著者:梶尾真治

 サブタイトルの「タイムトラべル・ロマンスの奇跡」が、この本の全てを物語っている。そう、カジシンさんの十八番ともいえる、時間テーマの中・短編ラブファンタジー集と言ってよいだろう。
 書き下ろしの『きみがいた時間 ぼくのいく時間』をはじめ、『江里の"時"の時』、『時の果の色彩』、そして処女作の『美亜へ贈る真珠』の四作が詰め込まれている。

 『きみがいた時間 ぼくのいく時間』は、著者の代表作『クロノス・ジョウンターの伝説』のサイドストーリーという趣きがある。主人公の里志は、事故で亡くなった妻の紘未を救うため、39年前にしか戻れないクロノス・スパイラルに乗る・・・という流れの中編小説だ。
 『江里の"時"の時』は、異なる次元に住む男女の恋愛をリリカルに描く短編。また『時の果の色彩』は、タイムマシンを使って、過去に住む女性と恋を描くユニークなお話である。

 『美亜へ贈る真珠』については、処女作にふさわしい初々しいファンタジーロマンスで、すでに名作ファンタジーとして認知されている。
 また巻末には、著者と『劇団キャラメルボックス』の脚本・演出を手がけている成井豊との情熱対談が収められていて、これも梶尾ファンにはなかなか楽しい対談で見逃せない。
 いずれにしても本書は、梶尾ファン必携の一冊と言ってよいだろう。是非ご一読あれ。

評:蔵研人