タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

2019年09月

バタフライエフェクト22

製作:2006年米国 上映時間:92分 監督:ジョン・R・レオネッティ

 かなり評価の低い作品であることは判っていたが、前作バタフライエフェクトには大感動したことだし、熱狂的タイムトラベルファンとしては、この続編を外すことが出来なかった。そして当然ながら、間違いなく評判どおりの駄作であり、もしかするとという耳かき程度の期待は、無残にも打ち砕かれてしまった。

 映画を観ているという実感が湧かないのだ。のっぺらとした捻りのない展開はTVドラマそのもので、感動もなければ驚きもない。また見知らぬ俳優達にも、全く魅力を感じなかった。

 ストーリーのほうは、絶望的な事故に遭遇しながらも、奇跡的に生還した主人公が、過去に戻って事故を防ぐのだが、結局は別の不幸に見舞われるという展開だ。何度も過去に戻ってやり直すのだが、事態はだんだん悪化するばかり。
 不幸という神の意思はどうしても回避出来ないのだ。それでついに、その神の意思を利用することに気付き、不幸な事態を収束させる決意をする。このラストの展開だけは、なるほどと妙に納得してしまった。

評:蔵研人

運命じゃない人 5

製作:2004年 日本 上映時間:98分 監督:内田けんじ
 
 2005年カンヌ国際映画祭評論家週間で4賞を受賞した話題作。だが自主製作映画という趣きの低予算作品で、無名の俳優と僅かな映画館での上映に限定されていたため、DVD化されるまでは、ほとんどその存在さえ知らなかった。話の内容は、どこにでもいる平凡なサラリーマンの一晩の体験という、シンプルな異色コメディーだ。

 ところが、ところがである。これがとてつもなく面白かったのだ!。男に捨てられた女、女に逃げられた男、探偵をしている親友、逃げた女の愛人であるヤクザの組長、そして逃げた女。この5人それぞれの視点でストーリーは時間を遡ったり、パラレルに進んだりしながら、がっちりと一つの輪のように繋がってゆく。
 この異なった視点とフラッシュバックによって、それまで謎めいていた事象が少しずつ解明されゆくのだ。玉手箱を開けたようなその道筋が楽しいし、それまでの恐怖感が苦笑に変わって、一人ほっとしたりする。

 なんと素晴しいアイデアと脚本力ではないか!。低予算でもこれだけの作品が創れるのだから、やはり映画は金だけじゃないということを再認識させられた。
 それからラストは、エンディングクレジットが終わるまでしっかり観よう。いかにも終了したかのような仮エンドがあり、そのあとに気になっていたシーンが入るからだ。 この本当のラストシーンは、たぶん賛否両論で、評価が真二つに別れるだろう。僕的には良かったのではと思う。

 ・・・と言うのも、あのラストシーンの彼女の行動は、二つの理由が考えられるからである。具体的に言うとネタバレになるので、はっきり書けないのが辛いのだが、是非DVDを観て確認して欲しい。
 本作は正当なタイムトラベル映画ではない。だが同じ時間の同じ場所なのに、視点を変えて見るだけで全く違って見えるものだ、ということを映像表現しているパズル的作品なので、ある意味でタイム・ループ的な位置づけと考えてみたのである。

評:蔵研人

PUSH 光と闇の能力者3

製作:2009年 米国 上映時間:111分 監督:ポール・マクギガン

 超能力者同士の戦いがテーマのアクション映画なのだが、Xメンを期待すると裏切られるかもしれない。本作での超能力は、未来予知能力と相手の記憶や意志を制御する超能力が中心となり、Xメンのような派手なスペクタクルシーンは少ないからだ。

 ちなみに登場する超能力の種類を分類整理すると次の通り。
①ムーブ 念力による遠隔操作
②ウォッチ 未来を予知する
③プッシュ 相手の記憶や意志を制御する
④スニフ 臭いで相手の過去と現実を特定する
⑤ブリード 声で人や物を破壊する
⑥シフト 物体を別物に作り変える
⑦スティッチ 触れて傷を治す
⑧シャドウ 超能者から人や物を隠す
⑨ワイプ 相手の記憶を特定期間消去する

 とにかく変わった能力が多く、超能力者も多数登場する。
 ただ舞台が香港であり、高層ビル群の隙間からドロ臭さが鼻をつく。なんだかハリウッド資本の入った香港映画のような感があってかなり違和感を覚えた。また秘密組織ディビジョンと超能力者たちのバックボーンが説明不足で、SFの中にミステリー風味が漂ってくる。

 始めのうちはこの風変わりな展開に、アメコミものにはない重厚さと奥深さを感じたのだが、登場人物が超能力者ばかりであることと、後半になって物語が単調になってしまったのが残念だった。視点はなかなか鋭いのだが、なにか中途半端で食い足りない。
 ただ本作もダコタ・ファニング嬢の存在感によって、かなり救われた。子役のときから注目していたが、とにかくこの天才少女は一体どこまで快進撃を続けるのだろうか。子役で成功した子は、大人なってさほど伸びない例が多いのが一抹の不安ではある。それにしても彼女、どことなく雰囲気が安達祐実に似ていると思わない?

