タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2020年05月

キッド4

製作:2000年 米国 上映時間:104分 監督:ジョン・タートルトーブ

 ブルース・ウィリス演じるところの主人公ラスは、イメージ・コンサルタントである。彼は著名人にイメージ・アップのためのアドバイスをして、かなり裕福な生活を送っている。
 だが金儲けに走り過ぎる彼は、余り人に好かれない。ただ同僚のエミリーには少しだけ好感されているが、恋人とまではゆかない微妙な関係だ。

 そんな彼の元に、ある日奇妙な少年が現れる。その少年の名もラスで、何となくどこかで見たような顔つきなのである。いろいろ話してみると、なんと少年は30年前のラス本人であることが分かる。
 少年はラスに向かって「将来の自分が、望んだ職業にもつけず、結婚もせず、犬も飼わないとは最悪だ」と言う。どのような方法で、何の目的でラス少年が現れたのかは不明である。また常に大空からラスを監視しているような小型飛行機の存在も謎であった。

 少年時代に同級生からいじめを受け、母親の死も自分のせいのように罵った父親。それらの嫌な過去を全て忘れ、必死になって勉強して今日の富を築いたラスだったが、人間として何かかが足りない。
 そう夢や希望がないのだ。そのことを大人のラスが少年のラスに教えられるのである。ラストは感動の涙が止まらない。実にディズニーらしい映画なのかもしれない。心温まるハートフルな映画であった。

評:蔵研人

スライディング・ドア4

製作:1997年 米国 上映時間:100分 監督:ピーター・ハウイット

 米国製のラヴ・ストーリーとしては、ちょっと異色な作品かもしれない。重大会議のある朝に遅刻してしまったヘレンは、ほかにもいろいろあってクビになってしまう。それでしょげかえって、そのまま帰宅しようと地下鉄の駅に向かう。
 改札を潜ると、ちょうどホームに電車が到着したところだった。急いで階段を走るのだが、途中で子供とぶつかり電車のドアは閉まってしまう。だがその瞬間にもう一人の自分がいて、子供との衝突を避けて間一髪で、ドアをこじ開けて電車に乗ることが出来るのである。

 もしあの時こうしていたら、運命はこう変わっていたという題材でスタートするこの作品。ここからは二人のヘレンのパラレルワールドが始まるのであった。二人を区別するため、電車に乗れたヘレンは髪を切りブロンドに染める。

 では二つの運命はどのように変わったのだろうか。実はその後事故が発生し、この次の電車が大幅に遅れてしまうのだ。さらには電車に乗れたヘレンは、車内で隣席のジェイムズという男と運命的な出会いをすることになる。
 だが早く帰宅したため、同棲しているジェリーと浮気相手の情事の真最中に遭遇してしまう。一方電車に乗れなかったほうのヘレンは、電車の遅れとひったくりによる怪我などのお蔭で帰宅は大幅に遅れ、その間にジェリーの浮気相手は帰り、浮気現場に遭遇することは無かった。

 こうして二人のヘレンとその後の展開がパラレルに進行してゆくのだが、ストーリーは二転三転してゆく。果たしてどちらのヘレンが幸せになれるのだろうか。とワクワクしながら、あっという間に意外なラストへと進んでゆくのである。
 まるでヨーロッパ映画のような展開で、よく練り込まれたちょっぴりお洒落な脚本といえるだろう。またヘレンを演じた長身の女優も、なかなかキュートで魅力的だなあと思いながら観ていた。
 実はそのヘレンを演じた女優こそ、この作品から11年後に製作された『アイアンマン』でヒロインを演じるグウィネス・パルトローその人だったのである。

評:蔵研人

君の名は。5

製作:2016年 日本 上映時間:107分 監督:新海誠

 ほとんど予備知識なしでこのアニメを観た。単なる学園ラブコメかと思っていた。それではじめは敬遠していたのだが、「10日間で動員290万人、興収38億円を突破」という凄まじい人気で、連日マスコミが騒ぎ立てると言う異常事態が勃発。
 その超人気に煽られて、とうとう私も重い腰を上げることになってしまった。通常はジブリ作品以外のアニメなら、観客はオタク風の若者が多いのだが、なんと本作に限ってはかなり年配の観客が多いではないか。これも私同様マスコミの報道に煽られて、ゾロゾロとやってきた人達なのであろう。
 それにしても8月に公開されてから、既に3か月目になるというのに、まだまだ空席が少ない状況なのだ。一体どこまで興行収入が伸びてゆくのだろうか。

