タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2020年02月

青天の霹靂4

製作:2014年 日本 上映時間:96分 監督:劇団ひとり

 劇団ひとりが原作、脚本、監督、準主演を手掛けた作品であり、彼の器用さにほとほと感心してしまう作品である。ただ無理もないことなのだが、先の見え過ぎたストーリー展開や、素人ぽいカメラワーク、いつもながらの演技などに、一抹の不安を拭えなかったことも否めない。
 
 お話のほうは、両親を憎みながら自分の人生に嫌気を感じていたマジシャン轟晴夫(大泉洋)が、ある日稲妻に直撃され、その瞬間に40年前の世界にタイムスリップしてしまうのだ。そこで偶然にもマジシャンをしていた父(劇団ひとり)と母(柴咲コウ)に巡り合い、自分の出生と家族の秘密を知ることになる。
 この手のストーリーではよくある話で、かなり単調な展開なのだが、大泉洋のシリアスな演技力とマジックシーンがなかなか素晴らしく、これらのマイナス面をカバーしていたような気がする。

 本作は、『オーロラの彼方へ』、『地下鉄に乗って』、『イエスタデイズ』、などと同様に、父と息子の葛藤を描いたタイムスリップ映画であり、私の最も好きなテーマをモチーフとした映画でもある。この手の映画に絶対に欠かせないのが、子供だった自分が知らなかった両親の心情が明らかになり、心の底から感動の涙を流させることだ。
 もちろんその王道はきちっと遵守されており、母親との会話には大いに泣かされたが、肝心の父親との絡みでちょっとはぐらかされてしまったのが実に残念であった。これは劇団ひとりの照れ隠しだったのであろうか。

評:蔵研人

刻謎宮4


著者:高橋克彦

 なんと新選組の沖田総司が死後に蘇生され、時空を超えて古代ギリシャに跳び、そこでアンネ・フランクやヘラクレスらと出会い、ギリシャ神話の世界を創造してゆくという、とてつもなく荒唐無稽で壮大な幻想歴史ファンタジーである。

 余りにもハチャメチャな展開なので、読む人によってはアレルギーを起こすかもしれない。だがマンガやSFや映画の好きな私にとっては、思わず夢中になるくらい面白い作品であった。また今後ギリシャ神話に触れる折にも、沖田総司が扮したアポロンなどを重ねてみると楽しさが倍加するはずである。

評:蔵研人

SF起源 タイムゲイト

★★★☆

製作:2001年米国 上映時間:86分 監督:ロバート・ヤング

 内容は原題の「THE INFINITE WORLDS OF H.G. WELLS」のほうが分かり易い。まさに若き日のSF小説家H.G.ウェルズが狂言回しとなり、彼の作品を「X-ファイル」や「トワイライトゾーン」の雰囲気で謎解きや新解釈を施しながら、老年時の思い出話風にまとめた作品である。
 本作はトリップ編となっているが、ほかにもリバース編が発売されている。また本作には二話が収められていることからしても、多分TVシリーズのようなものを編集してビデオ化したものではないだろうか。

 本作に収められている二話は、飲むと何千倍も敏捷力が上がり、あたかも周りの人々が静止しているように見えるという『新神経促進剤』という話がひとつ。もうひとつの話はどの小説から引用したのか分からないが、火星と地球を結ぶ不思議な石の話である。もしかするとあの『宇宙戦争』の前触れ的な話なのだろうか。
 いずれにせよ約20年前に製作されたこともあり、全般的にちょっと古い感じが否めないのだが、奇妙で摩訶不思議なお話が好きな人ならそこそこ楽しめるかもしれない。

評:蔵研人

天使のくれた時間5

製作:2000年米国 上映時間:125分 監督:ブレット・ラトナー

 すでに10年以上昔に観たこのファンタジー映画。かなり感動した記憶だけが脳裏に残っている。最近になってTVで放映され、録画をしたままになっていたのだが、本日やっと鑑賞する運びとなった。オープニングシーンとラストシーンだけはしっかり覚えていたのだが、その他のシーンは大部分忘れていたためか、またまた感動の涙を流さずにはいられなかった。