評:蔵研人

ラン・ローラ・ラン4

製作:1998年 ドイツ 上映時間:81分 監督:トム・ティクヴァ
 
 ドイツで大ヒットになったゲーム感覚のハイテンションなアクション・ラブ・ストーリーといったところか。いずれにせよ、従来観たこともない風変わりな映画である。
 またア二メを多用した荒唐無稽なオープニング映像は、なんとなくタランティーノ風味。思わず『キル・ビル』を想像してしまったが、内味は全く異なるアイデアがびっしり。

 午前11時40分。ローラの家の電話が鳴る。相手は裏資金の運び屋をしている恋人のマ二からである。
 ローラのバイクが盗まれて、彼を迎えに行けなかったため、彼は10万マルクを地下鉄に置き忘れたという。そしてその金はホームレスに盗まれてしまった。12時までに金を用意しないとボスに殺されるというのだ。
 12時といっても、あと20分しかない!ローラは、恋人を助けるためにべルリンの街を走る走る走る、まずは父親の勤務する銀行に向かって走りまくる。

 ところがローラの行動は全て裏目に出て、最後は警官に撃ち殺されてしまうのだ。これでジ・エンドかと思ったら、すぐにリセットされて第2ラウンドが開始され、途中までは前回と同じ行動が続く。
 なぜリセットされるのかは分からない、もしかしてこれはゲームの世界のお話なのかもしれない。だから上手く行くまで何度でもリセットボタンを押すことが出来るのだろう。

 そういえば、ローラの紅い髪にしても軽快な服装にしても、ゲームのキャラそのものじゃないか。やっとこれが擬人化されたゲーム映画なのだと気がついた。
 なかなか面白い発想と視点である。ただ主人公ローラのオバさん顔が余り好みではない。もう少し可愛い女の子を使えなかったのだろうか。それだけが心残りである。

評:蔵研人

ドラゴン・キングダム4

製作:2008年 米国 上映時間:105分 監督:ロブ・ミンコフ 主演:ジャッキー・チェン、ジェット・リー
 
 アメリカの少年が、現代のチャイナタウンで、孫悟空の如意棒と巡り合い、不良青年に追われるうちに、古代中国へとタイムスリップしてしまう。彼の役割は、ここで石化された孫悟空に、如意棒を渡すこと。
 孫悟空はもとより、不老不死の霊薬とか、天使とか仙人とか荒唐無稽な話と大げさなアクションシーンが続く。だがこの映画が全くチンケにならないのは、ジャッキー・チェンとジェット・リーの夢の競演があったからである。

 ジャッキー・チェンはあの酔挙の使い手、一方のジェット・リーは、白い僧衣姿で『少林寺』を彷彿させられた。とにかくこの二人のアクションは素晴らしく、まさに神技といえよう。この二人がいなかったら、たぶん子供騙しのつまらない映画で終わっていたかもしれない。それほど二人のアクション技術はハイレべルで、本格的に完成されていることを再認識してしまった。

 ラストに少年が現代に戻ってからの展開は、読み筋通りというか、こうした映画のお約束事といったところである。タイムトラべルものに分類されてはいるが、古代中国に行ったのは、気絶したときの夢とも考えられる。いずれにせよ、タイムトラべルだけに期待すると失望するので、あくまでもジャッキー・チェンとジェット・リーのアクション映画なのだという認識で本作を観る必要がある。

評:蔵研人

6時間後に君は死ぬ4

著者:高野和明

 オムニバスの中編集で、タイトル作品のほか『時の魔法使い』、『恋をしてはいけない日』、『ドールハウスのダンサー』、『3時間後に君は死ぬ』の5作を収録している。
 『3時間に君は死ぬ』は、タイトルの『6時間後に君は死ぬ』の続編で、5年前に出逢った山葉圭史と原田美緒が再会を果たす。そして3時間後に起こる大惨事を食い止めようと、ハラハラドキドキの探索を行うのだ。続編でありながらも、『6時間後に君は死ぬ』よりずっと面白い。

 『時の魔法使い』と『恋をしてはいけない日』は、まるで梶尾真治の描く時間テーマラブファンタジーを髣髴させられる。きっと著者も梶尾真治のファンなのだろう。
 一番良かったのが、『ドールハウスのダンサー』で、現実を人形に置き換えたかのような魔可不思議な世界に惹き込まれてしまった。

