く異なるシーンへ移動してしまう。今度は鉄道の操車場で椅子に縛られた男が拷問を受けている。ところが男は敵の目を欺き、自殺してしまうのだが……。なんと次のシーンでその男はベッドの上で目覚めているではないか。とにかく観客に次々に謎を振り撒きながら、どんどん次のシーンへとコマ送りされてゆく。

 そしてオープニングのオペラハウス襲撃の真相が、「プルトニウム241」を奪取したCIAスパイを暗殺するための偽装工作だったと解明されるのが上映50分後というサービスの悪さにも辟易してしまうだろう。
 そんなことはさておいて、超美麗な映像や景色に加えて、さらに激しいアクションシーンが続く。大型飛行機の暴走と爆発、消防自動車と大型トラックを絡め、逆走カーチェイスまで飛び出してくるのだ。だがこの映画を単純なアクション映画と思ってはいけない。

 じつはタイトルのTENETとは、第三次世界大戦を阻止する為の謎の存在であり、オペラハウスで奪ったプルトニウムの正体は未来人が作り出した時間逆行装置の「アルゴリズム」の1つなのだという理論物理学が散りばめられているのだ。また各所に大規模アクションシーンが織り込まれてはいるものの、登場人物の相関関係もよく分からないばかりか、ストーリー自体や本作を構成する世界観もいまひとつ理解できないまま、どんどん上映時間が消化されてゆくのである。

 そしてなんと上映120分後に、やっと事態がはっきりと見えてくるのだ。ただ「時間挟撃」という概念を含むラストの戦闘には多くの観客がかなり混乱することは間違いないだろう。難解な世界観と派手なアクションとの融合ということでは、あの『マトリックス』を彷彿させられる。またストーリーのコアとなるものが結末となる構成というしかけでは『メメント』に近い作品とも言えるかもしれない。
 だがはっきり言って本作はストーリー自体に全く面白みを感じないし、理解すべく解釈論が余りにも面倒くさいのだ。まあ一部のマニアックなファンには賞賛されるかもしれないが、たぶん観客の90%以上は置いてけぼりを喰らったと思われる「超難解映画」であった。


評:蔵研人