 主演のニコラス・ケイジも若くて魅力的なのだが、何と言ってもヒロインを演じた若き日のティア・レオーニがとてもキュートで可愛い。この映画では、まさに理想的な可愛い妻像を演じていたのがとても印象的であった。
 空港で引き止める恋人ケイトを振り切り、成功を夢に描いてロンドンへ旅立つジャック。そして13年後のジャックは、大金融会社のトップとして、優雅な独身生活を満喫していた。
 クリスマス・イブのことである。仕事以外に興味のないジャックに、なんと13年前に別れたケイトからの電話があった。だが彼はその電話を無視。仕事に疲れ、帰宅途中のコンビニで奇妙な黒人と関わることになる。そして彼はその黒人に、自分は何でも持っており、欲しいものは何もないと答えるのだった。
 その夜、自宅マンションで眠りについたジャックが、目覚めると、なんとそこは郊外の家で、ケイトと我が子2人に囲まれた家庭人ジャックになっていたのである。当面は変わってしまった環境に対応出来なかったジャックだが、可愛い子供たちと何年経っても魅力的なケイトに惹かれ始めるのだった。

 あの日あの時、人生の岐路に立った時、もし違った選択をしていたらどうした人生を歩んでいただろうか。誰もが一度ならず何度も、自分の中で反芻することだと思う。だが現実の人生は一度きりでおしまいだ。映画だから叶う、夢のようなファンタジーであり、実に心温まる作品に仕上がっている。最近はアクションものが多いニコラスだが、昔はこうしたラブファンタジーの似合う男優だったのである。

 それにしても、莫大な富と生きがいのある仕事に生きるのが良いのか、それほど豊かではなくとも、愛する家族に囲まれた人生のほうが良いのか。結論は各自それぞれの価値観によって異なってくるのだが、実はこのことは男たちにとっては、結論なき永遠の命題なのかもしれない。
 いずれにせよ、人は自分を必要している人や理解してくれる人が、出来るだけ多く近くにいる、ということが最大の幸せなのだろう。

評:蔵研人

君と100回目の恋3

製作:2016年 日本 上映時間:116分 監督:月川翔


 時間をさかのぼることが出来る不思議なレコード。これを使って事故死した幼馴染の葵海(miwa)を何度も助けようとする陸(坂口健太郎)だが、どうやっても彼女を救うことが出来ない。
 その葵海はもうすぐ米国へ留学してしまう。そんな事情の中で、1年前に時間を戻して二人は幼馴染から恋人同士に昇格するのだった。そして最後のコンサートのあと、陸は果たして葵海を事故から救い出すことが出来るのだろうか。

 なかなか私好みの興味深いテーマなのだが、なぜ何度過去に戻っても葵海を事故から救い出せないかの説明が全く無いところが残念でたまらない。また陸が急にギターの名手になる種明かしも、米国映画の『恋はデジャヴ』のパクリではないか。
 そして少なくとも泣けると思ったラストも無感動だし、どんでん返しも全く無い平凡な締め括りにも失望してしまった。もっと言えば脚本の未熟さだけではなく、製作費不足のせいかキャスト陣もいま一つだっと感じたのは私だけであろうか。大好きな時間ループテーマだっただけに、残念を通り過ぎて悔しい気持ちで一杯である。

評:蔵研人

妖魔ヶ刻4

 井上雅彦が編集した「時間怪談」の傑作選で、2000年に徳間文庫にて出版されている。同じ編者による似たようなアンソロジーの『時間怪談』が1999年に廣済堂出版から出版されているが、こちらとは全くの別物である。つまり『時間怪談』が書き下ろしであるのに対して、本作は過去に発表され、評価の定まったものや、埋もれた作品を募集・選別したものである。

 収録された作品は14点で、2点のマンガを含む下記の構成となっている。
 1.制 服       安土  萌
 2.ねじれた記憶    高橋克彦
 3.フェイマス・スター 井上雅彦
 4.迷宮の森      高橋葉介 マンガ
 5.骨董屋       皆川博子
 6.骨         小松左京
 7.時の思い      関戸康之
 8.サトウキビの森   池永永一
 9.時の落ち葉     田中文雄
10.二十三時四十四分     江坂  遊
11.長い夢       伊藤潤二 マンガ
12.天蓋        中井英夫
13.昨日の夏      菊池秀行
14.老人の予言     笹沢佐保