 高校生の男女の心と体が入れ替わるという、大林宣彦監督による『転校生』のような展開なのだが、彼等はお互いに見知らぬ者同士、というところが『君の名は』の君の名はたる所以なのである。そして男子は東京で女子のほうは田舎町に住んでいるという設定だ。
 さらにはこの田舎町に、東日本大震災を彷彿させる大災害が突然勃発し、町は壊滅状態となってしまうのである。だがこの大災害が起きたのは3年前であった。と言うことは、二人の入れ替わりに3年間の時間がねじれていたのである。だから二人が逢おうとしても。絶対に逢えないのだった。過ぎた過去はもう取り戻せないのか。だが唯一取り戻せるパワースポットのような場所が存在していたのだ。

 人物は普通のアニメなのだが、CGを駆使した背景が実に美しい。そしてこの意外な展開にも驚かされ、ちっぽけな学園ドラマが、一挙にスケールの大きな宇宙的なファンタジーと化してしまうのである。人によっては少し戸惑うかもしれない。だからリピーターが多いのだろう。まあそれはそれとして、この映画をより詳しく理解したい人には、新海誠監督の著した同名の小説があるので、そちらのほうも読んでみようではないか。

評:蔵研人

タイムトラベラーK3

著者:本木治
 
 「人生どこからやり直す」というサブタイトルで、どうやら過去に何度もタイムスリップして人生をやり直すという『リプレイ』のような小説のようだ。そう聞いてタイムトラベルファンの私は、どうしてもこの小説を読みたくなってしまった。
 ところがなぜか現在アマゾンでは扱っていないのである。それに出版元が文芸社なので、半分自費出版のような扱いなのだろうか。
 そんな疑問を感じつつも半ば諦めていたのだが、ひょんなことからセブンイレブンのネットショップで購入できることが分かった。それで早速購入したのだが、なんと100ページにも満たない超薄い文庫本だった。従って超遅読者の私でも、あっという間に読破してしまったのである。

 本作の目次を見ると次のような構成になっている。
Ⅰ.序
Ⅱ.ナオコ
Ⅲ.マサコ
Ⅳ.ナオコとマサコ
Ⅴ.マサコ

 この中の序章は、まさに著者自身のことを書き綴っているようである。そしてその後のタイムトラベルは、著者の願望なのだろう。
 著者は貧しい家に生まれ育ったが、ハンサムで頭脳明晰で女性たちのあこがれの的だったという。ただ家が貧しく私立校には行けなかったため、必死で勉強ばかりしていたことと、吃音だったため内に籠り易く「強迫性障害」を患わってしまった。そのために望む職業にもつけず結婚もできず、50歳を超えて生活保護に頼るだけのただのデブおじさんになってしまったのだという。

 そんな現状を嘆きながらも、もし過去に戻ることが出来たら、もう一度人生をやり直したいと、考えながら自転車を漕いでいるとき、なんと脇道から急に飛び出してきた自動車に跳ねられて意識を失ってしまう(死んだ?)、という寂しく悲しい現状を嘆いているのである。
 
 まあここまでは良いとして、その後のやり直し人生については、K・グリムウッドの『リプレイ』のように複雑ではなく、学生時代に知り合った二人の女性と上手く付き合うということだけに絞った単調な展開なのだ。だから100ページに満たない薄さなのである。
 それにしても、もう少し複雑な展開やタイムパラドックス、どんでん返しなどを期待していた私には、かなり物足りない内容であった。まあだからと言って決してつまらない話でもなく、読み易くて楽しく読ませてもらったことも否めない。いま一つの展開と工夫があればと、残念さが身に沁みるような作品なのである。

評:蔵研人

テラフォーマーズ3

製作:2016年日本 上映時間:108分 監督:三池崇史

 ここ最近の邦画は、大半が人気コミックを原作にしている。やはり、既にコミックでヒットを実証済だし宣伝効率も高いため、こうした傾向に走ってしまうのかもしれない。本作もコミックが原作らしいが、私自身はまだこのコミックは未読である。従って原作に惹かれてこのタイトルを選んだわけではない。単にあの『エイリアン』のようなホラーチックなSFが観たかっただけである。

 さすが人気コミック発で、ストーリーはなかなか興味深い。近未来のお話である。地球で猛烈な人口増加が続き、人類は火星への移住を計画する。そしてまず火星の環境を地球に近づけるため、コケと原始時代から地球に生息し、環境変化に強いゴキブリを火星へと送り込んだのである。さらにその500年後、移住計画の最終段階として、今度はそのゴキブリを駆除するため、個性的な15人の隊員が火星に派遣される。ところがなんとゴキブリたちは、強力なゴキブリマンに進化していたのだった。そして彼等こそが、テラフォーマーと呼ばれていた新生物だったのである。