 主役というわけではないが、全編を通じて登場するのが、ビジョンという予知能力を持つ山葉圭史であり、この中編小説のアテンダーでもある。『13階段』を書いた高野和明とは全く別人のような話の展開に、著者の貪欲さと懐の広さを感じてしまった。

評:蔵研人

BALLAD 名もなき恋のうた4

製作:2009年 日本 上映時間:132分 監督:山崎貴 主演:草なぎ剛、新垣結衣

 『クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』を原案にした、実写版タイムスリップ時代劇である。アニメのほうはまだ観ていないが、とにかくタイムスリップものときては、見逃すわけにはゆかない。
 小学生の川上真一君が巨大クヌギの木の下でウトウトし、目覚めるとなんとそこは天正二年の戦国時代なのだ。そこは春日という小国であったが、草なぎ剛扮する無敵の待大将・井尻又兵衛という豪傑が、死力を尽して国を守っていた。

 そこに現われた奇妙な姿をした真一の姿に、一同はびっくり仰天。偶然敵の鉄砲弾から又兵衛を救うことになり、真一は又兵衛の屋敷に預けられることになる。
 そしてスクリーンは現代に、いつまで経っても帰宅しない真一を心配する彼の両親。だがクヌギの木の下から発見された古文書が、真一の手書きの手紙と知るや、彼がタイムスリップしたことを確信する。そして夫婦そろって四駆に乗って、クヌギの前から真一のいる戦国へタイムスリップしてゆくのだった。

 『戦国自衛隊』のように近代兵器を過去に持ち込んでいる訳ではないが、この四駆が終盤になって大活躍するのである。まあ、当時の人々が自動車を見たら、まずそれだけで恐怖感が湧きあがることだろう。予備知識が皆無なのだから、我々がUFOを見た以上に驚くはずである。
 クレヨンしんちゃんと、バカにしてはいけない。戦国時代はかなりシビアに描かれているのだ。ことに城攻めのシーンは迫力満点で、なんとなく中国映画を思わせる戦い方であったが、かなり実戦を意識した戦法なのであろうか…。

 荒唐無稽でバカバカしいと言ってしまえばそれまでだが、SF映画なんて大体そんなものである。そう割り切って観るしかないね。そうした柔軟な思考が出来ない人には、こうした映画は薦めない。
 タイムパラドックスについては、不十分ながらもそこそこに配慮されていたので、まあ僕的にはかなり楽しい映画だったといえるだろう。 

評:蔵研人

Love history3

著者:西田俊也

 天文台に勤める由希子は、いつの間にか33才になってしまった。明日は10才年下の加納との結婚式である。だがずっと気になっている荷物が、押入れの奥で眠っているのだった。
 恋多き由希子だが、一体何人の恋人が彼女の傍を通り過ぎて行ったのだろうか。気になる荷物とは、過去の恋の思い出が詰まった品々なのである。

 由希子は決意を固め、ダンボール箱に詰まった大切なものを車に運んだ。燃やすには惜しいが、いつまでも手元に置いておく訳にはゆかない。それで山の中に埋めておこうと、雪道の中を走り始めたのだ。
 このあと、由希子は事故を引き起こし、意識が朦朧とする中で、意識だけが過去へタイムスリップしてゆくのである。それも音楽を媒介として、過去に経験した全ての恋を辿ってゆくのだった。

 一方、現在の時間では、結婚式を前日に控えた花嫁が急に行方不明になり大騒ぎとなる。そして新郎の加納は、必死になって由希子の行方を探すのであった。
 過去に戻った由希子は、それぞれの恋人との別れのシーンを再経験するのだが、今回も同じ別れを繰り返すのか、それともそれを阻止して別の人生を歩むのだろうか。

 タイムスリップものというよりは、恋愛小説であり、過去へのタイムスリップも、どちらかと言えば、死に際に見る記憶のらせん現象とも考えられる。
  巧みな構成力とメルへンチックで叙情詩のようなストーリー展開。なかなか興味深い内容であり、中編なのであっという間に読破してしまった。ただ残念ながら、男性視点でのロマンを書き綴っているだけなので、共感とか感動という心の琴線に触れる熱いものを全く感じなかったのが残念である。

評:蔵研人

月夜の願い3

製作:1993年 香港 上映時間:97分 監督:ピーター・チャン

 人情を大切にし過ぎて貧乏生活を続ける父ファン(レオン・カーフェイ)とそんな父親が大嫌いで、金儲けと女をくどくことに夢中の息子ユン(トニー・レオン)。ところが、ある日ファンの人情が仇になり、助けた強盗に頭を殴られて意識を失ってしまう。
 ユンは飽きれて、寝たきりになった父を罵るが、両親の若い頃の写真が入ったペンダントを見つけ、若かりし日の父親に逢いたくなる。そして中秋節の夜に、願い事が叶うという穴の中に飛び込むのだった…。

