★★★☆
著者:静月遠火

 どうも最近は読めない凝った名前や、男なのか女なのか分からん名前を名乗る作家が多い。本作の著者「しづきとおか」も、まさにその両方を兼ね備えた性別・年齢不詳の謎の人物といった雰囲気が漂う。

 タイトルの『R&R』は、Rock and Roll(ロックンロールの略)ではないし、Rest and Recuperation(慰労と休養の略)でもない。実はReset(やり直し)とRepeat(繰り返し)の意味のようだ。
 そう本作は、廻谷千瀬という高校1年生の男子が、5月6日を何度も繰り返すのである。そしてその都度、新海百音という初見の先輩女子高生と逢い、この繰り返し状況を解除する方法を話し合うというストーリーなのだ。

 本作の中でも語られているが、まさにあの名作映画『恋はデジャブ』とそっくりな展開と言えば、タイムトラベルファンならピンとくるであろう。ただこの毎日の繰り返し状況は、映像にすれば面白いのだが、小説として書くのはかなり難しいのではと考えていた。

 ところが本作はその難題を見事にクリアし、細部に亘るまで巧みに練り込また展開に終始している。またそのテンポの良さと、ミステリー、恋愛、青春、ファンタジーを少しずつブレンドした風味に酔いしれてしまうだろう。ただ残念なことにエピローグだけは、急ぎ過ぎたような、こじつけたような、無理矢理感が鼻を突いてしまった。

 それにしてもこの作家は、ペンネームも読みづらいが、登場人物の名前も読みづらいものが多いよね。例えば主人公の廻谷(めぐりや)とか、女子高生の外木(とのぎ)とか、わざわざ読みにくい苗字を使うのは、読者に対して不親切ではないだろうか。

評:蔵研人