 いずれも劣らぬ傑作ではあるが、個人的にはともに切なくノストラジーを感じさせてくれる『ねじれた記憶』と『時の落ち葉』の二作を絶賛したい気分である。

評:蔵研人

恋はタイムマシンに乗って

★★★☆
著者:スーザン・サイズモア

 歴史学者のジェーンは、若き天才物理学者ウルフが発明したタイムマシンに、無理やり押し込まれ十三世紀のイングランドへ送られてしまう。そしてそこで修道院へ入る予定だったのだが、聖務停止命令が出されていて、それが無理だと知ることになる。
 偶然若くて優しい城主ステファンに助けられ、荒れ果てた城の整備や切り盛りを任せられることになる。若いステファンはジェーンに好意以上のものを抱いてしまうのだが、以前より男爵の一人娘シベールと婚約することになっていた。またジェーンは、ステファンの友人で、国王の騎士であるダフィッドという逞しい男を紹介され、彼を恐れながらも惹かれはじめてしまうのだった。

 前半は不潔で恐ろしい中世の世界が刻々と描かれている。床は泥だらけで蚤や虱の巣窟であり、いたるところに動物の糞尿が巻き散らかされており、部屋の隅にはネズミがチョロチョロしている。また外に出れば、野党や無法者の群れが襲ってきて、女たちは無理やり陵辱されてしまう。
 さらには国王や兵隊たちさえも油断が出来ない。ちょっとでも隙を見せれば、衆人環視の中で女たちは無理やり手篭めにされてしまうのである。なんて厭な時代なんだと思いながら読み進んでゆくうち、ジェーンは何度も危機一髪の状況を、ダフィッドに助けられることになる。

 そして中盤以降は、ジェーンとダフィッドのラブロマンスが始まり、二人のセックスシーンも克明に描かれてゆく。このあたりから少し安心して読めるようになるのだが、終盤になると思ってもいなかったどんでん返しが待っていた。
 果たして二人は、幸せに結ばれるのだろうか、そしてジェーンは現代に戻れるのであろうか。その結末を知りたければ、是非ともこの小説を手にとってもらいたい。

評:蔵研人

江ノ島プリズム 4

製作:2013年 日本 上映時間:90分 監督:吉田康弘

 小学生の頃からずっと一緒だった修太、朔、ミチルの三人が高校生だった2年前。突然黙って海外留学へ旅立ち、自分の気持ちを綴った手紙を受け取った朔は、ミチルを追って空港に向かったが、途中で帰らぬ人となってしまう。

 その朔の三回忌に、修太は朔の部屋でタイムトラベルできる腕時計を見つける。そして2年前の朔が死ぬ前日へタイムスリップすることが出来たのである。
 だが何度か過去と現在のループを繰り返しているうちに、時の中に閉じ込められている少女と出会い、彼女から過去を変えると、かなり危険な目にあうのでやめたほうがいいと警告されるのだった。
 果たして彼は親友の朔を救うことが出来るのだろうか。そしてミチルの書いた手紙の内容とは一体何だったのだろうか。

 とまあ、私の大好きな涎の出るようなストーリーで、なんとなくあのB級映画の名作『サマータイムマシン・ブルース』を彷彿させられるのだ。
 確かに映像は美しいし、友情と恋愛を絡ませた切ない青春映画としての完成度も高いかもしれない。ただタイムトラベルものとしては、もう一捻りの発想の転回が欲しいところであり、やはり『サマータイムマシン・ブルース』のほうに軍配が上がってしまうだろう。

評:蔵研人

かたみ歌4

著者: 朱川湊人

 東京の下町、アカシア商店街に起きた摩訶不思議で心暖まる7つの物語を、芥川龍之介似の古本屋店主を狂言回しに仕立て全編を紡いでゆくオムニバス小説である。
 
 時代背景は昭和30年から40年代で、西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」をはじめとして、「シクラメンのかほり」、「愛と死をみつめて」、「好きさ好きさ好きさ」、「モナリザり微笑み」、「ブルーシャトウ」、「いいじゃないの幸せならば」、「世界の国からこんにちは」、「圭子の夢は夜ひらく」、「瀬戸の花嫁」、「心の旅」などの懐かしい歌謡曲が全編に流れている。
 さらには、もう死語になっているトランジスタラジオやメンコ、そしてエイトマン、忍者部隊月光、鉄人28号、少年探偵団、ハレンチ学園、タイガーマスクなどのテレビ番組も登場する。とにかくこのあたりの時代で青春を送った者たちには、涙が出るほどなつかしいもののオンパレードなのである。