 この穴がタイムトンネルとなり、ユンは40年前の時代にタイムスリップし、若かりし日の両親や知人たちと巡り逢うことになる。まずは若かりし日の両親と現在の両親の変身振りに注目。まるで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や邦画の『メトロに乗って』を掛け合わせたようなストーリー展開じゃないの。
 ただちょっと違うのは、タイムパラドックスなどは全く無視していること。どちらかと言うと、タイムトラベルは一つの手段であり、息子に父親の若かりし日を見せて、父親の本当の素晴らしさを認識させることが目的なのだろう。

 終盤までの展開が簡単に予測出来てしまう単調な創りではあるが、やはり予想通り大泣きさせられてしまった。ただラストのドンデン返しは、香港流のジョークだと思うのだが、僕には不要なシーンに感じられた。どうも香港映画におけるデリカシーの無さは、僕にはついてゆけない部分でもある。

評:蔵研人


時空を超えて4

著者:ギヨーム・ミュッソ

 60才になる医師のエリオットは、肺がんを患い余命数ヶ月の運命であった。カンボジアのジャングルで命がけで医療に専念したお札にと、原住民の村長から不思議な薬をもらう。この薬は全部で10錠。薬を服用して眠りにつくと、数十分間だけ30年前にタイムスリップすることが出来るのだ。

 自分の責任で最愛の恋人だったイレナを亡くしてしまったエリオットは、死ぬ前に一目だけでも生前の彼女に逢いたいと、半信半疑で薬を飲み、30年前にタイムスリップする。そしてそこで最初に出逢ったのは、30才の若かりし日の自分自身であった。
 30年前にイレナを事故から救えば、20年前に行きずりの女性との間に出来た愛娘のアンジーが生まれてこない。この矛盾した二つの命を救うことが可能なのか…。

 タイムトラべルと恋愛を組み合わせたラブ・ファンタジー作品は、ハーレクインものを含めて山ほどある。大体がハッピーエンドのラブファンタジーか、切なさの残るリリカルファンタジーのどちらかである。
 だが本作はそのどちらにも属しているうえ、ファンタジーにサスペンスとアドベンチャーをブレンドした魅力を併せ持っているのだ。またテンポが良くリズムカルなので、まさに映画を観ているのかと錯覚してしまう。

 映画と言えば、本作はフランスで映画化されることが決定しているという。早くこの映画を観たいなぁ…。だがネットを探した限りでは、フランスで映画化されたという情報は得られなかった。ところが2016年12月に韓国でこの小説を基にした映画が上映されていたのである。邦題が『あなた、そこにいてくれますか』だったので気が付かなかったのだが、友人から情報を得てはじめて分かった。もちろんすぐに鑑賞し、なかなか素晴らしい映画だったことを記しておく。

 ここまでは、良いことずくめ作品のように書いてしまったが、気になることもいくつかある。まず過去の自分自身と逢って、会話までしているのは、非常に不自然ではないか。60才のエリオットは、30才のときに未来の自分とは逢っていないからである。
 このように、過去の自分と逢ってしまうと、タイムパラドックスが発生してしまうので、通常はこの状況を避けるか、過去の自分には気づかれない配慮が施されているものだ。まあ本作は、過去の自分との接触がないと成立しないので、ここは目をつぶるしかない。

 もうひとつ腑に落ちないのは、過去のエリオットが、未来のエリオットの言うことを、苦悩しながらもことごとく守るということだ。イレナとは結婚しても、いいじゃないの。20年後に行きずりの女性と浮気すれば、娘のアンジーも無事生まれるはずである。
 また浮気をせずにアンジーが生まれなかったとしても、それはパラレルワールドでの話なのだから、深刻に考えることもないと思うのだが…。
 この二点だけが、どうしても納得出来ない。だが、著者の巧みなストーリー展開のため、イレナが登場するあたりから、グイグイとお話の中に惹きこまれてしまった。そして終盤は、通勤電車の中にもかかわらず、涙々の大感動で読了したわけである。

評:蔵研人

イフ・オンリー 4

イフ・オンリー

製作:1998年 英国、スペイン 上映時間:92分 監督:マリア・リポル

 タイムトラベル専門ブログを主宰しているしょーすけさんの『浮浪雲のように』で知ったイギリス映画である。かなり面白い作品なのだが、なぜかDVD化されていない。あれこれ探した結果、運良くオークションで入手することが叶った。

