タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2020年08月

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?3

製作:2017年 日本 上映時間:90分 監督:新房昭之  武内宣之

 いやに長ったらしいタイトルなのだが、岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』を基にしたアニメ映画である。そして中学生たちの、「花火を横から見ると丸いのか?平べったいのか?」という疑問が狂言回しの役割を担っているようだ。

 最近のアニメの特徴なのだが、背景は写実的に描いて、人物はマンガチックに描かれている。ただ私的には、本作の瞳の大きい少女漫画風の人物は苦手であり、それだけですでにストーリーの中に惹き込まれなくなってしまった。

 またタイムループものとしても全くありきたりで、あっさりし過ぎているし、ドキドキ感も湧かず、どんでん返しも見当たらない。さらに主人公が余りにも子供じみている割に、ヒロインのほうは大人びていて、ちぐはぐ感を拭いきれなかった。そのうえ心理描写が希薄だったのも致命的だったかもしれないね…。

評:蔵研人

涙のタイムトラベル3

著者:きむらゆういち

 ジュニア向けの小説で、事件ハンター・マリモシリーズのうちの一冊である。読者対象は小学生の中・高学年というこで、挿絵が多く文字が大きいので読み易い。さらに総ページ数も約160頁なので、わずか30分程度であっという間に読了してしまった。

 ストーリーの内容は、主人公のマリモちゃんが友だちのケイタと二人で、発明家のパパが創ったタイムマシンで、過去にタイムトラベルするお話である。半分はアクションシーンで占められており、タイムトラベルものとしては単純だが、意外と飽きることなく楽しく読ませてもらった。胸がキュンとなるシーンも含まれており、小学生に読ませるには良い小説かもしれない。

評:蔵研人

初恋ロスタイム3

製作:2019年 日本 上映時間:104分 監督:河合勇人

 仁科裕貴の同名小説を原作にしたファンタジーロマンス作品である。主人公:相葉孝司は、ある日突然時間が止まるという現象に遭遇してしまう。ところが公園内で自分以外にもう一人、時間の動いている女子高生:篠宮時音に出会うことになる。時間が止まるのは、いつも12時15分から1時間だけであり、二人はこの1時間を『ロスタイム』・・・おまけの時間と命名した。

 そもそも孝司は何事にも消極的で、すぐに諦めてしまう無気力浪人生なのだが、時音と出逢ったことで少しずつ気持ちが変化してゆく。だが時音と逢えるのは、いつも時間が止まった1時間だけだった。それで孝司が「時間の動いている時にも逢おう」と提案すると、なぜか時音はあっさり断ってしまうのだった。そしてもう逢えないというのである。

 ここまで観て、これは面白そうな映画だと直感したのだが、残念ながらその後の展開が実に退屈であった。彼女が逢えないと断った理由は、ウィルソン病という難病に侵されて、あと半年しか生きられないからだったのである。
 なんとこの辺りから急にファンタジーロマンスが、難病ラブストーリーにチェンジリングしてしまったのだ。難病ものと言えば古くは、『愛と死を見つめて』、『ある愛の詩』、『世界の中心で、愛をさけぶ』などなど、もうお腹が一杯でこれ以上は食べたくないのである。

 また時々登場する竹内涼真が演じる青年医師の正体が、孝司が成長した姿なのかと思い込んでいたら全く別人であり、何気に拍子抜けしてしまった。そして彼と彼の妻は、孝司や時音と同じく「時間が止まる経験」をした過去を持っているというのだ。だこの青年医師:浅見一生は、映画だけのオリジナルで原作には登場していない。そして登場している意味も余り感じられなかった。

 それからせっかく時間が止まっているのだから、それを利用した出来事がトラックの事故回避だけだったのも淋しいよね。また私の好みかもしれないが、ヒロインがもう少し可愛いくて、逆に主人公がイケメンでなければ、もう少しのめり込むことが出来たであろう。だから本来大泣きするはずのラストシーンでも、なぜか一滴の涙も流れなかったのであろうか。

評:蔵研人

時の罠

★★★☆
著者:辻村深月、万城目学、米澤穂信、湊かなえ

 『時』をテーマにした4人の作家によるアンソロジー、と聞いて飛びついたのだが、私が期待したタイムトラベルものではなかった。初出誌はいずれも『別冊文藝春秋』で、タイムカプセルがらみの作品が2つ重なっているし、どちらかと言えば『時間の経過』をテーマにしたような話ばかりだった。

