タイムトラベル 本と映画とマンガ

 本ブログは、タイムトラベルファンのために、タイムトラベルを扱った小説や論文、そして映画やマンガなどを紹介しています。ぜひ気楽に立ち寄って、ご一読ください。

 タイムマシン、タイムトラベル、タイムスリップ、時間ループ、パラレルワールド、時間に関係する作品を収集しています。まだまだ積読だけで読んでいない作品がたくさんあるのですが、順次読破したら本ブログにて感想を発表してゆきますね。

ダレカガナカニイル…

★★★☆
著者:井上夢人

 話の中身は、タイトル通り自分の中から別の声が聞こえてくるという話である。その声が聞こえ始めたのは、新興宗教の教祖が焼死した直後だということで、その教祖が乗り移ったのではないかと推測しながらストーリーが展開してゆく。
 なんとなくホラー染みているが全く怖くない。どちらかと言えばオカルト風味がたっぷり漂ってくる。俄然興味はこの声の主は本当に教祖なのか、またこの声を追い出すことが出来るのか、さらには教祖は自殺したのか殺されたのか。もし他殺だとしたら一体誰が犯人なのだろうか、といったミステリーモードに染まってゆく。

 そして中盤以降の見せ場は、精神科医による催眠術の施術と、それによって「声」が目覚めるということ。また突然現れた教祖の娘とのラブストーリー展開にも、ワクワクとこころが奪われてしまう。さらにラストの着地では、オカルト風味が突如としてSF色に大転換というおまけまでついているのだ。
 約650頁に亘る長編であるが、全く苦も無く退屈せずに一気読みできた。それは本作が新興宗教批判にはじまり、ミステリー、オカルト、恋愛、SFを融合し、ジャンルを超越した面白さに支えられているからであろう。

 さて著者の井上夢人とは、漫画家の藤子不二雄同様コンビで岡嶋二人と名乗り、創作活動を続けていた井上泉と徳山諄一のうち、コンビ解消後の井上泉のことである。そして本作はそのデビュー作となるようだ。従ってデビュー作と言えども、すでにベテランの味がするのは当たり前なのである。まあ間違いなく面白いことは保証するが、終盤の説明なしの急展開は理解不能だし、こんな結末なら全体的にもう少し短くまとめられたのではないだろうか。

評:蔵研人

ザ・ドア 交差する世界

★★★☆

製作:2009年 ドイツ 上映時間:101分 監督:アノ・サオル

 近所に住む女と不倫をしているときに、娘を事故で亡くしてしまい、妻にも離縁され全てを失ってしまう画家のダビット。その後の5年間は、自暴自棄の生活を続け自殺を計るが失敗に終わる。
 ところが失意のどん底に落ち込んだ彼は、不思議なトンネルを発見しその先にあるドアを開けると、なんとそこは5年前の世界であった。そしてそこで彼は、5年前の彼が不倫相手の女の家に向かう後姿を観てしまうのである。

 だがすぐに娘の悲鳴を聞き、娘を救出するためプールのある庭に向かうのだった。プールでは娘が溺れかけていたが、今回は間一髪プールに飛び込んで、娘を救出することが出来たのである。
 ダビットは、助けた娘を寝かしつけてリビングで探し物をしていると、そこに過去の彼が戻って来るのだった。そしてストーリーは、ファンタジーからヒチコック風のスリラーへと急展開してゆくのである。

 はじめは摩訶不思議でファンタスティックな展開だったのだが、過去の自分との遭遇からは一挙にミステリアスな展開に終始することになる。私的にはどちらかと言えばファンタスティックなほうが好きなのだが、最近の傾向としてはスリリングな展開のほうが好まれるのだろうか。
 ラストはハッピーでもバッドエンドでもなく皮肉ぽい締め括りで終わっている。どちらかと言えば、タイムトラベル系というよりは、ミステリーゾーン系といったストーリー展開であった。まあこれはこれで面白かったのだが、期待していたものとはやや異なる感があったことも否めない。

作:蔵研人

東京リベンジャーズ

★★★☆
製作:2021年 日本 上映時間:120分 監督:英勉

 和久井健のコミック『東京卍リベンジャーズ』を原作にしたSFアクション映画である。フリーターでどん底生活を送っている花垣武道は、高校時代の恋人・橘日向と彼女の弟・直人が殺され、その死に巨悪組織・東京卍會が絡んでいることを知る。ところがその翌日、駅のホームで何者かに押され電車が迫る線路に落とされてしまうのだが……。目を覚ますと情けない不良だった10年前にタイムリープしていた。
 