 浮気したことをうっかり恋人のシルヴィアに告白し、即彼女に三行り半をつきつけられたヴィクター。終焉した恋を絶ち切れない彼は、シルヴィアの結婚式の前日、泥酔してゴミ箱の中で寝てしまう。
 それから不思議なゴミ収集人が現れて、魔法の呪文を唱えると、ヴィクターはシルヴィアと別れる直前の過去に戻っていたのだった。そこで彼はもう一度やり直し!。今度はシルヴィアを大切にし、浮気もやめるのだが・・・。

 時間の繰返しによって自分の人生をリセットする作品としては、『恋はデ・ジャヴ』や『タイムアクセル12:01』などがあるが、この作品でのやり直しは、たったの一回である。またとくにタイムパラドックス等にも言及していない。過去に戻るというのは一つの手法であり、どちらかといえば「人生をリセットしたらどうなるのか?」というテーマが主目的のようである。

 よくある手法ではあるが、人生は一筋縄ではゆかないのか、運命という定めには逆らえないのか、単純にハッピーエンドに終らないところに含蓄を感じてしまった。ラストシーンは皮肉めいているが、ある意味優しさを感じる展開でもある。またペネロペ・クルスのたどたどしい英語と、初々しいルックスも必見である。

評:蔵研人

だからタイムマシンには乗りたくなかった。3

著者:時羽 紘

 実に長ったらしいタイトルなのだが、なにげにタイムトラベルファンの気を引くタイトルでもある。主な登場人物はたった4人の学園ラブファンタジー、映画ならさしづめB級作品と言う趣だろうか。
 主人公の九條楓は高校一年生で、心優しく自分の言いたいことをはっきり主張できない女の子。大好きな1年先輩の伊波潤と付き合っている。そんなある日、雨宮奏という未来からやって来たという不思議な男の子と遭遇。彼のタイムマシンで10年後の世界に跳ぶと、見知らぬ美人女性と伊波潤が結婚式を挙げているところだった。

 そして再び現代に戻ると、なんと伊波潤と同クラスに10年後に彼の花嫁になる野村みな子がいるではないか。そして彼女は伊波潤に告って断られたにも拘らず、しつこく潤に付きまとっているのだった。
 そしてことあるごとに、楓と潤の邪魔をしてくるのだ。そうこうしているうちに楓と潤の二人に誤解が生じて、ぎくしゃくした関係に陥ってしまうのである。結局タイムマシンで覗いた未来通り、潤は楓と別れてみな子と結婚してしまうのだろうか・・・。

 登場人物も少なく物語の幅も狭く、ただただ潤を慕う楓の想いと二人のすれ違い、そしてみな子の意地悪に終始するだけのお話なのだが、年甲斐もなくドキドキして楽しく読ませてもらった。また謎の少年・雨宮奏の正体については、途中で何となく想像できるようになるのだが、なぜ彼がああすることになったのかはちょっと無理があるかも・・・。いずれにせよ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の逆転バージョンといった味がしたことは否めないね。

評:蔵研人

ワン・モア・タイム4

製作:1989年 米国 上映時間:103分 監督:エミール・アルドリーノ 主演:シビル・シェパード、ロバート・ダウニー・Jr

 製作1989年と、だいぶ古い映画であるが、なかなかよく出来たファンタジック・ラブコメディーである。タイトルから僕の大好きなタイムトラベルものなのかと思ったのだが、それは微妙な勘違いだったようだ。

 どちらかといえば、『天国から来たチャンピオン』に驚くほど似た設定であり、どららも心温まる作品に仕上がっているじゃない。
 結婚したばかりで愛する夫を亡くしたコリンヌ未亡人のもとに、娘のBFアレックスがやってくる。ところが彼は、亡夫の生まれ替わりだという。それから奇妙な三角関係が続くのであった…。

 コリンヌ役のシビル・シェパードは、スタイル抜群でとても美しい。またアレックス役のロバート・ダウニー・Jrと、娘役のメアリー・スチュアート・マスターソンが、若々しくてとても可愛いよね。
 まさにぴったりハマリ役のキャストの面々。やはりラブコメはキャストが命だと、つくづく感じた作品である。

評:蔵研人

シャッフル3

製作:2007年 米国 上映時間:96分 監督:メナン・ヤポ 主演:サンドラ・ブロック
 

 二人の娘と最愛の夫と共に、郊外の素適な家に暮すリンダ(サンドラ・ブロック)は、幸福の絶頂にあった。ところが出張中の夫(ジュリアン・マクマホン)が交通事故で急死し、いきなり不幸のドン底に叩き落されてしまう。
 突然の事態にパニック状態となり、疲労感でぐったりとなった彼女だが、不思議なことに翌朝目を覚ますと、死んだはずの夫がキッチンで朝食の支度をしていたのだ。夫は何もなかったかのように振舞っているし、子供たちも夫が生きていることに何の疑問も抱いていないのである・・・。