 まあだからと言ってつまらなかった訳ではなく、そこそこ楽しめたのでここにその四作の内容を簡単に記しておきたい。
タイムカプセルの八年  著者:辻村深月
 四作の中では本編が一番長編で、かつ一番出来が良かった気がする。さすが人気の辻村深月である。テーマのタイムカプセルよりも、いつまで経っても大人になり切れない『人見知り・事なかれ親父』の心情と家庭の事情を、面白おかしく上手に描いている。
トシ&シュン  著者:万城目学
 縁結びの神様が学問の神様の手伝いをするという荒唐無稽なお話。それの何が時間テーマに繋がるのかと言うと、神様と人間の時間間隔の違いと言うところかな・・・。
下津山縁起  著者:米澤穂信
 下津山の大規模土地開発にからむ出来事を2000年間に亘って語り紡いでゆくお話。出来が悪いわけではないが、四作の中では一番短編なのだが退屈だった作品でもある。
長井優介へ  著者:湊かなえ
 本作もタイムカプセルがらみの作品なのだが、主人公の耳が悪くて三秒後にしか相手の声を聴くことが出来ない。それが原因で相手に誤解を与えてしまい、いじめにあったこともある。だがある人にもらった『お守り』のお陰で無事成長することが出来た。その『お守り』とは一体何だったのか。実はタイムカプセルの中に封印してあったのだ。さすが実力派の湊かなえである。辻村深月作品といい勝負だね。

評:蔵研人

タイム・トラップ

★★★☆
製作:2017年 米国 上映時間:87分 監督:マーク・デニス  ベン・フォスター
 
 数十年前に失踪した両親を捜すため、考古学のホッパー教授が、『若返りの泉』があるという秘密の洞窟の中に侵入する。だが彼もまた、そのまま消息を絶ってしまうのである。
 その教授を探すために、ゼミ生であるジャッキーとテイラーは、友人のカラと少年少女2人を伴って、洞窟を探索することになる。だが彼等もまた教授同様、ミイラ取りがミイラになってしまうのだった。
 
 その後カラが一人でなんとか崖をよじ登って、洞窟の外に這い出すことが出来る。ところが周囲の風景は、見たこともない異常風景で空気が汚れているし、SOS用のGPSビーコンも全く通じないのだった。この間約30分経過、それで彼女は仕方なく洞窟内に戻るのだが、洞窟内部では2秒しか経過していないという。

 つまり洞窟内部は時間がゆっくりと流れていて、外の世界では数百年の時が流れ、地球滅亡寸前の未来に変化していたのである。そして彼等がその事実に戸惑っていると、宇宙服のようなものを身にまとったプレデターのような者が洞窟内に降りてくる。びっくりして洞窟の奥に逃げると、今度は原始人が襲って来るのだった。

 とまあこのあたりの展開は、もうハチャメチャで何が何だか分からない。結局、浦島太郎になってしまった彼等であるが、ラストは何の説明もなく意味不明のまま、なんとか全員無事でハッピーエンドを迎えることが出来る。だが果たして、本当にめでたしめでたし、なのかは誰にも分からないのだ・・・。実に奇妙な作品であるが、上映時間が短かったせいか、途中飽きもせずなんとか最後まで観ることが出来たのは幸せであった。


評:蔵研人

戦国スナイパー 信長との遭遇篇

★★★☆
著者:柳内たくみ

 著者の柳内たくみは、元自衛官という変わり種である。従って現代武器と戦略などについては、かなり造詣の深い記述がみられる。またデビュー作の『ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦えり』も、自衛隊員の奮闘が物語のメインとなっている。

 さて本作である。いきなり訓練中に、一人だけ戦国時代にタイムスリップしてしまった陸上自衛隊員・笠間慶一郎二等陸曹。だが彼はタイムスリップしたとは思ってもいなかったため、身の回りに起きている殺戮と死体の山を見ても、時代劇の撮影現場なのだろうと、勝手に推測していた。やがてそれが本物の死体と惨劇だと気づき、火縄銃で賊に狙撃を受けていたのが、あの織田信長であることが判明する。