 それで橘日向の死を回避するために、あらゆる手段を講じるのだがなかなか原因が掴めないまま、何度もタイムリープを繰り返すのだった。果たして花垣武道は、過去を改変して未来を救うことが出来るのだろうか……。というと何となくSF映画ぽいのだが、中身は超おバカなバリバリのアクション映画なのであった。
 原作は読んでいないが、さすがマンガだけあって吉沢亮扮する(佐野万次郎[マイキー])と山田裕貴扮する(龍宮寺堅[ドラケン])の超人的な強さには度肝を抜かれてしまったぜ。それで昔観た映画『湘南暴走族』の江口洋介と織田裕二を思い出してしまうのは、古いおじさんだけだよなぁ~。
 

評:蔵研人

時空大戦4

著者:草薙圭一郎

 2004年4月6日のことである。突然猛烈な磁気嵐の襲来に遭遇し、北海道が丸ごと時空を超えて1945年にタイムスリップしてしまう。なんと1945年4月と言えば終戦間際で、米軍による戦艦大和の撃沈や、沖縄の占領が目の前に迫っている状況ではないか。そんな異常事態に戸惑う北海道駐屯の自衛隊だったが、悲惨な敗北や原爆の投下を防ぐため、壊滅寸前の帝国陸海軍を支援することを決定するのである。

 現代兵器と半世紀前の兵器の威力の差は歴然としている。だがいかに圧倒的な威力の差があろうとも、自衛隊のミサイルは100発100中で旧米軍の弾丸はほとんどかすりもしないのは行き過ぎではないだろうか。とは言いつつも実に気分爽快なのだ。戦艦大和は撃沈されず、沖縄に上陸した米軍も叩き出し、なんとマリアナ諸島やフィリピンまで奪回してしまうのである。
 さらには歴史上の人物たちも多数登場してくるし、ある意味では太平洋戦争に至った歴史的背景も描かれていてかなり勉強をさせてもらった気がする。そして最後のマッカーサーの謀反と原爆反撃には、誰もがドキドキさせられてしまうだろう。

 そんなわけで遅読者の私にしては、600ページを超える長編にも拘らず、あっという間に読破してしまったのだ。さてこの歴史を覆してしまった戦争の行く末はどうなるのか、そして自衛隊たちは現代に戻ることができるのだろうか。それは本作を読んでのお楽しみとしておこう。

評:蔵研人

初恋ロスタイム3

著者:仁科裕貴

 ある日、僕以外の時間が止まってしまった。それは平凡な高校生活を送る僕・相葉孝司に、唐突に訪れた特別すぎる青春であった。毎日午後1時35分になると、1時間だけ自分以外の時間が止まるのである。その時間を、僕はロスタイムと名付けた。そんな停止世界に突然現れた魅力的な少女・篠宮時音、僕は彼女に恋をしてしまう。それにしてもなぜ時間は止まるのか、また謎めいた少女が抱える大きな秘密とは……。

 時間を止められたら、下品なおじさんたちが考えるのは、たぶん泥棒とエッチなことに違いない。本作でもちょぴりエッチな想像があったけど、その前に早々と少女が登場してしまったので未遂に終わってしまった。
 いずれにせよ、本作はエロ小説ではないし、かと言って純粋なSFでもなく、とどのつまりややSF絡みの難病ラブストーリーと言った位置付けなのだろうか。そんな訳でSFとしても恋愛ものとしても中途半端で、ちょぴり物足りなさを感じたのは私だけであろうか……。
 なお本作は2019年に映画化されているが、その感想については下記を参照にされたし。
タイムトラベル 本と映画とマンガ : 初恋ロスタイム (livedoor.blog)


作:蔵研人

13時間前の未来4

著者:リチャード・ドイッチ

 何者かに最愛の妻を殺害され、そのうえ犯人容疑で警察に拘留されてしまうニック。無実を叫ぶものの、凶器に使われた拳銃にはニックの指紋が付着していたのである。そんなとき、混乱するニックの前に謎の初老の男が現れ「きみには12時間ある」言い残し、古い懐中時計を置いて去ってゆくのだった。
 なんとこの懐中時計は、一種のタイムマシンであり、1時間前の世界に戻って1時間経過すると、又2時間前へ戻る仕組みになっているのである。その度に、事件の真相に迫ってゆくのだが、協力してくれた友人などが殺されたり、妻が別の形で死んだりして、なかなか上手くゆかないのだ。