 あの事故は夢だったのかと思ったのも束の間で、翌朝目覚めると夫の葬式が待っていた。これは一体何事なのかと、彼女には事の成行きが信じられない。
 こうして目覚めるたびに夫が生きたり死んだりする。果して夢なのか誰かの仕組んだいたずらなのだろうか。結局のところ、一週間のうち毎日が順番に過ぎてゆかず、まるでカードをシャッフルしたように不規則に次の日が訪れるのだった。

 『恋はデ・ジャブ』や『タイムアクセル12:01』は、同じ毎日が繰り返され、『メメント』は過去から現在へと時間が繋がってゆくが、この作品では過去と現在がシャッフルされながら、時間は過去から現在へと流れてゆくのである。
 このように変則的に時間流を動かしてゆく作品は珍しく、なかなか楽しかったのだが、やはり前述した作品群の亜流に過ぎない。というのも、ストーリーそのものに深みがなく、主張したいテーマも感じられず、シャッフルというアイデアしか見えてこないからである。あえて言えば、「幸福も不幸も自分自身が生み出すもの」という教訓だろうか。

 またサンドラ・ブロックが適役だったかも疑問で、大味な彼女よりもメンタリティーな雰囲気を醸し出す女優は、他に大勢いると思うのだが・・・。さらにラストの展開は、余りにも正直過ぎるのではないか。もっとネットリとした恐怖感と、もうひと捻りが欲しかったな。大好きな時間テーマものだけに少し残念な気がするのである。

評:蔵研人

ターミネーター44

製作:2009年 米国 上映時間:114分 監督:マックG

 衝撃の『ターミネーター』が製作されたのが1984年。それ以降『ターミネーター2』、『ターミネーター3』と、いずれもアーノルド・シュワルツェネッガー主演であったが、いずれも第一作を超えることは出来なかった。
 本作ではシュワルツェネッガーは、主役ではなくCGでのチョイ役に過ぎない。また舞台もターミネーターが製造された2018年になっている。つまり過去の作品で断片的に描かれていた核戦争後の未来世界でのお話なのだ。

 当然主人公になるのは、人類の救世主となるジョン・コナー(クリスチャン・べイル)なのだが、時代背景は、コナーがまだ小隊のリーダーとして活躍している頃である。従って本作では、彼はまだ完全な主人公とは言えないし、余り魅力的な人物にも描かれていない。
 どちらかといえば、今回はサイボーグのマーカス・ライト(サム・ワーシントン)のほうにスポットライトが当たっていたようだ。そしてのちにジョンの父親となるはずの、カイル・リースとのからみがキーポイントとなる。

 シリーズものといっても、毎回味の異なる展開を繰り広げてきたターミネーターシリーズだが、とうとう未来編に突入し、これまでとは全く別作品のようなストーリーが始まった。
 本作ではバイクロボの「モトターミネーター」や、巨大ロボの「ハーヴェスター」、水中ロボの「ハイドロボット」など多数のマシンが登場しする。またアクション映画というよりは、戦争映画そのものといった趣きである。

 ターミネーターは、旧式のTー600型やシュワちゃんでお馴染みのTー800型が登場するが、『ターミネーター2』や『ターミネーター3』で登場した新型マシンはまだ製造されていない。
 今回はコナーがカリスマへの道を歩み始める迄を描いているだけなので、少なくともあと2作位の続編が製作されることは間違いないだろう。
 カイルが過去の世界へ行くこと、そしてターミネーター達がコナーの存在を抹殺しに過去へ跳ぶくだりで、過去の作品とどのようにリンクさせるのだろうか。そしてこの超大作をどのような形で収束させるのか。興味深々でゾクゾクする。続編が待ちどおしくて我慢できないぜ。

 その後シリーズ5作目として、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』が2015年に公開された。ところが、年老いたシュワちゃんが再びターミネーターとして登場するという以外は余り見所がなく、前作までのスタンスとは全く異なる作品となってしまった。
 ただ2019年11月には、シリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロンが製作に復帰し、新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』が公開されるので、なんとか期待を繋ぎたいものである。

評:蔵研人

タイムアクセル12:014

製作:1993年 米国 上映時間:94分 監督:ジャック・ショルダー

   かなり以前に1度観た映画だが、その後タイムトラベルファンになって、もう一度観たくて堪らなくなってしまったのである。ところがいくらDVDを探しても見当たらない。そこでやむなく映像が悪いのは我慢して、レンタル落ちの中古ビデオを購入してしまった。