 まさに朱川ワールドとも呼ぶべき、独特の作風で小説としての完成度もかなり高い。ちなみに収録されている7作品を並べてみると次の通り。
「紫陽花のころ」
「夏の落とし文」
「栞の恋」
「おんなごころ」
「ひかり猫」
「朱鷺色の兆し」
「枯葉の天使」
 冒頭に記したとおり、これらの全てが摩訶不思議で心暖まる秀作なのであるが、私的には時空を超えた切ない恋を描いた「栞の恋」が一番気に入っている。それから締めくくりの第7話「枯葉の天使」では、全編に登場する古本屋店主の正体が明かされることになる。

評:蔵研人

BT’634

著者:池井戸 潤

 タイトルのBTとは、ボンネットトラックのことであり、63とは1963年のことであろう。一応銀行員は登場するものの、あの「倍返し」半沢直樹の原作者が書いたとは思えない異色サスペンス巨編である。
 主人公の大間木琢磨は、精神分裂病で2年間の闘病生活を余儀なくされ、会社を退職し妻とも離婚せざるを得なかった。そんな彼が5年前に亡くなった父の遺品を手にすると、視界には四十年前の風景が広がってくる。気が付くといつの間にか、自分自身が若き日の父・大間木史郎の意識の中へタイムトリップしているのだった。

 父・史郎が生きている時は、寡黙で生真面目だけが取り柄のようなつまらない男にしか見えなかった琢磨だったが、何度もタイムトリップしているうちに、何度も父・史郎の燃えるような生きざまを目の当たりにする。そして琢磨自身も現実世界の中では、自分探しの旅も兼ねて、父・史郎が残した数々の足跡を辿って行くことになる。とにかくテンポの良い展開で、BT21というボンネットトラックが、過去と現在を繋ぎながらこの作品のキーとなり、かつ道案内もつとめてくれるのである。

 タイムスリップという手法を使って、父と息子の葛藤と愛情を描いているところは、なんとなく浅田次郎の『地下鉄に乗って』とか重松清の『流星ワゴン』を彷彿させられる。ただこの物語は単にそれだけに終わらず、恐ろしい二人の殺し屋の存在と、彼らが演出するおどろおどろしい犯罪との絡みにも、つい恐いもの見たさで覗き続けずにはいられなくなってしまうのだ。
 ただ父の恋人・鏡子の余りにも救われない人生や、後半のややご都合主義的であっけない展開には多少疑問符が付くかもしれない。しかしながら、そうしたマイナス点を差し引いても、読めば読むほどぐいぐいと心が惹き込まれて、あっという間に読破してしまうほど面白い小説であることは否めないだろう。

評:蔵研人

青春の神話3

原作:森村誠一

 甲賀忍者の小平太は、忍者の掟に嫌気がさし抜忍となる。ところが逃げている途中で竜巻に巻き込まれ、気が付くと現代にタイムスリップしていた。
 ここまでの展開は『満月』や『ふしぎの国の安兵衛(ちょんまげぷりん)』と通じるところがある。だが本作の主人公は17歳であり、現代の高校に入学し野球部で大活躍。廃部寸前の野球部が甲子園で優勝するまでの原動力となるといったところが面白い。

 そして野球だけではなく、同時に悪徳市長と暴力団を退治するという、まさにマンガチックなお話なのである。SFというよりスーパーヒーローものといった趣きで、読者対象も中学・高校生といったところだろうか。だからタイムスリップというのも、単に忍者と言う超人を現代に呼び込むための方便に過ぎない。

 暴走族やヤクザに留まらず、自家用消防車をはじめ、ライフル男・毒男・爆発男の三奉行の登場。どんな悪事を働いても警察は全く関知せず、小平太がたったひとりで彼らを蹴散らしてしまうという痛快さ。と言うより、度を超えた幼稚さには時々ついて行けなくなる。だがこれは小説ではなくマンガなんだと考えれば、腹も立たずに最後まで楽しみながら読破出来るだろう。

評:蔵研人


A・LI・CE3

製作:1999年 日本 上映時間:85分 監督:前島健一

 製作当時は画期的なフル3DCGで創られたデジタルアニメとして絶賛された作品である。またタイムトラベル系のストーリー展開ということもあり、だいぶ以前から必死にレンタルDVDを探していたのだが、絶版になっているのか、なかなか見つからなかった。
 それで半分諦めながら駄目もとで、ネット中古書店に予約登録しておいたのだが・・・。登録して2年以上経過し予約していたこと自体を忘れていたとき、突然ネット書店から入荷案内のメールが送られてきたのである。と言うことで、嬉しくなって即購入してDVDプレイヤーに挿入することになったのである。