 そのゴキブリマンの造形や動作はCGで描かれており、なかなか見応えがありスピード感もあった。さすがワーナーが配給しただけあり、邦画と言えどもVFXの出来栄えはまずまずかな。と思ったのもつかの間、隊員たちが昆虫人間に変身した途端に、かなりの失望感を抱かざるを得なかった。
 なんと変身後の姿は、TVの仮面ライダーに登場する怪人たちの着ぐるみそのものではないか。また、ゴキブリマンとの戦闘もプロレスゴッコに終始するばかりなのだ。

 なぜ変身後の怪人を、ゴキブリマンと同様にCGで描き、もっとド派手な戦闘シーンを創出できなかったのだろうか。ストーリーとゴキブリマンの出来が良かっただけに、この状況は非常に残念である。
 たぶんネットでの評価が異常に低いのも、きっとこのせいかもしれないと感じてしまった。またラストシーンも単調で全く捻りがない。とかく詰めが甘いのが、邦画のSF映画の特徴である。悔しいが世界的な水準に到達するのは、まだまだ時間がかかりそうだね。

評:蔵研人

ファイナル・カウントダウン

★★★☆

製作:1980年米国 上映時間:104分 監督:ドン・テイラー

 1980年にハワイ沖で訓練をしていた原子力空母が、蒼白い閃光の嵐に襲われて過去の世界にタイムスリップしてしまう。なんとそこは約40年前の真珠湾攻撃直前の太平洋だったのである。
 そしてそこで空母から発進した最新鋭戦闘機F14と、日本軍のゼロ戦との戦闘が始まるのだが、当然のことだがゼロ戦は全く歯が立たない。そして撃墜されたゼロ戦から、拿捕された日本軍の兵士が空母の中に連れてこられるのだが…。

 タイムスリップ映画の名作と謳われた本作は、さすが製作費2000万ドルを費やしただけあって、35年以上経過した現在においてもそれほど色あせていない。また空母から発進するF14の雄姿と迫力はなかなか見応えがあった。ただ捕虜にした日本人兵士役を韓国人の俳優が演じているため、日本人から見るとかなり違和感を禁じ得ないところが非常に残念である。

 さて、かわぐちかいじ氏のマンガ『ジパング』では、日本の自衛隊とイージス艦が太平洋戦争の真っただ中にタイムスリップするという日米逆バージョン版を描いているが、もしかするとこの映画にヒントを得てアレンジ創作したのかもしれない。まあマンガのほうは43巻という大長編で、日本軍が米国より先に原爆を開発し、それを自衛隊が阻止するという皮肉な展開に終始しているのだが・・・。

 本作のラストシーンは、まさにタイムスリップものによくあるオーソドックスなパターンであり、なんとなく途中で気が付いてしまった。やや物足りない感もあるが、ハッピーエンドでめでたしめでたしかな。またいかにも実在人物のように描かれていたチャップマン上院議員は、実は架空の人物ということである。念のため。

評:蔵研人

orange-オレンジ-

★★★☆

製作:2015年日本 上映時間:139分 監督:橋本光二郎

 原作は高野苺の少女コミックで、美しい風景の松本市を舞台にした学園SFラブファンタジーである。主演はなんとNHKの朝ドラ『まれ』と同様、山崎賢人と土屋太鳳の『けんたお』コンビなのだ。

 さてストーリーのほうは、10年後の自分から、高校2年生の高宮菜穂宛に手紙が届くところからはじまる。そしてそこには、間もなく東京から転校してくる成瀬翔を好きになってしまうこと、そしてその翔は1年後に死んでしまうことが書かれていたのである。
 はじめは誰かのいたずらではないかと思っていた菜穂だが、手紙に書いてあることが全て実現してしまうため、手紙の内容を信じるようになる。そして翔の死を防ぐため、仲間たちにも協力してもらいながら、翔の運命を変えるべく行動を次々に実行するだった。

 映像を観ていても、まさにこれぞ少女マンガという雰囲気がプンプン匂ってくる清純ラブストーリーである。従って軸足は常に恋愛であり、タイムトラベル理論にしても、タイムパラドックスとパラレルワールドのさわりをチラつかせただけに過ぎない。