 本作は『恋はデジャ・ブ』同様、ある1日の繰返しが延々と続く。『恋はデジャ・ブ』は、美人プロデューサーの女性をくどくために、何度も1日を繰り返す男の話だった。本作は惚れた同僚女性を、殺し屋から守るために何度も1日を繰り返す男の話である。

 繰返しを続ける原因は、どちらも女性のためなんだね。違うところは、本作の時間循環ほうが、やや理論的だということである。いずれにせよ、双方よく似た作品である。だがどちらの作品も、1993年製作なので、どちらかがパクッたということはないだろう。それにしても、偶然の産物にしては似過ぎているよな・・・。

 『恋はデジャ・ブ』には一歩譲るものの、本作の出来映えもなかなかである。とにかく面白いし、よく練られたストーリー構成である。そしてヒロイン役のヘレン・スレイターがとても知的でキュートだ。
 若かりし日の彼女が『スーパーガール』だったと知って、驚きの中に懐かしさが溢れてくるようであった。ところで彼女もあっという間に50代半ばになってしまった。最近はほとんど映画出演はなく、フォークやジャズの歌手をしたり、TVドラマに出演しているらしい。

評:蔵研人


イエスタデイズ4

製作:2008年 日本 上映時間:119分 監督:窪田崇

 主人公聡史(塚本高史)は、余命わずかな父親(國村隼)に、青年時代に別れた恋人を探して欲しいと頼まれる。手がかりは彼女の名前と、若き日の父が描き貯めたスケッチブックのみ…。
 そのスケッチブックに描かれた場所に行き、そのスケッチブックをじっと見つめていると、いつの間にかそれが描かれた時代にタイムスリップしてしまう。そしてそこで彼は、若かりし日の父(和田聰)と、美しい恋人・澪(原田夏希)に出会うのだった。

 愛しているが故の別れ、父と母との出逢い、知り得なかった父の苦悩、などなど…この手の映画で使われる常套手段ではあるが、甘くせつなくノスタルジックな展開と美しい映像が流れてゆく。
 ストーリー構成では、『地下鉄に乗って』とやや似ているが、タイムスリップ手法は、絵と写真の違いこそあれ、『バタフライエフェクト2』そのままである。だが『バタフライエフェクト2』のタイムスリップよりは、本作のほうがずっと必然性があった。

 タイムスリップを利用したラブファンタジー作品としては、かなり良質の部類に入る作品だと確信する。しかし、原作が短編であるためか、心に深く突き刺さるような大感動シーンがなく、「爽やか感動」止りというところに、今一つ物足りなさを禁じ得なかったのも事実である。本多孝好の原作小説については既に読破しているので、近いうちにレビューを紹介したいと考えている。

評:蔵研人

まだ見ぬ冬の悲しみも4

著者:山本 弘

 少しきどり過ぎの感があるタイトル作品を始め、『奥歯のスイッチを入れろ』、『バイオシップ・ハンター』、『メデューサの呪文』、『シュレディンガーのチョコパフェ』、『闇からの衝動』と長いタイトルの中編小説が並ぶ。

 『奥歯のスイッチを入れろ』は、バトルスーツに身を固めた超最新サイボークのアクションシーンに終始する。まるでマンガのワンシーンを丁寧に再現したかのような小説で、かなり面白いのだが、バトルシ一ンを詳細に描き過ぎていて、読者はいつまでもお預けを食らい続ける。まるで、板垣恵介のマンガのようでストレスが溜まってゆく。

 『バイオシップ・ハンター』は、宇宙ものでバイオシップという生物宇宙船にまつわる話。『メデューサの呪文』は、言葉を兵器に出来る異星人のお話。『闇からの衝動』は地下室にある穴の奥に潜む怪物のお話で、SFチックなホラーである。
 そしてタイトルの『まだ見ぬ冬の悲しみも』と『シュレディンガーのチョコパフェ』の二作こそが、目的の時間テーマ小説なのだ。どちちも時間や次元を操ることにより、この世が破壊されるというネガティブポリシーをテーマとしている。
 著者の新感覚パラドックス理論と、明快なストーリー展開には、絶大なる拍手を送りたいが、中編ではなく長編作品も読んでみたいものである。

評:蔵研人

八月の終わりは、きっと世界の終わりに似ている。3

著者:天沢夏月

 舌を噛みそうな長ったらしいタイトルだが、まさに主人公の心象風景を全て吐露し尽くしているではないか。本書はSFというよりは、バリバリの学園恋愛小説である。ところが彼女が死んだ4年後に、過去の交換日記の空白に、新しい返事が綴られているのだった。そしてそこから再び『彼女との不思議な交換日記』が再開する、というファンタジックなお話なのである。