 と言う出だしでから、やっと戦国時代にタイムスリップしてしまったことを理解した慶一郎が、信長の配下として働くまでを描くSF時代小説なのである。慶一郎は狙撃の名手であり、現代の武器も装備しているのだが、人を殺すことが出来ない。
 本来なら現代の武器と狙撃技術及び軍事知識を駆使すれば、戦国時代ではスーパーマンとして活躍できるはずである。ところが本作では、現代人で殺人経験のない慶一郎には、人を狙撃することが出来ないのだ。

 それでスーパーマンを期待していた読者のイライラが募って来るのだが、作者はあえていきなり慶一郎を超人化せず、普通の人間として描きつつ、この時代に少しずつ慣れていく姿を描写しようとしているのだろうか。またそうした温い展開に終始することにより、いろいろなキャラクターを登場させたり、信長の信頼を得られるように配慮したのかもしれない。
 いずれにせよ、本作は全5巻であり421頁もある本書さえも、まだ序章に過ぎない。今後どのような展開になるのか楽しみであり、少しずつ続編を買い足してゆきたいと考えている。

評:蔵研人

あやしい彼女4

製作:2016年 日本 上映時間:125分 監督:水田伸生

 歌あり、笑いあり、涙ありの楽しくて良質のファンタジー映画なのだが、韓国映画『怪しい彼女』のリメイク版というところが非常に残念である。もし本作がオリジナル作品なら、満点に近い出来栄えと言っても過言ではないだろう。
 ストーリーのほうは、女手一つで一人娘を育てた70代の老婆(倍賞美津子)が、摩訶不思議な写真館で写真を撮ると、なんと20歳の若々しい娘(多部未華子)に変身してしまうのである。その後言動がおばちゃんの奇妙な娘になって昔の歌謡曲を歌うと、これがまた心のこもった良い歌声で、聞く者たちに大感動を与えてしまうのだった。

 たべちゃんが歌うのは、1960年代から1970年代のヒットソング数曲なのだが、小さかった娘を抱えて苦労した昔の映像が映される中で歌う『悲しくてやりきれない』が一番心の中に染み込んできた。観ているほうも、なんだか自分の少年・少女時代がオーバーラップして、涙が止まらなくなってしまうのである。
 この曲ってこんなに良い曲だったのか、と、改めてつくづく感心してしまうから不思議なのだ。そして観客のほとんどが、感動の波に飲み込まれてしまうのである。それに若いたべちゃんが、涙を流しながら熱唱している姿も実に神々しかった。

 やや微妙な部分もないことはないが、たべちゃんの歌唱力はごりっぱだと言ってもよいだろう。本作はまさにたべちゃんの魅力を100%発揮した超娯楽作品と言える。また老女役の倍賞美津子の熱演も、決して見逃すことは出来ないはずである。
 本作を観た時点ではオリジナルの韓国版を観ていなかったのだが、最近観る機会に恵まれたので、その評論を読みたい方はこちらをクリックして欲しい。日本版では懐かしい歌謡曲に感動したわけだが、韓国版では歌の部分に感情移入ができるのだろうか…。

評:蔵研人

ふりだしに戻る

★★★☆
著者:ジャック・フィニイ 翻訳:福島 正実

 イラストレーターのサイモン・モーリーは、ニューヨーク暮らしにうんざりしはじめていた。そんなある日、政府の秘密プロジェクトの一員を名乗る男が訪ねてくる。このプロジェクトの目的は、選ばれた現代人を、過去のある時代に送り込むことだった。そしてサイモンは、『青い手紙』の謎を解くために過去に旅立つことになる。

 ここまで書くとなんとなくSF小説のようだが、だが過去に跳ぶ方法はタイムマシンではない。実は過去そっくりに創られたセットの中で、過去の服装をして、自己催眠をかけるようにして過去に行くのである。
 この方法はリチャード・マシスンの『ある日どこかで』と全く同じ方法である。もちろん本作のほうが少し早く出版されているので、『ある日どこかで』のほうが真似たのかもしれない。いずれにせよ『ある日どこかで』同様、SFというよりはラブファンタジーとして分類したほうが適切だろう。
 