 過去に戻って何度もやり直すタイムループ作品は、小説では『リプレイ』、映画では『恋はデジャヴ』などに代表され、その他にも多くの作品が発表されている。だが本作は単純に同じ過去をやり直すのではなく、1時間前へさらに1時間前へと13時間前まで、1時間ずつ過去に向かってやり直してゆくところが実にユニークなのである。

 いずれにせよスピード感に溢れ、細かい捻りや趣向も随所にちりばめられており、息をつかせぬ連続ドラマを観ているかのようだった。またタイムトラベルあり、謎解きあり、アクションあり、恋愛ありの贅沢三昧な物語なのである。だから映画化される予定だったのだが、残念ながら今のところ製作された軌跡はないようだ。多分映画化するには長過ぎるので見送られたのかもしれない。しかし連続TVドラマならばピッタリカンカンなので、いずれはその方向で検討されることだろう。

 ただコアなSFファンの評価はいまひとつなのだが、そもそもタイムトラベル自体が荒唐無稽なのだから、余りむきになってタイムパラドックスや時間論を戦わせる必要はないと考えたい。なかなか馴染めない海外小説が多い中で、これほどスタートからスラスラと読み続けられた小説は珍しい。エンタメは面白ければよいので、クドクドとあら捜しをせず素直に楽しもうではないか。と言いながらも、ダンス刑事のしぶとさと悪知恵にはムカムカ・イライラが募ったね。

 さて著者のリチャード・ドイッチの本業は不動産投資関連の仕事で、執筆活動は夜の9時から午前3時までを当てているとのことである。彼はトライアスロン、スキー、スキューバダイビング、スカイダイビングなどをこなし、さらにギターとピアノの腕前を駆使して作曲まで手がけるスーパーマン振りを発揮しているらしい。

評:蔵研人

どこよりも遠い場所にいる君へ

どこよりも
★★★☆
著者:阿部暁子

  本作は集英社オレンジ文庫だから、表紙がアニメのような挿絵で飾られた、ロマンチックで軽い文体の若者向けライトノベルということになる。なんとまさにその通りなのだが、おじさんも青春時代を思い出しながら楽しく読ませてもらった。

 ストーリーは主人公の月ヶ瀬和希が、夏の初めに采岐島の「神隠しの入り江」で少女が倒れているのを発見するところからはじまる。少女の名は七緒といい、和希と同年齢の16歳である。そして彼女は記憶喪失で身元不明だという。だが実はもともと彼女が住んでいたのは1974年で、43年後の2017年にタイムスリップしてきたのだった。

 時を超えて和希と七緒は次第に淡い恋心を抱いてゆくのだが、本作は単純なラブストーリーではない。まず和希の家庭環境が複雑であり、なんと父親は殺人罪で逮捕されている。
 そんな背景から離島にあるシマ高を選んで転校してきた和希なのだが、そんな彼にいつも影のように纏わりついてくる親友の尾崎幹也の存在、さらに行き場のない七緒を保護した芸術家の高津と担任の仁科先生との関係。などなど主人公の和希を取り巻く人々の群像劇もなかなか興味深いのだ。

 そして七緒の正体と感動のラストシーンは、実によく煉り込まれているではないか。ただ惜しむらくは和希と七緒のストーリーが少な過ぎるのである。もっといろいろな思い出を織り込んでいれば、流石のおじさんもラストシーンでは涙に濡れまくっていたことだろう。さてさてもし本作を映画化することがあるなら、その辺りをもう少し強化する必要があるかもしれないね。

評:蔵研人

七花、時跳び!3

著者:久住四季

 一時は100名もいた部員が、いつの間にか部長の柊和泉と後輩・七花蓮のたった二人になってしまった『未来研』だが、なかなか新規入部者が集まらない。そんなある日突然、なんと七花にタイムトラベル能力があることが分かってしまう。それから二人は『退屈しのぎのタイムトラベル遊び』を始めるのであった。
 登場人物はこの二人に加えて、柊の同級生・鈴ヶ森くるみと二人の先生だけのたった5人、しかも舞台はほぼ高校の中だけという超低予算C級映画といった趣である。まあ厳密に言えば過去や未来の二人も出演しているのだが、それが話を少しややっこしくしている。それにしてもこれだけの構成で300頁近く稼いでいるのだから、稼ぎ過ぎではないだろうか(笑)。