 ストーリーのほうは、西暦2000年に宇宙局の招待で月面旅行に向かった女子高生の林亜利寿が、スペースシャトルの爆発事故によって西暦2030年にタイムワープしてしまい、突然何者かに襲われているところからはじまる。その未来社会は、独裁者ネロとコンピューターが支配する荒廃した世界であった。だがなんとその独裁者ネロこそ、将来結婚した亜利寿が産んだ息子だったというのである。

 ここまで書けば、誰でもなんだあの『ターミネーター』の逆バージョンではないかと気が付くはずである。また基本的に膨大なスケールのバックボーン構成でなければいけないのに、登場人物の会話が貧弱だし、その数も圧倒的に少な過ぎるではないか。そのうえタイムパラドックスなどもほとんど無視しているので、タイムトラベルものとして見どころも少なかった。
 さらに一番期待していた映像さえも、プレイステーション2に毛が生えた程度なのだ。もちろん製作当時に観ていれば、あっと驚くほどの映像美だったのかもしれないが、残念ながら時代の進化には勝てるわけがないか。それにしても、う~ん・・・である。ただロボットのマリアだけは、キュートで可愛いよね。

評:蔵研人

ムーンライト・ラブコール3


著者:梶尾真治

 リリカルファンタジー小説の御大・梶尾真治の短編集である。中味は表題の「ムーンライト・ラブコール」のほか、「アニヴァーサリィ」、「ヴェールマンの末裔たち」、「夢の閃光・刹那の夏」、「ファース・オブ・フローズン・ピクルス」、「メモリアル・スター」、「ローラ・スコイネルの怪物」、「一九六七空間」の8篇で構成されている。

 表題作は月面基地勤務の彼から地球の彼女に届けられた、壮大な愛のメッセージを描いた超・ロマンチックな話であり、全般的に宇宙を舞台にした物語が多い、これらの短編がのちの大長編SF『怨讐星域』の下地になっていたのだろうか。
 まあ全てそこそこ面白いのだが、私が期待していたタイムトラベルものは『一九六七空間』だけで、ちょっと淋しかったね。その『一九六七空間』とは、タイトル通りビートルズ全盛時代の1967年にタイムリープして青春をやり直す話である。よくある話であり、ラストの落としどころもいま一つで、私の期待には100%答えてくれなかったのが残念であった。

 それにしても尾之上浩司氏が書いた本書の解説は、なんと22頁にも及ぶのである。その内容は梶尾真治の代表作のランキングとその書評に終始していて、梶尾真治超入門書そのものなのだ。それはそれで良いとしても、本書にに収められている作品の解説が「一つもない」のは、ある意味で手抜きではないのだろうか。

評:蔵研人

トランス・ワールド4

製作:2011年 米国 上映時間:90分 監督:ジャック・ヘラー

 人里離れた森の中で、ガス欠となった車で夫を待つサマンサという女。いつまで待っても戻ってこない夫を探して森の中を彷徨っていると、小さな小屋を見つけるのだが、そこで同じように車が故障して立ち往生しているトムに遭遇する。さらに暫くすると、たしか冒頭シーンで強盗をしていたと思われるジョディと名乗る女が現れるのである。

 はじめはギクシャクしていた三人だが、時間の経過とともに次第に打ち解けあい協力して森の中から脱出しようと試みるのだが、森の中を歩いていると、いつの間にかまたこの小屋の前に辿り着いてしまうのだ。さらに不思議なことに、三人それぞれの生きていた西暦が全く異なっているのである。そのうちどこかで銃声が聞こえ、ドイツ兵と思われる人物が侵入してくるのであった。

 登場人物が少なく、場所もほとんど森の中だけという超低予算映画であり、なんだかTVドラマの『ミステリーゾーン』を観ているような気分だ。ただアイデアと企画がしっかりしているので、単調なシーンを観ていても退屈しないし、次はどうなるのかとゾクゾクしながら楽しんで鑑賞することが出来た。
 またトムを演じた俳優が、若き日のクリント・イーストウッドに似ているなあと思ったら、なんとスコット・イーストウッドという名で、クリント・イーストウッドの息子だという。似ているはずだよなあ。いずれにしても、ちょっと「掘り出し物」だね、と言っても良い超B級映画であった。

評:蔵研人

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