 本書が古典的な名作であることは間違いないのだが、1880年代のニューヨーク風景が延々と綴られるので、ニューヨークをよく知らない者や興味のない者にとってはかなりの苦痛となるはずである。かくいう私も、途中何度もこの本を投げたくなったものだ。
 広瀬正の書いた『マイナス・ゼロ』というSF小説がある。こちらはタイムマシンで昭和初期に跳び、古き良き東京の風景と人情を描いているのだが、昔の東京を知っているためか、懐かしくてなかなか味わい深かい作品であった。おそらく本書の風景描写も、古きニューヨーカー達にとっては、同様の気分を味合わせてくれる嬉しい描写なのかもしれない。

 さて本書は、上下巻それぞれ350頁程度ある長編小説なのだが、上巻は先に述べた通り古き良きニューヨーク風景描写に終始していて、ニューヨーカーでない我々日本人には、かなりの忍耐力が要求されるだろう。だが下巻になると、やっと登場人物間の会話や心理描写が介入しはじめて、俄然ストーリーもメリハリを帯びてくる。そして下巻の135頁頃からは、火災脱出や逃亡劇などのアクションシーンの応酬で息つく間もなく、やっと面白さが暴発するのだ。そしてそこからは、ホップ・ステップ・ジャンプで、一気にラストまで読み込んでしまうはずである。

 と言いながらも、相変わらず執拗に古きニューヨークの描写は途切れない。ほんとうにこの著者は、古きニューヨークにのめり込んでいるのだと、感心したり呆れてしまうのだが・・・。ただ写真やスケッチ、あるいは当時の新聞記事などを巧みに利用してマンネリ化を防止している。これは実に見事な創作手法ではないか!。ただあの傷んだ写真や絵は、一体誰がどこで手に入れたのかが気になるところである。

評:蔵研人

パスト&フューチャー 未来への警告3

製作:2018年 スペイン 上映時間:92分 監督:ダニエル・カルパルソロ

 タイトルがなんとなくタイムトラベル風だったので、思わず衝動借りしてしまったのだが、現在と10年後を同時進行で描いたスペイン産のミステリーであった。ではなぜ10年間の時を隔てて、同時進行して描かれなければならないのだろうか。

 それはあるコンビニで、1913年、1955年、1976年、2008年の同じ日に、発砲による殺人事件が発生したからである。これは偶然か呪いなのだろうか。さらにはどの事件も、現場に居合わせた被害者・犯人・目撃者は合計5人で、その年齢構成は、53歳・42歳・32歳・21歳・10歳なのだ。そのパターンを解析した数学者のジョンが出した結論は、『10年後の2018年4月12日に、そのコンビニで10歳の子供が死ぬ』というものだった。
 その因果律を阻止するために、ジョンは必死に動き回るのだが、周囲の人々は彼を異常者扱いするばかり。そして彼の行動は全て空回りして増々悪い方向へと反転してゆくのだった。
 
 一方10年後に殺される予定の子供は、母子家庭のためか、学校でいじめの対象となっている。また母親が過剰に関与してくるため、なかなか独り立ちできない。そして少年は、4月12日にコンビニに行くと殺されるという警告書を発見し、さらに臆病になってしまう。
 ところが母親は、そんな息子を強くしようと、嫌がる少年を無理矢理コンビニへ連れて行くのである。そこへ拳銃を持った強盗が侵入してくるのだが…。

 こうした展開により緊迫感を持たせるため、10年の時を隔てて同時進行風に描いたのであろう。それはそれで良いのだが、どうもジョンの行動に冷静さが全くみられず、まるで麻薬中毒者のように悪夢に襲われる状態にイライラが募ってしまう。また嫌がる少年を強引にコンビニへ引っ張ってゆく母親のしつこさも納得できない。
 ラストの締めくくりが気になるので、それとなく退屈もせず観終わったのだが、なにか余りすっきりしないし、殆ど予測の範囲内で感動もなかったのが非常に残念である。まあ悪い映画ではないのだが、数字ばかりいじくりまわさないで、もっと人間関係の部分を掘り下げて欲しかったね。

評:蔵研人

さよならアリアドネ

★★★☆
著者:宮地昌幸

 ある日のことである。未来からやって来た中年女の”アリアドネ邦子”に、「このままだと最愛の妻に見捨てられて不幸のどん底に落ち込みますよ」と忠告される。また「それを阻止するためには、15年後の未来に跳んで、同じ8月23日を72回繰り返して、未来を変える方法を見つけるしかありません」とも断言される主人公の服部政志33歳であった。