 もしかして彼女は死んでいなかったのか、それとも霊界からのメッセージなのだろうか。いやいややっぱり彼女は死んでいて、この交換日記は過去との「タイムメール」なのだろうか・・・。だとするとあの韓国映画『イルマーレ』そのものである。
 果たして主人公はこの交換日記で過去を変え、彼女を死から救うことが出来るのであろうか・・・。いろいろな疑惑と期待の中で、ストーリーは過去と現代を交互に紡ぎ始めるのだ。

 高校2年の夏休み直前、図書室で知り合った背の低い女の子は、主人公より先輩の3年生。しかも心臓が弱くて1年留年しているため、実際は2歳年上のお姉さんだった。ペースメーカーを装着している彼女は携帯を持てない。それで二人は昔ながらの『交換日記』を始めるのである。そして夏祭りの日に主人公が彼女に愛を告白し、二人はつきあい始めることになるのだった。

 それから二人にとっては、甘辛いラムネソーダのような40日間が流れてゆく。そして夏休みが終わる直前に、彼女が「海に行きたい」とはじめて我がままをいう。それが運命の別れ道となってしまうのだ。・・・・それから4年後、主人公はあのとき海に行ったことを、ずっとずっと後悔し続けていたのである。

 甘く切ないラブファンタジーである。もう少し私が若かったら★★★★☆でも良かったのだが・・・。だから少なくとも20歳以下の若い人たちなら、大感動するに違いないだろう。

評:蔵研人

タイム・ジャンパー3

製作:2008年 ロシア 上映時間:116分 監督:アンドレイ・マリュコフ

 珍しいロシア映画であるが、ポスターが米国映画『ジャンパー』をパクリまくっているのはいかがなものか。『ジャンパー』は、テレポート能力を身につけた青年のお話。この作品は、現代から第二次大戦中にタイムスリップする話だが、タイムスリップは小道具として利用しているだけの「戦争映画」である。

 従ってタイムパラドックスなどを期待すると、カタルシスが得られない。だがそのことは別にして、ストーリーはなかなか面白いし、戦闘シーンもリアルで迫力がある。
 ネオナチや戦争崇拝、拝金主義と自己中心的な若者たちが、もし本当の戦争を体験すれば、愛国心を取り戻し、きっと今迄の浅はかな行動を反省するに違いない。…と言いたかったのだろう。現代ロシアが抱える悩みの一つを垣間見た気がする。

評:蔵研人

リセット5

著者:垣谷美雨

 北村薫の同名小説とはかなり趣きが異なり、ズバッと本音で切り込んでくるので、なかなか説得力があり、小説の中にぐいぐいと引き込まれてしまう。最近読んだ小説の中では抜群の面白さを感じた。
 ストーリーのほうは、高校の同期会に遅れた三人のおばさん達が、不思議なレストランの中で、三人揃って30年前にタイムスリップするところから始まる。

 三人の身分は、専業主婦の知子、キャリアウーマンの薫、苦界に身を落とした晴美である。それぞれが現状に大いなる不満を抱いており、人生をもう一度やり直せたらと願っていたのだ。
 三人の中で一番の美貌を誇る知子の不満は、高校時代のイケメン同級生と結婚したため、専業主婦となってしまい、あこがれの女優になれなかったこと。それでも理解のある夫なら、ある程度の許容範囲に収まっただろう。だが自分本位で、意地の悪い舅・姑の世話まで押しつけて、知らん顔をしている夫が許せないのである。

 長身で男性顔負けに仕事をこなし、一見充実したキャリアウーマンライフを送っているかのように見える薫も、実は男性中心の社会に不満ダラダラなのだ。
 そして男に騙されて妊娠し、高校を中退してからというもの、荒さんだ生活を続け、身も心もズタズタになったまま、独身の貧困生活にあえいでいる晴実。彼女こそ不満がないはずがない。
 そして同時に意識が高校時代に戻ってゆく三人。彼女たちは、記憶のかなたにあった30年前の世界と、現実の30年前とのギャップの大きさに驚きながらも、今度こそはと新しい人生を必死でやり直すのである。

 結果は読んでのお楽しみだが、人生の面白さと難しさ、人間の優しさと我がままさが交叉していてなかなか考えさせられる。また女性たちの赤裸々な告白も実に歯切れよい。
 努力や運によって人生インフラの中味を大きく変えることは可能だ。しかし自分自身の価値観なり生活態度が変わらない限り、本当の満足感は得られないということである。
 この小説の著者である垣谷美雨は50歳前後で、主役の三人の年令とほぼ重っている。著者も実生活でいろいろ苦労したのであろう。この小説を書くには、そうした人生経験が必要であるが、一方読む側にもある程度の人生経験がなくては共感出来ないかもしれない。

評:蔵研人

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