作者:岡崎二郎

 一話完結型のショートストーリーなので、毎回登場するのは狂言回しを務める『時の添乗員』だけである。2000年から約1年間にわたりビッグコミック増刊号で掲載されている。その後コミックスとして発売されたのだが、「第1巻」の表記があるものの、なぜか第2巻以降は発売されていないのが残念である。

 内容はつぎの短編で構成されている。
第1話/あの日への旅立ち  初恋の人を訪ねて
第2話/消えた証拠       犯人の正体を捜して
第3話/交換日記      日記の隠し場所は
4話/藤子像       裸婦像の真実は
第5話/結婚指輪      消えた指輪を探して
第6話/恩人        本当の恩人とは
第7話/赤富士の赤     父親の優しさとは
第8話/時を旅する者    時の添乗員の正体は

 どのお話も『時の添乗員』が300万円で、「行ってみたい、戻ってみたい過去」に、タイムマシンで連れて行ってくれるという展開なのだが、その全てが心温まる優しさに溢れている。時の添乗員はどこで「雇い人」と遭遇したのか。そして彼にタイムマシンを与えた「雇い人」とはいったい何者なのか。謎が解かれないままで終わっているのは、良いのか悪いのか・・・。

 全般的に柔らかいタッチの絵が、ストーリーの優しさに共鳴していて、ほんわりとした雰囲気を醸し出している。ただ登場人物のどの顔も同じような絵柄なのは、ちょっぴり残念かもしれない。また今更絶対に無理な注文だと思うが、第2巻以降の発売を期待したいものである。

評:蔵研人