 著者はあの『千と千尋の神隠し』の助手を皮切りに、数々のアニメを手掛けている宮地昌幸である。そして本作の主人公・服部政志もアニメーターという設定であり業界人も登場するので、もしかすると半分は自分自身の心境を描いた疑似私小説なのかもしれないね。

 前半は政志が四苦八苦して、同じ日を72回繰り返してなんとかハッピーエンドを迎える。そして邦子が2050年の未来に戻り、時空興信所長に「業務報告書」を提出する。かなり長い報告書なのだが、少し分かり難かったストーリー全体をまとめてくれたので助かった。ところがここまでで、まだこの小説の半分を消化しただけなのである。

 この後一体何があるのかと思っていたら、また過去に戻ってきた邦子が、政志の前でとめどなく泣き崩れてしまうのである。おいおい一体どうしちゃったの?と首をひねっていたら、今度は邦子の不幸な物語の幕開けであった。そしてその不幸を少しでも緩和するために、二人はタイムマシンで過去(邦子にとっては過去だが、政志には未来)へ跳んでゆくのであった。

 結局のところ本作は、政志と邦子の二人の不幸を阻止するためのタイムトラベル小説だったのだ。ただ前半の政志のタイムループ話は少し退屈であり、後半の邦子の過去改変のストーリーのほうが面白かった。ただ改変した過去とのタイムパラドックスについては、やんわりとパスしているのでかなり物足りないのが残念であった。

評:蔵研人

シンデレラ III 戻された時計の針

★★★☆

製作:2013年 日本 上映時間:75分 監督:フランク・ニッセン

 ディズニーアニメの名作『シンデレラ』をパラレルワールドの世界として創りあげたストーリーである。つまりもしガラス靴が義姉アナスタシアにぴったりだったらどうなるのというお話なのだ。
 ある日、魔法の杖を手に入れた義母が時間を過去に戻し、アナスタシアに合わせたガラスの靴を作り、お城に呼ばれることになるのである。もちろんシンデレラの顔を覚えている王子が、アナスタシアをダンスの相手と認めるわけがないのだが、また魔法の杖によって記憶を入れ替えられてしまうのだ。

 まあ視点を変えたシンデレラストーリーということでは評価できるのだが、やはりなんとなく結末は分かってしまうし、ねずみが大活躍という子供向けの展開にちょっぴり興ざめしてしまった。楽しい映画であることは間違いないのだが、大人がのめり込むにはもう一捻りが必要だろう。

評:蔵研人

時の扉とシンデレラ


★★★☆

著者:ヴィクトリア・アレクサンダー

 なんともくすぐったい様なロマンチックなタイトルではないか。それもそのはず、本書はハーレクイン文庫エロティック・コンテンツであり、著者はこれまでに20作以上のヒストリカル・ロマンスを世に送りだしている売れっ子女性作家なのである。
 さてハーレクインには、次のお約束があることはご存じだろうか。
1.どんな作品も必ずハッピーエンドで結ぶ
2.ヒロインは基本的に前向きで、美しさと強さを兼ね備えた女性であること
3.ヒーローは当然ハンサムで、財力・権力・知力のいずれも申し分のない男性であること
 つまり王道のラブストーリーだからこそ、女性読者たちは安心してその世界に没頭し、疑似恋愛を楽しめるのであろう。だが男性たちには非現実でばかばかしい小説に映るかもしれない。ただタイムトラベルファンにとっては、ハーレクインにはそこそこ没頭できるタイムトラベルロマンスが多いので馬鹿にすることは出来ないのだ。もちろん本書も大いに楽しめるはずである。

 本作は1995年の米国で暮らし、恋に縁遠かった26歳のヒロイン・マギーが英国旅行中に、1818年の英国にタイムスリップしてしまうお話である。そしてそこで出会ったハンサムな伯爵と恋に落ちるという、よくありそうなお話なのだ。
 このお話でタイムマシンの役割を果たしたのは、霧のロンドンに現れたアンティークで魔訶不思議な雰囲気の馬車である。だがこの馬車がタイムスリップしたのは、1995年からピッタリ177年前ではなく、そこから1か月間前のロンドンだった。と言うことは、1か月後にまた同じ場所に馬車が現れて、マギーはまた元の世界に戻るという理屈になるのだろうか・・・。