 また未来からの手紙がどうして届いたのかについても、はっきりとした説明がないまま終わってしまった。それにこの種の話によくあるどんでん返しや洒落たオチもなく、ふんわりとしたままエンドロールを迎えてしまったのも、なんとなく物足りない気分である。
 まあ随所で泣かされるシーンもあり、そこそこ楽しめる作品なのだが、あの名作『いま、会いにゆきます』には遠く及ばないことも否めないだろう。

評:蔵研人

僕だけがいない街3

製作:2016年 日本 上映時間:120分 監督:平川雄一朗  原作:三部けい

 原作のマンガを先に読んでからこの映画を観た。序盤から中盤までは、ほぼ原作をなぞったダイジェスト版だった。だが終盤になってストーリー展開が急変してくる。さらにはなぜか結末をバッドエンドにチェンジしてしまったのである。
 時間の制約もあるため、実写映画化にあたってストーリーを再編することは良くあるが、結末をこれほど変化させては、別の作品に修正してしまったようで納得できない。よくこの結末を著者が許可したものである。

 主人公は漫画家をめざすフリーターの藤沼悟。彼は事件や事故が起こると、時間がループする体質である。それで事故を未然に防いだこともあった。だがある日家に帰ると、母親が何者かに刺されていた。成り行き上、彼は容疑者にされてしまう。そして逃亡中に意識を失い、18年前にタイムスリップしてしまうのである。タイムスリップと言っても、小学生時代の自分の心の中に、大人の自分の心が移動したのだった。

 この過去には、未解決の少年少女殺人事件が何度も発生している。もしかするとこれらの事件を解決すれば、母親が刺される未来も改変できるかもしれない。そう考えた悟少年は、殺害されたクラスメートの雛月加代を救う決心をする。といった展開でタイムトラベルとミステリーを複合させた興味深いストーリーである。

 原作のストーリーは良く出来ているのだが、個人的にはあの絵が好きではない。とくにキャラの目がみな同じようで、硬い感じの絵柄にも同調できないのだ。逆に映画のほうは、映像や俳優は良いのだが、ストーリーに共感できないのである。
 ということは、この映画を原作に忠実に創っていればかなり好感を持てたと言うことになる。非常に残念でたまらない。

評:蔵研人

エアポート20153

製作:2015年 米国 上映時間:86分 監督:エミール・エドウィン・スミス

 「民間旅客機が第二次大戦中にタイムスリップ」という謳い文句に釣られてレンタルしてしまった。こうした作品には駄作が多く、本作もチープな模型や突っ込みどころ満載のB級作品なのだが、なんとかギリギリ楽しめたので★★★の評価を与えた。
 タイムスリップものの常套手段として、乱気流はいつもその出入り口に使われる。またラストの落ちも、よくあるパターンでほぼ予測通りであった。
 またこんな場合は乗客たちがパニック状態になるものだが、一人の乗客を除いてはみな紳士的だったし、その一人の乗客も殴られてから急に大人しくなってしまった。これらはパニックものとしてはかなり物足りないのだが、現実的にはこんなものなのだろうか。いずれにせよ中途半端であることだけは間違いないだろう。

 さてそれにしても、ドイツ軍の戦闘機に囲まれて集中射撃をくらってもほとんど当たらず、死人も2人しかでない。また客室の一部が破損しても、酸素マスクも落ちないなどなど、突っ込みどころは山ほどある。だが細かいことには拘らず、そこはそれB級作品なのだからと、割り切って鑑賞できれば、そこそこ楽しめるかもしれない。

評:蔵研人

プリデスティネーション4

製作:2014年 オーストラリア 上映時間:97分 監督:マイケル・スピエリッグ

 ロバート・A・ハインラインの短編小説『輪廻の蛇』が原作のSFサスペンス映画である。携帯用タイムマシンを使って時空を往来し、犯罪者を取り締まる中年エージェントと、その仲間に誘われる男女両性を持つ青年との宿命的な物語と言えるだろう。主役を演じたイーサン・ホークとセーラ・スヌークの二人もぴったりのはまり役で、存在感たっぷりの味のある渋い演技だった。

 小説のタイトル『輪廻の蛇』とは、自分で自分の尻尾を飲みこむ蛇のことであり、矛盾というか複雑なパラドックスと言う意味なのかもしれない。とにかくハインラインのタイムパラドクスは、しつこいくらい理屈ぽくて秀逸である。
 本作はそのハインラインの絶妙な味とタッチを損なわず、不気味さを漂わせながら実に見事に描いているではないか。ただ内容について詳細を綴ると、その面白さが台無しになってしまうため、評論者泣かせの映画とも言える。従ってあとは観てのお楽しみと言うことで締めることにする。

評:蔵研人

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