製作:2014年 日本 上映時間:96分 監督:劇団ひとり
劇団ひとりが原作、脚本、監督、準主演を手掛けた作品であり、彼の器用さにほとほと感心してしまう作品である。ただ無理もないことなのだが、先の見え過ぎたストーリー展開や、素人ぽいカメラワーク、いつもながらの演技などに、一抹の不安を拭えなかったことも否めない。
お話のほうは、両親を憎みながら自分の人生に嫌気を感じていたマジシャン轟晴夫(大泉洋)が、ある日稲妻に直撃され、その瞬間に40年前の世界にタイムスリップしてしまうのだ。そこで偶然にもマジシャンをしていた父(劇団ひとり)と母(柴咲コウ)に巡り合い、自分の出生と家族の秘密を知ることになる。
この手のストーリーではよくある話で、かなり単調な展開なのだが、大泉洋のシリアスな演技力とマジックシーンがなかなか素晴らしく、これらのマイナス面をカバーしていたような気がする。
本作は、『オーロラの彼方へ』、『地下鉄に乗って』、『イエスタデイズ』、などと同様に、父と息子の葛藤を描いたタイムスリップ映画であり、私の最も好きなテーマをモチーフとした映画でもある。この手の映画に絶対に欠かせないのが、子供だった自分が知らなかった両親の心情が明らかになり、心の底から感動の涙を流させることだ。
もちろんその王道はきちっと遵守されており、母親との会話には大いに泣かされたが、肝心の父親との絡みでちょっとはぐらかされてしまったのが実に残念であった。これは劇団ひとりの照れ隠しだったのであろうか。
評:蔵研人