 主な登場人物はヒロイン・マギーのほか、アダムこと第七代リッジフィールド伯爵とその妹リディアであり、バックグラウンドもほぼアダムの屋敷の中という構成になっている。もちろん舞踏会やそこで知り合った数人の男女との絡みもあるのだが、それらを全て加えても約10名程度の配役に過ぎない。まるで舞台劇のようなこじんまりした世界なのであるが、そのお陰で登場人物の名前が覚えやすかった。

 なにせエロティック・コンテンツと銘打っているのだから、エログロに落ちない程度の子細な性描写と、燃えるような恋心とドロドロした猜疑心の心理描写が延々と続いて行く。また「マギーは未来に戻るのか否か」もだんだん気になってくる。
 そしてラストの大団円では、きちっとタイムトラベルもののお約束を守ってくれたではないか。だから男性読者たちでも、たまにこんな恋愛小説を読んでも決して損はしないだろう。さらにもしリディアがヒロインとなる続編が創られれば、是非とも読んでみたいものである。

評:蔵研人

未来のミライ

★★★☆

製作:2018年 日本 上映時間:98分 監督:細田守
 
 本作は第91回アカデミー賞にノミネートされたアニメーションである。ストーリーは、”くんちゃん”という甘えん坊の小さな子どもの日常と成長を描いたファンタジーで、誰もが小さいときに経験するであろう体験を淡々と綴っている。

 本作がファンタジーたる所以は、くんちゃんが我がままになる都度、未来の妹が現れたり、過去の曾おじいさんと会ったりすることである。なんとなく『さびしんぼう』や『千と千尋の神隠し』のような雰囲気が漂う。

 また本作は単なるファンタジーアニメではない。小さな妹へ両親の愛情を奪われたことに嫉妬し、戸惑う男の子の心理状態を巧みに描きながら、昔の人の偉大さを称えたり、いつの時代も繰り返えされる人の営みなどを描き、深みの感じられる作品に仕上がっているのだ。ただくんちゃんの喋り方にはやや難があったが、幻想的な音楽と美麗な絵のアンサンブルはとても素晴らしかった。
 
評:蔵研人

リライト

★★★☆
著者:法条遥 
 
 リライト(Rewrite )とは、基本的には「書き直す」または「書き換える」といった意味の英語である。IT用語としては、既存システムの枠組みは維持しつつ使用言語(プログラミング言語)を改めることを指す。
 また編集用語では、著者以外の人が文章に手を入れて書き直すことを言う。もちろん高名な小説家に対しては、失礼になるため手直しはできない。どちらかと言えば、文筆家以外の人が書いた実用書などの文章を読み易くするために、無名のライターがおおもとを変えずに文章を手直しする作業を言う。

 ただ本作のタイトルである『リライト』の意味は、なかなか一筋縄では説明できない。まず目次を見れば分かるのだが、2002年と1992年を何度も繰り返している。そしてその都度「私」の視点が異なっているのだ。
 つまり同じ出来事なのに、それぞれ別人が主人公として描かれているということなのである。最初はそれに気付かないため奇妙に感じるのだが、その種明かしは終盤の同窓会二次会の中で明かされることになる。この繰り返しパターンを『リライト』と考えることも出来るのだが、単純に作家の高峰文子が書いた私小説『時を翔ける少女』の改竄のことを指しているのかもしれない。

 過去は絶対変わらない・・・はずだったのだが。西暦1992年夏。中学二年生の桜井美雪は、旧校舎に突然現れた転校生の園田保彦と出会う。ラベンダーの香りとともに現れた彼は、西暦2311年からやってきた未来人だった。
 なんとなく筒井康隆の『時をかける少女』に似ている。いや似ているというより、『時をかける少女』をより難解にアップデートしたオマージュ作品なのだろうか。いやいやもしかすると『時をかける少女』のリライトかも(笑)。

 いずれにせよ一度読んだだけでは、その意図がよく理解出来ない作品であろう。事実私自身も完全に読み解けないまま、本書の評を記しているという情けなさ・・・。だがよく理解できないながらも、本書がそこそこ味わい深く、楽しめる作品であることは否定できないのだ。

評:蔵研人

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