 前半はやや退屈なのだが、後半からタイムパラドックスがらみの展開となり、私的には俄然面白くなってくる。ただ気になったのは主人公の柊が余りにもおバカ過ぎてウザイこと、小説というよりはアニメやゲームで観たくだらないギャグとタメ口満載のマンガそのものだということ。
 さらにタイトルは梶尾真治の『つばき、時跳び』のパクリだし、世界観は『サマータイムマシン・ブルース』のオマージュというかパロディーというか、いずれにせよいろいろなところからの寄せ集めといった感が拭えないのだ。そのうえラストは「特別な捻り」もなくあっさり幕となり感動も湧かない。結局のところ本作は「タイムトラベルをおもちゃにした世界観の狭い軽い学園ラブストーリー」だったのかもしれないね。

評:蔵研人

天国までの49日間3

天国
著者:櫻井千姫

 中学2年生の少女・折原安音は、女子クラスメイトからのいじめに耐え切れず、マンションの最上階から飛び降り自殺する。ところが死んだ直後に天使が現れて、49日の間に天国へ行くか地獄へ行くかを考えて決めろと言う。
 もちろん幽霊になった安音はものに触れることもできないし、誰にもその姿を見ることが出来ない。はずなのだが、なんと男子クラスメートの榊洋人にだけは姿も見え会話もすることが出来るのであった。そして安音は彼の家に転がり込んで、常に彼と一緒に過ごすことになる。

 そんなマンガのようなストーリー展開なのだが、本作では中学校でのいじめの実態とその問題点にのめり込んで追及しているようだ。もしかすると著者自身のいじめ体験を小説化したのかもしれないね。
 あとがきで著者自身が認めているが、文章はやや稚拙でいじめ以外の内容は底が浅い感がある。ただいじめや友情に対する熱意だけはひしひしと伝わってくるため、同年代読者の圧倒的な支持を得たのだろう。そしてそのあたりが評価されたことこそ、本作が日本ケータイ小説大賞を受賞した理由かもしれない。

評:蔵研人

帰去来4



著者:大沢在昌

 主人公は亡父のあとを継いで警官になった志麻由子という美人婦警である。彼女は連続殺人事件の犯人逮捕のため、公園でおとりになっていたのだが、突然背後から犯人らしき人物に首を絞められてしまい意識を失ってしまう。
 その後彼女が目覚めた場所は、なんと光和27年という聞いたこともない時代だった。ただその時代背景や闇市が幅を利かせている街の雰囲気などは、まさに太平洋戦争直後の東京にそっくりなのだ。だが歴史や地名などが微妙に異なることから、過去にタイムスリップしたのではなく、全くの別世界つまりパラレルワールドに迷い込んでしまったのであろうか…。

 また現代では巡査部長でお荷物的存在だった由子だったが、この奇妙な世界では大出世して警視まで昇りつめている切れ者刑事だったのだ。ところがこの世界の由子は全く見当たらない。もしかすると由子の精神だけが、この世界の由子に転移してしまったのだろうか。いずれにせよ元の世界に帰れないのなら、なんとかこの世界で生き抜いて行くしかないと由子は決心するのだった。

 パラレルワールドと言えばSF小説のテリトリーなのだが、本作はSFというよりは「刑事もののミステリー小説」なのだと考えたい。たまたまパラレルワールドを「舞台装置」に使ったというだけなのであろう。そう考えないと余りにもSFらしくない顛末だし、超小型タイムマシンの発想はまるでドラエモンで、余りにもお粗末だからである。

 ただ本書はなんと500頁を超える分厚い単行本なのだが、あっという間に読了してしまうほど面白いことだけは保証しても良いだろう。それはドキドキワクワクさせるアクション系の際どいストーリーに加え、パラレルワールドはなぜ出現したのか、果たして由子は現代に戻れるのだろうか、もう一人の由子とは対面できるのだろうか、また連続殺人事件の犯人は逮捕されるのだろうか、などなどの謎を解明したいという読者心理をわしづかみにしているからである。まあいずれにせよ近いうちにTVドラマか映画化されるような気がしてたまらない。

評:蔵研人

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